観る者にフェアな戦いを挑む本格ミステリー
人気作家・東野圭吾のベストセラー小説を原作に、福山雅治演じる天才物理学者・湯川学が難事件に挑む大ヒット作「ガリレオ」シリーズの劇場版第3作。前2作に続いて西谷弘が監督、福田靖が脚本を手がけました。
内海刑事役の柴咲コウ、草薙刑事役の北村一輝らおなじみのメンバーのほか、椎名桔平、檀れい、吉田羊、村上淳ら豪華キャストが顔を揃えます。
福山雅治と柴咲コウによるユニット≪KOH+≫が9年ぶりに復活し、主題歌を担当したことでも話題となりました。
町の人々から愛されていたひとりの女子高生の悲しい死をきっかけに、事件が動き始めます。
予想外の展開を見せながらも、推理のヒントをしっかり観る者に提示するフェアな本格ミステリー作品です。
映画『沈黙のパレード』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【原作】
東野圭吾
【監督】
西谷弘
【脚本】
福田靖
【編集】
山本正明
【出演】
福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、飯尾和樹、戸田菜穂、田口浩正、酒匂芳、岡山天音、川床明日香、出口夏希、村上淳、吉田羊、檀れい、椎名桔平
【作品概要】
ベストセラー作家・東野圭吾による、天才物理学者・湯川学が未解決事件を見事に解き明かしていく痛快ミステリー「ガリレオ」シリーズ。『容疑者Xの献身』(2008)『真夏の方程式』(2013)に続く劇場版第3弾。
西谷弘が監督を務める本作で、福山演じる湯川と、バディを組む内海薫刑事役の柴咲コウ、湯川の親友の草薙俊平役の北村一輝が、9年ぶりに再結集しました。
岡山天音、出口夏希、村上淳、吉田羊、檀れい、椎名桔平らが新たに参戦します。
映画『沈黙のパレード』のあらすじとネタバレ
歌の才能を認められた女子高生の並木佐織は、数年前から行方不明になった末、遺体となって発見されました。両親や彼女を育てていた音楽プロデューサー、恋人たちは悲しみにくれます。
彼女は後頭部を鈍器のようなもので殴られて殺された後に火を放たれたことがわかり、一緒に蓮沼芳恵という老婆の遺体も発見されます。
警視庁捜査一課の刑事の内海は、先輩刑事の草薙から、今回の容疑者・蓮沼寛一がかつて担当した少女殺害事件の容疑者であることを教えられます。蓮沼は完全黙秘を貫いた末、無罪を勝ち取っていました。
内海はこれまで捜査に協力してもらってきた天才物理学者の湯川学を呼び出し、事件について話します。蓮沼と佐織には接点があり、その後彼女は失踪していました。
佐織の父親の営む居酒屋を訪れた湯川は、夏祭りにパレードが行われることを聞きます。そんななか、店に当の蓮沼がやって来ました。彼は今回も黙秘を貫いて証拠不十分で釈放され、佐織が住んでいた町に戻って来ていました。佐織の父や町の人々が蓮沼と言い争う姿を、湯川はじっと見つめます。
憎悪の空気が町全体を覆う中、夏祭りのパレードは当日を迎えました。
映画『沈黙のパレード』の感想と評価
二転三転する見事なストーリー展開
大人気ミステリードラマ「ガリレオ」シリーズの待望の劇場版第3作『沈黙のパレード』。相棒の内海役の柴咲コウが2008年公開の『容疑者xの献身』以来14年ぶりにスクリーンに戻ってきたことでも話題となりました。
クールな天才物理学者・湯川学を、福山雅治が変わらぬ魅力で飄々と魅力的に演じています。「実に面白い」といって、何もかもを楽しむ湯川の姿が爽快です。
9年ぶりに復活した福山と柴咲が組むユニット≪KOH+≫が歌う主題歌にも注目です。
町の人々から愛され、歌手デビューを目前にした期待の星だった女子高生・佐織が、数年前に行方不明となった末に、遺体となって発見されたところから物語は始まります。
容疑者の蓮沼は、15年前の少女殺害事件の容疑者でもありましたが、その時も今回も完全黙秘によって無罪を勝ち取っていました。彼が有罪であることを町の誰もが信じ憎悪するなか、蓮沼は佐織の住んでいた町に舞い戻って町人らを挑発します。
憎しみで燃え上がる町でお祭りのパレードが開かれた日。蓮沼は扼殺痕がない窒息死という不可解な死を遂げていました。この難事件に、湯川らが挑みます。
真犯人探しのスリルがたまりません。名優揃いで誰が犯人でもおかしくないため、まったく真犯人の目星をつけることができないままストーリーは進んでいき、期待に応えるかのように、実は全員が計画に加担していたという驚きの展開を迎えます。
クリスティの有名小説『オリエント急行殺人事件』を彷彿とさせながらも、それで終わらないのがさすが東野圭吾です。その部分は序章に過ぎず、二転三転する見事な展開が用意されています。
それでいて、湯川や警察らが知り得た情報は観る者に開示されており、フェアな本格ミステリーとなっています。
ぜひご覧になりながら、謎解きにも挑んでください。
心揺さぶられる人の絆と緻密な心理描写
本シリーズが愛されてきた一番の理由は、クールな湯川と少し抜けたところのある内海刑事、そして熱血刑事の草薙との味わいある掛け合いにあります。
本作では特に、15年前の少女殺害事件をお蔵入りにしてしまったことで苦悩を抱き続けてきた草薙の心理と、彼を見守る親友の湯川の温かくも厳しいまなざしが大きな見どころとなっています。
当時の容疑者・蓮沼を捕らえられず、15年ぶりに起きた佐織の殺人事件でも立件できなかった悔しさを、北村一輝が見事に演じ切っています。とらえどころのない蓮沼を、憎々しく演じる村上淳からも目が離せません。
張りつめた空気を和ませてくれる内海の名バディぶりも健在です。湯川と繰り広げる「血も涙もない」をめぐる面倒くさい言い争いのシーンは、その真骨頂ともいえるでしょう。
本作の核となっているのは、町の人々が長い年月積み重ねる中で育ててきた深い絆です。生まれたときから大事に町全体で育ててきた被害少女・佐織への痛いほどの愛情が悲劇を招きます。
佐織の両親である並木夫妻、佐織が生まれたときからかわいがってきた並木の親友の戸島、佐織の恋人の高垣、商店街の仲間の宮沢、音楽プロデューサーの新倉夫妻。事件の謎解きとともに、緻密に描かれる人々の心の揺れ動き、葛藤に注目です。
ラスト近くの湯川と草薙、そして草薙と椎名桔平演じる新倉との対峙する様は圧巻です。魂のぶつかり合う姿に、心揺さぶられる名シーンとなっています。
まとめ
福山雅治、柴咲コウ、北村一輝が9年ぶりに顔を揃えた大人気「ガリレオ」シリーズの劇場版第3作『沈黙のパレード』。
タイトルにある「沈黙」が重要なキーワードを持つ本作では、容疑者をはじめ、登場人々の多くが秘密を抱え「沈黙」を守っています。悲しい死を遂げた女子高生の佐織もまたそのうちのひとりと言えるでしょう。
その沈黙を打ち破り、難事件を解決するために湯川博士らが正面から迫っていきます。そこで繰り広げられる人間愛と深い絆に感動させられる一作です。
人々が囚われてきた苦悩と悲しみに決着をつけようと立ち向かう姿から、勇気をもらえるに違いありません。