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Entry 2021/01/29
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映画『Eggs 選ばれたい私たち』感想評価と解説レビュー。エッグドナーを志願した女性たちの“等身大の悩み”

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

映画『Eggs 選ばれたい私たち』は2021年4月2日(金)よりテアトル新宿、
4月9日(金)よりテアトル梅田ほかにて全国順次公開。

子供のいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)に志願した2人の女性。結婚も出産もしなくても「母になりたい」、「選ばれたい」そんな女性を描く人間ドラマ。

将来結婚する気も、出産する気もない独身主義者の純子とレズビアンで同棲していた家を出た葵。エッグドナー(卵子提供者)の説明会で偶然再会した従姉妹同士の2人は、社会から求められる女性像と実像のずれに悩み、次第に遺伝子上の母になることを望むようになります。

川崎僚監督自身の経験や体験も織り交ぜながら、自身の生き方に悩み、「社会に選ばれたい」と切望する女性たちのリアルな声を描いています。

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映画『Eggs 選ばれたい私たち』の作品情報

(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

【公開】
2021年(日本映画)

【監督・脚本】
川崎僚

【テーマ曲】
「あお」小林未季

【キャスト】
寺坂光恵、川合空、三坂知絵子、新津ちせ、湯舟すぴか、みやべほの、見里瑞穂、斉藤結女、荒木めぐみ、鈴木達也、生江美香穂、高木悠衣、森累珠、加藤桃子、すズきさだお、松井香保里

【作品概要】
短編映画『あなたみたいに、なりたくない。』(2019)などを製作し、本作が初長編映画となった川崎僚監督。自身の経験や体験を織り交ぜながら、社会から求められる女性像と実像のずれに悩む等身大の女性を描いています。

本作は2018年のタリン・ブラックナイツ映画祭で、コンペティション作品に選出されました。同映画祭の招待上映作品に『万引き家族』(2018)があり、日本の社会問題を取り扱った映画として注目されました。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』のあらすじ

(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

将来結婚する気もなく、子供も産む気のない独身主義者の近藤純子(寺坂光恵)は、子供を産まなかったことをいつか後悔するのかもしれないと考え、エッグドナー(卵子提供者)の説明会に行きます。年齢制限の30歳まであと数ヶ月しかない純子でしたが、説明を聞き、登録することにしました。

エッグドナーとは、子供のいない夫婦に卵子を提供するドナー制度のことです。プロフィールを登録して選ばれたら、法律がない日本では手術が出来ないので、ハワイやマレーシアなどの海外で卵子を摘出し、謝礼金がもらえます。

説明会の会場で純子は偶然従姉妹の矢野葵(川合空)と出会います。同棲していた恋人の元を出てきたと言う葵に、エッグドナーに登録したことを内緒にする代わりに居候させて欲しいと頼まれ、断りきれず純子と葵の奇妙な共同生活が始まりました。

同棲していた恋人が女性であり、葵がレズビアンであることを知った純子は「偏見はない」と伝えるも、ぎこちない空気になってしまいます。更に少しわがままな葵との共同生活はなかなか上手くいきません。

そんな2人でしたが、親戚から結婚や出産のことを言われ、生物学上の女性としての義理をはたせていないと感じていることで意気投合し、エッグドナーに選ばれたい、遺伝子上の母になりたいと願うようになります。

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映画『Eggs 選ばれたい私たち』の感想と評価

(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

結婚も出産もするつもりがない純子ですが、子供を産まなかったことを将来後悔するかもしれないと考え、その後悔を少しでもやわらげれればと考えエッグドナーに登録します。

葵もレズビアンであることから結婚、出産を諦めエッグドナーに。

性格も立場も違う2人ですが、親戚や親から“女性は結婚して子供を産むもの”という社会に押し付けられた女性の理想像に悩み、“生物学上の女としての務めを果たしていない後ろめたさを感じています。

その後ろめたさから純子は何年も実家に帰っておらず、両親のことも避けています。葵は自身がレズビアンであることを両親に言えずにいます。

更に、“女の子らしさ”を押し付けられ、自分が普通じゃないからと差別され、偏見の目で見られることに悩んでいます。

その背景にあるのは、やはり“女性は結婚して子供を産むものという呪縛、更に純子が痛いほど感じているのは30歳という年齢の期限です。

エッグドナーの年齢制限も30歳になっています。友人らと会食に出かけた純子は、同じ独身の友人が婚活をしている話を聞き、30代の独身は将来子供のことを考えてあまり選ばれないという話に、30歳という年齢の期限をひしひしと感じるのでした。

「産めるのに、産まない」彼女たちはエッグドナーを通して自分の遺伝子を残す、遺伝子上の母となることを希求していきます。

彼女たちが抱える後ろめたさや、エッグドナーに“選ばれたい”と思う気持ちは彼女たちだけではなく、現代の女性が抱える不安や生き辛さでもあるのかもしれません。

冒頭、エッグドナーを知ったきっかけ、志望する理由などを様々な女性たちが語る場面があります。

自己満足、謝礼金が欲しい、自分も将来お世話になるかも知れないと思い登録するなど理由は様々です。

2020年11月、不妊治療で卵子提供になどにより生まれた子の親子関係を定める法律が成立し、エッグドナーを必要とする夫婦がいることも実情です。

純子と葵を通して描かれる「産みたくない。けど、残したい。」と願う女性の実情を切り取った本作は、自分の生き方、親や世間などから求められる女性像に悩み、後ろめたさをも感じている女性たちにとって新たな選択や、生きる道を考える一作となることでしょう。

まとめ

(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

女性は結婚して子供を産むもの”という固定概念に閉塞感を感じ、自らの選択肢を狭めてしまったり、“生物学上の女としての務め”を果たせていないことに悩む純子と葵。

彼女たちはエッグドナーに登録し、“選ばれる”ことで遺伝子上の母になりたいと希求していきます。

2人を通して現代の女性が抱える社会に求められる女性像と実像のずれ、それを果たせないことに後ろめたさを感じてしまう、そんな等身大の悩みや葛藤を描いた映画『Eggs 選ばれたい私たち』は2021年4月2日(金)よりテアトル新宿、4月9日(金)よりテアトル梅田ほかにて全国順次公開予定です。

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