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Entry 2020/07/15
Update

『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』考察ネタバレと感想解説。どんでん返しSFオムニバスドラマ|SF恐怖映画という名の観覧車111

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile111

先週に引き続き今回のコラムでもイギリスで高い評価と人気を誇るSFオムニバスドラマ「ブラックミラー」シリーズをご紹介。

今回のエピソードは『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』(2013)。

記憶のない状態で目を覚まし、理由も分からないまま覆面の男に追われるという極限の状態下を描いた本作の衝撃の展開をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

ドラマ『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』の作品情報

【公開】
2013年(イギリスドラマ)

【原題】
White Bear

【監督】
カール・ティベッツ

【キャスト】
レノーラ・クリクロウ、マイケル・スマイリー、タペンス・ミドルトン、イアン・ボナー、ニック・オフィールド

【作品概要】
「ブラックミラー」シリーズのメイン脚本家の1人であるチャーリー・ブロッカーによって執筆された脚本を、『リトリート・アイランド』(2011)のカール・ティベッツが映像化したセカンドシーズンの第2作。

『エジソンズ・ゲーム』(2020)や『ダウントン・アビー』(2020)などにも出演するタペンス・ミドルトンは本作での演技で高い評価を受けました。

ドラマ『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』のあらすじとネタバレ

大量のノイズと共に女性が目を覚まします。

部屋には大量の薬が散らばり、テレビには凹凸を組み合わせたような不思議な「記号」が表示されていました。

自身のことを全く思い出せず、リビングにあった子供の写真を見た時に時折記憶がフラッシュバックし、そのたびに彼女は苦しみます。

壁には17日までの日付に「×」マークが付けられたカレンダーがかかっていますが、その理由すら思い出せません。

リビングから外に出ると、近所の家から沢山の人が自分を見下ろしていることに気が付きました。

彼女は自分を見下ろす人たちに助けを求めますが、彼らはスマホで写真や動画を撮るばかりで何も話さず、また何もしてくれませんでした。

しばらくすると、近くにやってきた車の中から覆面をし猟銃を手にした男が彼女のもとへと向かってきました。

何も話さず追ってくる覆面の男から必死で逃げている間も、街で出会う人々は写真を撮るばかりで何もしてくれません。

ガソリンスタンドで物資を集める男女に助けを求めると、彼女たちは”何か”を知っていて、共にガソリンスタンドの中に逃げ込むことになりました。

しかし、覆面の男がガソリンスタンドへと押し入ろうとし、共に逃げ込んだ男性が覆面の男ともみ合いになっているうちに彼を見捨て「女」と共に逃げます。

外に隠れていると、覆面の男に撃たれ殺害される男性の姿が見えました。

ガソリンスタンドから離れると、現場付近にウサギの仮面を被り電動ノコギリを持った女性と、中世の騎士のような姿をした人間が現れ、明らかに危険な彼らに見つからないように2人は近場の家へと避難します。

何も覚えていない自分に、共に逃げる「女」は様々なことを教えてくれました。

ある日、突然画面に「記号」が映り、およそ9割の人々がデバイスで写真を撮るだけの「観察者」となってしまったこと、「観察者」に写真を撮られると数分で「ハンター」が来て「観察者」にならなかった人間を殺しているとのことでした。

さらに「ハンター」は「記号」の影響を受けなかった人間であり、多くの人間が「観察者」になってしまったことを良いことに、遊び感覚で殺人を楽しんでいる狂った人間たちだと聞かされます。

「女」は「記号」が電波に乗っていることから通信塔の無い南を目指しつつ、道中にある通信塔「ホワイトベア」を破壊すると言います。

「ホワイトベア」と言う言葉に聞き覚えがあり混乱した彼女は「観察者」に怒りを覚え、彼らのデバイスを奪い取りますが、「女」にデバイス越しにシグナルを受信してしまうと言われてしまいます。

しかし、そうこうしているうちにウサギの仮面の女と騎士の男が迫ります。

駆け付けた車に乗り逃げる2人でしたが、運転をする男に何故か見覚えがあり、行き先を聞いてもいないにも関わらず彼が森に向かうということも分かりました。

電波の届かない森につき、男は「観察者」には精神的に弱い人間がなると話します。

「じゃあ、あなたは?」と訊ねると、男は車から猟銃を取り出し彼女へと向けます。

彼こそが最初に彼女を追いかけた覆面の男でした。

男が2人を猟銃で脅し森の奥へと進ませると、森の奥には死んだ人間たちが木に縛り付けられていました。

男は電話で仲間を呼ぶと、電気ドリルを使い泣き叫ぶ彼女を殺そうとしますが、機転を利かせた「女」が猟銃で男を射殺。

男の車で「ホワイトベア」に向かう最中、彼女は少女ジェマイマと男の3人で、車でどこかへと向かった過去の記憶をフラッシュバックさせます。

「ホワイトベア」を燃やす計画を「女」から聞くと、彼女の「ホワイトベア」に対する不吉な印象はどんどんと大きくなっていきます。

「ホワイトベア」に辿り着き、通信施設の内部に入る2人。

しかし、すぐ直後にウサギの仮面の女と騎士の男が入り込み、もみ合いになります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』のネタバレ・結末の記載がございます。『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
彼女は騎士の男から猟銃を取り上げ、男に向かって発砲しますが、そこからは銃弾ではなくクラッカーのようなおもちゃが飛び出ました。

その直後、壁が開き、壁の向こうには大量の観客たちがこちらに向かって拍手していました。

ウサギの仮面の女と騎士の男、そしてここまで一緒に逃亡してきた「女や」死んだはずの覆面の男が観客に向かって挨拶をし、彼女を椅子へと縛り付けました。

司会者のような男が現れ、彼女に向って自分自身が何者かを教えてやると言います。

彼女は恋人の男と共に少女ジェマイマを誘拐し、森の中で男がジェマイマを惨殺する様子をカメラで撮っていた過去を持っていました。

少女の死後、遺体を燃やした2人は逮捕され、男は刑務所の中で死亡、彼女は「撮っていただけ」と言う証言を貫き通しますが、世論は彼女を許しませんでした。

ただ「撮っていただけ」の罪の重さを思い知ったかと司会者に問われる彼女。

司会者がスタッフに元の場所に戻せと命令すると彼女は透明なガラスケースに入れられ、大量の観衆の中、野次や投擲物を受けながら車で運ばれます。

辿り着いた先は、最初に目覚めたあの部屋でした。

頭に謎の装置をつけられ、自分で撮影したジェマイマ殺害の様子をテレビに流される女は泣き叫び、その様子を見終えた司会者は部屋から出ていきます。

全てを元通りにセッティングし、カレンダーの18日に×印をつける司会者。

翌日、「ホワイトベア・ジャスティス・パーク」には今日も大勢の客が訪れていました。

出演者たちは訪れた人に「観察者」の役をやってもらう前に、彼女に近づいてはいけないことや、話しをしてはいけないこと、そして楽しむことなどのルールを伝えます。

こうして、今日も時間通りに目覚めた彼女を使ったショーが始まるのでした。

ドラマ『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』の感想と評価

脚本家のチャーリー・ブロッカーの見た「ゾンビ映画の撮影の様子をスマホで撮影する小学生」が基となり製作された『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』。

日本でも海外でも大きな事件や事故の発生した場所には多くのやじ馬が集まります。

しかし、やじ馬的に集まった人の多くは事件や事故の被害者に救いの手を差し伸べることなく、自身の知的好奇心や承認欲求を満たすためその場に居ます。

そういった状況の奇妙さや恐怖を風刺している本作ですが、その「本質」は物語の終盤で一気に様変わりすることになります。

「撮っていただけ」の罪深さに対する不快感は誰しもが感じるはず。

しかし、不快感を感じていた人たちですら、正当化される理由さえあればそんな「撮っていただけ」の人間になるのだというメッセージを、驚きのどんでん返しと共に感じることの出来る秀作エピソードです。

まとめ

本作はイギリスで1963年に発生した「ムーアズ殺人事件」を彷彿とさせるエピソードであり、事件の詳細を調べることでより深く本作を感じることが出来ます。

「ポスト・アポカリプス」のような荒廃した世界を生き延びる作品に思わせ、衝撃的なオチを迎える『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』。

感情に訴えかけるような物語の多い「シーズン2」の中で、視覚的にも派手な本作は、手に汗握りたい人にオススメの作品です。

本シリーズはNETFLIXにて配信中、世界的に高い評価を受ける本シリーズをぜひ一気見してみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile112では、ブラックユーモアたっぷりに政治を風刺した『ブラックミラー シーズン2 時の”クマ”、ウォルドー』(2013)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

7月22日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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