日本初のマラソンは江戸時代に行われた「安政遠足(あんせいとおあし)」だった。
優勝すれば願いが叶う夢のマラソン大会が、藩の存亡をかけた戦いに変わる。行きはマラソン、帰りは戦。
『超高速!参勤交代』の土橋章宏が史実を基に書き下ろした『幕末まらそん侍』の原作をベースに、『ラストエンペラー』のジェレミー・トーマスと『おくりびと』の中沢敏明が、企画・プロデュースに参加。
監督は『不滅の恋/ベートーヴェン』のバーナード・ローズ監督。
国境を超えた最高のスタッフと豪華キャストで贈る、幕末エンタテイメント『サムライマラソン』を紹介します。
映画『サムライマラソン』の作品情報
【公開】
2019年(日本)
【原作】
土橋章宏「幕末まらそん侍」
【企画・プロデュース】
ジェレミー・トーマス、中沢敏明
【監督】
バーナード・ローズ
【キャスト】
佐藤健、小松菜奈、森山未來、染谷将太、青木崇高、木幡竜、小関裕太、深水元基、カトウシンスケ、岩永ジョーイ、若林瑠海、竹中直人、筒井真理子、門脇麦、阿部純子、奈緒、中川大志、ダニー・ヒューストン、豊川悦司、長谷川博己
【作品概要】
土橋章宏の「幕末まらそん侍」を原作に、『不滅の恋/ベートーヴェン』のバーナード・ローズ監督が映画化。
プロデューサーには『ラストエンペラー』を手掛けたジェレミー・トーマス。音楽担当は『めぐりあう時間たち』のフィリップ・グラス。そして衣装デザイナーは『乱』のワダエミ。アカデミー賞受賞スタッフが集結しました。
キャストには、佐藤健、小松菜奈、森山未來、染谷将太、長谷川博己、竹中直人と日本を代表する俳優たちが勢揃いです。
映画『サムライマラソン』のあらすじとネタバレ
時は嘉永6年。日本は、260年続いた鎖国が終わろうとしていました。黒船来航です。
献上品として異国の品を携えてやってきたペリー。対面する幕府家老の五百鬼祐虎(豊川悦司)。
モールス信号、ウィスキー、ピストル、見たこともない異国の品々は、日本にとって幸せをもたらすものなのか、それとも災いをもたらすものか、計り知ることは出来ません。
迫る異国の脅威に日本国中が不安を抱えていました。
安中藩主・板倉勝明(長谷川博己)は、開国に備え藩士を鍛えることを思いつきます。その案とは、藩士たちを集め十五里の道を走らせる「遠足」でした。
さっそく、藩士たちを収集します。「侍は強くなくてはならん。心と体を鍛錬せよ!遠足を行う!この遠足の勝者には望みを聞いてつかわす」と宣言します。
安中藩の藩士たちは、戦もなく穏やかな世にすっかり慣れていました。
安中藩家老の息子・辻村平九郎(森山未來)は、身分を鼻にかけた遊び人。藩主板倉の娘・雪姫(小松菜奈)に思いを寄せるも、叶わず。この遠足で勝って、雪姫を娶ろうと躍起になります。
勘定方のリーダー・植木義邦(青木崇高)は、腰痛持ちで遠足の参加にもやる気がありません。
足軽の上杉広之進(染谷将太)は、藩一の俊足の持ち主。遠足で勝って武士になり家族を楽させたい。優勝候補です。
遠足の前日、藩主の板倉から突然解雇された老侍・栗田又衛門(竹中直人)は、隠居する前にもう一花咲かせたいと、亡くなった友の息子と遠足に参加することを決めます。
勘定方の唐沢甚内(佐藤健)は、一見平凡な侍です。目立たず、恥をかかず、秀でず、酒で酔わず。真の姿は、幕府のスパイ。唐沢家は代々幕府の隠密でした。
急な藩主からの収集を不審に思った甚内は、江戸幕府へ密書を送ります。
しかし藩主の提案は、謀反でもなくただの「遠足」でした。誤った情報を流してしまった甚内は、急いで飛脚を追いかけますが、すでに関所を通った後でした。
江戸から刺客がやって来る。自分が身をもって止める覚悟で遠足に参加します。
そしてもう一人、遠足の参加を希望する者がいました。藩主板倉の娘・雪姫です。
雪姫はじゃじゃ馬姫で父をいつも困らせていました。絵画が得意が雪姫は、江戸で学びたいと思っていました。もちろん父は猛反対です。
遠足の前日に髪を切り城を抜け出しますが、関所を通ることが出来ません。民に成りすまし、遠足に参加することで関所を超えようと企んでいました。
それぞれの思惑が交差する中、遠足は開催されます。
私利私欲にまみれた者たちは、勝者の賭けのため金で解決をせまったり、ズルをし近道をしたりと散々たるスタートとなりました。
その頃、江戸幕府の五百鬼祐虎は、前々から面倒だと思っていた安中藩を潰しにかかります。
遠足で城から藩士たちが遠ざかる隙をつき、安中藩出身の刺客・はやぶさを送り込みます。
はやぶさを筆頭に荒くれもの達が安中城を目指しやってきます。それを手引きしていた者がいました。安中藩に紛れていた隠密は甚内だけではなかったのです。
映画『サムライマラソン』の感想と評価
これまでにはない時代劇!
外国人監督が撮った日本の時代劇映画というと、2003年公開エドワード・ズウィック監督の『ラストサムライ』を思い浮かべる方も多いことでしょう。
日本人よりも日本人らしい、侍よりも侍らしい、日本の時代劇を外から見るとこんな風になるのかと感心する映画です。武士道、わび・さび、忠義。凛々しく強いサムライの姿が特徴です。
方や、『サムライマラソン』のバーナード・ローズ監督は、イギリス出身。日本の映画界の巨匠・黒澤明監督を敬愛しており、侍たちの戦闘シーンでは黒澤映画を彷彿させる演出も登場します。
こちらは、時代劇特有のセリフ回しも気にせず、サスペンス、人間ドラマ、そしてスポーツの要素まで盛り込んだ幕末エンタテイメント映画となっています。
ジャパニーズ・サムライも人間。私利私欲で裏切ったり、叶わぬ恋に悩んだり、走ったり、殺陣はばらばら、時代劇として見ると少し違和感を感じます。
しかし、プロデューサーのジェレミー・トーマスをはじめ、音楽担当のフィリップ・グラス、そして衣装デザイナーにワダエミと、アカデミー賞受賞スタッフが集結したというスケールの大きさが随所に感じられます。
黒船来航のシーンでの幕府の武士の赤備えのカッコよさ、女たちの衣装のビビッドカラー、西洋の音楽が静かに武士の闘争心を盛り上げ、一気にラストまで駆け抜ける爽快感。まったく新しい日本の時代劇があります。
サムライの面々
映画『サムライマラソン』の見どころのひとつとして、日本を代表する俳優たちの生き生きとした演技が挙げられます。
主役の甚平役・佐藤健は、どこか陰のある隠密藩士を冷静沈着に演じ、老侍・栗田役の竹中直人は日本古来の「ナンバ走り」を面白おかしく披露します。若手もベテランもそれぞれのキャラで一丸となって映画に取り組む姿勢が伺えます。
佐藤健と青木崇高の『るろうに剣心』コンビの剣術のぶつかり合いも見どころです。隠密らしい小回りの利いた殺陣は息つく暇もありません。
そして何と言っても注目なのが、辻村平九郎役の森山未來です。肉体も精神も仕上がっていて、目が離せません。走る姿も、殺陣も泥臭いけどカッコイイ。遠山の金さん張りの片肌を脱ぎ黒馬にまたがる姿に惚れ惚れします。
まとめ
土橋章宏の「幕末まらそん侍」を原作に、『不滅の恋/ベートーヴェン』のバーナード・ローズ監督が映画化。日本を代表するキャストとアガデミー賞受賞スタッフが贈る幕末エンタテイメント映画『サムライマラソン』を紹介しました。
2020年東京オリンピックに向けて「いだてん」も盛り上がっていますが、日本史上初のマラソン大会と言われる「安政遠足」を題材とした映画『サムライマラソン』もぜひご覧ください。