ヒューマンドラマ『裸⾜になって』が7⽉21⽇(⾦)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部⾨に出品された『パピチャ 未来へのランウェイ』(2020)のムニア・メドゥール監督が⼿がけた『裸⾜になって』が、7⽉21⽇(⾦)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショーとなります。
声と夢を理不尽に奪われた少女の再生を描いたヒューマンドラマです。ろう者の⼥性たちとの交流により、尊い慈愛と⽣きる⼒強さを描きだします。
『パピチャ 未来へのランウェイ』(2020)のリナ・クードリが主人公フーリアを演じ、『女はみんな生きている』(2003)のラシダ・ブラクニが共演。
『コーダ あいのうた』(2022)でろう者の俳優として初めてオスカー像を手にした俳優トロイ・コッツァーが製作総指揮を務めています。
バレエダンサーになる夢に目を輝かせていたひとりの少女が、一度は奈落の底に突き落とされながらもたくましく再生し、人生に向き合っていく姿を描いた感動作です。
不屈の魂の美しさを描き切った本作の魅力についてご紹介します。
映画『裸足になって』の作品情報
【公開】
2023年(フランス・アルジェリア合作映画)
【監督・脚本】
ムニア・メドゥール
【出演】
リナ・クードリ、ラシダ・ブラクニ、ナディア・カシ、アミラ・イルダ・ドゥアウダ、ザーラ・ドゥモンディ
【作品概要】
第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部⾨に出品された『パピチャ 未来へのランウェイ』(2020)のムニア・メドゥール監督作品。
抑圧された社会の中で心に大きな傷を負った女性たちが、⼿を携えて⽴ち上がる姿を通して、尊い慈愛と⽣きる⼒強さを瑞々しく描き出します。
主⼈公フーリアを体当たりで演じたのは、ウェス・アンダーソン監督『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2022)で、ティモシー・シャラメらと共演し、キュートな存在感を放ったことも記憶に新しい、アルジェリア出⾝の期待の新星リナ・クードリ。
製作総指揮を、『コーダ あいのうた』(2022)でろう者の俳優として初めてアカデミー助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァーが務めます。
共演はラシダ・ブラクニ、ナディア・カシ。
映画『裸足になって』のあらすじ
北アフリカのアルジェリア。バレエダンサーになることを夢見るフーリアは、貧しい生活の中で日々バレエに打ち込み、穏やかに暮らしていました。
しかしある夜、フーリアは階段から男に突き落とされて大けがを負います。踊れなくなった彼女は声も失い、魂をなくした抜け殻のようになってしまいました。
やっとギプスがとれたフーリアは、リハビリ施設に通い始めます。そこで彼女が出会ったのは、それぞれ心に深い傷を抱えた耳の聞こえない女性たちでした。
歩けるようになったフーリアが華麗なダンスを披露すると、女性たちは感激します。彼女たちにダンスを教えることになったフーリアは、次第に生きる喜びを取り戻し…。
映画『裸足になって』の感想と評価
何度でも立ち上がる少女の不屈の魂
貧しく治安の不安定な国、アルジェリアを舞台に、ひとりの少女の苦難と再生を描く物語です。
主人公のフーリアはバレエダンサーになることを目指し、真剣に踊りと向き合って暮らしていました。しかし、ある事情から賭博に手を出し、そのことが原因で悪い男に階段から突き落とされてしまいます。
大ケガを負って踊れなくなったフーリアは声まで失い、呆然自失の日々を送ります。傷とマメだらけの足の痛みに耐え、足にテーピングをしてトウシューズを履いて必死で踊っていた彼女のこれまでの毎日を思えば無理もありません。
そんな彼女がリハビリ施設で出会ったのは、彼女を凌ぐほど辛い目に遭い、心を壊したろう者の女性たちでした。理不尽なテロの暴力、重い病、孤児の身の上など、聞いているだけで胸が張り裂けそうになるような苦難を乗り越えてきた彼女たちは、フーリアのダンスに魅せられ、自分たちにも教えてほしいと頼みます。
ダンスを教えることを通して、フーリアの魂は再生し始めます。海や山など雄大な自然を前に踊る姿は、まるで巫女のような神々しい美しさです。生きる喜びに満ち溢れた少女の姿から、勇気をもらえることでしょう。
母や親友、施設の女性たち、そして愛するダンスの力に導かれてぐんぐん生命力を取り戻していくフーリアでしたが、その後も何度も鞭うたれるような辛い目に遭い続けます。
しかし、修羅場を乗り越えた人間の強さは生半可なものではありませんでした。復活した後にフーリアが見せる、驚くほどの強さに胸打たれるに違いありません。
政情が不安定で、悪人を正しく罰する機能も失った無法地帯のアルジェリア。国を捨てて、外国へ逃げて移民となる者も後を絶ちません。いつも傷つくのは弱い女性たちであることに、フーリアの怒りの炎は決して消えることはありませんでした。
恐怖に負けることなく、裸足で命を燃やして踊るフーリアから希望の光をもらえる一作です。
新星リナ・クードリの放つ輝き
ヒロインのフーリアを演じているのは、アルジェリア出⾝の新星リナ・クードリです。まだあどけない少女だったフーリアが、奈落の底に突き落とされて絶望し、そしてそこから立ち上がりたくましく成長していく姿を、余すことなく見事に表現しています。
物語後半はフーリアが声を失っていることから、彼女の心情をセリフ以外で表現しなければなりません。フーリアは決して表情豊かとはいえないクールな少女なので、感情表現が難しい難役といえるでしょう。
それでいて、不安定な国の状況、はびこる不正、女性を苦しめる世のシステムなどすべてに対する怒りの炎は、いつもフーリアの目の奥で熱く燃えています。
軽やかにステップを踏む可憐さ、激しいダンスを踊るときの鬼気迫る表情、大声で泣き叫ぶ姿など、フーリアの見せる表情が印象深いシーンがたくさん登場します。どの場面でも、クードリの放つ強い輝きに圧倒されるに違いありません。
まとめ
貧国アルジェリアの現在の姿を克明に映し出す、名匠ムニア・メドゥール監督作品『裸⾜になって』。ひとりの少女・フーリアを通して、絶望と再生が鮮やかに描き出されます。
フーリアの再生は、周囲の人間たちを再生させることでもありました。彼女が魅せたダンスが多くの人々の心の傷を癒し、新たな夢へと導いていきます。
人は決してひとりでは生きられないこと、そして、互いに助け合うことで次の一歩を踏み出すことができることを教えてくれる作品です。
『裸⾜になって』は、7⽉21⽇(⾦)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショーです。