映画『暁闇』は2019年7月20日(土)より渋谷ユーロスペースほかにて公開中!
「MOOSIC LAB 2018」長編部門で準グランプリと男優賞をW受賞し、韓国・全州国際映画祭でもインディーズ映画としては異例の招待上映が行われたことで注目を浴びた映画『暁闇』。
ある音楽を通じて出会い、互いが抱える孤独を共有しようとする少年少女たちの青春劇である本作が、2019年7月20日、ついに劇場公開を迎えました。
その公開を記念し、東京都内の渋谷ユーロスペースにて映画『暁闇』の公開初日舞台挨拶イベントが行われました。
イベントにはトリプル主演を務めた青木柚、中尾有伽、越後はる香をはじめ、共演者の若杉凩、芦原健介、石本径代、水橋研二、そして阿部はりか監督が登壇。
本記事では、映画『暁闇』公開初日舞台挨拶イベントの模様をお届けします。
CONTENTS
映画『暁闇』とは?
新進気鋭の映画監督と音楽アーティストによる作品制作企画を実現させる映画×音楽コラボレーションプロジェクトにして、若手映画監督の登竜門でもある「MOOSIC LAB」。
そして2018年、その長編部門にて準グランプリと男優賞を獲得したのが、阿部はりか監督の映画『暁闇』です。
それぞれに孤独を抱えながら日々をやり過ごしていた少年少女たちが、インターネット上で見つけたある一曲の音楽をきっかけに出会い、友情でも恋愛でもない、互いのを孤独を共有し合うとする姿を描いた青春ドラマです。
本作が初監督作となる阿部はりか監督が、ネット上においてカルト的な人気を誇る音楽アーティスト「LOWPOPLTD.」の楽曲からインスパイアを受けて制作した作品です。
メインキャストには、本作にて男優賞を受賞した青木柚、『クレイジーアイランド』の中尾有伽、『明日にかける橋』の越後はる香と、今後の日本映画界で活躍していく期待の若手実力派俳優が並びます。
映画『暁闇』公開初日舞台挨拶リポート
全力で作品と向き合った監督とキャスト
キャスト陣がそれぞれ一言挨拶を終えたのち、映画『暁闇』の魅力や撮影現場でのエピソードに関するトークがスタート。
これまで舞台演出を手がけてきたものの、映画作品としては本作が自身の処女作となった阿部はりか監督は、『暁闇』という作品を通じて自身が思っていたこと、言いたいことすべてを形にしようとしたとコメント。
そしてその理由には、本作に登場する少年少女のように自分から積極的に喋ろうとはせず、「自分が黙っておけば良い」と思い日々を過ごしてきた阿部監督が、そのような自身の現状に「大丈夫ではない」と感じたことがきっかけにあると明かしました。
コウ役を務めた青木柚
中学3年生の少年・コウを演じた青木柚は、舞台作品を含め、阿部監督は本作を通じて初めて「男の子」のキャラクターを自身の作品内で描いたことを告白。
そして、阿部監督自身も少なからず戸惑いを抱いていた中、コウが水橋演じる自身の父親を殴るシーンの撮影において演技が行き詰まり、「分からない」と感じてしまったことを明かしました。
しかし、撮影のリハーサルでも「揺さぶるもの」を見出すことができなかった青木に対し、阿部監督は撮影の本番前にこれまでに積み上げてきたコウの心情の流れを自ら説明。
その最中に感極まり思わず涙を零してしまう程、演出に対し全力であり続ける阿部監督の姿に、今までの俳優経験において遭遇したことのなかった出来事への驚きとともに、コウの心情に入り込めるようになったきっかけになったとコメント。
その後で撮影で見せた青木の感情移入の凄まじさは、共演した水橋、撮影を見守っていた周囲のスタッフ・キャスト陣が思わず心配してしまう程だったと明かし、心配をかけてしまったことを共演者たちに謝りました。
そして『暁闇』の撮影を経た後、青木は演じる役に対する感情移入がしやすくなったと明かし、自身の俳優としての成長を促してくれた阿部監督とその演出にはとても感謝していると語りました。
ユウカ役を務めた中尾有伽
ユウカ役を務め、阿部監督の舞台作品に出演した経験を持つ中尾有伽は、阿部監督の「舞台」での演出に慣れていたために、舞台のそれとは全く異なる「映像」での演出方法に当初は戸惑ってしまったと言います。
その一方で、「ともに作品を制作した」という経験のおかげでお互いの作品制作に対する情報共有は早く済み、その点においては長く悩まされることはなかったとコメント。
そして、本作を通じて他のキャスト・スタッフ陣と出会えたことへの喜びを語りました。
サキ役を務めた越後はる香
サキ役の越後はる香は、2019年5月に開催された韓国・全州映画祭における『暁闇』のインターナショナル・プレミア上映についても言及。
計3回の上映において最も多く鑑賞してくれた年齢層は若い世代であったこと、その中で計2回行われたスタッフ・キャスト陣によるQ&Aでも若い世代の方々からの意見を多く聞けたことが印象に残っているとコメント。『暁闇』という作品が持つ魅力が国を越え、作品内に登場するキャラクターと同じ若い世代に伝わったことへの感動を語りました。
また自身が初めて本作の脚本を読んだ際、「サキというキャラクターが自身の中にいなかった」と思えた程に。サキというキャラクターと彼女を演じる自身との間で共通項を見出すことができず、当初はサキを演じることに対し不安を抱いていたと告白。
けれども、脚本を読み込み続け、他のキャストと関わっていく中で「この役を演じたい」という思いが強くなってゆき、作品全体を通じて演技を続けた中で、探り探りではあるもののサキというキャラクターになれたと感じていると明かしました。
和やかな雰囲気だった撮影現場
トモコ役を務めた若杉凩
主演である青木とはこれまでにも度々共演してきたというトモコ役の若杉凩は、自身が印象に残っている撮影現場でのエピソードについて、本作の撮影現場の雰囲気は「良い意味でフワッと」していたことをコメント。
そして、それは完成した『暁闇』という映画の雰囲気とはかなり異なるものであったものの、完成した作品を鑑賞したのち、「ヨーイ、スタート」という阿部監督の声が響いた瞬間に現場の雰囲気は確かに変化していたに気づいたと、メリハリがありつつも非常に良い雰囲気の現場であったことを明かしました。
また、現場の雰囲気が非常に良かったという若杉の言葉には、サキの両親を演じた石本と芦原も同意。そして二人とも、やはり若杉と同様に完成した『暁闇』を観て驚かされたと語りました。
石本はその役柄ゆえに殺伐とした場面を演じることが多かったものの、カットがかかった瞬間にスタッフ・キャスト陣に笑みが戻ってしまう程に「和やかな雰囲気の現場」だったとコメント。そして完成した本作について、本当に温かい、自身にとっては救いのある映画だと感じられたと語りました。
芦原も、完成した本作から映画としての迫力を感じ取り、感動したとコメント。それと同時に、第一印象の時点では「こちらもフワフワしてしまう」程にフワフワとした空気を纏っていた阿部監督に対し「あんなにフワフワした人がこんなこと考えているの?」と少し怖くなってしまったと、阿部監督本人と映画『暁闇』での大きなギャップについて触れました。
映画が脚本を超えた瞬間
コウの父役を務めた水橋研二
青木演じるコウの父親役を務めた水橋は、自身の俳優としての出自が自主映画にあることに触れた上で、その頃の記憶を思い出せた現場であったと告白。
そして映画『暁闇』について、「良い意味で脚本を映像が超えている」作品であり、脚本だけでは想像できないものが潜んでいた作品であったとコメント。
映画には一つの画の中に様々なものが込められることでいわゆる“行間”を含めた脚本上の情報を超える瞬間があり、本作にはそのような瞬間を捉えた場面が多々あったと語りました。
映画から言葉を生み出してほしい
阿部はりか監督
舞台挨拶の最後、阿部監督は無事劇場公開を迎えた映画『暁闇』について、できる限り様々な方に観ていただきたいこと、そして鑑賞した映画に対する様々な言葉を私も聞きたいと願っているとコメント。
だからこそ、周りの方々やネット上に向けて、『暁闇』という映画に対し自身がどんなことを感じたのか、思ったのかを言葉という形にして発信・拡散してほしい。そして、観客が『暁闇』という作品から生み出してくれた言葉を見て、監督である自分は様々なことを勝手に感じ取り、嬉しくなるだろうと客席に伝えました。
そのような阿部監督の挨拶によって、レイトショーでの上映後ながらも満席となった『暁闇』初日舞台挨拶イベントは幕を閉じました。
映画『暁闇』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督・脚本・編集】
阿部はりか
【撮影】
平見優子
【音楽】
LOWPOPLTD.
【キャスト】
青木柚、中尾有伽、越後はる香、若杉凩、加藤才紀子、小泉紗希、新井秀幸、折笠慎也、卯ノ原圭吾、石本径代、芦原健介、水橋研二
映画『暁闇』のあらすじ
中学3年生のコウ(青木柚)は、何に対しても無気力な少年。自身が通う中学校で教師を務めている父親(水橋研二)が生徒たちからいじめを受けていても興味なさげに眺め、恋人であるトモコ(若杉凩)との間にもどこか距離があるような状況でした。
コウとは別の中学校に通うユウカ(中尾有伽)は、学校が終わるといつも街を徘徊しては、初対面の男たちと束の間の関係を持っていました。
ユウカの同級生サキ(越後はる香)は、不器用にすれ違う両親の狭間で行き場のない悲しさを抱えていました。
そんな3人は、インターネット上で公開されていたある音楽をきっかけに、導かれるように出会いを果たしますが…。
まとめ
レイトショーでの劇場公開ながら、公開初日における渋谷ユーロスペースの劇場内は満席となったことを踏まえると、公開前から作品に対する期待度が非常に高かったことは明らかである本作。
舞台挨拶での青木が触れていた通り、同時期に多くの魅力的な作品が公開されている中で、映画『暁闇』もまたその魅力的な作品の一つであり、決して見逃せない作品であることもまた明らかでしょう。
初日から最高のスタートを切ることができた本作は今後どのような反響を生み、作品を鑑賞した人々からはどのような言葉が生まれ、拡散・発信されていくのか。その動向にも注目です。
映画『暁闇』は2019年7月20日(土)より渋谷ユーロスペースほかにて公開中!