愛に満ち溢れた、心にもおいしいグルメロードムービー!
「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴローが製作・監督・脚本・主演を務めたハートフルコメディ『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』。
ジョン・レグイザモ、ソフィア・ベルガラがメインキャストを務めるほか、ロバート・ダウニー・Jr.、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマンら豪華ハリウッドスターが出演しています。
超一流の腕を持ちながら、持ち前の短気さで突然職を失ってしまった主人公のカール。彼が選んだのは、フードトラックで超おいしいサンドイッチを売りながら旅する生き方でしたが、それは同時にかわいい息子との心の旅でもありました。
笑って泣ける、おいしいグルメコメディの魅力をご紹介します。
CONTENTS
映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の作品情報
【公開】
2014年(アメリカ映画)
【監督・脚本】
ジョン・ファヴロー
【編集】
ロバート・レイトン
【キャスト】
ジョン・ファヴロー、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマン、オリヴァー・プラット、ロバート・ダウニー・Jr、エムジェイ・アンソニー
【作品概要】
フードトラックの移動販売をはじめた、一流レストランの元総料理長のアメリカ横断の旅を描くハートフルコメディ。批評家に酷評されたのをきっかけに職を失った名シェフが、息子と相棒と3人でサンドイッチのフードトラックで旅する姿をユーモラスに温かく映し出します。
「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴローが製作・監督・脚本・主演を務め、『3人のエンジェル』(1996)のジョン・レグイザモが主人公の友人役を、元妻・イネス役を『マチェーテ・キルズ』(2014)のソフィア・ベルガラが演じます。
ロバート・ダウニー・Jr、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマンら豪華ハリウッドスターの出演シーンも必見です。
映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のあらすじとネタバレ
ロサンゼルスの有名レストランで総料理長を務めるカール・キャスパーは、批評家が来る前に息子のパーシーと市場に買い出しへと出かけました。
厨房に戻るとオーナーのリヴァがやって来て、カールがメニューを変えることに反対します。言われた通り元のメニューに戻しますが、批評家・ラムジーにはブログで酷評されてしまいます
カールの腕を誰より高く評価している元恋人のソムリエ・モリーは彼を慰めます。
新メニュー作りに奮闘するカール。しかし、ツイッターでブログが拡散されたことに怒りを抑えきれず、不用意なツイートをしたことで炎上してしまいます。
ラムジーと新メニューで対決しようとしたカールでしたが、リヴァはまたもや元のメニューに戻すように強要します。カールは耐え切れずにケンカし、店を辞めてしまいました。
店を再訪したラムジーが「カールは逃げ出した」とツイートしたのを見たカールは店に押しかけ、本人に怒鳴り散らします。その様子も動画に撮られ、また拡散されてしまいました。
カールの元妻のイネスは父親を求めるパーシーのために、3人でイネスの故郷のマイアミを訪れようと提案します。
現地でキューバサンドイッチの美味しさに驚いたカールは、フードトラックでサンドイッチの移動販売をすることを思いつきます。
映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の感想と評価
父と子の触れ合いの旅
突然職を失った一流の料理人が、おいしいサンドイッチを作るフードカーで旅するようになる姿を描く、笑ってじんわり泣けるハートフルコメディです。
恰幅のいいジョン・ファヴロー演じる主人公・カールの作る大胆かつ繊細な料理のおいしそうなこと!レストランでの華麗な盛り付けの豪華料理も素晴らしいのですが、フードカーで作るキューバサンドもシェフの料理への丁寧さが感じられ、本当においしそうなのです。
作中では、自宅でチーズのトーストサンドイッチを息子のパーシーのために作る場面が描かれます。
よく熱した鉄板にオリーブオイルをひき、パン、その上に数種のスライスしたチーズを乗せ、こんがり焼けたら重ね合わせてバターをしっかりと塗ります。それからまたもう一度焼きつけてチーズが溶けたら、まな板の上でザクッと切る。
最初は「耳をとって」などと言っていたパーシーも、一口食べた瞬間にあまりのおいしさに驚くというこの場面。カールの料理人としての優れた資質が感じられる名場面なのですが、実はこの裏話がよくわかるメイキングが、エンドロールの最後に流れます。
ジョン・ファヴローに指導するシェフは言います。「中身が溶けてサンドが進化するんだ」と。そして「カットする時にはいろんな角度から見て「世界に存在するのはサンドだけ」と思って集中し、失敗したら世界が終わると思ってカットするんだ」と彼は語ります。
食に対して非常に真摯で情熱的なカールという人物は、ジョン・ファヴローが指導を受けたシェフをイメージして役作りされていることがよく伝わってきます。
「炎上商法で金を稼ぐ」などということは露ほども考えず、「とにかく料理がしたい」という一心でフードトラック店を立ち上げたカールは、元妻・イネスの助言によってどう接していいかわからずにいた息子のパーシーを連れて旅することを選びます。
父と子でピカピカに磨き上げる、ボロボロのフードトラック。ケンカをしながらも、ふたりの心は次第に近づき始めます。
息子のために選んだ料理人のナイフ。市場での品の選び方。訪れた町の地元名物を食べる散歩。トーストの焼き方。厨房でのほかの人間への目配り。
荷運びを手伝ってくれた人たちにお礼にふるまうのに、「どうせタダなのだから」と焦げたものを出そうとしたパーシー。カールは叱ろうとはせず、料理は自分にとって人生最高の幸せであり、お客を笑顔にすると元気がもらえること、そして「きっとお前にとってもそうだ」と諭します。
カールの言葉は愛情に満ち溢れ、人生にも通じる教えばかりでした。その言葉を、息子のパーシーも素直に吸収し精神的に成長していきます。
ふたり旅ではなくカールの相棒・マーティンもおり、だからこそ旅のバランスは最高となっています。性に対しても開けっ広げで、クールな息子の前できわどい歌詞の歌を陽気に歌う大人ふたりの姿がなんとも爽快です。パーシーは照れながらも、いっぱしの男として扱われることを喜びます。
また現代っ子ならではの力で、ツイッターでフードトラック店を宣伝し客を見事に呼ぶパーシーに、父もまた助けられます。
夏休みが終わり、息子をもとの生活に戻さねばと思っていたカールは、パーシーから旅の1秒ビデオを受け取りました。旅の一瞬一瞬を切り取りつなげた、日記のような濃密で最高の1本を見て、これからも息子と深く関わって生きていく道を父は選び取ります。
そして明るく思いやり深い魅力的な元妻のイネスとカールは、もともと別れた夫婦ながら素敵な関係性を持ち続けていましたが、パーシーが“かすがい”となり最後には復縁。親子の絆が最高の形で迎えるハッピーエンドに心が温かく満たされる作品です。
超豪華名優たちの友情出演もたまらない
ジョン・ファヴローの人脈ならではの超豪華キャストたちがちょっとずつ顔を出すのも、本作の大きな醍醐味です。
最初にカールが勤めているレストランのオーナー・リヴァを演じるのは、『レインマン』(1988)などで知られる大スターのダスティン・ホフマンです。
頭の固いリヴァはカールの独創的な新しいメニューを決して認めず、何年も続く古臭いメニューを守り続けるように強要します。シェフの代わりはいくらでもいると言われ、短気なカールは我慢しきれず店を飛び出すのです。
カールの新作を食べようともせず、文句言いたげな客にはすかさず上物ワインをすっと差し出す狸オヤジを、ホフマンがサラリと演じています。
カールの元彼女で、美しいソムリエのモリーをスカーレット・ヨハンソンが演じます。カールの相手はモリーといいイネスといい、絶世の美女たちばかり。でもカールはとてもチャーミングな男性なので、気持ちはわからなくもありません。
モリーはカールの腕を誰よりも高く評価しており、いつも彼を褒めて支え、「パーシーにも向き合うように」と諭すとても魅力的な女性として描かれます。
最高に笑えるのは、イネスの最初の夫・マーヴィン演じるロバート・ダウニー・Jrの演技です。ほんのワンシーンの登場なのですが、見事な存在感を見せます。
マーヴィンは会社の自室に入れるためには秘書であろうとも靴カバーをさせる潔癖症で、「みんながすべるからカーペットを敷こうと考えている」と言ってカールに色見本を見せる変わり者。秘書を妊娠させた疑惑があったりと、とにかく只者ではない感がすごすぎます。
ファヴローもダウニーも、面白がって演じているのが伝わってきて最高です。
まとめ
料理への愛、食への愛、息子への愛、元妻への愛、相棒への愛。たくさんの愛に満ち溢れた、ユーモラスで情熱いっぱいの一作です。
ボロボロだったキッチンカーを磨き上げ、息子とともに再出発の旅に出た超一流シェフのカールが、最高においしいサンドイッチを作りながら陽気な旅に出ます。
「料理は自分にとって最高の喜びだ」と語るカール。その喜びを息子に伝えられる幸せを知ったカールは、これからさらにもっと感動いっぱいの人生を歩んでいけることでしょう。
しかもこれからはまた、素晴らしい女性・イネスも一緒に隣にいてくれるのですから。息子のパーシーが誰より幸せになれるエンディングが、観る者すべての心を温めてくれます。
観終えた後はきっと、自分や家族のために最高においしいキューバサンドを丁寧に作ってみたくなるはずです。