恋人を守る幽霊を主人公にした純愛ファンタジー
世界的大ヒットとなったパトリック・スウェイジ、デミ・ムーア主演のロマンティックファンタジー。
ジェリー・ザッカー監督が、突然殺されてしまった男性が幽霊となって恋人を守る姿を切なく描きます。
共演のウーピー・ゴールドバーグが霊媒師を好演し、第63回アカデミー賞で助演女優賞を受賞しました。ヒロインのモリーを演じたデミ・ムーアは、大ブレイクを果たしています。
主人公が幽霊となってもこの世にとどまり続けたのには、深い理由がありました。
幽霊とのラブストーリーの元祖ともいえる本作の魅力についてご紹介します。
CONTENTS
映画『ゴースト ニューヨークの幻』の作品情報
【公開】
1990年(アメリカ映画)
【監督】
ジェリー・ザッカー
【脚本】
ブルース・ジョエル・ルービン
【編集】
ウォルター・マーチ
【出演】
パトリック・スウェイジ、デミ・ムーア、ウーピー・ゴールドバーグ、トニー・ゴールドウィン
【作品概要】
『裸の銃を持つ男』(1989)のジェリー・ザッカー監督作品。愛する人が幽霊となって現れるロマンティックファンタジードラマ。
『アウトサイダー』(1983)、『シティ・オブ・ジョイ』(1992)のパトリック・スウェイジと、『G.I.ジェーン』(1998)のデミ・ムーアが共演し、世界的にメガヒットとなりました。
『天使にラブ・ソングを…』シリーズのウーピー・ゴールドバーグが霊媒師役を演じ、第63回アカデミー賞で助演女優賞を受賞しています。
映画『ゴースト ニューヨークの幻』のあらすじとネタバレ
銀行員のサム・ウィートは仲睦まじい恋人の陶芸家モリー・ジェンセンと新居で同棲を始めます。同僚のカール・ブルーナーとも気が合い、仕事も順調でした。しかし、なぜかサムは不安な気持ちをぬぐえずにいました。
ある日、銀行で大きな金額が動いていることに気づいたサムは、送金コードを変えてひとりで調査を進めます。
ある晩、モリーと外出した帰り道でサムは暴漢に襲われ、銃で撃たれてしまいます。気が付くとサムの魂は体から抜け出て、ゴーストとなっていました。彼は自分の血だらけの体を抱きしめるモリーの姿を、呆然と見つめます。
その後もサムはモリーの傍にとどまり続けます。カールはモリーを訪ね、散歩に誘いました。ふたりが出かけた後、なんとサムを殺した暴漢が家に侵入します。モリーが帰宅しますが、彼女は男がいることに気づきません。サムは自分の気配がわかる猫のフロイドを使ってどうにか男を追い出し、後を追います。
男のアパートまでつけていったサムは、彼の名がウィリー・ロペスだと知ります。男が何者かに電話で数日中に手に入れると話すのを聞いて、サムは不安に駆られます。
映画『ゴースト ニューヨークの幻』の感想と評価
ラブロマンスとサスペンスを融合させた名作
恋人を守るためにゴーストとなってこの世にの留まる主人公の切ない恋を描き、世界的に大ヒットした名作です。キュートなヒロインを演じたデミ・ムーアを大ブレイクさせたことでも知られています。
同年公開された対照的なラブコメ作品『プリティ・ウーマン』とともに大きな話題をさらい、恋愛ドラマ隆盛期を作り上げました。
本作の魅力は、たくさんの要素を楽しめる複合エンターテインメント作品となっている点にあります。
ひとつは、王道のラブロマンスストーリーである点です。まじめな銀行員のサムは、陶芸家の恋人・モリーと外出した帰り道で暴漢に襲われ、突然殺されてしまいます。しかし、彼は恋人を危機から好くために、ゴーストとなってこの世にとどまりました。触れたくても触れられない、ふたりの切ない関係は涙を誘います。
生きている間はモリーに「愛してる」と言えなかったサムが、最後精霊によって天に召されるときにとうとう彼女に伝えることができる場面は感動的です。
その後、ストーリーはサスペンスフルな展開へと転じます。サムを襲った黒幕は親友のカールでした。カールは不正に資金洗浄した口座の送金コードをサムから奪うようにロペスに依頼しましたが、サムが抵抗したため殺してしまったのです。
コードを手に入れたいカールが、モリーを狙っていることに気づいたサムは、恋人を助けるために必死で駆け回ります。
その後、サムの声を聞くことが出来る霊媒師のオダ・メイの登場によって作品がコミカルに味付けされる一方で、悪者たちが死後に悪霊に連れ去られていく姿はホラーチックに描かれるなど、さまざまな魅力で彩られます。
このバランスのよさに加え、印象的なシーンが多いこともヒットの大きな要因です。
ふたりでろくろを回す官能的なシーンはあまりにも有名です。また、自分がこの世にとどまっていることを知らせるために、サムがコインを宙に浮かせてモリーに手渡す場面など、名シーンが多数存在することも今尚愛され続ける理由となっています。
周囲を巻き込むウーピー・ゴールドバーグの魅力
本作で特に大きな魅力を放っているのは、ウーピー・ゴールドバーグ演じる霊媒師オダ・メイです。
日本でも大人気の『天使にラブ・ソングを…』シリーズでデロリスを演じたウーピーが魅力を全開させています。本作で第63回アカデミー賞の助演女優賞を見事受賞しました。
オダ・メイはいくつもの前科を持つインチキ霊媒師でしたが、サムの声を聞くことができる本物の霊能力者だとわかります。
稀代のコメディエンヌのウーピーが、このオダ・メイをコミカルにこの上なく魅力的に演じています。それまで切なく悲しいスリリングだった物語を、一気に明るく笑える空気に変えてしまうのです。異質な存在感を持つ彼女が、本作の屋台骨の役割を果たしています。
ストーリーの展開とともに、次はウーピーがどうやって笑わせてくれるのだろうかという期待で胸がワクワクすることでしょう。
銀行を訪れ、口座解約という一大ミッションを行うシーンは最高です。秘密裡に訪れたはずなのに、オダ・メイはショッキングピンクのド派手な服と帽子をかぶって現れるのですから。サムに注意されても帽子をとろうとしない姿に、思わず吹き出してしまいます。
ただでさえ目立つ彼女が、そんな姿をしていたら目を引かないはずがありません。結局モリーにも見つかり、カールにまで知られることになったことから自分のクビを締めてしまいます。
手にした大金の400万ドルを寄付しなければならなくなったオダ・メイの苦渋の表情を見たら、笑うしかありません。
彼女の明るさに観る者が導かれるのと同様、サムもモリーもオダ・メイの放つ強い明るさとやさしさに救われていきます。最後に自分の身を差し出してサムに憑依させてやる姿は慈愛に満ち、まるで聖母かのようです。
硬軟演じ分けられる実力派のウーピーならではの味わいある演技に魅了されることでしょう。
まとめ
可憐なデミ・ムーアに魅了される名作『ゴースト ニューヨークの幻』。愛するヒロインを危険から守るために、必死で奮闘する主人公・サムの姿に胸が熱くなります。
最初は泣き暮らしていたモリーが、最後に美しい精霊に導かれて天に召されるサムをやさしい瞳で見送る姿が印象的です。
これほどまで自分のために力を尽くしてくれた恋人の深い愛に満たされ、モリーはきっとこの先も幸せに生きていけることでしょう。
悲しみだけではなく愛と希望に満ちあふれた本作は、これからも多くのファンに愛され続けるに違いありません。