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Entry 2021/02/10
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韓国映画『10人の泥棒たち』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。キムスヒョンの銀幕デビューに豪華キャスト集結!|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー22

  • Writer :
  • 咲田真菜

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第22回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画の数々をCinemarcheのシネマダイバーがご紹介する紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第22回は、アジア映画の流れを変えたともいわれているチェ・ドンフン監督の『10人の泥棒たち』

巨大カジノから世界に1つしかない幻のダイヤモンド「太陽の涙」を盗み出すという一大計画を請け負った10人の泥棒たち。それぞれの技を駆使して奪取を目指します。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『10人の泥棒たち』の作品情報

(C)2012 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND CAPER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

【配信】
2013年(韓国映画)

【監督・脚本】
チェ・ドンフン

【キャスト】
キム・ユンソク、キム・ヘス、イ・ジョンジェ、チョン・ジヒョン、サイモン・ヤム、キム・スヒョン、キム・ヘスク、オ・ダルス、アンジェリカ・リー、デレク・ツァン

【作品概要】
韓国を拠点とする窃盗団のボス、ポパイ(イ・ジョンジェ)のもとに、かつてのパートナー、マカオ・パク(キム・ユンソク)から巨大カジノから世界に1つしかない幻のダイヤモンド「太陽の涙」を盗み出すという一大計画が持ち込まれます。

これを請け負った韓国窃盗団の5人は香港に赴き、そこで中国人の4人組と合流。生き方も目的も異なる10人がチームを組み、太陽の涙奪取を目指します。本作では、『チェイサー』(2009)のキム・ユンソク、『イルマーレ』(2001)のイ・ジョンジェ、『猟奇的な彼女』(2003)のチョン・ジヒョン、『エグザイル 絆』(2006)のサイモン・ヤムほか、アジアの豪華スターが集結しました。

映画『10人の泥棒たち』のあらすじとネタバレ

(C)2012 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND CAPER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

伝説の泥棒マカオ・パクは、マカオのカジノで一夜にして88億ウォンを稼いだという伝説の持ち主。本音を顔に出さず、ポーカーフェイスを崩さないので誰からも信用されていません。

そんな彼が幻のダイヤモンド「太陽の涙」を強奪するため、韓国、中国から昔の仲間を香港に集合させます。

韓国チームのリーダー・ポパイ、美貌の金庫破り・ペプシ(キム・ヘス)、ロープ使いの達人・イェニコール(チョン・ジヒョン)、演技力で相手を欺くベテラン泥棒・ガム(キム・ヘスク)、韓国チームで一番若いながらも誰に対しても臆さないザンパノ(キム・スヒョン)。

豊富なキャリアを持つ中国チームのリーダー・チェン(サイモン・ヤム)、韓国人で中国語が堪能なアンドリュー(オ・ダルス)、金庫破りのジュリー(アンジェリカ・リー)、無口なガンマン、ジョニー(デレク・ツァン)。

最強の韓国、中国チーム10人が集まり、香港・マカオ・プサンを舞台に太陽の涙強奪への計画がスタートします。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『10人の泥棒たち』ネタバレ・結末の記載がございます。『10人の泥棒たち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

韓国・中国両チームの初顔合わせの場で、マカオ・パクは思いがけずペプシと再会します。2人の間には因縁があり、4年前、マカオ・パクはポパイとペプシとともに金塊を強奪する際に2人を裏切り、そのためペプシは刑務所送りになりました。

「ペプシは韓国へ帰国させろ。金庫破りはお前がやれ」と言うマカオ・パク。しかしポパイは、動揺するマカオ・パクの姿を喜んでいるかのような嫌味な笑みを浮かべ「手をけがしているから金庫破りはできない」と言い放ち、二人はもみ合いになります。

結局ペプシも今回の計画に加担することになるのですが、過去の裏切りを許していないポパイは、ペプシとともに、太陽の涙を独り占めする作戦を密かに進めます。

太陽の涙は、東京で展示中に盗まれ、ダイヤ商人・ティファニーの手元にありました。ティファニーは、中国の闇商人として恐れられているウェイ・ホンの女といわれている危険な女性。

韓国・中国の両チームは、初対面の場で「なめられてたまるか」と互いにけん制し合っていましたが、今回の仕事が想像以上に危ないものだと分かり躊躇します。しかし成功したら一攫千金という魅力に勝てず引き受けることになり、一行はマカオへ向かいます。

ガムとチェンは日本人夫婦に扮し、ティファニーが常連となっているカジノで様子を伺い、建物や従業員の導線の確認はアンドリュー、ポパイはマカオ入りしたティファニーを見張り、イェニコールとザンパノはコンビを組んでホテルの従業員をターゲットにしてセキュリティーカードをゲットします。

そして金庫破りに挑むのは、ペプシとジュリー。2人は作戦を練るのですが、ジュリーの正体はウェイ・ホンを5年間追っている香港警察の警察官でした。マカオ・パクを捕まえることで、ウェイ・ホンを逮捕するため、仲間に入ったのです。

作戦決行の前日、今度の仕事が終わったら引退したいと語るガムから「マカオ・パクが好きだから集中できないでしょ」と突っ込まれ動揺するペプシ、「マカオ・パクは怪しい。失敗すると思う。ティファニーの金だけを狙おう」と新たな作戦を口走るチェンが率いる中国チームの面々、それぞれが思い思いの夜を過ごしました。

決行の日、日本人夫婦を装ったチェンとガムは20階のスイートルームで待機。その間ガムはチェンの身の上話を聞くうちに、お互い抱いた特別な感情に逆らうことができず、つかの間、愛を確かめ合います。

いよいよ作戦開始となり、イェニコールがチェンとガムの部屋に現れ、ザンパノとのコンビで30階へ侵入しようとスタンバイします。

お互い憎からず思っている2人ですが、大仕事を前にザンパノから「俺を愛してる?」と聞かれ、一瞬戸惑うイェニコール。でもそこはプロの泥棒として、ティファニーの部屋への侵入します。

ほどなくポパイ、ペプシ、ジュリーがイェニコールに導かれて、ティファニーの部屋へ忍び込むことに成功。金庫破りに取り掛かっている時に、VIPルームでは想定外の出来事が起こっていました。チェンがティファニーに銃を向けたのです。

苦戦しながらもやっと開いた金庫の中には、目的の太陽の涙はありませんでした。そんな中、マカオ・パクから全員に向けて「ウェイ・ホンには一人で会います。お世話になりました」とメールがはいり、マカオ・パクの裏切りに全員が慌てます。

老人になりすまし、従業員のふりをしていたマカオ・パクは、一人太陽の涙を手に入れて逃げました。

作戦を実行した泥棒たちは必死で逃げようとしますが、ザンパノはイェニコールをかばって捕まり、ガムとチェンは激しい銃撃戦の末、車で逃走するも事故死、ポパイ、ペプシ、アンドリューも逃げきれずに逮捕されます。

(C)2012 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND CAPER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

警察へ移送される途中、警官から銃を奪って逃げたポパイとアンドリュー。取り残されたペプシは、海に落ちてしまった車の中で必死に脱出すべく、もがきます。もはやこれまでと諦めた時に、謎の老人に助けられますが、この老人こそがマカオ・パクでした。

太陽の涙を手に入れたマカオ・パクは、ウェイ・ホンに連絡をし、取引先の韓国・釜山へ向かいます。ポパイ、ペプシ、イェニコール、アンドリューもマカオ・パクを追って韓国・釜山にたどり着いたものの、足取りはつかめないままでした。

4人はこれまでのいきさつを捨て、マカオ・パクを追うべく団結。まずはマカオ・パクとグルになっていたティファニーの異母姉妹を名乗る女性の行方を突き止め、居場所を問い詰めます。同時に香港警察のジュリーも韓国入りし、マカオ・パクを追います。

ようやくマカオ・パクを見つけた4人。ティファニーの異母姉妹を名乗る女性との会話を盗聴していると、4年前の金塊強奪でマカオ・パクは、ポパイがワイアーを切ったために大けがをしたと語り始め、ポパイとペプシは動揺します。

いよいよマカオ・パクがウェイ・ホンと取引をしようとした時、かつてマカオ・パクの父親がウェイ・ホンに殺されたことを明かします。

父親の敵であるウェイ・ホンに偽の太陽の涙を渡して、逃げるマカオ・パク。香港警察も交えて、激しいワイアーアクションと銃撃戦が繰り広げられます。

一方でマカオ・パクが隠した本物の太陽の涙を手に入れたイェニコールは狂喜乱舞します。ポパイはイェニコールに「仲間だろ。信じて俺に渡せ」と迫り、イェニコールは素直に従います。

目的のものを手にしたポパイは独り占めしようと逃げるのですが、途中で車にひかれ、手にしていた太陽の涙が粉々になったことで偽物を渡されたことを知るのでした。

釜山の港まで逃げてきたマカオ・パクは、追ってきたウェイ・ホンと対決。ジュリーに逮捕されたウェイ・ホンを横目に逃走します。

ペプシはマカオ・パクによって手渡されたキーで4年前に強奪した金塊を手にし、香港へ向かいます。飛行機の中で、かつてイェニコールが騙した美術館の館長と出会い、イェニコールから太陽の涙を奪うために彼を利用することにしました。

香港で、太陽の涙を手にし、意気揚々としたイェニコールと再会。しかしペプシが美術館の館長と登場したことで慌てふためき、姿を隠すためにプールへ飛び込みました。

イェニコールが水中で必死にもがいているその隙に、マカオ・パクはイェニコールの部屋へ忍び込み、太陽の涙を手にしたのでした。

映画『10人の泥棒たち』の感想と評価

(C)2012 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND CAPER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

韓国、マカオ、香港を舞台にしたスケールの大きさ

冒頭では、ポパイ、ガム、イェニコール、ザンパノの4人がチームを組んで、イェニコールが誘惑した男が館長を務める韓国の美術館から高価な美術品を盗み出します。泥棒とはいえ、プロの鮮やかな手口に感心してしまうのですが、このあとマカオ、香港を舞台にスケールの大きい物語が展開していきます。

太陽の涙を盗み出す手口は巧妙で、10人がそれぞれの役割を担う作戦は複雑。作戦以外に泥棒たちが欲にかられて独自の行動を取るので、予想外の出来事が起きます。

また、ワイアーアクションや逃走する際の銃撃戦の迫力も相当なもの。後半、マカオ・パクを演じるキム・ユンソクの鮮やかなワイアーアクションが披露されますが、これだけのアクションをスタントなしでこなしたというから驚きです。

そして韓国映画ならではの衝撃的なシーンも健在。中でも恋仲になったチェンとガムが事故死する場面はゾッとするものがあり、「そこを映すか!」といいたくなるようなシーンに、しばし茫然としてしまうでしょう。

美しすぎる泥棒、ペプシ&イェニコール

(C)2012 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND CAPER FILM ALL RIGHTS RESERVED.
 

ワイアーアクションや激しい銃撃戦など「男臭さ」が前面に出ている本作ですが、女性の泥棒、ペプシとイェニコールの美しさが際立つ作品でもあります。

ペプシを演じるキム・ヘスが金庫破りをするシーンでは、その横顔の美しさに見とれてしまいます。

なかなか開かない金庫にハラハラする一方で、真剣に金庫破りに挑むペプシの美しい姿をもっと見ていたいと矛盾した気持ちを抱いてしまうほど。クールでスタイリッシュ、でもマカオ・パクへの愛を隠すことができない一途なところも魅力的です。

イェニコールは、典型的な性悪女で、抜群のルックスとスタイルを武器に男たちをだまし、金品を奪います。ロープ使いの達人で、見事なアクションを見せるのですが、ペプシと大きく違うのは、おどけた仕草をするところです。

太陽の涙を手にした時のはしゃぎっぷり、香港でペプシと再会した時、かつて騙した美術館の館長を見て焦り、思わずプールに飛び込むシーンなど、お茶目でかわいらしい泥棒をチョン・ジヒョンが魅力的に演じました。

まとめ

(C)2012 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND CAPER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

本作の魅力はなんといっても豪華な俳優陣です。ドラマ『サイコだけど大丈夫』(2020)などで、現在大活躍のキム・スヒョンがスクリーンデビューを飾った作品でもあり、『星から来たあなた』(2013)で共演したチョン・ジヒョンとのコンビに喜んだファンもいることでしょう。

キム・スヒョンは流暢な中国語を披露し、初々しいけれどイェニコールをかばって逮捕される骨太さもある役を素敵に演じていました。

もう一つ、映画『イルマーレ』(2000)で共演したイ・ジョンジェとチョン・ジヒョンのツーショットも忘れてはいけないポイントです。

甘く切ない恋物語を演じていたイ・ジョンジェとチョン・ジヒョンが、本作では泥棒仲間として、最終的にイェニコールにはめられたポパイが悪態をつくというのが面白いところです。

豪華なキャストで、壮大な物語を豪快なアクションで楽しめる、数少ない映画だといえるでしょう。

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