大人気スパイアクション映画「007」シリーズ第19作!
マイケル・アプテッドが監督を務めた、1999年製作のイギリス・アメリカ合作の大人気スパイアクション映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』。
英国の石油王が、突如MI6本部で爆死する事件が発生。
「007」ことMI6の敏腕諜報員ジェームズ・ボンドが彼の娘を警護しつつ、「ロシアの軍事基地から核弾頭を奪い、巨大パイプラインを破壊する」という計画を企てているテロ組織のリーダーに挑む姿とは、具体的にどんな姿だったのでしょうか。
「007」シリーズ第19作目『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』の作品情報
(C)1999 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.
【公開】
2000年(イギリス・アメリカ合作映画)
【原作】
イアン・フレミング
【監督】
マイケル・アプテッド
【キャスト】
ピアース・ブロスナン、ソフィー・マルソー、ロバート・カーライル、デニース・リチャーズ、ロビー・コルトレーン、ジュディ・デンチ、デスモンド・リュウェリン、ジョン・クリーズ、マリア・グラツィア・クチノッタ、ゴールディー、セレナ・スコット・トーマス、サマンサ・ボンド、コリン・サーモン、クロード=オリヴィエ・ルドルフ
【作品概要】
『ボディ・バンク』(1996)のマイケル・アプテッドが監督を務めた、イギリス・アメリカ合作のスパイアクション作品。
原作であるイギリスのスパイ小説・冒険小説家のイアン・フレミングの小説と、本作の脚本担当ニール・パーヴィスとロバート・ウェイドによる原案をもとに描かれた、「007」シリーズ第19作目です。
前々作『007/ゴールデンアイ』(1995)や前作『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1998)に引き続き、アメリカのテレビドラマシリーズ「探偵レミルトン・スティール」(1982~1987)で人気を博したピアース・ブロスナンが、5代目ジェームズ・ボンド役を務めています。
映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』のあらすじとネタバレ
(C)1999 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.
ある日、英国情報局秘密情報部「MI6」の機密文書が盗まれ、英国諜報員が殺害されるという事件が発生。
MI6の部長であるMの旧友、英国の石油王ロバート・キング卿は300万ポンドを払い、盗まれたMI6の機密文書を取り戻します。
「007」ことMI6の敏腕諜報員ジェームズ・ボンドはスペイン・ビルバオにあるスイス産業銀行へ赴き、その金を回収しました。
さらにボンドは、仲介者である銀行家に犯人の名前を白状するよう詰め寄ります。
銀行家が犯人の名前を白状しようとしましたが、自分の秘書を務めていた暗殺者に殺されてしまいました。
イギリス・ロンドン。キング卿は回収した現金を確認するため、MI6本部を訪れます。そこへボンドが帰還し、Mに任務の経過報告をしました。
大金を使って取り戻した機密文書は、ロシア原子力局の極秘書類でした。キング卿がそれを買ったのは、彼の会社「キング社」が建設中の石油パイプラインを襲ったテロリストが分かる書類だったからです。
報告の最中、ボンドは紙幣に何か仕掛けられていることに気づき、キング卿を止めようとします。
ですが、時すでに遅し。キング卿は爆死しました。ボンドはMI6の特務装備開発課「Q課」の課長であるQが開発した小型ボート(未完成)を使って、テムズ川上流のボートからこちらを見張っていた暗殺者を追跡。
激しいボートチェイスの末、追い詰められた暗殺者は、ボンドから投降するよう言われるも「彼の手からは逃れられない」と拒否し、奪った気球で自爆しました。
スコットランドに本部を移転後、キング卿殺害に使われた紙幣を調べた結果、紙幣には爆弾の原料となり得る化学物質「硝酸尿素」がついていたことが判明。
さらに紙幣の偽造防止の金属片と、キング卿の上着に着いていた襟のピンにはマグネシウムと、起爆をもたらす発信装置が仕掛けられていたこともわかりました。
ボンドがそれに気づけたのは、その前に紙幣に触れていた指と、酒が入ったグラスについていた水滴が化学反応を起こしたからです。
キング卿を爆殺した犯人は、彼の身近な人間だと推測したMやMI6の幕僚主任ビル・タナー、MI6の幕僚たちはキング卿の娘エレクトラ・キング誘拐事件を調べます。
怪我のため任務から外されたボンドは、女医のモリー・ウォームフラッシュを誘惑し、偽の診断書を書かせました。
Mの元に直談判する前にQ課を訪れたボンドは、近々引退する予定のQの後継者Rから、新しい装備がついたボンドカーのBMW・Z8、シェルター機能付きスキージャケットを提供されました。
Q課を後にしたボンドは、MI6のデータベースを使って、エレクトラ・キング誘拐事件について調べていきます。
誘拐されたエレクトロには、500万ドルの身代金が犯人から要求されました。ですがエレクトラは、見張りを射殺し脱出しました。
さらに為替レートで計算したら、500万ドルと300万ポンドが同額だったことが判明。ボンドは別室にいるMたちの元へ行き、彼女に直接話を聞くことにしました。
キング卿は攫われた娘を取り戻すため、自ら犯人と交渉しようとしましたが失敗。Mに助けを求めました。
しかしMI6は身代金は渡さず、エレクトラを交渉の餌としてレナードを確保するための時間を稼ごうとしたのです。
そう話すMに、ボンドは自分が回収した金とその身代金の額は同じだと言った上で、「これは”テロリストが戻ってきた”というメッセージではないか」と言いました。
それを聞いたMたちMI6は、ボンドにエレクトラを誘拐したのは無政府主義者のテロリスト、ヴィクター・ゾーカス(通称:レナード)だと明かします。
ボンドと同じ「00部署」の諜報員「009」がレナード暗殺を請け負ったのですが、暗殺決行前にエレクトラが自力で脱出。
それから1週間後、レナードの頭の中に「009」が放った銃弾が発見されました。しかし銃弾摘出手術に失敗した医師は、その場でレナードに殺されてしまいました。
摘出されなかった銃弾は今も脳の延髄を移動しており、触覚や嗅覚、痛覚などを奪った反面、彼には常人以上の耐久力が与えられました。
いずれ死に至るとはいえ、現時点でレナードは不死身なのです。そのレナードが復讐のために戻ってきたというのならば、キング卿を殺してMI6に屈辱を味わわせることができたから、このまま事件は収束していくのではないかとMI6は考えました。
これに対しボンドは、「レナードに恨まれている人物は3人。つまり最後の1人であるエレクトラが次に狙われるのではないか」とMに進言しました。
ちょうどそこへ、Mの秘書マネーペニーからボンドの診断書が届きます。それを受け取ったMは、ボンドの任務復帰を承認し、エレクトラの護衛を命じました。
以下、『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』ネタバレ・結末の記載がございます。『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
(C)1999 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.
ボンドはエレクトラが父の跡を継ぎ、新しい石油パイプラインの工事を指揮しているアゼルバイジャンへ向かいます。
しかしエレクトラは、誘拐事件と今回の事件で二度頼ったものの失敗したMI6に不信感を抱いていました。
石油パイプラインの敷設予定地であるアゼルバイジャンの首都バクーの雪山にやって来た2人は、パラモーター付きのスノーモービルに乗って現れた武装集団に襲われてしまいます。
エレクトラを守るため、ボンドは自ら囮となり武装集団を森に誘導しました。雪山でのチェイスの末、ボンドは武将集団を退け、チェイスによって発生した雪崩からシェルター機能付きスキージャケットを使ってエレクトラを守ったことで、2人の関係は急接近しました。
その日の夜。ボンドは元ソ連の情報機関・秘密警察「ソ連国家保安委員会(KGB)」のスパイの実業家ヴァレンティン・ズコフスキーが経営するカジノを訪れ、エレクトラを狙った武装集団、ロシア特殊捜査局原子力対テロ機動隊に関する情報を求めました。
これに対しズコフスキーは、「アフガニスタンの後にKGBがレナードを切って以来、奴はフリーの身となった」、「奴の現在の雇い主は、石油パイプラインの大手企業4社。ここ(カジノ)の客はキング社の消滅を望む者が多い」と答えました。
するとそこへ、赤いドレスを着たエレクトラが登場。彼女もまたボンドと同じく、自分を殺そうとしているのが誰か調べにきたのです。
エレクトラは父と同じく、100万ドルを賭けてズコフスキーとカードゲームで勝負をすることに。その結果、負けたエレクトラは眉一つ動かしませんでした。
そんなエレクトラに疑念を抱きつつ、ボンドは彼女と身体の関係を持ちました。ボンドに身も心も委ねたエレクトラは、自力で脱出できたのは「この体を使って見張りを買収し、奴らを丸め込んだ上で銃を撃ちまくって脱出した」だと明かしました。
その後、Qが開発した秘密兵器「クレジットカード型キーピック」を使ってキング社に忍び込んだボンドは、エレクトラの警備主任であるダヴィドフがレナードと繋がっていたことを突き止め、彼を殺害。
ダヴィドフが偽造したロシア原子力局の核物理学者アルコフ博士の身分証を奪い、彼に成りすまして迎えの飛行機に乗りました。
一方レナードは、中央アジアのカザフスタンで処理作業が進んでいる旧ソ連製の核弾頭を奪取する計画を進めていました。
現地の旧ミサイル基地に到着したボンドは、地下のミサイルサイトでレナードとその一味を発見。レナードに銃を突きつけ、核弾頭を盗んで何をしようとしているのか問い詰めます。
これに対しレナードは、エレクトラの処女を奪ったのは自分だと明かした上で、「人生にはスリルが必要だ」と言いました。その言葉は、カジノでエレクトラがボンドに発したものと同じでした。
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そこへ、核武装解除機関の科学者クリスマス・ジョーンズと、ロシア軍のアカキエビッチ大佐とその部下が登場。ボンドたちを怪しんだ彼らは、2人を逮捕しようとしました。
その際、ボンドはレナードの手下が、1発の核弾頭から電波発信カードを取り外しているのを目撃します。
アカキエビッチ大佐たちを銃撃し、ボンドと銃撃戦を繰り広げた末、核弾頭を奪ったレナードとその一味は、ボンドが乗ってきた飛行機を使って逃走。
レナードが仕掛けた爆弾は爆発し、基地に残っていた核燃料を誘爆させて基地を破壊しました。
クリスマスの協力のおかげで、間一髪のところで地上へ脱出したボンド。その手には、レナードの手下が持っていた電波発信カードが握られていました。
その後、エレクトラの元に帰還したボンドは、エレクトラがストックホルム症候群になり、レナードに協力していると疑い、彼女を問い詰めました。
これを強く否定したエレクトラは、レナードに命を狙われていることをボンドが知っていた上で自分を護衛していたことを知ると、誘拐事件の時のようにレナードを釣る餌にしようとしたのかと叱責します。
そしてエレクトラからの要請を受けてバクーを訪れ、ボンドから電波発信カードを受け取ったMも、エレクトラが事件の黒幕ではないかと推測した彼の言葉を信じようとしません。
すると、レナードに奪われた核弾頭がキング社の石油パイプラインのピグ(管内を通過させて内部のメンテナンスや清掃などを行うための機械のこと)に仕掛けられ、石油を備蓄しているターミナルに向かって暴走するという事態が発生。
レナードが事前に石油パイプラインの作業員10人を襲撃したのも、21世紀の西欧諸国の需要を満たすこの石油パイプラインを爆破するためでした。
ボンドはクリスマスと共に、予備のピグに乗って核爆発の阻止に向かいます。しかし、クリスマスが取り外した起爆用爆薬のプルトニウムは、奪われた量の半分しかなかったのです。
核弾頭自体は時限装置によって爆散。その直前でピグから飛び降りたボンドたちは、間一髪のところで生還しました。
同時刻、エレクトラはMにキング卿が着けていたピンと同じ物を贈りました。ボンドの推測どおり、エレクトラがキング卿を裏切り殺害した事件の黒幕であることを知ったMでしたが、彼女とその部下ガボールによって拉致されてしまったのです。
それを知らないボンドは、クリスマスに「プルトニウムを半分抜いた犯人はエレクトラだ」と言いました。
エレクトラがプルトニウムを半分抜いたのは、石油パイプラインが爆発した後にそれが検出されれば、テロリストに命を狙われた被害者になれるからです。
ボンドはこのことをMに話そうと、彼女の側近であるチャールズ・ロビンソンに連絡します。その際、ロビンソンからMが拉致され、MI6の職員が3人殺されたことを聞かされました。
一方エレクトラは、レナード一味と合流し、トルコ・イスタンブールにあるアジトにMを幽閉しました。
そこでエレクトラは、自分を見殺しにしようとした父とMへの積年の恨みを告白しました。
父やMが自分を救い出してくれないと知ったエレクトラは、レナードを篭絡し、2人への復讐のために彼と手を組むことにしたのです。
その真実を隠すため、エレクトラはレナードに自分を苦しめる芝居を打ってほしいと頼みました。
ですが、それをレナードが拒否したため、エレクトラは自分で右の耳たぶに傷をつけました。
(C)1999 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.
一方ボンドたちは、カスピ海沿岸にあるズコフスキーのキャビア工場に向かい、彼にエレクトラとどういう関係なのか、エレクトラは何を企んでいるのか詰問しました。
その最中、ボンドたちはキング社の伐採カッター装備のヘリ部隊に襲われます。ボンドはボンドカーに装備されたミサイルを発射し、ヘリ部隊を1つ撃退。
さらに銃撃戦の末、ボンドはもう1つのヘリ部隊を撃退しました。その代償として、ボンドカーは小型ボート同様、大破してしまいました。
これに観念したのか、ズコフスキーは時々、エレクトラにロシア製のブツを提供していることを明かします。
そしてカジノで賭けた100万ドルは、ズコフスキーの甥であるニコライが艦長を務めるロシア海軍の原子力潜水艦「ヴィクトル3」を、イスタンブールへ回航させてくれることへの謝礼でした。
それを聞いたボンドは、レナードの狙いはその原子力潜水艦の原子炉だと推測しました。
レナードの目的は、その原子炉に残り半分のプルトニウム入り芯棒を挿入し、メルトダウンを引き起こしてボスポラス海峡を汚染し、石油運搬ルートをキング社のパイプラインに独占させることでした。
ボンドたちはイスタンブールに向かい、ズコフスキーの現拠点であるロシア連邦保安局(FSB)の隠れ家(元KGBの隠れ家)で、Mが監視の目を盗んで発した電波発信カードの信号をキャッチします。
ボンドたちがMの居場所を突き止めた直後、ズコフスキーの部下ブリオンが裏切り、彼が仕掛けた爆弾が起爆しFSBは爆発。
脱出したボンドとクリスマスは、ブリオンが手引きしたであろうガボールとレナード一味に捕まり、エレクトラたちのアジトに連行されてしまいます。
この間、レナードとその一味は原子力潜水艦の乗組員を全員殺害し、原子力潜水艦を乗っ取りました。
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ボンドは古代の拷問道具「ガローテ」による拷問を受けながら、エレクトラがキング卿を殺したのは単なる復讐だけではなく、母方の一族のものであった石油を取り戻して地図を書き換え、全世界に彼女と祖父の名を、一族の栄光を知らしめるためだったことを知ります。
ボンドが絞め殺されそうになったその瞬間、ズコフスキー一党が救援に駆けつけてくれたのです。
ボンドの元へ駆けつけたズコフスキーは、そこにあったニコライの軍帽を見て彼の死を悟り、エレクトラを殺そうとしますが、それより早く撃ったエレクトラの銃弾を受け倒れてしまいます。
ですが、ズコフスキーは致命傷を負いながらも、杖に仕込んだ銃でボンドの拘束具を破壊しました。
それに気づいていないエレクトラは、「あなたは愛する女を殺せないはず」とボンドを挑発し、原子力潜水艦に乗り込んだレナードに潜水するよう指示を出します。
ズコフスキーのおかげで拘束具が外れ、自由の身となったボンドはエレクトラを追いかけつつ、Mを救出。エレクトラを追い詰め、容赦なく彼女を撃ち殺しました。
そしてボンドは、潜水を開始した原子力潜水艦に乗り込み、攫われたクリスマスを救出。レナードの手下たちを撃退した上で、原子炉室でレナードと対峙します。
痛覚がないレナードとの戦いに苦戦を強いられたボンドでしたが、レナードがプルトニウム入り芯棒を原子炉に挿入した瞬間を狙って、冷却装置を作動させました。
これにより、勢いよく噴射したプルトニウム入り芯棒はレナードの胸を貫きました。ボンドたちが魚雷発射口から脱出した直後、原子力潜水艦は水中で爆発しました。
MI6本部に無事帰還したMは、タナーたちに未だ消息不明のボンドたちの捜索を命じました。
人工衛星からの赤外線センサーを使って捜索した結果、ボンドはトルコでクリスマスとの甘い休暇を堪能していました。
MたちMI6本部の者がベッドで絡み合う2人の姿に呆気にとられる中、Rはその映像を消し、「2000年問題による誤作動かな」と言って誤魔化しました。
映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』の感想と評価
(C)1999 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.
MI6を狙う巨悪に立ち向かうボンド
MI6の機密文書を盗み、英国諜報員も殺害した犯人を追うボンドたちMI6。その過程で、MI6に協力した英国の石油王が爆殺されてしまいます。
ボンドは同僚を、Mは旧友をそれぞれ失い、ますます犯人逮捕に熱が入りました。ですが、事件の黒幕の正体は、警護すべき被害者だと思っていたエレクトラだったのです。
激闘の末、ボンドはエレクトラを撃ちましたが、死んだ彼女の姿を見る2人の表情は悲哀に満ちたものでした。
それは一時でも、ボンドがエレクトラを本気で愛したから。誘拐事件の捜査に関与したMとキング卿がエレクトラにしたことに、Mがずっと罪悪感を抱いていたからでしょう。
そんなシリアスな場面とは打って変わり、物語の前半では小型ボートでロンドンの街中を突っ切るという、荒唐無稽な行動力を見せるボンドの姿が描かれていてとても面白いです。
結託したテロリストとボンドガール
(C)1999 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.
エレクトラ誘拐事件とキング卿殺害事件の被害者かと思いきや、本作のボンドガールである彼女こそ、事件の黒幕の正体だったのです。
それはエレクトラがレナード同様、MI6に恨みを持っていたからでしょう。エレクトラは誘拐された自分を見殺しにしようとした父とMを、レナードは自身の脳に銃弾を浴びせた「009」を………。
作中では殺された英国諜報員が誰か明かされていませんが、おそらくレナードが恨みを抱いていた「009」ではないかと考察できます。
エレクトラはMたちに復讐するために手を組んだだけで、レナードのことを愛してなんかいません。
対してレナードは、エレクトラを本気で愛していたのが、ボンドから彼女の死を聞かされた時の彼の悲痛と絶望が入り混じった表情から窺えます。
まとめ
(C)1999 United Artists Corporation and Danjaq, LLC.
「007」ことMI6の敏腕諜報員ジェームズ・ボンドvsテロリストと手を組んだボンドガールが火花を散らす、イギリス・アメリカ合作のスパイアクション作品でした。
本作のエンドクレジット直前で「JAMES BOND WILL RETURN」というテロップが流れています。
おそらく本作が公開されてから約7年後に、配給会社ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ(UIP)が解散したため、「007」シリーズとしては最後の配給作品となったからでしょう。
また本作を最後に、「007」シリーズ第2作目『ロシアより愛をこめて』(1964)からQ役を演じてきたデスモンド・リュウェリンがシリーズから引退。
次回作から、本作で登場したジョン・クリーズ演じるRが新しいQとして登場します。
ピアース・ブロスナン演じる5代目ジェームズ・ボンドが魅せるハードアクションと、ボンドガールに起きた悲劇をきっかけに起きた、シリアス要素多めのサスペンスドラマが交錯するスパイアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。