ハードなワンオペレーションに追いやられた女性が崩壊していく
A24スタジオ製作の映画『ワンオペレーション』が、2026年9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショーされます。
第75回ベルリン国際映画祭銀熊賞(主演俳優賞)、第83回ゴールデン・グローブ賞女優賞(コメディ/ミュージカル部門)受賞、第98回米アカデミー賞主演女優賞ノミネートなど、世界の映画祭・賞レースを席巻した衝撃作の見どころをご紹介します。
映画『ワンオペレーション』の作品情報

© 2025 Legs Film Rights LLC. All Rights Reserved.
【日本公開】
2026年(アメリカ映画)
【原題】
If I Had Legs I’d Kick You
【製作総指揮・監督・脚本】
メアリー・ブロンスタイン
【製作】
サラ・マーフィ、ライアン・ザカリアス、ロナルド・ブロンスタイン、ジョシュ・サフディ、イーライ・ブッシュ、コナー・ハノン、リッチー・ドイル
【製作総指揮】
ローズ・バーン
【撮影】
クリストファー・メッシーナ
【編集】
ルシアン・ジョンストン
【キャスト】
ローズ・バーン、エイサップ・ロッキー、コナン・オブライエン、ダニエル・マクドナルド、クリスチャン・スレーター、メアリー・ブロンスタイン
【作品概要】
本来は複数人で担うべき育児や家事、仕事を一人で背負う“ワンオペレーション“という現代社会の構造的問題を描いた、A24スタジオ製作のアメリカ映画。
『15年後のラブソング』(2020)のローズ・バーンが主演を務め、本作で2025年・第75回ベルリン国際映画祭で最優秀主演俳優賞(銀熊賞)、2026年・第83回ゴールデングローブ賞で最優秀主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を受賞、第98回アカデミー賞では主演女優賞にノミネートされました。
共演に、『天国と地獄 Highest 2 Lowest』(2025)のエイサップ・ロッキー、『トイ・ストーリー5』(2026)のコナン・オブライエン、『SKIN スキン』(2020)ダニエル・マクドナルド、『トゥルー・ロマンス』(1993)のクリスチャン・スレーター。
心理学の修士号を持つメアリー・ブロンスタイン監督が自身の実体験をもとに脚本を執筆し、俳優としても医師役で出演しています。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025)のサラ・マーフィに、『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』(2026)のロナルド・ブロンスタイン、ジョシュ・サフディらが製作を務めます。
映画『ワンオペレーション』のあらすじ

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原因不明の病を抱える幼い娘の世話をしながらセラピストとして働くリンダは、顧客の患者への対応や、娘の担当医からの叱責、長期出張中の口うるさい夫からの電話など、息つく暇もない日々を送っていました。
そんな中、自宅アパートの天井が突然崩落し、修繕が済むまで、娘とともに海辺の格安モーテルで暮らすことに。
誰にも頼れない孤独な状況に徐々に疲弊していく彼女は、思いもよらない事態にのみ込まれていくことに…。
映画『ワンオペレーション』の感想と評価

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本来は複数の人で分担すべき業務、育児、介護などを1人で担うことを強いられる“ワンオペレーション”。
この言葉自体は和製英語ですが、ここ数年では個人の力では解決できない、構造的な万国共通の社会問題として認識されています。
本作『ワンオペレーション』の主人公リンダは、セラピストとして悩みを抱える顧客のセラピーを担当しつつ、原因不明の摂食障害を患う幼い娘のケアに追われる日々を送っていました。
そんなある日、自宅アパートの天井の一部が崩落し、大きな穴から大量の水が流れ込む災難に見舞われ、やむなく娘とともに海辺の安モーテルに移り住むことに。
しかし、長期出張中の夫からのスマホでの口うるさい催促、娘の担当医からの叱責、天井の修繕業者との進まぬやり取り、さらにはモーテルフロントの横柄な接客に病院の駐車場係員の不愉快な態度などに、苛立ちを募らせていきます。
そんなワンオペ問題から生じるあらゆるストレスに疲弊していくリンダは、セラピストにもかかわらず同僚のセラピストに鬱憤をぶつけるのですが、実は監督・脚本のメアリー・ブロンスタイン(医師役としても出演)は心理学の修士号を有し、病院で子どもを対象としたプレイセラピーの経歴を持ちます。
加えて、重病の娘と一緒にモーテルで暮らした体験もあるという監督は、「この作品は、事実に基づく自伝映画ではまったくない。
けれど、描かれていることはすべて、感情的には真実」と語るように、リンダを自身のアルターエゴ(分身)として描いています。

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本作で注目したいモチーフが2つあります。1つは「管」。
リンダの娘は、一貫して画面の外に置かれており、声は聞こえるものの、その姿が映されることはほとんどありません。代わりに映し出されるのは、ぐるぐると巻かれたビニール製の栄養管です。
摂食障害の娘にとっては栄養を補給する命綱ですが、昼夜問わず管に粉ミルクを足す作業をしなければならないリンダとっては、縛り付ける縄のメタファーといえます。
そしてもう1つは、「穴」。
アパートの天井に突如として開いた穴は、ありふれた現代生活のトラブルにして、ワンオペに疲れたリンダの心の空虚であり、すべてを吸い尽くす空間であり、そして空想への入り口でもあります。さらに言及すると、栄養管を通すために空けられた娘のお腹の「穴」にも、大きな意味があるのです。
どんどんとアイデンティティが崩壊していくリンダの姿は、あまりにも悲惨すぎてコメディの域にも達していきます。少し前に日本公開された『ドラマなふたり』同様、A24が得意とするトラジコメディのお手本と言えましょう。
まとめ

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本作の原題『If I Had Legs I’d Kick You』(私に足があったら、あなたを蹴り飛ばすのに)とは、監督のブロンスタインが大学時代に突然頭に浮かんだ言葉。
本編内容とは直接の関連性はない言葉だというものの、ワンオペに疲れ切ったリンダが発したとすれば、とても意味ありげに聞こえます。
母親として、そして妻として、抱え続けてきた重圧に押しつぶされ、疲労と混乱の極致に達したリンダは、はたして救われるのか?
彼女に待ち受ける衝撃的なクライマックスを、是非ともその目で確かめてください。
映画『ワンオペレーション』は、2026年9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー。
松平光冬プロフィール
テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。
ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューのほか、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)





































