同名戯曲を『そばかす』(2022)の⽟⽥真也監督がオダギリジョー主演で映画化
『美しい夏キリシマ』(2003)の脚本などで知られる長崎出身の松田正隆の戯曲を『そばかす』(2022)の⽟⽥真也監督が映画化。
主演を務めたオダギリジョーは、共同プロデューサーも務めました。
雨が降らず、からからに乾いた夏の長崎。幼い息子を亡くした喪失感を抱え、妻の恵子とは別居中で働いていた造船も潰れ、次の職も見つけられていない小浦治。
そんな治の元に、突如妹の阿佐子が訪ねてきて、しばらく17歳の娘の優子を預かって欲しいと言います。困惑したまま愛を失った治と愛されることを知らない優子の一夏の共同生活が始まります。
共同プロデューサーも務めたオダギリジョーが主演を務め、『ファーストキス 1ST KISS』(2025)の松たか子、『ラストマイル』(2024)の満島ひかり、『夜明けのすべて』(2024)の光石研などベテランが顔を揃えました。
さらに、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで話題となり、2025年度後期NHK連続テレビ小説のヒロインに抜擢された髙石あかり、『少年と犬』(2025)の高橋文哉と新鋭が出演。
映画『夏の砂の上』の作品情報

(C)2025映画「夏の砂の上」製作委員会
【日本公開】
2025年公開(日本映画)
【監督、脚本】
玉田真也
【原作】
松田正隆
【プロデューサー】
甲斐真樹
【共同プロデューサー】
オダギリジョー
【撮影】
月永雄太
【照明】
秋山恵二郎
【キャスト】
オダギリジョー、髙石あかり、松たか子、森山直太朗、高橋文哉、篠原ゆき子、満島ひかり、斉藤陽一郎、浅井浩介、花瀬琴音、光石研
【作品情報】
『美しい夏キリシマ』(2003)の脚本などで知られる長崎出身の松田正隆の戯曲を『そばかす』(2022)の⽟⽥真也監督が映画化。
『夜明けのすべて』(2024)に参加した撮影の月永雄太、照明の秋山恵二郎が参加。長崎の街並みを詩的に映し出します。
オダギリジョーが主演を務め、他のキャストには『ファーストキス 1ST KISS』(2025)の松たか子、『ラストマイル』(2024)の満島ひかり、『夜明けのすべて』(2024)の光石研など。
映画『夏の砂の上』のあらすじとネタバレ

(C)2025映画「夏の砂の上」製作委員会
雨が一滴も降らない、からからに乾いた夏の長崎。
幼い息子を亡くし、妻の恵子と別居中の小浦治。造船所の仕事もなくなり、ハローワークにも行かず幽霊のようにただ生きている治の元に妹の阿佐子が、17歳の娘・優子を連れて訪ねてきます。
「この子しばらく預かってくれない」
博多で店をやらないかと誘われたが、住む家もないのでしばらくの間面倒を見てほしいというのです。
「犬や猫を預けるんじゃないんだ」と勝手に話を進める阿佐子に治は動揺しますが、言いくるめられてしまいます。さらに優子のバイト先も決めてきたと言います。
スーパーで働き始めた優子に対して先輩の立山が何かと気にかけ、「今度飲み会があるから来ないか」と誘います。
一方で、女性の先輩からは「嫌だったら言っていいからね」と言われます。立山がなぜ自分を気にかけるのか分からない優子はどうして自分に構うのかと聞きます。
すると立山は「気になっている、好きかもしれん」と言います。更に、「川上さんも俺のこと好きだと思った」と言うのです。
優子は立山と出かけ、そのまま家に連れてきます。その頃治は、かつて共に造船所で働いており、今はタクシーの運転手として働いていた持田が事故で亡くなったという連絡を聞きます。
呆然と葬式の会場に向かった治に、かつての同僚・陣野にまずは喪服に着替えてくるように言われます。そんな治に話しかけてきたのは陣野の妻でした。
治は、陣野と妻の関係を何となく気づいていても触れずにいました。そんな治に詰め寄る陣野の妻を陣野が落ち着かせ、治は喪服に着替えるために一旦家に帰ります。
治はまだ帰ってこないと思っていた優子は、立山と行為をしようとしていたところでした。慌てて服を整えていたところに治が帰ってきます。
「今日はもう帰りなさい」と構う余裕のない治はそう言って喪服に着替えます。優子は治の言うことを聞かず、立山を連れて2階に上がります。
そこに恵子も喪服を取りに来ます。治は、恵子に衝動をぶつけるかのように襲いかかり、恵子は拒否して乱闘になります。
物音に驚いた優子が立山と一緒に降りてくると治は、「まだいたんか、帰れ」と言って投げやりに外に出て行きます。優子は呆然としたまま恵子に「大丈夫?」と尋ねます。
「優子ちゃんファスナーあげてくれる?」と恵子は言います。
映画『夏の砂の上』の感想と評価

(C)2025映画「夏の砂の上」製作委員会
冒頭土砂降りの長崎から始まり、カンカンで照りの乾いた長崎の様子が映し出されます。
気だるそうにタバコを吸う小浦治は、幼い子供を失い、妻とは別居中。造船所の仕事もなくなり、新しい職を見つけることもせずただ日々を生きているだけでした。
愛を失い、先に進むこともできない、そんな治の姿は、造船所がなくなり活気を失った街の姿とも重なっているかのようです。
妻の恵子はそんな治に付き合いきれない、もう終わりだと感じていても、長年共に過ごした情から見捨てきれずにいます。しかし、陣野と不倫関係にあり、治とのことを忘れて先に進みたいという気持ちを抱えていました。
そんなところにやってきた優子は、愛されることを知らず、愛を求めようともしない、全てを諦め虚な瞳をしていました。
様々な“飢え”を抱える登場人物たちの心情を、雨が降らず乾いた長崎と重ねて描き出します。美しい街並みと多くを語らず表情で見せる演技がグッと観客の心を掴んでいきます。
オダギリジョー、松たか子、満島ひかりなどベテランが様々な思いを抱えながらも生きる人々の重みを醸し出すなか、存在感を放っていたのは優子を演じた髙石あかりです。
母に連れられやってきた優子は、母が強引にスーパーのアルバイトを決め、治の元に勝手に預けます。しかし、それに対して文句を言うこともなく、虚な目で受け入れます。
そんな優子に惹かれる立山は等身大の大学生で、優子が抱えている複雑な思いに気づくこともなく、純粋に2人の未来を思い描いています。
しかし、優子にとって長崎での生活はいつか終わる、自分はこの人たちの前からいつか消えるという思いを持ちながらでの生活でした。
心の深いところまで見せ合う関係性を築くことも知らない優子は、治の心の傷に触れて、その傷に共鳴し、支えてあげたいという思いを抱き始めていました。
愛することを知らない優子が、誰かの心に触れようとするその姿に優子自身の成長と心が解けていく姿を見ることができます。
一方で、優子との生活は愛を失った治にとって忘れかけていた感情を思い出させてくれるような生活だったでしょう。
本作は決して大きな出来事があるわけでもなく、終わりも治が生活に戻っていく姿で終わっています。しかし、それが映画の冒頭の治とは違う、どこか前向きな感情が感じ取れるはずです。
まとめ

(C)2025映画「夏の砂の上」製作委員会
監督を務めた玉田真也は、映画だけでなく自身が主催する劇団「玉田企画」 のすべての作品で作・演出を担当しています。初監督作となった『あの日々の話』(2019)は、自身が手がけた劇の映画化でした。
その後、又吉直樹の小説を映画化した『僕の好きな女の子』(2020)や、Aセクシャルの主人公を描いた映画『そばかす』(2022)の監督を務めました。
そんな玉田監督の作品の魅力はなんと言っても等身大のキャラクターでしょう。
人は複雑な感情を抱えているものです、頭では分かっているつもりでも、受け入れられないことは生きていたら何度も直面します。
そんな人々の不器用さ、ままならなさを多くを語りすぎることなく演出しているからこそ、そこに等身大のリアルさが生まれるのです。
脚本に惚れ込んでプロデューサーとしても携わったオダギリジョーは、役者としてキャリアを重ねてきたからこその円熟味、佇まいで無気力さと乾きを見事に体現していました。
また、言葉は少ないけれど内面の葛藤、今までどのように生きてきた人なのかを感じさせる松たか子の演技も見応えがあります。
冒頭と最後にしか登場しない満島ひかりもその場の空気を自分のものにしてしまうような存在感が役にマッチしていました。
そのようなベテランの醸し出す空気があった上で、少しずつ感情を露わにしていく髙石あかり演じた優子の魅力や、大学生らしい青さを感じさせる高橋文哉の演技が生きてくるのです。




































