連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第16回
ヤヌス・メッツが監督を務めた、2022年製作のアメリカのスパイ・サスペンス映画『オールド・ナイフ~127便の真実~』。
ウィーン国際空港で起きた旅客機ハイジャック事件から8年後、当時事件に関与していた男が逮捕され、CIA内部に内通者がいたことが判明。
CIAの諜報員で元恋人同士の男女が、レストランで食事をしながら事件当時を振り返っていくという物語とは具体的にどんな内容だったのでしょうか。
2022年4月8日(金)よりAmazonプライムビデオで配信された映画『オールド・ナイフ~127便の真実~』の、ネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『オールド・ナイフ~127便の真実~』の作品情報
Amazonプライム『オールド・ナイフ~127便の真実~』
【配信】
2022年(アメリカ映画)
【原作・脚本】
オレン・スタインハウアー
【監督】
ヤヌス・メッツ
【キャスト】
クリス・パイン、タンディ・ニュートン、ローレンス・フィッシュバーン、ジョナサン・プライス、コーリイ・ジョンソン、ジョンジョ・オニール、アハド・カメル、デビッド・ドーソン、ナセル・メマルジア、オリ・シューカ、アンジェラ・ヨー、カシア・マデラ、リア・フェンド、マイケル・シェファー、コリン・スティントン、メティン・ハッサン、ジョシュ・レイシー、デレック・シアウ、アンナ・ジョーンズ、ダー・ダッシュ、トッド・クレイマー、オスカー・コールマン、アレクサンダー・デフリント、モー・イドリス
【作品概要】
『アルマジロ』(2013)や『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(2018)のヤヌス・メッツが監督を務めた、アメリカのスパイサスペンス作品。
アメリカの推理小説作家オレン・スタインハウアーの小説『裏切りの晩餐』をもとに、原作者自ら脚本を手がけた本作。「スター・トレック」シリーズや「ワンダーウーマン」シリーズのクリス・パインが主演を務めています。
映画『オールド・ナイフ~127便の真実~』のあらすじとネタバレ
Amazonプライム『オールド・ナイフ~127便の真実~』
2012年12月6日。オーストリアのウィーン国際空港に着陸したトルコ航空の旅客機127便が、「ジハード(イスラム教およびイスラム教徒を迫害する異教徒との戦い)」をうたう小規模のテロリスト集団にハイジャックされました。
この127便の事件を受け、アメリカ大使館の5階にあるCIA(アメリカの中央情報局)のウィーン支局の支局長ヴィック・ウォリンジャーと彼が率いるチームがハイジャック犯とコンタクトを取り、人質となった乗客乗員全員を救出しようとします。
しかし彼らの必死の努力もむなしく、12月7日の朝、ハイジャック犯は乗客乗員を全員殺害し、自らの命も絶ってしまったのです。
そんな最悪な結末に終わった事件から8年後。事件に関与した男イルヤス・シシャニがアフリカで逮捕され、「ウィーン支局内部に協力者がいた」と供述しました。
これを受け、CIA本部は127便の事件に終止符を打つべく、事件を再捜査することにしました。
イルヤスを尋問し内通者の名前を吐かせようとしましたが、いきすぎた尋問のせいでイルヤスは死んでしまいました。そこでCIA本部はヴィックに、内通者の調査を命じます。
調査を命じられたヴィックは、内通者かもしれない人物を絞り込んだ上で、自身のチームメンバーの1人であり、機密事件を扱う天才工作員ヘンリー・ペルハムに、ある2人に事情聴取を行うよう命じます。
候補に上がったのは、ヴィックの次に偉いCIA諜報員のビル・コンプトンと、彼の部下シリア・ハリソンです。
彼らは事件当日、ウィーン支局からイランの国番号に電話をかけていました。それを聞いたヘンリーはひどく動揺しました。
なぜならヘンリーにとってシリアは、かつての同僚であり恋人だった女性だからです。しかもヴィックから、もしシリアが内通者だった場合は始末するよう、暗に命じられてしまいます。
ヘンリーは葛藤の末、彼らに事情聴取を行うことに。最初はロンドンにいるビルに話を聞きに行きました。
それから2週間後。ヘンリーはカリフォルニアを訪れ、そこで夫と子供2人と暮らしているシリアに会いに行きました。
Amazonプライム『オールド・ナイフ~127便の真実~』
そして8年ぶりの再会を果たしたシリアに、ヘンリーはビルと同じように「127便の事件に矛盾点がいくつかあり、再捜査することが決まった」と話し、事件当時何があったか尋ねます。
実はシリアは、前もってビルからヘンリーが事情聴取を行っていると連絡を受けていたため、ただの旧友同士の再会を喜ぶ食事ではないと薄々勘づいていました。
ヘンリーはまず、シリアにチームの紹介をさせます。ヴィック率いるチームには、戦地で育ちとびぬけた人生経験の持ち主である情報収集担当のレイラ・マルーフ、シリアの上司である支局長の補佐ビル・コンプトン。
オーストリア情報機関との連絡係アーンスト・ルー、127便の事件から数ヶ月間、暗号解読のチームリーダーをしていたオーウェン・ラシター、そしてヘンリーとシリアの7人で構成されていました。
しかしオーウェンは、事件を解決できなかったことを苦に、自宅で拳銃自殺してしまいました。
シリアは仲間に恵まれ、やりがいのある仕事をすることができたウィーン支局は最高だったと評価します。
ヘンリーは次に、事件当日、任務のため現場に出ていたヘンリー不在の間、チームで何を話していたのか尋ねました。
事件当日の朝の会議では、ヴィックとレイラから、72時間以内にドイツあるいはオーストリア行きの航空機がハイジャックされる可能性があること、航空機の出発地はおそらくダマスカス・ベイルート・イスタンブールのいずれかだろうということ。
このハイジャックは「アル・ダイラット・サリフンダ(以後、アル・ダイラットと表記)」というアル・シャバーブ(“アルカイダ”に忠誠を誓い、ソマリアを拠点に活動するスンニ派過激組織)から分離したグループによるもので、実行犯はソマリア国外出身の併願兵であること。
イランの首都テヘランが彼らに資金援助をしていること、そのテヘランから出たイルヤスが事件の2日前、バルセロナ空港に着いたとの報告を受けました。
ヴィックから敵の狙いは何か尋ねられ、アーンストは「アフガニスタンの外にいる戦闘員。ドイツ行きの航空機を狙うと思う」と回答。
なぜならドイツはNATO(北大西洋条約機構)加盟国の中で3番目に、逮捕された戦闘員の数が多いからです。
ヘンリーは、イルヤスはどんな人物だと思うか尋ねます。シリアは「モスクワ劇場占拠事件でのあなたの情報源だった男」、「既にアル・ダイラットと手を組んでいたイランのグループに入っていた。127便のためにきた可能性が高いが確証はない」と答えました。
事件当日の昼。ランチから呼び戻されたシリアとビルは、ヴィックから「ウィーン国際空港に着陸後に127便をハイジャックされ、機内にはアメリカ人の乗客が6人いて、客室乗務員1人が殺された」との報告を受けます。
しかし地元のテレビ局にハイジャック犯からの要求が出されたものの、機内のブラインドをおろして全ての通信を断っているため、ハイジャック犯との交渉ができていませんでした。
以下、『オールド・ナイフ~127便の真実~』ネタバレ・結末の記載がございます。『オールド・ナイフ~127便の真実~』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
Amazonプライム『オールド・ナイフ~127便の真実~』
レイラは、サウジアラビア出身のスレイマン・ワヒトとチェチェン出身のベスラン・アブドライエフ、ソマリア出身2人とハイジャック犯が4人いることを特定しましたが、パスポートの顔写真以外情報がありません。
しかもハイジャック犯は9人の子供を他の乗客と引き離し、肉の盾にしようとしているといいます。
そしてハイジャック犯の要求は、24時間以内にオーストリアとドイツで収監されている戦闘員5人を釈放することです。
ドイツのメルケル首相側の返答次第ですが、ドイツとオーストリア両政府がハイジャック犯の要求に従う可能性も高いという………。
レイラは、事件の黒幕は既にヨーロッパに潜伏中のイルヤスだと推測しました。これらの情報を踏まえて、ヴィックは犯人に関する情報を収集するよう皆に命じました。
ヴィックから連絡を受けたヘンリーは、8人の情報屋と会って探りを入れました。
しかし情報屋たちは全員、何かを恐れているかのように口を閉ざしているため収穫はありませんでした。
ヘンリーはウィーン支局に戻り、そのことをヴィックとシリアに報告。その直後、機内と連絡が取れました。
ヘンリーは一度話題を変え、なぜカリフォルニアに移住したのか尋ねると、仕事から少しでも離れたかったとシリアは答えました。
シリアはカリフォルニアに来て2週間後、カール・ステインというオーストリア人の男と会ったと話します。
彼は、イスラム過激派にビルが機密情報を売っていると言いました。そして127便の事件の失敗が国内でまだ尾を引いているからと、捜査の協力を求めてきましたが、シリアはこれを拒否しました。
話はまた8年前へ。ヴィックはヘンリーたちを集め、CIA本部に中東に潜伏中の工作員アハメド・ナジャーから緊急回線でメッセージが届いたと告げました。
127便にいる乗客の1人であるアハメドからのメッセージには、「犯人は4人、銃は2丁。子供はファーストクラス、他の乗客はエコノミークラスにいる。女性2人が重体」、「電源とカメラはなく、後部の着陸装置からの突入を勧める」と記されていました。
これを聞いたシリアは、アハメドはこの8年間機密情報の受け渡ししかしておらず、58歳で対反乱作戦の訓練経験もないと言い、突入するのは危険すぎると抗議しました。
アーンストもハイジャック犯と交渉する方が妥当だと言いました。しかしヘンリーとレイラは、彼らが交渉に応じる可能性はないと断言します。
事実、アル・ダイラットのマニフェストには「自分たちの要求以外は一切応じない」とあり、コンゴでテロを起こした際は自分たちも含め、警察署内にいた全員を生きたまま焼き尽くしました。
ヴィックとアーンストによると、ドイツ側では時間稼ぎのために受刑者をウィーンに輸送中、オーストリア側は強硬姿勢をとり、ドイツ側の出方に合わせているとのこと。
ヘンリーたちはドイツ・オーストリア両政府が犯人の要求に応じなければ突入するべきか、それとも最悪な事態を招かぬようオーストリア当局に助言するべきか議論します。
タイムリミットまであと20時間。シリアはウィーン支局を出て、ムスリム女性協会にいる情報屋サビーナに会いに行きました。
しかしサビーナは長居できないといって、代わりにタハールという女性を紹介しました。
タハールはヘンリーも知っている情報屋でした。タハールは質問に答えてくれる人を紹介するといい、シリアを人気のない廃墟の建物に連れていきました。
携帯を没収されたのち、タハールから紹介されたのは、ムハンマド・ドゥダエフという男でした。
しかし最初から武器を買うための金を貰うことが目的だったのか、シリアの質問に答えてくれません。
シリアがウィーン支局に戻ると、ヘンリーと一緒にビルに呼び出され、「主犯格が携帯でロシア語を話していたが、その意味は不明」と、アハメドからの新たな情報を知らされます。
主犯格はイルヤスだと推測したビルたちに、ヘンリーは彼がどんな人物なのか教えて欲しいといわれます。
1990年代、イスラム教のスンナ派シャーフィイー学派を信仰するチェチェン人が人口の9割を占めるロシアの共和国「チェチェン」からモスクワに逃げたイルヤスは、家族を養うためパン屋を営んでいました。
CIAに協力する情報屋になってもらうため、ヘンリーはイルヤスに接触し、信頼関係を築くことに。
イルヤスはとても働き者で家族想いな男で、2人は互いに良き友人として信頼し合っていました。
ですがモスクワ劇場占拠事件を、ロシアのウラジミール・プーチン大統領が「ロシア版9.11事件」だと位置づけ、「ブタペストのアメリカ大使館に攻撃が迫っている。その証拠は機密情報と交換だ」と言ってきました。
これを受け、CIA本部の上層部は情報屋のイルヤスを差し出すことにしました。
ヘンリーに裏切られ、ロシアに売られたイルヤスは、家族と一緒にテヘランに逃亡。
ヘンリーはロシアから狙われぬようにと、モスクワ支局からウィーン支局に異動させられました。
この一件以降、人間不信に陥ったヘンリー。ですがシリアと出会い、彼女だけは信じられると思った彼は、一緒に住もうと言いました。
その後、アハメドから「突入は中止せよ。何故かは分からないが、奴らはこちらの動きを全て把握している」、「向こうの要求に応じなければ全員死ぬことになる」とメッセージが届きました。
シリアとビルは、大勢の命がかかっているのにアハメドのことをオーストリア当局に黙っているというのか、彼らと情報を共有するべきだと進言するも、ヴィックとアーンストは難色を示しました。
この後すぐ、ビルは「妻のサリーに病気の発作が出たから」とシリアに言ってウィーン支局を出て行きました。
ビルが出て行った直後、シリアは彼のオフィスへ。何か見落とした情報はないかとイルヤスの資料を見返しました。
その結果、シリアとビルは、事件解決のカギを握っているアハメドのメッセージはどこかおかしいと感じていました。
最初のメッセージでは乗客の位置と突入の指示でしたが、最後のメッセージではまるで別人かのように犯人の要求を飲むことを勧めてきたからです。
ビルはすぐにヴィックにこのことを報告し、メッセージの送り主はアハメドではなくなった可能性を探りました。
ですがオーストリア当局はアハメドのことを知りません。そのため内通者がいるのではないかと、2人は同時にその答えに辿り着きました。
しかしこのことはヴィック以外に話してはいないと、ビルはヘンリーに言いました。しかも事件後に訪ねてきた調査員にも、「事件は終わったから言う意味がない」という理由で、そのことを話していませんでした。
ビルの通話記録を取り寄せ、テヘランに電話をかけたことを知ったシリアは、こっそりウィーン支局の外で電話をかけてみました。そして相手の声を聞き、確信を得ました。
その直後、ウィーン支局に戻ったシリアは、アハメドがハイジャック犯に殺された動画を見ました。それ以来、見てもいない機内で起きたことが頭から離れなくなったといいます。
ヘンリーは1つ分からないことがあると言い、「俺たちの愛は本物ではなかったのか?なぜ俺から離れていった?」と尋ねました。
シリアは涙を堪えながら「そう思ってた」とだけ言い、事件があった日の翌朝、黙って彼の元を去っていった理由を語ってくれませんでした。
そこでヘンリーは席を立ち、トレブルという男と短く言葉を交わしました。そしてシリアへの事情聴取を再開し、事件後、CIA本部から来た調査員に通話記録のことを話したか尋ねます。
シリアは「聞かれなかったから話していない」と答えました。そしてビルは内通者ではないと断言しました。
何故ならヘンリーがシャワーを浴びている時、彼の携帯にビルの通話記録にあったものと同じ番号から電話がかかってきたのを見たからです。
思い返せば、イルヤスのことを昔から知っているのも、彼と繋がりがあったのもヘンリーだけでした。
シリアは、イルヤスと繋がりがある自分に調査が入ることを想定して、ヘンリーが偽の情報を仕込んだのだと推測。
そしてビルのオフィスからテヘランに電話をかけ、2人に疑いの目を向けさせたのだと………。
ヘンリーの裏切りを知ったシリアは、思わず嘔吐してしまうほどのショックを受けました。
そして急いで自分の荷物を持ってヘンリーの家から出て、ウィーン支局に戻ると、ヴィックから「ハイジャック犯を含め、乗客乗員120人全員が死亡した」と知らされます。
ヴィック曰く、約5分前、アル・ダイラットは交渉しないとメッセージを送ってきたとのこと。コックピットにいたパイロットの2人の死因は窒息死でした。
アーンストは殺害に使われたのは、青酸カリの数十倍の殺傷力がある神経ガス「サリン」だと推測。
急いで胃腸管の緊張を低下させ、運動を抑制する薬「アトロピン」と、有機リン剤中毒の特異的な解毒剤「プラリドキシム」を機内に運んで投与しなければ、サリンを吸った乗客乗員を救うことはできません。
ですが、まだ現場の状況が分かっていないため、誰も機内に入ることはできないのです。
ウィーン支局に戻ったヘンリーは、すれ違うように出ていったシリアを追いかけましたが、彼女は逃げるように去っていきました。
シリアがヘンリーの元を去った理由は、彼を愛しているが故に、彼が無実でイルヤスの番号ではないと信じようと、何も見なかったふりをしようと思ったからでした。
そんな自分の気持ちを無碍にするかのように、ビルと自分を8年後に責めてきたヘンリーを、シリアは糾弾しました。
ここでヘンリーは、レストランに見知らぬ男たちが入ってきたことと、頭痛に眩暈、鼻血と突如不調をきたしたことから、事情聴取されているのはシリアではなく自分だったと悟りました。
実は、シリアはカールとある取引をしていました。CIAと永遠に関係を断つことと、家族に関わらないことを条件に、事件の捜査に協力すると。
つまりこのレストランも店員も客も全て、カールたちがヘンリーに事情聴取を行うために仕込んだものです。
シリアは彼が自殺したと処分される前に、なぜ組織を裏切り、120人の命を奪ったのか尋ねます。
ここで場面は8年前に戻り、事件当日の夕方、ヘンリーはタハールに指定された場所へ行きました。そこで彼を待っていたのはイルヤスでした。
ヘンリーによってモスクワに売られたイルヤスは半年間、テロ事件や人質解放などに対応するロシアの特殊部隊「スペツナズ」による拷問を受けました。
スペツナズは、パンを焼きながら機密情報をアメリカに売った卑怯者だ、テロリストだとイルヤスを罵倒しました。
イルヤスの娘は連れ去られた父親が拷問されていることも、その生死さえ知りませんでした。
イルヤスは家族と共にイランに逃げましたが、2004年2月、アメリカの制裁によって薬を得られなかった彼女はたった6歳で死んでしまいました。
ヘンリーにそう話した後、イルヤスはシリアに電話をかけるよう命じます。ヘンリーからの電話に出たのは、ムハンマドでした。
ムハンマドとシリアの会話を聞かせながら、イルヤスはヘンリーに、アメリカとオーストリアが事件に関して何を知っているのかとゆすります。
シリアを人質を取られているため、ヘンリーはやむを得ず、着陸装置から機内に突入しようとしていること、アハメドの存在を話してしまいました。
ヘンリーにはもう突入か、受刑者の釈放かどちらかになることを祈るしかありませんでした。
自分を救うためにした裏切り行為だったことを知って涙するシリア。実は既にイルヤスが自白し、ヘンリーの名前を吐いたため、あとはシリアがヘンリーを事情聴取してその裏付けを取るだけでした。
意識が朦朧とするなか、ヘンリーはシリアに「望みがあるのかと思った、俺たちに望みはあると、ずっと何年も…。でももう疲れた」、「ごめんな、愛してる」と言い、この場から去るよう促します。
後ろ髪を引かれる思いでレストランから去ったシリア。彼女を尾行しているトレブルから「彼女を始末するなら今しかない」と連絡を受けるも、瀕死のヘンリーにはもう言葉を返す余裕がありませんでした。
ヘンリーが事切れたのを見て、カールはヴィックに「終わった」と報告。ヴィックは複雑な気持ちで、ヘンリーの家が家宅捜査されているのを眺めていました。
帰宅したシリアは娘を抱っこしながら、ヘンリーに想いを馳せます。
映画『オールド・ナイフ~127便の真実~』の感想と評価
Amazonプライム『オールド・ナイフ~127便の真実~』
最悪な結末に終わった8年前の127便のハイジャック事件が再捜査されることになり、CIA内部にいる裏切り者を炙り出すことになったヘンリー。
作中でヘンリーがいかにシリアを愛していたか、それは再会して人妻となった彼女を見ても変わらなかったことが描かれており、そんな彼女を尋問することは彼にとってどれほど辛いものだったか考えるだけでも胸が痛いです。
ヘンリーとビル、それぞれに事情聴取を行い、127便の事件を振り返っていくヘンリー。本当に物語の終盤まで、ビルが内通者だったと登場人物も観ている人もそう考えていました。
ところがどっこい、シリアの告白により、真の裏切り者はヘンリーだったことが判明。予想外の展開に驚きのあまり唖然としてしまいます。
ですがヘンリーは、テロ行為に関与したのではありません。シリアを人質に取られて仕方なく、事件の黒幕であったイルヤスに機密情報を流してしまっただけです。
でもそれは結果的に、CIAとオーストリア当局の人質救出作戦を失敗させ、アハメドたち乗客乗員120人の命を奪う結末を招いてしまいました。
イルヤスとの確執があったせいで、機密情報を漏らす羽目になってしまったヘンリー自身はもちろん、全てはシリアを守るためだったと知った彼女にとっても、なんともやるせ無い気持ちだったと考察します。
まとめ
Amazonプライム『オールド・ナイフ~127便の真実~』
救出作戦に失敗し、最悪な結末に終わった8年前の127便のハイジャック事件を、CIAの諜報員で元恋人同士だった男女が、食事をしながら事件当時の様子を振り返っていく、アメリカのスパイサスペンス作品でした。
本作の見どころは、事件の真相に近づいていくにつれて、ヘンリーとシリアの仕事と恋愛感情との境界線が曖昧になっていくところと、世界規模のスパイ行為などです。
物語が終わりに近づくにつれて、作中で張られていた伏線が次々と回収され、点と点がつながって1つの真相に辿り着いた時、登場人物たちの気持ちを考えると複雑な気持ちになりますが、そういうことだったのかととてもスカッとした気持ちになります。
また作中で登場したカールはヴィックと連絡を取っていたことから察するに、おそらくCIAの人間か、CIAと一緒に事件解決にあたっていたオーストリア当局の人間ではないかと考えられますが、最後までトレブルが何者だったのか明確に描かれていません。
スパイ同士の駆け引きや、人命がかかったときの致命的なジレンマなどをシリアスかつスリリングに描いたスパイサスペンス映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。
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