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【ネタバレ】ヒットマンズ・レクイエム|結末あらすじ感想と評価考察。ファレルが映画で“殺し屋たちの義理人情”をユーモラスに魅せる!

  • Writer :
  • からさわゆみこ

殺し屋たちに下された“最後の審判”の行方を物語る・・・

今回ご紹介する映画『ヒットマンズ・レクイエム』は、各国際映画祭や第90回アカデミー賞で多数の賞を受賞した『スリー・ビルボード』(2017)のマーティン・マクドナー監督作品です。

マクドナー監督の映画『イニシェリン島の精霊』(2023)で共演した、コリン・ファレルとブレンダン・グリーソンが15年前に初共演した作品です。

ロンドンで一仕事を終えた2人の殺し屋は、ボスからの命令でベルギーの古都ブリュージュに潜伏します。しかし、ブリュージュに行かせたのには理由がありました……。

殺し屋たちの義理や人情を皮肉やユーモアを交ぜながら描き、国際的な観光地ブリュージュならではの“勘違い”と“偶然”を織り交ぜたクライムドラマです。

映画『ヒットマンズ・レクイエム』の作品情報

(C)2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved

【公開】
2008年(イギリス、アメリカ合作映画)

【原題】
In Bruges

【監督・脚本】
マーティン・マクドナー

【キャスト】
コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、レイフ・ファインズ、クレマンス・ポエジー、ジェレミー・レニエ

【作品概要】
ダンボ』(2019)、『アフター・ヤン』(2022)のコリン・ファレルが、本作のレイ役でゴールデン・グローブ主演男優賞を受賞しました。

共演に『トロイ』(2004)、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)などの話題作に幅広く出演し活躍するブレンダン・グリーソンが、ベテランの殺し屋ケンを演じます。

また、『シンドラーのリスト』(1993)でアカデミー助演男優賞を受賞し、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)からヴォルデモート卿を演じている、レイフ・ファインズがハリー役を演じます。

映画『ヒットマンズ・レクイエム』のあらすじとネタバレ


(C)2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved

新米の殺し屋レイと先輩のケンはロンドンで一仕事終えると、ボスの命令でベルギーの古都ブリュージュに行き、2週間の潜伏を指示され訪れます。

しかし、レイにとってブリュージュは退屈な街で、到着して早々愚痴や文句ばかりを言います。古都の歴史や街並みに興味のあるレイは少し観光気分です。

しかし、クリスマスシーズンにぶつかり、別々の部屋が取れずツインルームになってしまい、レイの不満は募るばかりです。

駄々をこねるレイにケンは「言いたくはないが・・・」と、レイの弱みを持ち出し命令に従わせました。

2人は常に一緒に行動しなくてはならず、観光するのも2人一緒です。ケンは楽しんでいますが、レイはずっと不満を言い、名所めぐりも楽しめません。

ブリュージュのシンボル的な“鐘楼”を見学に行った2人ですが、レイは外で待つと言って残ります。

入場料を小銭で払おうとするケンでしたが、足りずにまけてほしいと言いますが、受付のスタッフは断固拒否し、ケンは渋々紙幣で支払いました。

それでも展望から望む街並みに感動するケンでした。ケンは広場でウロウロするレイをみつけ、狙撃するまね事をします。

レイはアメリカ人観光客の家族から、“鐘楼”には上ったか聞かれて適当な返事をします。家族は豊満な体型だったため、レイは階段が狭いからやめておけと忠告します。

体型をバカにされたと思ったアメリカ人は激怒しますが、見学を終えて戻ってきたケンからも、同じことを言われ憤慨しながらも入っていきます。

ブリュージュに来る前にレイは仕事でミスを犯していました。そのためブリュージュで身を潜めるよう命令されたと思いますが、ケンは他にも何か仕事があるのかもしれないと考えます。

その晩、ホテルの部屋で2人きりになると、ケンは読書をしながら、ハリーからの連絡を待ちますが、レイの不満が炸裂します。

結局、レイはライトアップされた街を観に行こうとケンを誘います。歴史的な建造物が好きなケンは、彼の提案にのって街に出かけました。

偶然、街の由緒ある教会の近くで映画撮影の現場に遭遇したレイは、俳優の“小人”がいるのに気がつき、興味津々で見学をはじめます。

そして映画関係者のクロエと目が合い、心を奪われます。レイは関係者のふりをして侵入し、彼女に積極的にアタックし翌日のディナーデートの約束を取り付けました。

一方、ケンは先にホテルへと戻り、ハリーからの伝言を受け取ります。待機していなかったことに怒りをあらわにし、翌日は必ず部屋で待機するよう脅迫にも近い伝言でした。

しかし、レイはクロエとデートをする約束をしてしまったため、ケンは日中は美術館に付き合うことを条件に、電話番を引き受けました。

翌日、ケンが選んだ名所は“聖血礼拝堂”です。ケンとの約束とはいえレイは居心地悪そうに、落ち着きません。

ケンは聖血礼拝堂には十字軍が持ち帰ったと言われる、キリストの血が祀られていると説明しますが、レイは興味を示すどころか、礼拝堂を出ていきました。

レイの初仕事だった暗殺は教会の司教でした。懺悔室で告白するふりをして発砲し、礼拝堂に逃げる司教に追い打ちをかけたとき、祈りを捧げる幼い少年に流れ弾が当たり、殺してしまいました。

以下、『ヒットマンズ・レクイエム』ネタバレ・結末の記載がございます。『ヒットマンズ・レクイエム』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved

レイはケンに連れられ、美術館を訪れていました。絵のことを詳しく知らないレイが唯一気に入ったのは、世界滅亡の日を描いた“最後の審判”の絵です。

世界が滅びて人類が滅亡した後、死者が再生し悪人と善人選別され、天国と地獄に振り分けられながらも、煉獄での試練を越えれば昇天できるという宗教画です。

ケンは殺し屋ですが善行を心がけていると話し、レイの件は事故だったとなだめます。しかし、レイは子供を殺した事実は忘れようがないと、罪の意識に苦しんでいました。

レイはクロエとディナーデートをします。互いに職業の話になり、レイは殺し屋だと答え、クロエは煙草をくゆらせながら、薬物の売人だと言い、2人は笑い合いました。

しかし、レイはブリュージュを下劣な表現でバカにし、ブリュージュ生まれのクロエを不快にさせます。

彼女がもっと気の利いたジョークが言えないのかと責めると、レイはベルギーで起きた児童虐待殺人を取り上げ、ベルギーチョコは子供を誘い出すために作られたなどと言います。

するとクロエは表情を曇らせ、被害にあった女の子は友達だったと告げ、レイを落ち込ませますが、困らせるための冗談だと言って席を外しました。

すると、隣席の男性がクロエのことを「信じられない」とつぶやきます。レイは何のことかと突っかかると、煙草の煙を顔に吹きつけてきたきたと怒っています。

喫煙席で問題はないとレイは「ベトナム人にもされたのか?」と反論します。2人は何のことか意味不明だと、食事を続けますが「ジョンレノンの仇だ」と男性を殴り、応戦した女性も殴り倒します。

席に戻ってきたクロエは騒動に驚き、レイは彼女と一緒に店を出ました。レイは女性に暴力をふるった言い訳を言いますが、彼女はあまり嫌悪していないようでした。

その頃ケンはハリーから連絡を受けていました。レイに内容を聞かれないよう、用心深くするハリーが口にしたのは、レイを始末する指示でした。

理由はレイが子供を犠牲にしたことでした。相棒にレイを選んだのはケンだったため、落とし前をつけるよう言われます。

2人にブリュージュに行くよう指示したのは、ハリーが子供の頃に訪れたブリュージュの街並みに感動していて、レイには死ぬ前に良い思いをさせるためだと話します。

そして、ハリーは翌朝9時にラーム通りにいるユーリを訪ねるように告げます。

レイはクロエの部屋に行き、良い雰囲気になりますが、突然クロエの恋人だというエイリックが現れ、銃を突きつけます。

しかしレイは反撃してエイリックの銃を奪い銃口を向けます。クロエは空砲だと教えますが、レイは彼の顔面を至近距離から打ち左目を傷つけました。

クロエはエイリックは元彼で2人で共謀し、観光客からお金を巻き上げていたと話します。レイは彼女に騙されたとショックを受けます。

彼女はそのつもりはなかったと言い、エイリックが勝手にやったことだと弁明し、クロエはまた、連絡してほしいとメモを渡し、エイリックを病院まで連れて行きます。

部屋に残されたレイは物色をはじめ、チェストから麻薬と実弾を見つけ持ち帰ります。パブでビールを飲むケンと合流します。

パブには高級娼婦を買った小人のジミーもいました。3人はジミーの部屋で麻薬パーティーをはじめ、ジミーは映画の構想で近未来に起きる、白人と黒人の戦争のストーリーを話します。

ジミーは“白人軍”は白人のみで、“黒人軍”にはハーフやアジア人も含まれると話すと、ケンは自分の妻は黒人で、1976年に白人男性に殺されたと話し、どちら側に入るのか聞きます。

ジミーは言葉を失いますが、ケンは友達が犯人を始末してくれたと言います。レイはそれがハリーのことだと察しました。

レイはジミーの差別発言が過ぎると怒り、首をチョップすると「自業自得だ」と言い捨て部屋を出ていきます。

(C)2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved

翌朝、ハリーに大きな借りのあるケンは逆らうことができず、ユーリを訪ねてレイを殺すための銃を手に入れました。

しかし、ケンがホテルに戻ると、女主人のマリーがレイの様子がおかしかったと伝えます。マリーは妊娠していて男女のどちらが欲しいか聞かれ、全財産と思しき現金を渡されたと言います。

マリーは公園に行ったというレイの後を追いました。レイは公園のベンチに座って佇んでいました。ケンは射殺しようと決め銃を構えます。

ところがその時、レイは拳銃を取り出してこめかみに銃口をあてました。驚いたケンはとっさに彼の自殺を止めてしまいます。

ケンはハリーからの指令の話をし、レイが自殺をしないよう銃を奪いました。レイの苦悩は自死を選ぶほどに追い込んでいました。

そんなレイをケンは慰め、殺し屋から足を洗ってこれからは子供を救うための生き方をするよう諭し、イギリス以外のヨーロッパのどこかで、6、7年身を潜めるよう、列車に乗せて見逃します。

ケンはハリーに電話をかけ、レイにはやり直せるチャンスがあると、逃がしたことを話して、ハリーが来るのを待つと伝えます。

激怒したハリーは3人の子供を妻とナニーに託し、ブリュージュへ向かいます。一方、レイの乗っていた列車が停車し、警官から「カナダ人を殴ったか?」と職務質問をされます。

言っている意味の分からないレイは、列車の後方を見るよう言われ振り返ると、そこにはレストランで暴行を加えた夫妻がいて、レイは逮捕されてしまいました。

ブリュージュに到着したハリーはユーリのところで銃を手に入れます。彼はそこでエイリックと会い、彼がレイに左目を失明させられた話をします。

ハリーはエイリックが間抜けなせいだと罵ります。エイリックは腹を立てますが、ユーリからハリーには逆らうなと忠告を受けました。

レイはブリュージュに連れ戻され、警察に事情聴取されて出てきます。クロエが身元引受人で迎えに来ていました。

夕刻、ケンはビアレストランでハリーと落ち合い、鐘楼で決着をつけようと向かいます。その時、レイとクロエが再会の抱擁をしている脇を2人は通り過ぎますが、両者とも気がつきません。

エイリックが、ケンとハリーが鐘楼の中に入っていくのを見ていて、そのあとレイとクロエが、ビールを飲んでいるのを見つけてしまいます。

その時、レイとクロエの前に撮影に向かうジミーが通りかかります。子供服の衣装を着せられたジミーを見て2人は笑いますが、良いシーンになるから見学に来るよう誘います。

ケンはレイのためにハリーを説得しようと、死を覚悟していました。ケンは持っていた銃を置き、ハリーが銃を向けても無抵抗を貫きました。

結局、ハリーはケンを殺せず、脚を撃ち鐘楼を降ります。そこにエイリックが上ってきて、レイがバーにいると教えに来ると、ハリーはケンに再び銃を向け発砲します。

ハリーがレイを追い去った後、首を撃たれたケンは瀕死状態になりますが、レイに危険が迫っていることを知らせるため、再び鐘楼に上り飛び降ります。

地面に叩きつけられる音でレイが振り返ると、そこにはかろうじて息のあるケンを見ました。駆け寄るレイにケンはハリーが来たことを伝え絶命します。

レイはケンの死にショックを受けていると、ハリーがレイに発砲してきます。レイは逃げ出しケンに預けた銃を取りにホテルへ向かいます。

部屋のチェストにはケンからの手紙があり、引き出しにある拳銃をみつけます。ところが手紙を読むまもなく、ハリーがホテルまで来てしまいます。

レイはマリーを巻き込まないよう、彼女の夫のふりをして外に出るよう言いますが、彼女は主として出るわけにはいかないと動きません。

レイは部屋から運河に飛び込み外に出ると言います。彼は言った通り窓から運河に飛び込み、運よく通りかかった小舟に飛び乗りますが、反動で拳銃を落としてしまいました。

ハリーはその様子を見過ごさずに、銃でレイを撃ち抜きました。レイは重傷を負いながらもさらに逃げ続け、映画の撮影現場に紛れ込みました。

そこにジミーが現れレイの姿を見つけると、どうしたのかと近寄ってきます。しかし、ハリーの執拗な追撃はレイに迫っていました。

ハリーは背後から何発もレイに発砲し、彼はとうとう倒れこみました。ハリーはレイのそばに行くと、頭を打ち抜かれて原形のない少年の遺体を見ます。

ハリーはそれを見て、子供を巻き添えに殺してしまったと思います。小人の成人男性と知らないハリーは、子供は殺さないという主義を破ったと勘違いし、その場で自死してしまいます。

レイは死の淵で救急隊員に運ばれていきます。そして、もし生きてロンドンに帰れたら、殺してしまった少年の母に詫び、どんな罰も受けようと考えます。

そして、今置かれているブリュージュこそが地獄の状態で、そこでは絶対に死にたくないと、レイは心から強く生きたいと思いました。

映画『ヒットマンズ・レクイエム』の感想と評価

(C)2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved

現代版の「死都ブリュージュ」

映画『ヒットマンズ・レクイエム』の舞台となった、ブリュージュは13世紀から14世紀にかけて、毛織物の交易で繁栄したベルギーの都市です。

ところが交易に使われていた運河が、15世紀後半に起きた自然災害の土砂によって、運航ができなくなり以降ブリュージュは衰退してしまいます。

そのブリュージュは19世紀の小説家、ジョルジュ・ローデンバックの小説「死都ブリュージュ」によって、多くの世界遺産やユネスコ無形文化遺産に登録される都市となり、観光地として息を吹き返し再び脚光を浴び始めます

ローデンバックが書いた「死都ブリュージュ」は最愛の妻を亡くし失意の中、陸の孤島と言われていたブリュージュで隠棲生活をしている男の物語です。

小説には衰退しているブリュージュの静寂や幻想的な街並み、歴史ある建造物の描写が多く描かれていて、読者の興味を引いて行きました。

殺し屋のレイが子供を誤って殺し失意の中、逃亡したブリュージュは観光地として活気を取り戻した美しい街ですが、レイには小説の主人公が見ていた景色と同じに見えたことでしょう。

ローデンバックは小説のはしがきで、ブリュージュという都市を「人々の精神状態と結ばりあい、忠告し、行為を思いとどまらせ、決心させる主要人物」のように扱っていると書きます。

小説には主人公が苦悩する中で出会う女性とのなれそめ、死者への冒涜、自殺を試みる行為や主人公に忠告し、思いとどまるよう説得するなど、本作にもみられたシーンがあります。

人の精神状態をブリュージュの街に重ねた小説「死都ブリュージュ」だとしたら、歴史の移り変わりで再生した、現代のブリューシュに重ねたのが本作で、原題を“In Bruges”とした理由と繋がるでしょう。

国民性をブラックユーモアで知る

映画『ヒットマンズ・レクイエム』では、国籍の違う人物が登場するシーンがいくつかあります。それらを国の国民性をブラックユーモアを交えて登場させています。

ベルギー人の場合

ベルギーでは南部と北部で言語が違うことや、隣接する国の違いで国民性も異なります。ブリュージュは北部にあたり、ドイツに近いところから「勤勉でかたぶつ」ともいわれているようです。

確かにホテルの女主人、“鐘楼”で働くスタッフは融通の利かない、“かたぶつ”のように見えました。金銭に関してはシビアで真面目という面がわかります。

アメリカ人の場合

鐘楼に上ろうとしていたアメリカ観光客は、肥満体でレイとケンは上るのをやめるよう忠告しますが、無視して上り心臓発作を起こします。アメリカが肥満大国だと揶揄しています。

小人のジミーが差別されてきたにもかかわらず、差別的な発言をしたりするのは、差別社会では差別には差別で対抗し、虚栄するそんな思考にならざるをえなかったからでしょう。

ジミーはアメリカ人であることで、アイルランド人のレイとケンに「嫌わないで」と言います。アメリカに渡ったアイルランド移民が、差別されていたことを知っているからです。

カナダ人の場合

カナダ人は煙草の副流煙による害に敏感です。カナダは法律で喫煙に関する禁止事項を強化しているくらいです。

カナダでは99%飲食店は禁煙なので、そもそもレストランで喫煙している人が「信じられない」のです。

レイは白人というだけで彼らをアメリカ人と決めつけ、ベトナム戦争やジョンレノンの暗殺を持ち出し、暴言を吐きますがカナダ人の彼らにわかるはずもありません。

アイルランド人の場合

レイを見ていると人懐っこくて、おしゃべりなことがわかりますが、ケンを見ると非常に我慢強い性格ともとれます。

ケンも同様ですが、ハリーからは子沢山で日本人と思しきナニーも雇っているところから、正義感や責任感が強く情に厚い面もあり、信念を曲げない芯の強さがあるとわかります。

ケンの黒人の妻が白人に殺害され、その報復をしたのもハリーでした。ケンもハリーも殺し屋でありながら、博愛主義者だったからでしょう。

まとめ

(C)2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved

映画『ヒットマンズ・レクイエム』は新米の殺し屋が初仕事で、幼い子供を誤って射殺してしまったことから、相棒の手によって“始末”させられそうになる顛末を描いた物語でした。

ブリュージュを舞台にした小説「死都ブリュージュ」では、亡くなった愛妻によく似ているが、中身は真逆な性格の踊り子を好きになります。彼女が亡き妻を冒涜したことで主人公に殺害されて終わります。

死ななくてもいいはずのケンは情けを懸けて死に、自分で決めたルールの末にハリーも死にますが、死にたいくらいに苦悩したレイが生き残る、そんな皮肉が最後に待ち受けました。

ケンが「レイにはまだ未来に希望がある」というくだりは、ブリュージュの歴史と重ね合わせ、レイが瀕死の状態の中で「生きたい」「償いたい」と思わせるまで変わります。

誰が見てもおとぎの国のような美しい古都ブリュージュでも、その時の精神状態によっては全く逆に感じてしまうこともあり・・・悩み苦しんでいるのはレイには無茶なことです。

そんな彼に共感を求めたり、自分が決めたルールを破っただけで、抹殺しようとするハリーの自己中心ぶりは、「死都ブリュージュ」の主人公の自己中心とも重なります。

また、悪人なら殺してもよいという理論にも違和感があり、ケンとハリーの死はその報いであり、“自業自得”だったと見ることができます。

レイはブリュージュが“地獄”だとひらめきますが、実は審判を受ける“煉獄”ではないでしょうか? 本当の地獄は生き長らえたあとで待っています。

レイに生きる望みが残ったのは、命を奪った報いは生きながらにして受けることを意味しているからです。





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