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Entry 2021/09/09
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『スイング・ステート』感想考察と内容解説。映画監督ジョンスチュワートが描く総選挙の裏事情と政党政治の混乱|映画という星空を知るひとよ75

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第75回

映画『スイング・ステート』は、共和党と民主党が争った米大統領選でトランプに敗北した民主党選挙参謀が、起死回生を狙って田舎の町長選挙で大波乱を巻き起こすコメディです。

架空の小さな町の選挙が民主党と共和党の代理戦争になっていくストーリーをコミカルに描き、アメリカの政治システムを滑稽かつ辛辣に批判しています。

主役には“コメディ・キング”のスティーヴ・カレル。そして“世界で最も美しい顔”1位の経歴を持つコメディエンヌのローズ・バーンが共演します。

監督・脚本は、16年間にわたり政治風刺コメディ番組「ザ・デイリー・ショー」の司会を務め、アカデミー賞でも2度司会を担当したジョン・スチュワート。

映画『スイング・ステート』は、2021年9月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷・渋谷シネクイントほか全国ロードショー!

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

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映画『スイング・ステート』の作品情報


(C)2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
IRRESISTIBLE

【脚本・監督】
ジョン・スチュワート

【キャスト】
スティーヴ・カレル、クリス・クーパー、マッケンジー・デイビス、トファー・グレイス、ナターシャ・リオン、ローズ・バーン、ブレント・セクストン、ブレア・サムズ、C・J・ウィルソン

【作品情報】
『スイング・ステート』は、共和党と民主党が争った米大統領選でトランプに敗北した民主党選挙参謀が、起死回生を狙って田舎の町長選挙で大波乱を巻き起こす様子を描いたコメディ。

監督・脚本は、16年間にわたり政治風刺コメディ番組「ザ・デイリー・ショー」の司会を務めたジョン・スチュワートが務め、演技派としての評価が高まる中、コメディ作品に帰ってきたスティーヴ・カレルが主役を演じます。

フェイス役のローズ・バーンほか、アカデミー賞助演男優賞受賞の名優クリス・クーパー、『オデッセイ』(2015)、『ブレードランナー2049』(2017)のマッケンジー・デイヴィスが脇を固めました。

映画『スイング・ステート』のあらすじ


(C)2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved

民主党の選挙参謀ゲイリー・ジマー(スティーヴ・カレル)は、ヒラリー・クリントンが大敗し、打ちのめされていました。

ある日、ゲイリーは、ウィスコンシンで不法移民のために立ち上がる退役軍人ジャック・ヘイスティングス大佐(クリス・クーパー)のYouTube動画を見つけました。ゲイリーは革新的な演説で人々の胸を打つ彼こそが、中西部で民主党の票を取り戻す起死回生の秘策だと確信します。

ゲイリーは、スイング・ステート(激戦州)のウィスコンシンを足掛かりに地盤を広げるべきと党を説得し、単身アポなしで田舎の寂れた町ディアラケンへと赴き、大佐に民主党からの町長選出馬を要請します。

ゲイリー自身が指揮を執ることを条件に大佐は出馬を了承し、大佐の娘ダイアナ(マッケンジー・デイヴィス)や住民のボランティアとの地道な選挙活動がスタート。

一方の共和党は、対立候補の現役町長ブラウンのもとに、ゲイリーの宿敵にしてトランプの選挙参謀であるフェイス・ブルースター(ローズ・バーン)を送りこみました。

その日から、ディアラーケン町長選をめぐるゲイリーVSフェイスの戦い……否、民主党VS共和党の巨額を投じた「仁義なき代理戦争」の幕が切って落とされました。

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映画『スイング・ステート』の感想と評価


(C)2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved

「スイング・ステート」での戦いがもたらすもの

「スイング・ステート」とは、アメリカ大統領選挙において、共和党・民主党の支持率が拮抗し、選挙の度に勝利政党が変動する州のことをいいます。州の揺れ動く政治意志表示そのものであり、接戦であればあるほど、スイング・ステートでの勝利が大統領選の勝敗の鍵を握ると言われています。

映画『スイング・ステート』では、民主党のヒラリー・クリントンが共和党のドナルド・J・トランプに選挙で大敗した後、次選挙へ向けて選挙参謀たちが動き出します。

その策とは、文字通り「スイング・ステート」であるウィスコンシン州の町長を自分の指示する党派から選出すること。

民主党の選挙参謀ゲイリーが目を付けたのは、ウィスコンシンで不法移民のために立ち上がる退役軍人。彼を新しいリーダーとして民主党から町長に出馬させようと目論見ます。

まずは、ターゲットの退役軍人ジャック大佐を懐柔し選挙への出馬を了解させ、地道な選挙活動を始めますが、対立候補の現役町長の参謀に、共和党が宿敵・トランプの選挙参謀フェイスを送り込んできました。

感動的なスピーチを用意した演説、巨額な資金を投じて流される選挙CM、対戦相手の足元をすくうようなゴシップと、ここで勃発する大統領選の縮小版のようなミニバトルに注目です。

選挙に勝つために繰り出されるあの手この手の作戦は、国民の感情と意志を揺さぶり続けます。本作は、その結末を皮肉もこめてコミカルに演出しています。

「選挙エンターテインメント」の仕掛け人


(C)2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved

映画『スイング・ステート』の脚本・監督は、16年もの間、政治風刺コメディ番組である「ザ・デイリー・ショー」の司会を務めたジョン・スチュワートが手掛けています。

政治のナウを伝える情報番組に身を置いてきた彼だからこそ、「民主党VS共和党」の2大バトルをユーモアたっぷりに描き、政治に疎い人にもよくわかる映画に仕上がっていると言えます。

選挙の裏表を知っている情報通の監督と、芸達者なキャスト陣の表情豊かな人間味あふれる演技によって、思わず笑ってしまう場面満載ですが、一国のリーダーを選ぶ際の重要な判断の基準を諭してくれています。

選挙に勝つにはどうすればいいのでしょう。純粋に人道に乗っ取った戦略だけで果たして大丈夫なのでしょうか。選挙の参謀を担うプロたちが裏でこそこそ動く姿を面白おかしく描きながらも、そのやり方を辛辣に批判しているとも捉えることが出来ます。

観終わった後には、「選挙ってこんなのか?」と疑問を感じ、「日本は大丈夫?」と思わずにはいられなくなるでしょう。

まとめ


(C)2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved

選挙エンターテインメント『スイング・ステート』をご紹介しました。

スイング・ステートで繰り広げる選挙戦の一部始終は、支持率のアップダウンを常に気に掛ける攻防激しいものでした。支持率情報に一喜一憂する選挙関係者たちの姿は、まるでゲームを楽しむ子どものようでもあり、人間的で親近感が湧いて来ます。

しかし、選挙はゲームではありません。本作は、裏細工あり、大金をばらまくCM作戦あり、もはや何でもありという風潮すら感じる大統領選挙システムを、笑いを含みながらも辛辣に批判している作品と言えます。

映画『スイング・ステート』は、2021年9月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷・渋谷シネクイントほか全国ロードショー!

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら





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