新米刑事の命を懸けた訓練日(トレーニング・デイ)を描くアカデミー賞主演男優賞受賞作!
血気盛んな新人刑事がベテラン刑事の指導のもとで、予想つかない事態に巻き込まれる映画『トレーニングディ』。
人口が増え、街が発展すると同時に闇で流通し始める「麻薬」と言う存在。人々の暮らしを守る「警察官」の中でも「麻薬取締課」は時にギャングに潜入し、文字通り命を懸けて麻薬の根絶のために行動しています。
出演は『ボーン・コレクター』のデンゼル・ワシントンと『ガタカ』のイーサン・ホーク。演出は『リプレイスメント・キラー』のアントワーン・フークア。
今回はそんな「麻薬取締課」に配属された新人刑事と彼の上司となるベテラン刑事の1日を濃密に描いた映画『トレーニングデイ』(2001)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
映画『トレーニングデイ』の作品情報
TM&(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
【原題】
Training Day
【公開】
2001年(アメリカ映画)
【監督】
アントワーン・フークア
【脚本】
デヴィッド・エアー
【キャスト】
デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、スコット・グレン、トム・ベレンジャー、ハリス・ユーリン、レイモンド・J・バリー、クリフ・カーティス、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ
【作品概要】
『グローリー』(1990)や『マルコムX』(1993)で高い評価を受けたデンゼル・ワシントンと、『ビフォア・サンセット』(2005)などで脚本を務め演技だけでなく脚本家としても実力を発揮したイーサン・ホークがダブル主演を務めた作品。
デンゼル・ワシントンは本作での演技でアカデミー主演男優賞を受賞し、シドニー・ポワチエ以降2人目となる黒人俳優の受賞が国内外で話題となりました。
映画『トレーニングデイ』のあらすじとネタバレ
TM&(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
妻と娘を持つジェイクは上昇志向の強いロス市警の警察官であり、1年間のパトカー勤務を経て出世への強いパイプを持つ麻薬取締課に配属されます。
配属初日、上司による適性の見極めとなる訓練日(トレーニング・デイ)を迎えたジェイクは麻薬取締課のリーダーであるアロンゾと勤務を共にすることになります。
高い検挙率を誇るアロンゾはオフィスを持たず、警察支給の銃ではなく自身のお気に入りの銃を携え、私用の高級車を乗り回しておりジェイクは困惑しますが、麻薬取締官として街に溶け込むことの重要さを語るアロンゾの忠告を聞き納得します。
大学生のグループが売人から麻薬を買う現場を目撃したアロンゾはジェイクと共に大学生たちの乗る車を制止し所持品検査を行います。
車からは麻薬の一種であるフェンサイクリジン(通称PCP)とパイプが出てきますが、アロンゾは大学生たちを逮捕することなくPCPとパイプを押収し解放します。
車に戻ったアロンゾはジェイクに銃を突きつけ押収したPCPを吸うようにと命令。
ジェイクは拒否しますが、「麻薬捜査官は潜入先で麻薬を断れない」とアロンゾに脅されると渋々PCPを吸引します。
大量に吸い込んだことから意識が混濁するジェイクを連れ、アロンゾは情報屋として逮捕を見逃している麻薬の売人ロジャーのもとを訪れます。
ロジャーはロシアンマフィアとトラブルを起こしているアロンゾを気遣うと、新人のジェイクを見て正義感の強かった昔のアロンゾにそっくりだと話しました。
アロンゾはロジャーに今後どうするのかを聞くと、ロジャーは1年後には引退しフィリピンで悠々自適な生活をすると宣言しアロンゾとジェイクは彼の家を後にします。
車で次の目的地へと向かう最中、ジェイクは暴行を受ける少女を発見しアロンゾの制止を振り切り2人組の男を乱闘の末に拘束。
助けられた少女は地元ギャング「トレス」のリーダーが従兄弟であると2人組の男に吐き捨て去っていきます。
少女が去った後、少女の落とした財布を拾い拘束した2人組を連行しようとするジェイクでしたが、アロンゾが2人組を脅し金を取ると解放してしまいます。
車に戻ってもなおアロンゾの行動に納得のいかないジェイクでしたが、アロンゾはレイプ犯の逮捕は下っ端の仕事であると言い張りジェイクを強引に説得。
次にアロンゾはジェイクを「ジャングル(無法地帯)」と呼ばれるギャングの縄張りへと案内します。
アロンゾはジャングル内に愛人を作っており、麻薬取締官としての彼を恐れるギャングたちはアロンゾには手を出せず、ジェイクのことも見逃します。
アロンゾの愛人とその息子と共にひと時の時間を過ごしたジェイクは、アロンゾに連れられロス市警の上層部の2人と有力な検事の会食に同行します。
アロンゾはジェイクを離れた席に座らせると、検事に麻薬の元締めから違法に押収した4万ドルを賄賂として払い、情報屋ロジャーの逮捕状を入手。
逮捕状を入手したアロンゾは自身の部下である麻薬取締課のメンバーを収集しロジャー逮捕のために動き出します。
映画『トレーニングデイ』の感想と評価
TM&(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
バディムービーの定石を覆す異色作
バディムービーのお決まりの展開の1つとして「新人と破天荒なベテラン」と言う構図があります。
『パリより愛をこめて』(2010)や『孤狼の血』(2018)のようにルールを無視するベテランとその行動に反感を抱く新人の掛け合いや、結果としてお互いの信頼関係に繋がる物語は何度描かれても魅力的に映ります。
しかし、アントワーン・フークア監督が2001年に製作した『トレーニングデイ』はそんなバディムービーの定石を打ち破る異色の作品でした。
「新人と破天荒なベテラン」の構図は同じであれど、2人は信頼関係を築くどころか壊滅的なまでの決別へと突き進んでいきます。
「悪」にしか見えない破天荒な行為がそっくりそのまま「悪」だったと言う、全バディムービーに対するアンチテーゼとして光る作品です。
ロス市警の実態を基にした作品
TM&(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
本作は「ランパート・スキャンダル」と呼ばれるロス市警の対ギャングチーム内で70人を越える捜査官が汚職に関わっていたとされる事件から着想を得たとされています。
本作の脚本家を務めたデヴィッド・エアーは同事件を基とした『フェイク シティ ある男のルール』(2009)や、ロス市警の管轄内で最も治安の悪い地区を舞台とした『エンド・オブ・ウォッチ』(2013)を製作するなどロス市警の実態を繰り返し描いてきました。
高い犯罪率を記録し捜査官の命すら脅かされる場所では自ずと汚職の件数も増え、ミイラ取りがミイラになることも珍しくありません。
しかし、そんな状況下でも正義を執行しようとする人間は存在し、上記の作品群には汚職が蔓延する中で正義のために奮闘するキャラクターが必ず登場しています。
実在の事件を基にし、実態の調査を調査しつくした本作だからこそ描けるロス市警の「闇」と「光」に心動かされる作品です。
まとめ
TM&(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
相手の些細な言動を見逃さず自身の後の行動に繋げるアロンゾと、後先考えずに自身の正義の行動を示すジェイク。
アロンゾの話術と洞察力がジェイクを追い詰めていくことになったり、ジェイクの正義の行いが終盤で彼の救いの一手となったりと脚本の秀逸さが光る映画『トレーニングデイ』。
濃密すぎる1日を2時間で描いた本作は異色バディムービーとしてもロス市警の実態を描いた映画としても自信を持ってオススメできる作品です。