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映画『愛の鎖』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。キャストのキム・ヒョジン×キム・コッピ共演で“性と愛の形”を赤裸々に描く

  • Writer :
  • 大塚まき

キム・ヒョジン×キム・コッピが艶めかしい性と愛の行方を描く

U-NEXTで配信中の韓国映画『愛の鎖』。

『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』(2013)『結婚前夜 ~マリッジブルー~ 』(2013)のキム・ヒョジンと『息もできない』(2008)『クソすばらしいこの世界』(2013)『君は君で君だ』(2018)のキム・コッピが共演しています。


(C)NNBB Company

稀有な出来事で巡り合ったふたりの女は、触れ合った肌で愛をむき出しにしていきます。

赤裸々に映し出された愛の行方を描く『愛の鎖』を、ネタバレありでご紹介いたします。

映画『愛の鎖』の作品情報


(C)NNBB Company

【配信】
2022年(韓国映画)

【原題】
창피해

【監督・脚本】
キム・スヒョン

【キャスト】
キム・ヒョジン、キム・コッピ、ソ・ヒョンジン、オ・ミンソク

【作品概要】
美術大学の教授から作品のモデルに抜擢されたユン・ジウ役に『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』(2013)『結婚前夜 ~マリッジブルー~ 』(2013)のキム・ヒョジン。

ある事件をきっかけにユン・ジウと逃亡することになるカン・ジウ役を『息もできない』(2008)『マジック&ロス』(2011)『クソすばらしいこの世界』(2013)『君は君で君だ』(2018)のキム・コッピが演じました。

第15回釜山国際映画祭で公開され、第61回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で上映されました。

映画『愛の鎖』あらすじとネタバレ

美術大学の先生、チョン・ジウから作品を酷評されたヒジンは自暴自棄になり、今まで描いた絵を破ります。そのスケッチの1枚に女性のヌードが描かれた絵がチョン・ジウの目に留まりました。

チョン・ジウは、新しい作品のモデルに“水中でも長い間耐えられて、内に秘めたものがある女性”を探していました。

モデルのオーディションに掛けるお金がなく、手短な銭湯で行うと、そこにヒジンの絵に描かれたユン・ジウが参加します。何人かいた女性たちの中で彼女だけが水風呂の中に潜っているのを見たチョン・ジウはすぐさま彼女を抜擢します。

ヒジンが家出中の時、お金に困って声を掛けたのがユン・ジウでした。彼女はフラれた直後で傷心し、女性しか愛せないと言っていたことをチョン・ジウに伝えます。

早速、チョン・ジウはプロモーションビデオの撮影にユン・ジウとヒジン、撮影隊を連れて海に行きます。

作品の構想が決まってないチョン・ジウは、ユン・ジウがこっぴどくフラれた時の心境や女性同士のカップルのことを聞き出し、そのことをヒントに作品の構想を膨らませようします。

チョン・ジウのピアスとユン・ジウがしているピアスは同じもので、互いに片耳だけをしていました。偶然にもチョン・ジウのピアスを電車で盗んだのは、ユン・ジウの恋人だったカン・ジウだったのです。

スリの常習犯だったカン・ジウはある時、警官とは知らずに財布を盗もうとしたのがばれてしまい、仲間がその警官をナイフで刺して車で逃走します。その時に突然、空からマネキンが落ちてきたのを人だと思い車は転倒。

デパートに勤めるユン・ジウは、マネキンと同じ服を着て、屋上からそのマネキンを落下させたのでした。マネキンが空を舞う姿を自分に投影したかったのです。

車に乗っていた仲間は逃げ出し、カン・ジウだけが追ってきた警官のミニョンに捕まります。片手だけ手錠をかけられたカン・ジウともう片方にはユン・ジウの手に手錠がかけられ、警察署へと連行されることに。

ユン・ジウが中国料理が食べたくなったと言ったのをきっかけに、弟の店でお酒を飲ませて、聴取することを思いつき、カン・ジウにスリになった動機や生い立ちを聞き出そうとします。

警官には黙っていましたが、あとになってユン・ジウにスリをする時の手さばきが芸術的でポケットを探る時の手つきに惹き付けられたと話しました。

カン・ジウが学生の頃に母親が自殺し、正気を失ったふりをして精神病院に入院させられていたことを話し出します。

そんな中、ミニョンの弟にかかってきた一本の電話をきっかけに弟はやけ酒をあおりミニョンに絡み始め、兄弟喧嘩が勃発します。

ふたりのジウはその隙をついて、タクシーに乗って逃亡したのでした。

海での撮影は、天候が悪くてその日は宿泊先に泊まることになりました。

部屋に集まるとチョン・ジウは、光州事件で銃撃されて死んだある女性の遺影写真をヒジンとユン・ジウに見せ、その女性のお腹には赤ちゃんがいて母子ともに死亡したと言います。

亡くなったあともお腹の子が動いていたこと、もし生きていたらユン・ジウと同じくらいの年齢かもしれないとも言い、この事件を作品のテーマにしていることを明かしました。

それから、チョン・ジウとヒジンは、ユン・ジウの彼女との話の続きを聞きたがりました。

カン・ジウは、逃亡中に昔付き合っていた男を呼びだして、食料とお金を持ってこさせました。その夜、その男とカン・ジウがセックスをするので目が覚めます。

手錠で繋がれているため、手が引っ張られ隣りで抱き合うユン・ジウと目が合い、彼女の肌に触れ、衝撃が走ります。

その後、手錠を外してもらう人の元へ車で送ってもらうことになったふたりのジウは、互いのことを意識しはじめ、車の後部座席で手錠でつながれた手と手が触れあい、絡み合います。

山奥で車を止めてもらい向かった先は、家を出た父親のところでした。出家して山奥でお坊さんとして暮らしていたのです。

父親は不在で、家に入ったふたりは、かまどで火を起こします。母親が亡くなった後に父親が贈り物だと言って見せてくれた稲妻をユン・ジウにも見せました。

その夜ふたりはキスをして抱き寄せ合いました。

翌朝、ユン・ジウが目を覚ますと手錠が外れていていました。カン・ジウは知らない男と運動会の二人三脚をするように足に手錠をかけてやってきます。

そのふたりを見たユン・ジウは、その男が父親とは知らずに逃げ出すように山を下りていき、何事もなかったと自分に言い聞かせてガソリンスタンドで新しい職をはじめます。

そんな時、仕事から家に戻ると玄関にカン・ジウの姿が。はじめは突き放したユン・ジウでしたが、「あのときのように私を触ってよ」というカン・ジウの言葉で、家に招き入れます。

裸になったふたりは肌と肌とを重ね合い、抱き合います。離れがたい濃密な時間を過ごしたふたりは、そのまま暮らしはじめました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『愛の鎖』ネタバレ・結末の記載がございます。『愛の鎖』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

ヒジンがある時、ユン・ジウに電話で「教えて、男と女の違いは?」と聞くと、「女性と寝てみて自分が女だと初めて感じたの」とユン・ジウは答えます。

翌日、ヒジンとユン・ジウは浜辺でバギーを走らせます。

カン・ジウと一緒に暮らしはじめた頃、ユン・ジウは幸せをかみしめていました。図書館で読んだという「利己的遺伝子と利他的遺伝子」という本のことを話します。

利他的遺伝子とは、自分自身の安定と種の保存より他人を尊重し配慮する傾向を持っている遺伝子のことで、自分を利他的遺伝子の継承者だと言うユン・ジウ。

しかし、カン・ジウは不服そうな眼差しをユン・ジウに向けます。

ユン・ジウは、このままカン・ジウと安定した生活を送ることを望み、銀行の通帳を作り、安定した職に就こうと考えていることを伝えます。

ある時、カン・ジウからメールが届き、姿を消しました。メールは、ユン・ジウのことを想いながら男と寝たら妊娠したから、ひとりで産んで育てるという内容でした。

海での撮影は、天候が少し回復したのを見計らって、ボートを出航しようと撮影隊の男たちが集まります。男たちがモデルが服を脱ぐことを卑猥な目で見ると、チョン・ジウが男たちにボートから降りるように一喝しました。

結局、チョン・ジウがボートの舵をとり、ヒジンとユン・ジウの3人で撮影をすることになり、冷たい海の中に潜っていきます。

チョン・ジウが「受胎して手足が生え、目や鼻 口ができて」「母体との共感が生まれる」「感覚が生まれて恥じらいを覚える」などのメッセージを伝え、ユン・ジウは海の中でそのイメージを体現しようとします。

ウエディングドレスのような白いドレスを着たチョン・ジウが砂浜をはしゃぎながら駆け回っていると、銃声の音で倒れ込むチョン・ジウ。

その頃、カン・ジウは父の元で3000回の礼拝をしていました。

礼拝が終わり、汗びっしょりに倒れているのを父親が介助します。服を脱がし露わになった肌を撫でられて目を覚ますカン・ジウ。

一度訪ねてきたユン・ジウがバス停でうずくまっている姿をカン・ジウが目撃します。

カン・ジウの姿を見て強引にキスをするユン・ジウは、無反応なカン・ジウに涙を流し、「あなたは私の心を弄んだだけなのよ」と訴えます。

何も言わずに去っていこうとするカン・ジウに「あなたなんか大嫌い」と叫びます。

カン・ジウは、苦しそうに泣き崩れ、「私の心が抱えている不安がわかる?」「もう帰ってよ」と半狂乱に叫びます。

ユン・ジウは静かに「あなたを愛したのも私で」「今、憎んでいるのも私よ」「自分のこととして記憶して」と言い残してその場を去りました。

海の撮影が終わり、撮影隊は皆、駅で電車が来るのを待っていました。

ヒジンは「宿にヘアピンを忘れたから、一緒に戻らない?」とユン・ジウを誘います。

バスで移動する中、ヒジンにカン・ジウのことを「愛してると感じたのはいつ?」と聞かれて、「1人で食事している時」と答えます。

ユン・ジウは記憶を辿ると、ある食堂でごはんを食べている時に、食堂のウエイトレスが夫のことを恥ずかしそうに話す会話を聞いて、1人で食事をします。

映画『愛の鎖』感想と評価

本作は「恥ずかしい(창피해)」という原題が付けられています。

同じジウという名前の女性が偶然にも出会い、人を愛した時の“恥じらい”を浮かび上がらせていきます。

いつしか女性しか愛せなくなっていたユン・ジウとスリの常習犯カン・ジウ。ふたりの出会いは、ひとつの手錠で繋がれるという稀有な出来事でした。

自尊心の低いユン・ジウは、心のどこかで私なんて何をやってもうまくいかないと思っています。一方でカン・ジウは、幼少の頃に母親が目の前で自殺したことをきっかけに自己肯定感が低く育ち、その分、自己と他人の境界線が薄いような印象を受けます。

そんなふたりが出会い、肌と肌が重なり合うのです。それはただ欲望に流された肉体関係というよりは、自分に足りないものを肌を重ねることで埋めていくかのように感じます。

運命を感じ愛し始めるユン・ジウと、愛に溺れたいと思いながらも愛を信じられないカン・ジウの間で、すれ違いが生じてきます。

そして、愛を守るために安定を望むユン・ジウと、その愛が窮屈で逃げ出すことしかできないカン・ジウの行方は、さらに恥じらいを露わにしていきます。

映画の後半には「愛とは相手を幸せにすること」という字幕が出ますが、そんなきれいごとでは終わりません。

ふたりのジウは、愛にすがりつき、懇願し、叶わなければ相手を罵倒します。相手よりも自己の不安や喪失感を拭い去ることができないでいます。

それでも、誰かを愛した瞬間だけは、ほんとうだったのです。愛が憎しみに変わったとしてもその一瞬一瞬を記憶しているのは己以外の何者でもないのです。

だからこそ、映画のラストでヒジンから「愛してると感じたのはいつ?」と聞かれて、「1人で食事している時」と答えたのではないでしょうか。

それは、紛れもなく愛した記憶を1人になって思い出し、人を愛した時に生じる恥じらいを知っているということなのでしょう。

まとめ

映画ではふたりのジウの行方が過去を思い出す形で語られますが、もうひとり美術大学の教授をするチョンもまた同じジウという名前です。

自身のアート作品のテーマでは、ある臨月の女性が撃たれて亡くなった事件をモチーフにして、その母体にいた胎児がどんな気持ちだったのかということに焦点を当て、海での撮影に向かいます。

チョンが作品で追い求めたのは、母体で受胎した胎児のイメージでした。胎児の感覚が生まれた時に“恥じらい”を覚えると語り、「胎児も夢を見る、でもそれは聞いたり感じたりする夢だって、どこか女性と似てない?」と言います。

ユン・ジウは、そんな体験を通して、カン・ジウを愛した過去のことを、さも今起こったかのように思い出し追体験しているようでした。

女性的な感覚があるのならば、どんなものなのでしょうか。

本作からは、強力にも過去の出来事を記憶することなのかもしれないと思わせました。

そして、時に過去の出来事と現在がシンクロしたように、同じように映し出す画面を作り出しました。

そんな一つの場面で過去のカン・ジウと現在のユン・ジウが窓から同じ稲妻を見るシーンがとても印象深く残っています。

独特なセリフ回し、キム・ヒョジンとキム・コッピが体現した艶めかしさに隠された赤裸々な感情をあぶり出しました。



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