中村獅童×小栗旬によるネオ・サイコ・サスペンス・ムービー!
井上靖雄が監督を務めた、2004年製作の日本のネオ・サイコ・サスペンス映画『隣人13号』。
かつて同級生の赤井から酷いいじめを受けていた建設作業員の村崎十三が、10年ぶりに地元に帰ってきました。
自身が勤める建設会社に入社してきたのが十三だと気づかずに、赤井はまた十三をいじめだします。十三にはもう1つ、凶暴な別人格が宿っているとは気づかずに………。
小学生時代に凄惨ないじめにあった主人公が10年越しにいじめっ子に復讐をする、R15+指定のネオ・サイコ・サスペンス映画『隣人13号』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『隣人13号』の作品情報
【公開】
2005年(日本映画)
【原作】
井上三太の漫画『隣人13号』
【監督】
井上靖雄
【キャスト】
中村獅童、小栗旬、新井浩文、吉村由美、石井智也、松本実、劇団ひとり、村田充、三池崇史
【作品概要】
LOVE PSYCHEDELICO、元ちとせや韻シストなどのPVを手掛けたディレクターの井上靖雄が監督を務めた、日本のネオ・サイコ・サスペンス作品。
原作は、人気漫画家の井上三太の初期の傑作漫画『隣人13号』。『ピンポン』(2002)の中村獅童と、テレビドラマ『花より団子』(2005)や「クローズZERO」シリーズの小栗旬が主演を務めています。
※本作はR15+指定作品のため、15歳未満の方は鑑賞できません。
映画『隣人13号』のあらすじとネタバレ
神奈川県藤沢市にある「藤沢市立小友第五小学校」に通う小学6年生の村崎十三は、同級生の赤井トールから酷いいじめを受けていました。
そんなある日、十三は無理矢理理科室に連れて行かれ、赤井に硫酸をかけられ顔にひどい火傷を負ってしまいました。
それから10年後、十三は2階建ての中古アパート「平和荘」の1階にある13号室に引っ越しました。
その真上にある2階の23号室にも、十三とほぼ同時期に引っ越してきた家族がいました。赤井とその妻子です。
十三は赤井が勤めている建設会社「株式会社奥仲工務店」へと入社。入社して早々、建築現場のリーダーになっていた赤井に目をつけられてしまいます。
気弱な作業員の関肇は、十三に親切に接しました。それが気に食わなかった赤井は、十三の右足を角材で殴りつけます。
激痛に耐えきれず、十三は簡易トイレの中に駆け込みました。赤井は外側から簡易トイレのドアを押さえつけ、十三を中に閉じ込めます。
その直後、赤井を吹き飛ばすほどの力でドアを蹴破って出てきた十三は、まるで別人のようでした。
その暴挙に驚く赤井に対し、関は感嘆しました。関は十三と同じく、入社してからずっと赤井にいじめられていたからです。
そのまま早退した十三のもとに、赤井の妻のぞみと息子の勇気が引っ越しの挨拶に来ました。
2人が買い物に出かけると、十三は23号室に堂々と忍び込んで部屋の中を物色し、盗聴器を仕掛けます。
その日の夕方。十三のもとに関が見舞いにやってきました。関は本当は今の仕事を辞めてアニメーターになりたいことと、赤井に対する愚痴を零しました。
「2人であいつを殺しちゃう?」と関が冗談っぽく言うと、十三は自身の過去と、自身の心の中に巣食う別人格の13号について話します。
13号は自身をいじめてきた赤井に対する憎悪から生まれたものであること。日を増すごとに主人格である十三でさえ制御できないほど、13号は凶暴化し、体を乗っ取って好き勝手していることを。
そして最後に、十三はビニール製の仮面に隠した爛れた顔をさらして助けを求めました。
関と話したことで嫌な記憶が蘇った十三は13号に変わり、騒音トラブルで揉めた隣室の中年男性の金田を惨殺してしまいます。
映画『隣人13号』の感想と評価
小学生時代に十三が受けたいじめの内容は、想像以上に凄惨でとても陰湿なもので、思わず目を背けたくなります。
そんな十三の心に宿った別人格の13号。彼が生まれたのは赤井への復讐心からですが、主人格の十三の心を守るためでもあったのではないでしょうか。
その証拠に物語の序盤、十三が赤井によって簡易トイレに閉じ込められた時、彼を助けるかのように13号は彼と入れ替わっています。
ですが憎き赤井と再会し、さらに関に秘密を打ち明けたことで嫌な過去を鮮明に思い出してしまったことで、13号の復讐心はますます強く大きくなっていきました。
臆病でおどおどしているものの心優しい性格の十三とは正反対の、短気で凶暴で残忍な性格の13号に切り替わる様は、あまりの衝撃と恐怖に観ているだけで背筋が凍りつきます。
対して赤井は、10年経っても相変わらず弱いいじめをしている陰湿で心が狭い男です。
しかしその反面、赤井は身内と認めた相手には優しく接している姿が描かれています。
実際、赤井はのぞみと勇気の前では良き父、良き夫として接しており、死神や暴走族時代の子分から慕われていました。
ですが、そんな赤井の一面なんて十三と13号は知りません。いや知っていたとしても、2人の赤井に復讐したい気持ちは変わらないでしょう。
十三が赤井を殺さなかったのは、当時から求めていた赤井の心からの謝罪をしてくれたからではないかと考察できます。
まとめ
小学生時代に凄惨ないじめを受けた十三と、彼の憎しみから生まれた別人格の13号による復讐劇を描いた日本のネオ・サイコ・サスペンス作品でした。
10年前に硫酸をかけられたことで爛れた顔と、凶暴で残忍な性格の13号を完璧に演じている中村獅童の演技力、薄暗い背景と上手くマッチしていて観ている人も背筋が凍りつくほどの恐怖を感じることが出来ます。
また本作は井上三太の原作漫画『隣人13号』を実写映画化させたものですが、原作漫画には登場しているキャラクターが出ていなかったり、13号による殺人事件の捜査が始まったところしか描かれていなかったりと、原作漫画と実写映画版に相違点があるのも本作の見どころの一つです。
そして何より、何年時が経とうとも「いじめられた側」の人間はいじめっ子にされたことを覚えていること、その復讐心は消えるどころか増していく一方であること。
「いじめた側」の人間はいつしか、赤井のように自分が犯した罪を自覚し心から反省するほどの罰を受けることを、本作を通じて学ぶことができます。
いじめと解離性同一性障害(二重人格)を題材にしたネオ・サイコ・サスペンス映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。