映画『暁闇』は2019年7月より全国順次ロードショー!
「MOOSIC LAB2018」長編部門にて準グランプリ・男優賞(青木柚)を受賞した、阿部はりか監督の映画『暁闇(ぎょうあん)』。
3人の孤独な少年少女たちがとある音楽を通じて出会う様を描いた映画『暁闇』が、2019年5月2日から開催中の韓国の全州(チョンジュ)国際映画祭ワールドシネマスケープ部門にて、インターナショナル・ プレミア上映を果たしました。
本記事では全州国際映画祭における映画『暁闇』上映の模様をお届けします。
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全州(チョンジュ)映画祭とは?
全州(チョンジュ)国際映画祭は2000年から韓国・全州にて始まった国際映画祭であり、2019年で20回目の開催となります。
全州は韓国映画発祥の地とも言われており、本映画祭は釜山映画祭、富川映画祭と合わせて韓国三大映画祭の一つとされています。
その中でも本映画祭は、作家性の強い作品が多く集まるのが特徴としており、アジアを代表するインディペンデント映画祭としても注目を集めています。
今回『暁闇』が招待されたのはワールドシネマスケープ部門。『ムーンライト』で知られるバリー・ジェンキンス監督の最新作 『ビール・ストリートの恋人たち』などのメジャー映画が並ぶ中、インディーズ映画としては異例の選出となりました。
映画祭での上映の様子
若年層を中心に注目された『暁闇』
映画祭には阿部監督のほかにも、キャストの中尾有伽、青木柚、越後はる香、音楽を担当したLOWPOPLTD.が参加し、オープニングを飾るレッドカーペットにも登壇しました。
全州国際映画祭において最大キャパシティを誇るCGV・スクリーン1にて2回の舞台挨拶付き上映が行われましたが、そのチケットはオンラインでの発売開始後すぐに即完売となるなど、本作の現地での注目度がどれほど高かったのかが理解できます。
そして上映に訪れた観客の多くが、若い客層を中心とする熱心な映画ファンでした。
「十代のリアル」を誇張なく描く
上映後に行われたQ&Aでは次々と質問が飛び交い、その中には「日本の青春映画に対し、ある種誇張されているのではないかと思えるほど暗く陰鬱としたテーマのものが多いような印象を持っているが、日本の10代はそのような社会的な問題を実際に抱えているのか?」という質問も挙がりました。
それに対し、阿部監督は「抱えていると思うし、少なくとも『暁闇』において自分の体験から離れたことは一切描いていない。むしろあなたと同様、十代の抱える問題を完全にひとつのモチーフとして切り離して描いている作品に出会うと、とても悲しくなる。」と、日本の十代が生きている孤独な現実、それに対する社会の不理解という日本のみならず多くの国々に共通する問題を訴えました。
そのほかにも、キャスト陣へのそれぞれが演じた役柄についての質問や、LOWPOPLTD.の音楽が「逆再生」をベースに作られていることにも言及されるなど、作品の細かい部分まで触れられた鋭い質問が飛び出しました。
大盛況のサイン会
上映および舞台挨拶の終了後は、全州国際映画祭出品のために制作されたポストカードの配布と、登壇メンバーによるサイン会が開催されました。
現地のスタッフたちも驚いてしまうほどの長蛇の列が作られ、阿部監督、青木柚、中尾有伽、越後はる香、LOWPOPLTD.は長時間に渡って、1人1人の熱い感想や質問に答えていきました。
映画『暁闇』(ぎょうあん)の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【脚本・監督・編集】
阿部はりか
【撮影】
平見優子
【音楽】
LOWPOPLTD.
【キャスト】
青木柚、中尾有伽、越後はる香、若杉凩、加藤才紀子、小泉紗希、新井秀幸、折笠慎也、卯ノ原圭吾、石本径代、芦原健介、水橋研二
【作品概要】
それぞれに孤独を抱えながら日々をやり過ごしていた少年少女たちが、インターネット上で見つけたある音楽をきっかけに出会い、友情でも恋愛でもない、互いのを孤独を共有し合うとする姿を描いた青春ドラマ。
本作が初監督作となる阿部はりか監督が、ネット上においてカルト的な人気を誇るバンド「LOWPOPLTD.」の楽曲からインスパイアを受けて制作した作品です。
映画『暁闇』のあらすじ
中学3年生のコウ(青木柚)は、何に対しても無気力な少年。自身が通う中学校で教師を務めている父親(水橋研二)が生徒たちからいじめを受けていても興味なさげに眺め、恋人であるトモコ(若杉凩)との間にもどこか距離があるような状況でした。
コウとは別の中学校に通うユウカ(中尾有伽)は、学校が終わるといつも街を徘徊しては、初対面の男たちと束の間の関係を持っていました。
ユウカの同級生サキ(越後はる香)は、不器用にすれ違う両親の狭間で行き場のない悲しさを抱えていました。
そんな3人は、インターネット上で公開されていたある音楽をきっかけに、導かれるように出会いを果たしますが……。
まとめ
全州国際映画祭ワールドシネマスケープ部門でのワールド・プレミア上映も、舞台挨拶やサイン会も含め大好評によって幕を閉じた映画『暁闇』。
日本の十代が抱える孤独と現実を描いた本作。韓国・全州国際映画祭での上映でも若年層の映画ファンが多く訪れたことは、やはり多くの国々において“十代が抱える孤独と現実”が共感と共有が可能なテーマであることを示しています。
そして、映画『暁闇』の舞台と同じく日本で暮らす十代が本作を観た時、どのような反響を得られるのでしょうか。
そのような視点からも、今後の日本での公開が非常に待ち遠しい作品です。
映画『暁闇』は2019年7月よりユーロスペースほか全国順次ロードショー!