Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2022/01/29
Update

『コーダ あいのうた』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。サンダンス映画祭の4冠に輝くエミリア・ジョーンズの歌声

  • Writer :
  • もりのちこ

『青春の光と影』 彼女の歌声は家族に届くのか。

2014年製作のフランス映画『エール!』のハリウッド・リメイク版。耳の聴こえない両親に育てられた子ども=「CODA(コーダ)」の少女の物語。

両親と兄と暮らすルビーは、家族の中でただ1人の健聴者です。彼女は、家族の耳となり、仕事や身の回りのことをサポートしていました。

高校の合唱部に入部したルビーは、歌の才能を発揮。顧問に名門音楽大学の受験を勧められますが、彼女の歌声が聞こえない家族は信じられません。

家族を残して夢を追うべきか、諦めるべきか。ルビーの選択とは。家族の想いとは。映画『コード あいのうた』を紹介します。

映画『コーダ あいのうた』の作品情報


(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

【日本公開】
2022年(アメリカ・フランス・カナダ合作映画)

【監督・脚本】
シアン・ヘダー

【キャスト】
エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、マーリー・マトリン、ダニエル・デュラント、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、エウヘニオ・デルベス、エイミー・フォーサイス

【作品概要】
サンダンス映画祭にて、観客賞など史上最多4冠に輝いた注目の作品『コーダ あいのうた』。

監督・脚本は『タルーラ 彼女たちの事情』(2016)のシアン・ヘダー。原作となったフランス映画『エール!』(2015)の前提を残しつつ、シアン・ヘダー監督ならではの新たなストーリーを描き出しました。

主人公のルビーには、大ヒットテレビシリーズ「ロック&キー」で一躍人気のエミリア・ジョーンズ。見事な歌唱力に、流暢な手話を披露しています。

また、ルビーの家族を演じるのは、オスカー女優のマーリー・マトリンを始め全員が実際に耳の聴こえない俳優たちを起用。

生き生きとして創造的で流麗に体現されたアメリカ手話「ASL」が、ふんだんに盛り込まれています。

映画『コーダ あいのうた』のあらすじとネタバレ


(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

明け方の海に浮かぶ漁船から、少女の力強い歌声が聞こえてきます。慣れた手つきで大量の魚を引き上げていく父と兄、そして歌声の主は娘のルビーです。

マサチューセッツ州の港町で漁師をして暮らすロッシ家は、陽気な父フランクと美しい母ジャッキー、プレイボーイの兄レオ、そして音楽好きの女子高生ルビーの4人家族です。

ルビーは家族の中で唯一の健聴者。いつも家族の耳となり、漁師の仕事や身の回りのことを一手にサポートしていました。

耳が聞こえないことで周りから邪険に扱われることがあっても、ロッシ家族はもろともせず、決して諦めません。言いたいことは言う。身振り手振りで語り合う時間は、どの家族よりも賑やかです。

ルビーは新学期を迎え、コーラス部への入部を決めます。密かに想いを寄せるマイルズがいたからです。顧問のV先生は少し変わり者ですが、とても熱心な先生でした。

人前で歌うことが怖くて逃げだしてしまうルビー。聴覚障がい者の中で育ったルビーは、「言葉がヘン」と言われた経験から人付き合いが苦手でした。

そんなルビーにV先生は、「上手い下手ではなく、声で何を伝えられるかが大事だ」と教えます。次第にルビーは、伸び伸びと歌うことが出来るようになります。

ルビーの歌の才能に気付いたV先生は、発表会に向けマイルズとデュエットを組ませます。そして、マイルズも目指しているボストンのバークリー音大へ進学を勧めるのでした。

2人での練習はどこかぎこちないながらも、声の相性は抜群です。マイルズは、助け合って暮らしているルビーの家族が羨ましくもありました。

漁港では政府の介入で魚の値が低下し、漁師たちの不満は限界を超えていました。ルビーの父フランクと兄レオは、ルビーに通訳してもらいながら手話で懸命に訴えます。

ロッシ家は、自ら魚を売りさばく新たな漁師共同組合を立ち上げました。地元の人たちも一緒に働いてくれました。仕事が忙しくなるにつれて、ルビーの負担も大きくなっていきます。

ルビーは、V先生の元で歌のレッスンを受けていました。家族の手伝いをしながらレッスンに通う日々は、どうしても遅刻してしまうこともしばしば。レッスンに集中出来ない環境にV先生も苛立ちを隠せません。

そんなある日、組合の取材にテレビ局がやってくることに。母はルビーに通訳をお願いしようと考えていましたが、歌のレッスンの時間と被ります。

事前に知らされていなかったルビーは怒りますが、家族のために取材に応じます。このままでは大学への進学は望めません。ルビー自身もこれまで家族抜きで行動したことがありませんでした。

ルビーは、家族に歌の道に進みたいことを打ち明けます。ルビーの歌声を聞くことが出来ない家族は、才能があるのかどうかも知るすべがありません。

娘の望む道を歩ませてあげたいと思うものの、母ジャッキーはこの大事な時期に頼りにしているルビーがいなくなることに反対します。

もどかしい気持ちを抱えたまま、ルビーは次の日の朝、漁をさぼり、マイルズと特別な時間を過ごします。

父フランクと兄レオは、ルビー抜きで漁にでます。運悪く、その日は政府の監視員が船に同行することになっていました。不正を犯せば漁の資格がはく奪されてしまいます。

事態は最悪な展開を迎えます。漁の最中に陸からの無線に気付かない親子に不安を感じた監視員が、海上警察に通報。

今後も漁を続けるならば、健聴者を乗船させること、反則金を支払うことを申し付けられます。これを機にルビーは「やはり自分が残らなければ」と進学を諦めるのでした。

以下、『コーダ あいのうた』ネタバレ・結末の記載がございます。『コーダ あいのうた』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
ルビーは、家族の元に残ることを決意します。兄のレオは、「家族の犠牲になることはおかしい」とルビーの選択に怒ります。

母ジャッキーは、合唱部のコンサートに向けて、ルビーに赤いドレスをプレゼントします。ルビーは母に、自分だけ耳が聞こえて産まれたことをどう思ったかを聞きます。

ジャッキーは、「分かり合えないかもしれない」と思ったことを正直に伝えます。耳が聞こえない母親を持つルビーを案じてのことでした。それでも逞しく勇気ある子供に育ってくれたルビーをジャッキーは抱きしめます。

コンサートの当日。ロッシ家族も揃って会場に向かいます。舞台にルビーの姿が見えます。歌声は聞こえなくても観客の反応から楽しい雰囲気が伝わってきます。

ルビーとマイルズのデュエットが始まりました。伸びやかに響き渡る歌声に、涙ぐむ人もいます。歌い終わると観客は総立ち。大きな拍手の振動が耳の聴こえない家族にも届きます。

その日の夜。父フランクは、ルビーに自分のために歌ってくれと頼みます。ルビーは父のために歌います。喉に手をあて振動を感じながら、娘の歌声に耳を傾ける父。

明日はバークリー音大の受験の日です。ルビーは、受けるつもりはありませんでした。

次の日の朝早くルビーは父に起こされます。聞けばこれからバークリー音大へ向かうと言います。母も兄も一緒です。

受験会場に着くと、家族は入れないと言われ、ルビーはひとり試験に臨みます。音楽経験が浅いルビーに審査員たちは、冷ややかです。

選んだ曲は「青春の光と影」。楽譜も持ち合わせていなかったルビーはアカペラで歌うことに。

そこに、V先生が現れ、伴奏をかって出ます。声に不安さが出てしまうルビー。V先生が間違えたフリをして仕切り直しをさせてくれました。

緊張がほぐれたルビーは、伸び伸びと歌い出します。その時です。会場の2階の席に家族がこっそりやってきました。

それを見つけたルビーは、歌詞を手話で表現し、家族のために歌います。その表現力は審査員も頷くほど、心に響くものでした。

その後、ルビーは見事、大学に合格します。そして、いよいよ旅立ちの日。笑顔で送り出す家族。言葉はなくても、抱き合えば気持ちは伝わるのです。

映画『コーダ あいのうた』の感想と評価


(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

フランス映画『エール!』のハリウッド・リメイク版『コーダ あいのうた』。シアン・ヘダー監督により、オリジナル作品を前提にしつつも、魅力的なキャラクターたちの新たなストーリーが誕生しました。

耳の聴こえない両親に育てられた子ども=「CODA(コーダ)」の少女の物語と聞くと、考えさせられる重い内容の作品なのかと想像してしまいますが、全体的に明るく前向きな気持ちにさせてくれる青春映画となっています。

ロッシ家は、娘のルビー以外は聴覚障がい者という家族ですが、手話で多くの会話をし、互いに支え合い、笑い合い、普通の家族より賑やかです

一緒に暮らしていても会話がない家庭もたくさんあります。言葉はなくても何でも言い合えるロッシ家が羨ましくも見えます。

そして、ロッシ家の面々は耳が聞こえないからといって臆することがありません。やりたいことはやるし、言いたい事は言い、人生を謳歌しています

個性豊かな家族を見ていると、障がいがあるなしに関わらず、自分に正直に生きることが大切なのだと気付かされます。


(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

さらにこの映画のみどころは家族愛のほかにも、恋愛映画としても楽しめる点にあります。

ルビーは同じ学校のマイルズに密かに想いを寄せていますが、人とは違う家庭環境から自分に自信を持てませんでした。

合唱部の発表会でデュエットを組むことになったルビーとマイルズは、歌のレッスンを通して少しづつ距離を縮めていきます。

小さな頃から家族の耳となり、大人に混ざり通訳をしてきたルビーは、同世代の子よりもしっかりしています。

そんなルビーが、自分だけのお気に入りの場所である湖にマイルズを招待し、高い崖から飛び込んだり、無邪気にじゃれ合う姿は、年相応の女の子に見えて微笑ましいシーンとなっています。

また、映画全体の特徴として、手話がヒートアップする場面では、BGMが途切れ静寂が訪れます。特にルビーの合唱部でのデュエットのシーンでは、途中から音が無くなり、耳の聴こえない家族の目線から観客の表情が映し出されます。

また、劇中で使用されている音楽が最高です。ルビーとマイルズのデュエット曲は、タミー・テレルとマーヴィン・ゲイの『You’re All I Need To Get By』

娘の歌声を聞くことが出来ない父親が、自分のために歌ってほしいと頼みます。ルビーの喉に手をあて振動を感じとろうとする父の姿に涙がこみ上げます

そして、ルビーが大学の試験で選んだ曲は、ジョニ・ミッチェルの『青春の光と影』

普通と違うことで周りから冷やかされ孤独だったルビー。悩んだ日々を乗り越え、現実を受け入れて強く成長したルビーが、未来へと強く歩み出す心情が曲の歌詞と重なります。

主人公ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの伸びやかで心地よい歌声は、まさにハマリ役。この映画のために特訓したという手話もスムーズに使いこなしています。

ロッシ家族が使う手話は、スピードが速く知らないと理解できないものもありますが、時に面白おかしく表現したり、顔の表情で伝えたりと、聴覚障がい者が身近に感じられ理解しようとする気持ちが湧き上がります

まとめ


(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

2014年製作のフランス映画『エール!』を、シアン・ヘダー監督がリメイク。アカデミー賞最有力と評判の映画『コーダ あいのうた』を紹介しました。

聴覚障がい者の家族の中でただ一人の健聴者ルビーが、自分の夢を見つけ大人へと成長していく物語。ルビーの夢を理解し応援しようとする家族の強い絆に心打たれます

家族ドラマとしてはもちろん、恋愛映画としても楽しめ、耳の聞こえない人も一緒に鑑賞できる映画となっています。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『父親たちの星条旗』ネタバレ結末感想とラストあらすじ解説。実話の“英雄に作り上げられた真実”をクリント・イーストウッド監督が描く問題作

硫黄島の戦いをアメリカ側と日本側の視点から描いた映画史上初の2部作第1弾。 クリント・イーストウッドが製作・監督を務めた、2006年製作のアメリカの戦争ドラマ映画『父親たちの星条旗』。 太平洋戦争最大 …

ヒューマンドラマ映画

『ニューシネマパラダイス』動画無料視聴はこちら!結末ネタバレと感想も

ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品『ニュー・シネマ・パラダイス』の日本公開は、イタリアから遅れること翌年1989年12月16日に、東京のミニシアターのシネスイッチ銀座でした。 史上空前の40週間ロングラ …

ヒューマンドラマ映画

『幸福な囚人』ネタバレあらすじ感想と評価解説。天野友二朗監督が商業デビュー作で描いた“狂気に陥った男”が見た残酷な現実

人間の二面性に迫る天野友二朗監督の商業映画デビュー作 『自由を手にするその日まで』(2018)などインディーズ映画を手がけてきた天野友二朗の商業映画デビュー作『幸福な囚人』。 不妊症に悩み精神を患った …

ヒューマンドラマ映画

映画『いのちの停車場』あらすじ感想と評価レビュー。松坂桃李と吉永小百合が在宅医療に内在したテーマに挑む

映画『いのちの停車場』は2021年5月21日(金)全国公開予定。 映画『いのちの停車場』は終末期の在宅医療をテーマにした作品です。 吉永小百合が初の医師役に挑み、医師であると同時に自らも患者の家族とし …

ヒューマンドラマ映画

『心のありか』あらすじ感想と評価解説。及川奈央を映画主演に“親友を亡くしたヒロイン”の喪失から再生を繊細なまでに演じる

映画『心のありか』は2023年12月15日より池袋シネマ・ロサにて劇場公開!また2024年も全国にて順次公開! アラフォー女性が「親友の死」という喪失から再生していく日々を静かに描いた及川奈央主演作『 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学