A・J・クィネル原作のベストセラー『燃える男』を映画化!
トニー・スコットが監督を務めた、2004年製作のアメリカ・イギリス・スイス・メキシコ合作のアクション・スリラー映画『マイ・ボディーガード』。
対テロ活動という名の暗殺任務に明け暮れる日々に疲弊していた、元海兵隊員で元CIA工作員のジョン・W・クリーシー。誘拐が多発するメキシコシティの実業家ラモスに、9歳の娘ルピタのボディーガードとして雇われます。
少しずつ心を通い合わせていたルピタが目の前で誘拐され、クリーシーの過激な追跡が始まるも、事件の主犯格は意外な人物で……。
映画『マイ・ボディーガード』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『マイ・ボディーガード』の作品情報
(C)2004 Twentieth Century Fox Film Corporation and Monarchy Enterprises S.a.r.l.. All rights reserved.
【日本公開】
2004年(アメリカ・イギリス・スイス・メキシコ合作映画)
【原作】
A・J・クィネル
【監督】
トニー・スコット
【キャスト】
デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、クリストファー・ウォーケン、ラダ・ミッチェル、マーク・アンソニー、ジャンカルロ・ジャンニーニ、レイチェル・ティコティン、ミッキー・ローク
【作品概要】
『トップガン』(1986)『エネミー・オブ・アメリカ』(1998)『スパイ・ゲーム』(2001)などを手がけたトニー・スコットが監督を務めた、アメリカ・イギリス・スイス・メキシコ合作のアクション・スリラー作品。
イギリスの作家A・J・クィネルによる小説『燃える男』を映画化。全米公開時には初登場1位、5日間で2279万ドルの興行収入をあげたヒット作です。
2度のアカデミー賞に輝いた『グローリー』(1990)や『トレーニング デイ』(2001)のデンゼル・ワシントンが主演を務め、『クリムゾン・タイド』(1995)に続いて再びトニー・スコット監督とタッグを組みました。
映画『マイ・ボディーガード』のあらすじとネタバレ
(C)2004 Twentieth Century Fox Film Corporation and Monarchy Enterprises S.a.r.l.. All rights reserved.
中南米では60分に1件、誘拐が起きています。犠牲者の70%は生還できません。
2003年、メキシコでは誘拐はビジネスとして成立していました。裕福な家庭はそんな不法なビジネスのターゲットにされ、ボディーガードを雇うことが常識でした。
アメリカ・メキシコ国境に接しているメキシコ・フアレスで部品工場を経営しているサムエル・ラモスは、顧問弁護士のジョーダン・カルフスから、父から継いだ誘拐保険の更新のために加入条件であるボディーガードを雇うよう助言されます。
9歳の娘ルピタ(愛称はピタ)のために雇ったボディーガードは、米軍に16年間従軍し対テロ活動を行っていた元海兵隊員で、元CIA工作員でもあるジョン・W・クリーシー。
対テロ活動という名の暗殺任務に明け暮れる日々に疲弊し、現在は仕事をせず酒に溺れる日々を送っていた彼に、彼の旧友ポール・レイバーンがボディーガードの仕事を紹介してくれたのです。
クリーシーは最初、ルピタと彼女を護衛する仕事に全く興味を示しませんでした。人に張りついて話し相手もしなくてはならないボディーガードの仕事が苦手だからです。
そのため、クリーシーはルピタの質問には何も答えず、自分の話は一切せず、ただルピタのボディーガードの仕事を淡々とこなして報酬をもらうつもりでいました。
対してルピタは「友だち」を欲していました。ルピタはクリーシーと友だちになりたくて、色々と質問しましたが「自分はあくまでボディーガードで、友だちじゃない」と拒絶されてしまいました。
それでもルピタは、毎晩一緒に寝ているぬいぐるみのクマに似ている、大きくてどこか寂し気なクリーシーのことを放っておけませんでした。
水泳の授業を受けるルピタを見たクリーシーは、彼女の両親がデトロイトに仕事に出掛けて不在の間、彼女に泳ぎを教えることになりました。
ルピタは泳ぎが速いのですが、スタートの合図を示す銃声が怖くてスタートが遅くなってしまい、いつも3位どまりでした。3週間後に水泳の大会が控えていました。
またクリーシーは、ルピタに勉強も教えました。その最中にクリーシーは初めて、ルピタの前で笑いました。その出来事をきっかけに、クリーシーはルピタと少しずつ心を通い合わせるようになります。
そして迎えた水泳大会当日、ルピタはクリーシーとの特訓の成果を発揮し、150メートルの自由形で見事1着でゴールしました。クリーシーはレイバーンとその妻アリシアを誘い、ルピタのお祝いをしました。
ルピタは水泳と勉強を教えてくれたお礼にと、お小遣いを貯めて買った小さいクマの箱に入った、希望を亡くした人の守護聖人・聖ユダのネックレスを彼にプレゼントしました。
その日の夜。クリーシーは初めて、酒を飲みませんでした。
一方ルピタは、父にピアノを辞めたいと直談判するも、教えてくれているロッシが著名な演奏家だからと断られてしまいました。そこで翌日、ルピタはクリーシーにピアノを弾けないようにしてほしいとお願いしました。
珍しく弱音を吐いたルピタに対し、クリーシーは金持ちの子に教えたり交響楽の演奏をしていたりするロッシのピアノレッスン中、一応謝りながら何度もオエッとえずき、神経を逆なでしてやれとアドバイスしました。
そのクリーシーの案に、後部座席に座るルピタの愛犬サム(サムエルが出張から帰った日に彼女にプレゼントした犬)は肯定するように笑顔を浮かべていました。
ルピタは、ピアノ教室の前の道端に咲いていた花をクリーシーにプレゼントしました。クリーシーはルピタがくれた花を服の胸ポケットに入れて、彼女のピアノレッスンが終わるまでの間、サムと戯れることに。
そこへ、パトカーが何台も集まってきて警戒態勢に。さらに、先日クリーシーたちの後をつけていた不審な車を発見したクリーシーは嫌な予感がしました。
ルピタがピアノ教室から出たと同時に、不審な車のドアが開きます。その瞬間、クリーシーはルピタを逃がすために持っていた銃で空砲を撃ちました。
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さらにクリーシーは、ルピタを狙う警官たちと不審な車の男たちと銃撃戦を繰り広げることに。
しかし2発の銃撃を受けて負傷してしまい、自分を心配して駆け寄ってきたルピタが、目の前で男たちに誘拐され車に乗せられてしまったのです。
その後、病院に搬送されるも意識が戻らないクリーシーを、連邦司法警察のラミレス本部長は警官2名の殺害容疑で逮捕し、ルピタの誘拐事件にも関与している疑いがあるとマスコミに発表しました。
しかし死亡した警官たちは、この日非番でした。「なぜ制服を着て誘拐の現場にいたのか」と新聞記者のマリアナ・ガルシア・ゲレロがラミレスに尋ねるも、まともに取り合ってくれません。
そこへ、ルピタ誘拐事件を捜査する連邦捜査局(AFI)の局長ミゲル・マンサーノがやってきて、「汚職で名を挙げて、おまけに殉職か」と失笑しました。
その日の夜。自身の息子が身代金を払った2日後、片耳を失って戻ってきた過去を持つカルフスは「警察の手は借りず自分たちで解決する」と連邦司法警察誘拐課のヴィクター・フエンテスに宣言。
しかしフエンテスは検察庁から、この事件への非公式の関与を許可されていることを理由に、彼らを黙らせ捜査を続行させます。
さらにフエンテスは「犯人は身代金を1人で運んでこいと要求しているが応じるな」「応じたらメキシコの地獄を味わうことになる」と彼らに釘をさしました。
ルピタが誘拐されてから2日後。レイバーンが警察の目を盗んでクリーシーに会いに行くと、ミゲルがやってきました。
レイバーンの呼びかけに反応し、意識を取り戻したクリーシー。2人から、ルピタが誘拐されてから2日経った今も、誘拐犯と交渉中であると聞かされます。
同時刻。フエンテスたち連邦司法警察と一緒に自宅にいるサムエルのもとに、誘拐犯から電話がかかってきます。サムエルに代わって電話に出たカルフスは、誘拐犯からの指示を復唱しました。
「身代金1000万ドルは、銀行で黒の麻袋2つに分けて入れる。中身は保険代理人が確認」「武装車で自宅へ運び、運搬車に積み替える」
そこで、カルフスはサムエルが持病の心臓病を患っていることを理由に、彼が身代金を運ぶには運転手が必要だと誘拐犯に交渉しました。
誘拐犯は「頑丈な車ではなく、トランクのフタを外したメイドの車に乗り込む」という条件つきでこれを承諾。午前1時に広場の噴水に着き、噴水のまわりを2周した上で、シャツを脱いで窓の外へ掲げろと指示しました。
その指示は時刻以外、カルフスが息子を誘拐した犯人から指示されたものと同じでした。さらに誘拐犯は、南東の角にある公衆電話が鳴ったら受話器を取って指示を待てといいました。
その日の深夜。サムエルはフエンテスと一緒に、誘拐犯からの指示に従いました。電話の上の地図に書かれていた指示「IMSS橋 3時」に従い、IMSS橋に到着したサムエルは、500万ドルずつ入った黒の麻袋を2つ、近くに置かれた白い車のトランクに入れました。
しかしこの身代金の受け渡しに邪魔が入り、誘拐犯の甥が殺されてしまいました。
翌日。これに怒った誘拐犯は、サムエルとその妻リサに「娘を神のもとへ送る」と、暗にルピタを殺すと電話してきたのです。
映画『マイ・ボディーガード』の感想と評価
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誘拐グループと汚職警官たちを追い詰めていく者
最初はルピタにも、彼女を護衛する仕事にも全く関心がなかったクリーシー。ですが彼女の両親が不在の間、彼女に水泳と勉強を教えたことをきっかけに、少しずつ彼女と心を通い合わせていきます。
心を通い合わせる前と後ではクリーシーの表情が全然違いますし、また2人の間に友情に似た絆が生まれていくのが感じられてとても微笑ましいです。
その一方で、復讐に燃えたクリーシーが、ルピタ誘拐事件に関与した誘拐グループと、その甘い汁を啜っていた者たちへ正義の鉄槌を下していく様はとてもスカッとした爽快感があります。
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そんなクリーシーには、頼もしい協力者がいました。新聞記者のゲレロと連邦捜査局の長官ミゲルです。
ゲレロは誘拐事件に関与する誘拐グループと「兄弟団」の暴露記事を書くため、ミゲルは相次ぐ誘拐事件の真相解明と真犯人逮捕のため、クリーシーに有力な情報を渡していきました。
クリーシーだけ、ゲレロとミゲルたち連邦捜査局だけでは兄弟団に阻まれて無理でした。しかし3人が利害の一致で協力したことで、犯人たちを追い詰めることができたのです。
クリーシーの活躍はもちろん、彼を支えたゲレロたちの活躍も注視してみてください。
暴かれた誘拐事件の真相
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クリーシーたちが暴いた誘拐事件の真相。まず誘拐グループがルピタを含む金持ちの子息令嬢を誘拐し、身代金を要求。
その身代金を狙うフエンテスたち汚職警官が、身代金の受け渡しを妨害。これに怒った誘拐グループは被害者を無傷では返さない、もしくは殺すなどの処置をとり、また身代金欲しさに誘拐を続けていく。このループによって、誘拐事件は相次いで起きていたのです。
ですがルピタ誘拐事件では、もっと計画的なものでした。被害者家族であるサムエルが借金返済のためか、カルフスの話に乗っかり娘の誘拐に同意したのです。
カルフスも息子を誘拐され、身代金を渡して取り戻した息子は片耳を失っていた経験をしています。息子を誘拐し傷つけた誘拐グループと、息子を救ってくれなかった汚職警官たちへの復讐ゆえの考えだったのかとも考察できますが、死人に口なしのため理由は分かりません。
汚職警官たちは「私はプロだから」を強く主張し、ルピタたち子どもを危険な目に遭わせたことへの謝罪は一切なし。そんな彼らと、金を得るための商品としてしか子どもを見ていない誘拐グループも、借金から家族を守るために娘を誘拐させたサムエルの末路は、まさに因果応報。自業自得です。
まとめ
(C)2004 Twentieth Century Fox Film Corporation and Monarchy Enterprises S.a.r.l.. All rights reserved.
元アメリカ海兵隊員であり元CIA工作員のクリーシーが、生きる希望をくれた少女の誘拐事件の真相を暴いていくアクション・スリラー作品でした。
暗殺任務に明け暮れる日々に心が疲弊していたクリーシーと、彼の護衛対象である少女ルピタが少しずつ心を通い合わせ、最後は互いのことを大事に思うほどの強い絆で結ばれていく様は微笑ましく感涙します。
そんな2人がやっと再会できたというのに、橋でのやりとりが最後の会話となってしまうなんてとても悲しいです。せっかくルピタの日記にあったように、クリーシーもルピタのことが大好きになり、そのことを告白したばっかりだというのに……。
それとは別に、物語の前半ではクリーシーが銃の扱いに不得手な姿が描かれていました。諸事情でそうなってしまったクリーシーは、サムエルを撃たなかったのではなく撃てなかったのではないかと考察できます。
デンゼル・ワシントンが疲弊した男クリーシー役を、子役時代のダコタ・ファニングがクリーシーに生きる希望を与えてくれた少女ルピタを熱演。ボディーガードと護衛対象の間に生まれた純粋すぎる愛に感動する本作をぜひ一度ご鑑賞ください。