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Entry 2023/08/06
Update

【ネタバレ】パラダイス人生の値段|あらすじ感想結末と評価解説。近未来では‟長生きの秘訣”が格差社会の乖離を大きくする|Netflix映画おすすめ138

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第138回

今回ご紹介するNetflix映画『パラダイス 人生の値段』は、そう遠くはない未来のドイツが舞台です。その世界では自分の人生(時間)を提供したり、移植することが可能になっています。

しかし、その革新的な技術は1つの巨大な企業AEONが管理し、社会的に深刻な影響を及ぼしています。貧困者が人生を切り売りし、自分の夢を叶えようとすること、長生きできるのは特殊な才能がある者や富裕層に偏っていたからです。

AEONで優秀なセールスマンをしていたマックスは、医師のエレンと裕福な結婚生活を送っていましたが、予期せぬことで巨額な借金を抱えてしまいます。

ところが借金を返済するために、融資を受ける時に掛けていた担保エレナの寿命40年分を提供することになってしまい、マックスはエレナの失われた寿命を取り戻そうと奔走しますが、破滅へと向かっていきます……。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『パラダイス 人生の値段』の作品情報

(C)2023 Netflix

【日本公開】
2023年(ドイツ映画)

【原題】
Paradise

【監督】
ボリス・クンツ

【脚本】
サイモン・アンバーガー、ピーター・コチラ

【キャスト】
コスティア・ウルマン、コリンナ・キルヒホッフ、マルレーネ・タンチク、イリス・ベルベン、リサ・マリエ・コロール、ローナ・イシェマ、ヌーマン・アチャル、アリーナ・レフシン、トム・ベッチャー、ギゼム・エムレ、リーサ・ローベン・コングスリ

【作品概要】
マックス役には『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』(2017)のコスティア・ウルマンです。

妻のエレナ役は若いエレナをマルレーネ・タンチク、老いたエレナをコリンナ・キルヒホッフが演じました。また、ソフィー・タイセン役は『逆転のトライアングル』(2023)のイリス・ベルベン、若返ったソフィーをアリーナ・レフシンが演じます。

共演にはハリウッド映画にも進出している、ヌーマン・アチャルやリーサ・ローヴェン・コングスリが出演しています。

映画『パラダイス 人生の値段』のあらすじとネタバレ

(C)2023 Netflix

提供してくれる時間に応じて、高額な報酬を支払うという「時間提供プログラム」と称した、ビジネスを展開する“AEON”のCMが街にあふれています。

実年齢は若いのに見た目には老化している“ドナー”は、人生の一部を売りその報酬で自分の夢を実現しています。移植を求める“レシピエント”に自分の命を提供するのがこのビジネスです。

薄暗い家の中で若者が「せいぜい5年位かと思っていた」と、マックスという男が70万ユーロの報酬で、15年間の時間を寄付するという提案を持ちかけます。

マックスは“提供”という言葉は使わず、“寄付”と言って抵抗を払拭しているようでした。若者は家族とともに難民キャンプに身を寄せていました。

両親はそこを出てレストラン経営の夢を抱いていますが、レストラン経営するどころか、難民キャンプを出るための、ビザの取得さえお金がないとできません。

マックスは自分もドナー登録した報酬で、大学の学費にあてたという経験を話し、70万ユーロあれば難民キャンプを出て、お父さんの夢も叶うとドナー登録を勧めました。

マックスは“AEON”のセールスマンで、貧困で喘ぐ難民キャンプの人々をターゲットに、自らの人生を高額で寄付するよう募っていました。

若者はDNA検査をし契約を交わしました。マックスは彼の家を後にすると、会社のスタッフから早く帰社するよう言われます。

難民キャンプを出て列車に乗ると、真新しいスマートフォンを手にして喜ぶ家族連れ、若者もいます。車窓からコンテナを住居代わりにする、広大な難民キャンプが見え通り過ぎていきました。

下車して外に出るとマックスは使い捨てのヤッケを着ます。そこに待ち構えていたのは、群衆はAEONベルリン本社前で“時間の売買”に反対し「私の時間は私の物」などと書かれたプラカードを持った群衆でした。

ゲート前には武装した警備がつき厳戒態勢です。その本社内に入っていくマックスに、群衆は汚い言葉とカラーボールを投げつけました。

その日はAEONの総会が行われ、業績に貢献した研究者や社員に憲章が与えられる日でした。マックスはそこで年間最優秀セールスマン賞を受賞しました。

そして、寿命移植の立役者であり、最高経営責任者(CEO)のソフィー・タイセンが壇上に登場し受賞者を称えました。

彼女は類まれな天才が短命であることを嘆き、彼らが長寿だったら世界に与えた“社会貢献”は絶大だっただろうと語ります。

彼女は現代と未来のノーベル賞受賞者が、寿命移植を希望する“レシピエント”であり、続々と若返りが成され、科学の研究継続が可能になったと宣言します。

ソフィー・タイセンの理想は年齢と死から支配された人生ではなく、成し遂げられない夢がなくなり、人類に平等な幸福を与えることができると演説します。

しかしその頃、寿命移植を施術した15人の科学者が入院している施設で、看護師の1人が移植を受けた15人を殺害する事件がおきます。

犯行を実行したのは、アダム・グループと呼ばれるテロ組織に加入していた看護師です。タイセン財団に対する抗議のテロ襲撃でした。

アダム・グループの主宰は「時間の提供」という理念が平等の原理を阻んでいると、真っ向から反論し時間を商品化することは、人間を家畜化していく未来に繋がると、寿命移植を受けた人間を抹殺すると宣言します。

総会が終わりマックスは自宅の高級マンションに帰り、ディナーの準備をして妻のエレナを待ちました。

今の住まいは医師をしているエレナが購入したものです。マックスは年間最優秀セールスマン賞を受賞して、浮かれ気味にエレナに海辺にも家を買おうと言います。

エレナは今の住まいのローンも残っているから無理だと答えますが、将来子供ができた時に価値のある選択だったと思えると説得します。

週末2人はエレナの両親に会いに行きます。人里離れた森に暮らす両親の父親は、AEONの寿命提供事業に異論があったため、マックスに対しても辛辣でした。

そんな両者を上手く取り持とうとエレナはマックスを諭しますが、「いつもお義父さんの味方だ」と拗ねるありさまです。

マックスの生活は順風満帆に見えましたが、帰宅した2人に悲劇がおきます。自宅のマンションが炎に包まれています。しかも激しく燃えている階は2人の家でした・・・。

以下、『パラダイス 人生の値段』ネタバレ・結末の記載がございます。『パラダイス 人生の値段』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2023 Netflix

マックスとエレナの家は全焼してしまいます。彼女は顧問弁護士を通し保険会社の補償を確認しますが、部屋で使っていたキャンドルの灯が火元と判断され、保険金が支払われないと知り愕然とします。

それが何を意味するのか・・・全焼しても家のローンは残り、その金額は250万ユーロという莫大なものであり、返済を迫られることになります。

ところが悲劇はさらに残っていました。銀行から融資を受けた際に万が一、返済が不可能になったときの担保として、エレナは寿命を40年分かけていました。

マックスはそのことを知らされておらず驚愕します。とっさに自分がなんとかすると言いますが、エレナは自分で選択した責任を自分で取っただけだと、マックスに自分に関わらないよう告げます。

それでも諦めないマックスはエレナのために奔走し、偶然AEON社でタイセンCEOと会い、エレナの時間をなんとか取り戻せないかと相談すると、タイセンは何かできる方法を考えてみると告げて去りました。

AEONの取締役員会で議題に上がったのは、AEONの業績低迷の案件でした。利益の大半が研究費に当てられていることと、少数派のまれな遺伝子のドナーに、偏りすぎているからだと指摘されます。

その晩、警官に囲まれたエレナは、逃走の懸念があると告げられ拘束されてしまいます。そして、成すすべもなく彼女の人生の38年が差し押さえられる時がきました。

エレナは手術台の上で「助けて」と警備員に懇願しますが、拘束されその時を迎えます。隣りの部屋には、移植を受ける患者が同じように手術台にいました。

意識が朦朧となるエレナの脇腹には3本の針が刺され、眠っている間に手術は終わり、マックスはエレナを借り住まいに連れて帰ります。

急激に40年という長い時間を搾取された彼女の身体は 老化も急激に進行し、鏡を見るたびにエレナは悲しみに打ちひしがれます。

マックスはAEONの同僚からタイセンからメッセージがあると呼び出され、本社に向かいますがそれは彼が期待する話ではありませんでした。

AEONを辞めることに決めたマックスは、帰り際にタイセンの姿を見て追いかけます。彼は護衛に制止されますが「約束が違う」と叫ぶと、タイセンは少しだけ彼の方に振り向きます。

タイセンは初めて会った時よりも、肌つやがよく若返って見えマックスは驚愕します。成す術を失い部屋へ帰ったマックスは、老いてもエレナへの愛を言葉にします。

ところが疑心暗鬼なエレナの八つ当たりから、2人はケンカとなりマックスは部屋を出て行きます。

しばらくしてエレナは腹部に激痛を覚え、バスタブで身動きが取れなくなっていました。マックスは彼女を見て狼狽え、彼女が務めていた病院に搬送します。

エレナの同僚の看護師は彼女が流産したと告げます。40歳も老化したことや施術後に適切なケアをしないまま、性急に退院したことが原因だろうと言います。

そして、エレナは退院するとともに両親の元へ帰ってしまいました。マックスが元のアパートへ戻ると、広場で麻薬の売買をする幼い少女をみつけます。

少女がタバコを買い喫煙を始めると、マックスは直感的に少女が若返りの施術を受けたのだと分かり、彼女にベビーフェイスをどこで手に入れたかと聞きます。

AEONは富裕層しか顧客がおらず、麻薬の売人がAEONで施術できないことを知っているからです。マックスは少女から情報を聞き出して、エレナを若返らせようと決めます。

それはリトアニアにいるベルクという医師も、時間移植の技術を持っているということでした。マックスは6万ユーロ送金し、ベルク医師と会う約束を取り付けます。

クリニックの場所は極秘で国境を越えなければ、知らせないシステムになっています。しかも、場所を特定してから有効期限が6時間です。

マックスは難民キャンプの闇市で、プリペイド携帯と偽造パスポート、武器などを入手して準備を整えました。

ニュースではAEONを襲撃したテロ組織アダムのリーダー・リリスを国際手配したことを伝えています。

リリスの主張は受刑者が人生と引き換えに、減刑していることを指摘し、AEONが公共事業とみせかけ、司法制度を私物化していると訴え、移植者は直ちに処刑すると宣言します。

一方マックスは若返っているタイセンを見てから疑惑を持ち始め、彼女を誘拐しエレナの時間を取り戻そうと動き始めます。

マックスはタイセンの専用車を尾行し、墓所に出向き1人になったタイセンを襲います。振り向いた彼女は見違えるほどに若返った姿でした。

タイセンの誘拐に成功したマックスは、エレナが職場復帰した病院に行きます。現実に向き合う事にした彼女は、マックスにもそうするよう諭しますが、彼は解決策がみつかったと持ちかけます。

マックスはソフィー・タイセンがエレナから40年を奪ったといい、彼女を連れてドイツを出れば2人でやり直せると話します。

ところがタイセンを護衛するチームは、警察へも通報せず違法のソフトウェアを駆使し、マックス達の追跡を開始します。

偽造パスポートで空路での国境越えはできないと判断したマックスは、カーフェリーを使い水路と陸路で、リトアニアを目指します。

しかし、あと少しで上陸できそうな時に監視カメラで、2人はみつかってしまいます。マックスは幼い子を連れた家族を脅し、検査官の目を欺き突破しました。

(C)2023 Netflix

ベルク医師のクリニックの場所を知るため、コンタクトを取り指定された場所を目指します。そこへ6時間以内に到着する必要があります。

途中、タイセンに水を与えるため休憩します。マックスは彼女を若返ったソフィー・タイセンだと信じて疑っていませんでしたが、誘拐してきた女性はソフィーの娘マリーだと名乗ります。

ソフィーのプロフィール上にマリーの情報はありませんが、犯罪に巻きこまれることを懸念し、非公開にしていたと話します。そして、マリーにはプロジェリア症候群で亡くなった姉がいました。

やがて、廃ホテルにたどり着いた一行は、一時の休息を取ろうとします。マリーは母ソフィーの行っている研究や事業に反対しているともいいます。

国境近くの難民キャンプでは行方不明者が増加し、違法クリニックでプチセレブやインフルエンサーが、格安で施術を受けていると話しますが、マックスは彼女の話を信じることができません。

エレナはその話しに信憑性を感じ、人違いかもしれないと考えますが、マックスはマリーがソフィーの娘なら、遺伝子も一致するはずだと解放に反対します。

マリーが体を洗わせてほしいと言い、マックスは一瞬のスキを見せ、逃げ出すことに成功します。ところが極寒の湖に入水したところで溺れかけ、エレナに助けられます。

彼女はマリーにシャワーを使わせ、体に3つの刺し傷があるか確かめます。彼女の脇腹には移植手術で付く3つの刺し傷はありませんでした。エレナは彼女の言っていたことが本当だと理解し、マックスに事実を話します。

するとマックスはマリーを人質にして、ソフィーを捕まえようと計画を変えますが、タイセンの護衛隊も武装の強化をし距離を縮めていました。

深夜、休息を取っているマックスとエレナの部屋に、テロ組織アダムが乗り込んできます。リリスの部下がマリーを連れてくると、マックスは彼女は殺さないよう言い、リリスは「マリーは殺さない」と答えます。

リリスはマリーのことはもちろん、マックスとエレナの経歴や事の経緯を全て知っていました。そして、なぜ2人が破滅しなければならなかったのか話します。

ソフィーは自分の遺伝子とエレナと合致していたことを知ると、家の融資を受けるときに、自分の人生を担保にするよう仕向け、火災を起こしまんまと40年の時間を手に入れたのだと話します。

リリスはエレナにマリーがその憎いソフィーの娘だと言い、銃を渡すと殺すよう命じます。しかし、エレナはマリーを生かしました。

リリスはマリーを人質にしてソフィー達をおびき寄せ、一網打尽に抹殺しようと計画を立てていました。マックスにおびき寄せる役を担わせます。

武装したAEONの護衛隊がアダム団がいることも知らずに、交渉の場所にやってきます。マックスはマリーと引き換えにソフィーを差し出すよう言います。

ソフィーは装甲車から出てきて彼に接近しますが、チームリーダーが罠だと感づきソフィーを退避させようとしますが、彼女は銃弾に倒れアダム団の攻撃が開始されます。

応戦するAEON側の攻撃も凄まじく、リリスはあっという間に銃殺されてしまい、マックスはエレナとマリーを連れて、逃走しようとします。

ところが土壇場でマリーがエレナに銃を向けます。しかし、銃には弾がなく殺すことができず、逆にエレナはマリーに反撃し気絶させました。

マリーが倒れているのを見たマックスは、彼女に罪はないと解放しようと言います。しかし、マリーを殺さなかったエレナは、彼女の行為が許せませんでした。

ソフィーは死んだが同じ遺伝子を持つマリーを連れて、ベルク医師のクリニックに行くと言います。マックスは反対しますが、自分の時間を取り戻すのも自分だと、マックスと決別してマリーを連れて逃げ出しました。

ベルク医師の指定した場所はリトアニアの難民キャンプでした。そこでは孤児となった子供の時間を、金さえ払えば誰にでも移植をしていました。

エレナはマリーから時間を移植し若さを取り戻します。マリーはキャンプを脱出し、さまよっていたところを民間人に保護されます。

死んだと思われたソフィーは、防弾チョッキで一命を取りとめていました。そして、老いていくマリーを見て、一層研究に尽力を注ぐと決意します。

一方、マックスは海岸で若さを取り戻したエレナの姿をみつめます。彼女のお腹はふっくらしていました。そして、若い男と新しい人生を始めているのを見届けます。

彼はリリス亡きあとのアダム団のリーダーとなり、打倒AEONを目指して戦いを開始していました。

映画『パラダイス 人生の値段』の感想と評価

(C)2023 Netflix

人道よりも私欲、奪われたものは取り返す・・・

遠くない未来に自分の人生を提供できる時代がくるのでしょうか? 臓器移植をするように人の寿命そのものを移植し、臓器が不正に売買されるように、寿命も売買されるという世知辛い未来を描いていました。

ソフィー・タイセンは長女をプロジェリア症候群(早老症)で失い、治療の研究を支援する中で、本来の目的からはみ出し私欲へと暴走したのでしょう

ノーベル賞受賞者や科学医療の権威者のみを優遇し、庶民の命をどうとも思わない冷淡なソフィーは、マックスやエレナの人生をもてあそびました。

研究者は若さと強力なバックアップを受け、与えられた支援を湯水のように使い、外で何が起きているのかなど、気にも留めず没入することでしょう。

物語は貧困で未来に希望が持てない人々が、自分の命を削り未来をつなごうとし、抜本的な解決に向かっておらず、収益至上主義がはびこっています。

マックスは愛するエレナのために手を尽くし奔走しますが、途中から自分の労力を無駄にさせまいと意地になり、勝ち目がないとわかると命が惜しくなり、エレナに時間を戻すことを諦めます。

結局、エレナはマックスの蒔いた種を自ら刈って若さを取り戻し、マックスはエレナを失い人生を狂わせた、AEONを打倒する道へ……。

ソフィーが生存しマリーは寿命を奪われたことで、次なるストーリー展開も想像させます。“寿命移植”に反対だったマリーも寛容になり、タイセン親子の逆襲が始まるというものです。

AEONは更に巨大な組織に発展し、テロ組織アダムとの戦いで、世界のディストピア化が悪化するそんな展開です。

薄れた恐怖感が与える重い“つけ”

『パラダイス 人生の値段』の寿命を移植するという発想が斬新でした。しかし、同じ寿命を扱った映画『PLAN 75』は“尊厳死”という観点から、現実味があって切実な思いがします。

本作にはそこまでの切実さがなく、完全にフィクションとして観れます。考えるべき点は、現実に臓器は闇売買されているので、寿命の移植が現実になれば、“寿命売買”も必然的に起こることでしょう。

そして、物理的な売買は闇の中で行われ、本来は重く見られるべき寿命は、目に見えない分軽視され、公然と正義のように売買される、その内容がおぞましさを助長しているように見えました。

命が売買目的で取引され、アイデンティティが壊される恐怖は、“目に見えなければ薄れる・・・”本作は、思考が危険な方向に向くことを伝えていました。

作中で自分にどの程度の寿命があり、その中からどの程度寄付できるのか・・・その仕組みが曖昧です。DNAで個人の寿命がわかるというなら本来、使い道を間違っています。

そもそも人は自分の寿命を知りたいのか? 知った所で何ができるのか・・・。底辺のどん底にいてどうにもならない現実にいたら、寿命を売ってしまうのだろうか……。

「変えたい」と精神論で考えても寿命を売って、打開できるなら「少しくらいなら」そう考えてしまうのが人の性なら悲しいことです。

まとめ

(C)2023 Netflix

『パラダイス 人生の値段』は「少しくらいなら」とか「自分だけは大丈夫」という浅はかな考えが、目先の豊かさや憧れの誘惑に負けて、大切なものを簡単に手放してしまうことにストップを掛けています

“寿命移植”が近未来に実現するとは思いませんが、世の中の様々な進化や発展には目を見張るものがあり、すぐにでも手に入れたいという思考から、大切なものをたやすく手放す傾向があることに、警鐘をならしているとも観れました。

奪われたものを取り返すのはたやすくありません。道徳心の欠如から大切なものを死守する、その重要さを物語る映画でした。

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