映画『イップ・マン 完結』は新宿武蔵野館ほかにて2020年7月3日(金)より公開!!
国際的アクション・スターとして知られるブルース・リーが唯一師匠とあがめた伝説的な武術家・イップ・マン。自身の誇りを賭けて戦ったその生涯を綴った『イップ・マン』シリーズの最終作が、いよいよ日本でも公開されます。
シリーズ最終作『イップ・マン 完結』は、生涯さまざまな思いに悩みながらも武術家としてのプライドを貫いたイップ・マンの晩年の姿を描いた作品です。
シリーズ全作を手掛けたウィルソン・イップ監督、不動の主演ドニー・イェン、そして前作『イップ・マン 継承』よりプロジェクトに加わったアクション監督のユエン・ウーピンが引き続いてのタッグを見せています。
映画『イップ・マン 完結』の作品情報
【日本公開】
2020年(中国・香港合作映画)
【英題】
IP MAN4(原題 葉問4:完結篇)
【脚本】
エドモンド・ウォン、深沢寛、チェン・タイリ、ジル・レオン
【監督】
ウィルソン・イップ
【キャスト】
ドニー・イェン、ウー・ユエ、チャン・クォックワン、ヴァネス・ウー、スコット・アドキンス、クリス・コリンズ、ケント・チェン
【作品概要】
中国・香港の伝説的な武術家イップ・マンの生涯を描いたアクション映画「イップ・マン」シリーズの完結編。彼が晩年にまで貫いた武術家としての誇りを、秀逸なバトルアクションを通して描きます。
監督は第1作から監督を務めるウィルソン・イップが引き続いて本作を手掛けます。
キャストには第一作から主役のイップ・マンを務めるドニー・イェンのほか、前作『イップ・マン 継承』でブルース・リー役を果たしたチャン・クォックワンも登場。さらに中華総会会長ワン役に『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』などのウー・ユエ、アメリカ海軍軍曹バートン役に『ゼロ・ダーク・サーティー』などのスコット・アドキンスらが出演します。
さらに音楽を、『イップ・マン』シリーズ全作を手掛けた川井憲次が担当します。
映画『イップ・マン 完結』のあらすじ
1964年、愛する妻と死別したイップ・マン(ドニー・イェン)は、アメリカで暮らしているまな弟子のブルース・リーから招待され、彼が暮らすアメリカ・サンフランシスコで開かれる国際空手道大会への招待状を受け取ります。
しかし彼はその返事に躊躇していました。妻と死別し、息子のチンと二人暮らしをしていた彼でしたが、息子は反抗期を迎えて退学、その先行きを心配していました。
一方でイップ・マンは、その少し前に“がん”を宣告され、命の期限を意識し始めていました。そして改めてチンの将来を思い、その留学先を見つけるのにいい機会だと、渡米することを決意します。
詠春拳の道場を開いたブルース・リーと再会、チャイナタウンの中華総会の者たちと会い、そしてアメリカの学校をめぐるイップ・マン。
その中で、いつしか自分たちを偏見の目をむけるこの国の人たちと、この国を受け入れない中華総会との対立を知りながらも、彼は自らその争いに身を投じていくのでした…。
映画『イップ・マン 完結』の感想と評価
本シリーズで『宇宙最強』の名を欲しいままにしたドニー・イェン。その構え、木人椿(木製で人の身体を模した稽古器具)と向き合うスタイルは、すっかりカンフー映画のアイコンの一つとなった感もあります。
しかしこのシリーズでは、そのイップ・マンという一人の武術家が過ごした激動の時代を時期ごとに描いたものとなっています。そして作品ではイップ・マン自身や中国武術といった局所的なものより、より深いものをテーマとして扱っています。
これは2013年に公開された『イップ・マン 最終章』と比較すると非常に強く感じられることでしょう。この作品はドニー・イェン主演のシリーズとは全く関連なく作られた作品ですが、同じくイップ・マンの晩年の姿を描いています。
香港のアンソニー・ウォンが主演を担当したこの作品は、時期的には本作『イップ・マン 完結』のタイムラインと重なる、あるいは近い時代の設定なっています。
前者はどちらかというとイップ・マンという一人の男性の生涯そのものにスポットを当てたストーリーとなっていますが、これと対照的に本作は国と国との向き合い方を武術、そしてイップ・マンという一人の武術家の姿を通して描いています。
このスタイルは、日中戦争直後に日本の占領軍に虐げられながらもその運命と向き合う姿を描いた『イップ・マン 序章』、そしてイギリスの植民地となっていた香港で誇りを守った『イップ・マン 葉問』から続いたものとなっています。
三作目『イップ・マン 継承』ではどちらかとイップ・マンと彼を取り巻く人たちの人生に視点を置いたものとなり、少し視点が違って見えるところもありましたが、闇試合の元締めであるアメリカ人・フランクとの対立、そして同門の武術家・チョンと自らの威信を賭けて戦う姿には、シリーズにつながるものがありました。
本作では公民権運動が起こり社会的意識が変わりながらも、一方で偏見の意識がまだ根付いていたアメリカからの偏見、そしてそんなアメリカに対し、あくまで険悪な表情を示す中国武術会という二つの存在の間に立つイップ・マンがその間に立つ構図で物語は進みます。
そしてあくまで力でねじ伏せるというよりは圧倒的な存在感、誰にも太刀打ちできないと思わせるほどの神がかった雰囲気さえ漂わせる戦いぶりが、それぞれの立場にある人々の気持ちを動かします。
そういった部分には、この映画でさらに「なぜ中国には中国武術というものがあるのか」という根本的なテーマをも網羅しているようであります。
監督を務めたウィルソン・イップは、自身の作るアクション映画として最も重要なこととしてアクション自体よりそのシーンに「なぜ戦うのか」という理由を求め、感情表現こそを最優先すべきといわれているそうです。
主演を務めたドニーの表情は、シリーズを通してそれほど強い表情を見せておらず、かつバトルでも要所で寸止めを繰り返します。それゆえにイップ・マンが最後に下す渾身の一撃により揺さぶられる対戦相手の表情が非常に光り、武術、戦いの裏にみえる背景の中に広い奥行きを感じることができます。
この傾向はシリーズを通して一貫したスタイルが築き上げられるとともに磨かれた感もあり、このエンディングではイップ・マン、武術、そしてそれを取り巻く諸々のものが映像を越えて強烈な印象を残す、秀逸な作品として仕上げられています。
まとめ
中国の拳法をもとに日本に伝えられ、沖縄空手から全国に伝わった日本の空手では、基本的な理念として「空手に先手なし」という格言が今日まで伝えられています。
これは「自身から災いを起こすようなことはしない」という武術の基本理念を示したものといわれていますが、映像から見られるイップ・マンの戦いのスタイルは、華麗でありながらまさしくこの原点を踏襲したものとみることもできます。
秀逸なアクションシーンは、さすがにシリーズを重ねて貯えられたノウハウが遺憾なく発揮された感もあり大きな見どころとなっていますが、同時にそれは中国における武術の重要性を通して、普遍的なテーマを投げかけてくるものとなっています。
映画『イップ・マン 完結』は新宿武蔵野館ほかにて2020年7月3日(金)より公開!