最初はママの元へ帰省するだけのつもりだった――
『へレディタリー 継承』(2018)、『ミッドサマー』(2020)のアリ・アスター監督とA24スタジオ製作による映画『ボーはおそれている』が、2024年2月16日(金)より全国順次ロードショー。
怪死した母親のもとへ、帰省しようとした男が、奇想天外な旅へと巻き込まれていく様子を描く、超一級のスリラーを、『ジョーカー』(2019)、『ナポレオン』(2023)のホアキン・フェニックス扮する中年男が演じています。
共演に『プロデューサーズ』のネイサン・レイン、『ブリッジ・オブ・スパイ』のエイミー・ライアン、『コロンバス』のパーカー・ポージー、『ドライビング・MISS・デイジー』のパティ・ルポーンという、豪華キャストで贈る、予測不可能スリラーの見どころをご紹介します。
映画『ボーはおそれている』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
Beau Is Afraid
【製作・監督・原案・脚本】
アリ・アスター
【共同製作】
ラース・クヌードセン
【製作総指揮】
レン・ブラバトニック、ダニー・コーエン、アン・ロアク
【撮影】
パベウ・ポゴジェルスキ
【編集】
ルシアン・ジョンストン
【キャスト】
ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、パーカー・ポージー、パティ・ルポーン
【作品概要】
『へレディタリー 継承』、『ミッドサマー』の鬼才アリ・アスター監督が、オスカー俳優ホアキン・フェニックスを主演に迎えて放つスリラー。怪死した母の元へ帰省しようとした男が予測不能な事態に巻き込まれていく姿を、奇想天外に描きます。
アスターはプロデューサー、原案、脚本も兼任し、映画会社A24が『へレディタリー 継承』、『ミッドサマー』に引き続き製作を担当。
共演は『プロデューサーズ』(2006)のネイサン・レイン、『ワース 命の値段』(2023)のエイミー・ライアン、「DUNE デューン 砂の惑星」シリーズ(2021~24)のスティーブン・マッキンリー・ヘンダーソンなど。
マーティン・スコセッシ、ギレルモ・デル・トロ、ポン・ジュノといったオスカー監督に、オスカー女優のエマ・ストーンなどの錚々たるフィルムメーカーたちが、こぞって支持を表明しています。
映画『ボーはおそれている』のあらすじ
日常のささいなことでも不安になってしまう中年男ボー・ワッセルマン。ある日彼は、数日前に電話で会話したばかりだった母のモナが急死したことを知ります。
母の元へ駆けつけようと自宅アパートを出ようとするボー。ところがそこはもう、“いつもの日常”ではなくなっていました。
その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの帰省はいつしか壮大な旅へと変貌していき…。
映画『ボーはおそれている』の感想と評価
『へレディタリー 継承』、『ミッドサマー』と予測不能なスリラーを次々と発表してきたアリ・アスター監督と映画スタジオA24が、三度タッグを組んだ本作『ボーはおそれている』。
友人も恋人もいなく、荒廃したアパートで孤独に暮らす主人公ボーは、不安と妄想に憑りつかれて情緒不安定となっており、精神科医のセラピーを受けています。そんな彼の住む町には暴力がはびこっており、一歩でも外に出ると危害を加えられかねません。
アスターの過去作同様、この冒頭シーンだけで本作が一筋縄ではいかぬ内容だということが察せますが(ボーのキャラクターは、アスターの2011年の短編『Beau』に起因する)、そんなボーは心の拠り所としていた母モナに顔を見せに行こうと考えていた矢先、彼女が突然死したことを知ります。
アスターにとって“母親”は重要なモチーフです。『へレディタリー 継承』、『ミッドサマー』のいずれも、姿こそ現さないものの、母親の存在は主人公に大きなトラウマを与えていました。
単なる再会のつもりだったはずが一転し、母の死の真偽を確かめることとなったボーでしたが、その帰路は想像を絶するものでした。
都会から郊外、そして地方へと、本人の意思に反して移動「させられ」ていくボー。それは現実か妄想かの区別もつかず、時おり挿入されるフラッシュバック(回想)も複雑に絡み合うことで、観る者に混乱と不安を与えます。
母親との複雑な親子関係に囚われた、いわゆるエディプス・コンプレックスを抱えるボーを演じたのは、『ジョーカー』でオスカー俳優の仲間入りを果たしたホアキン・フェニックス。監督のアスターは、俳優候補のリストアップをした当初は、彼が興味を示すとは思っていなかったそう。
しかし、『ナポレオン』の出演契約を交わして間もなかったホアキンはボーの役を気に入り、出演を快諾。製作前も製作中も数え切れないほど脚本を熟読し、アスターと共同でボーの容姿や声などのキャラクター創造に着手しました。
体を張った危険なスタントの大半も自らこなしたというホアキンに、アスターは「どんな時もキャラクターをできる限り体現したい俳優。彼は謙虚で、全力で役に臨んでくれた」と最大級の賛辞を贈っています。
まとめ
一般公開に先駆けて日本で行われた試写会にて、「あなたにとって家族とは?」との問いに「煩わしくて、終わりのない義務感」と答えたアスター監督。この言葉が、本作『ボーはおそれている』のすべてを物語っています。
はたしてボーは、怪死したとされる母の元へとたどり着けるのか?そして、彼に待ち受ける予想だにせぬ結末とは?おそらく、一度観ただけでは、内容をすべて把握することは不可能かもしれません。
かといって「訳が分からない」と怒る必要はありません。なぜならアスターはこうも言っています。「これはスリラーじゃなくコメディだから」
ボーに降りかかる数々の受難は、本人にとっては悲劇でも、他人からすれば喜劇。そういう点で本作は、トラジコメディ(悲喜劇)です。
「今までに手掛けたどの作品よりも僕らしい作品。僕の個性とユーモアがたっぷり詰まっているよ」と言うアスターからの2時間59分の挑戦状を、あなたも受けてみてはいかがでしょうか。
映画『ボーはおそれている』は、2024年2月16日(金)より全国順次ロードショー。