映画『ダイ・ハード』はブルース・ウィリスが災難に巻き込まれる刑事ジョン・マクレーンを演じた人気シリーズ第1弾。
監督は、『プレデター』(1987)や『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)のジョン・マクティアナン。
今では「ハリー・ポッター」シリーズのスネイプ役でお馴染みとなったアラン・リックマンの初出演映画となっています。
クリスマスイブの夜に、高層ビルに立てこもった犯罪グループと偶然居合わせた刑事マクレーマンが、激しい攻防戦を繰り広げる大ヒットアクション映画です。
シリーズの第1弾となった本作がなぜ多くのファンの心を掴んでいるのか、その魅力について解説していきます。
映画『ダイ・ハード』の作品情報
【公開】
1988年(アメリカ)
【監督】
ジョン・マクティアナン
【キャスト】
ブルース・ウィリス、レジナルド・ベルジョンソン、ウィリアム・アザートン、アラン・リックマン、アレクサンダー・ゴドノフ
【作品概要】
ロデリック・ソープの原作小説をもとに映画化された作品。ブルース・ウィリスは、本作でスターの仲間入りを果たした後『パルプフィクション』(1994)や『12モンキーズ』(1995)、『フィフスエレメント』(1997)、『アルマゲドン』(1998)、『シックス・センス』(1999)など数多くのヒット作に出演しています。
敵のハンス役を演じたアラン・リックマンは、本作が映画初出演作品。その後『ロビン・フッド』(1991)では英国アカデミー賞助演男優賞を受賞。
「ラスプーチン」では、ゴールデングローブ賞男優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)を受賞しています。後に、「ハリー・ポッター」シリーズのセブルス・スネイプ先生役で広く知られ、2016年に膵臓がんにより惜しまれながら逝去しました。
本作の監督ジョン・マクティアナンは、シュワルツェネッガー主演の『プレデター』(1987)や『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993)などアクション映画を中心に監督を務めました。本シリーズでは、『ダイ・ハード3』(1995)の監督兼製作も務めています。
本作は、1988年のアカデミー賞で、視覚効果賞や音響賞、編集賞にノミネートされました。日本でも人気となり、日本アカデミー賞とブルーリボン賞で外国作品賞を受賞。
映画『ダイ・ハード』のネタバレとあらすじ
クリスマスの日、別居中の妻に会うために飛行機でロサンゼルスへやってきたジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)。彼はニューヨークで11年のキャリアを積んでいる刑事です。
マクレーンはドライバーのアーガイルに連れられて、妻ホリー(ボニー・べデリア)が働く日系企業ナカトミ社の高層ビルへと向かいます。
ナカトミ社はハイテク高層ビルで、ホリーは営業部長をしているキャリアウーマンです。
マクレーンと妻は想い合ってはいるものの、仕事の関係で一緒に暮らすことができず、2人は心が通じ合わず言い合いになってしまいます。
2人にはルーシーという幼い娘と息子、そして子守のポリーナが家で待っていました。
ナカトミビルに侵入者が現れます。数名の男たによる犯罪グループです。
彼らは、受付の男を打ち殺した後、電話線を切り銃を持ってビルの従業員が集まる部屋を襲撃します。
グループのリーダー、ハンス(アラン・リックマン)はナカトミ社の社長のタカギ(ジェームズ繁田)を連行し、6億4千万ドル相当の債権を手に入れるために、社長専用コンピューターに設定されているアクセスコードを聞き出そうとします。
しかし、どうしても明かさないタカギ社長をハンスは撃ち殺しました。
その様子を見ていたマクレーンはどうにかしようと、ビルの火災警報を鳴らします。警察が一度はビルに向かいますが、すぐに解除されて引き返してしまいました。
マクレーンは敵グループの1人ともみ合いになり、階段を転がり落ちた拍子に相手の男は死んでしまいました。
マクレーンはその男にサンタ帽をかぶせ、「こいつのライフル銃はいただいた。HOHOHO」とスウェットの胸に書いて、犯罪グループたちが集まる部屋へと向けたエレベーターの中に乗せて送ります。
仲間を殺されたグループのメンバーは怒ります。死んだ男はカールという男の弟でした。
マクレーンは屋上から警察に無線で連絡します。その音声を無線で聞いていたカールとマルコが屋上へと向かい、マクレーンを追い詰めます。
エレベーターシャフトに逃げ込んだジョン。ショットガンのベルトで宙吊りになり、どうにかビル内のエアダクトに潜り込みます。
マルコとカールに見つかったマクレーン。銃撃戦の末、マクレーンは2人を撃ち殺しました。
通報を聞いた警官のアル・パウエル巡査(レジナルド・ヴェルジョンソン)がようやくナカトミビルにやってきました。
ビルに入って様子をみるものの、警備員のふりをした犯罪グループの1人にうまくごまかされて帰ろうとします。
ビルの上の階からその様子を見ていたマクレーンは、慌てて犯罪グループのひとりの遺体をパトカーの上に落とします。
パウエルは慌てて応援を要請しました。その会話は敵グループも聞いています。
地元警察が応援にやってきたものの、ロビンソン警視らはパウエルの言うことを全く聞こうとせず、マクレーンがテロリストの一員で騙しているのではないかと決めつけます。
そして、警察は強行突破することに決めました。無線でパウエルはそのことをマクレーンに知らせます。
犯罪グループは全てお見通しで、警察のライトに向かって銃撃をし、ビルの鍵を壊して侵入しようとしていた警察たちは全員返り討ちに会います。
その様子をビルの上から見ていたマクレーンは、ハンスらを止めるためにC4爆弾を椅子にパソコンを括りつけて、上層階から下に落として、大爆発を引き起こします。
その状況はテレビ中継されました。そして、犯罪組織のリーダーであるハンスの身元も報道されます。西ドイツ民族解放組織にいた人物でした。
ホリーの同僚のエリス(ハート・ボックナー)がハンスに取引を持ちかけます。マクレーンがニューヨーク市警であることも教えてしまいました。
そしてエリスは無線でマクレーンに話しかけ、自分たちは友達だから自分の命と引き換えに起爆装置の場所を聞き出そうとします。
しかし、マクレーンはエリスにそんな危険なことは辞めるように言いますが、エリスは無残にもハンスから撃ち殺されてされてしまいました。
そのやり取りを聞いていたロビンソン巡査は、マクレーンはエリスを見殺しにしたと言って責めます。
しかし、パウエルは反論します。助けに行っても2人とも殺されていたし、この状況なら仕方ないと。
しかし、全く聞く耳を持たないロビンソンはパウエルに帰れと言います。パウエルは最後まで見届けると言って残ります。
警察に無線で、同志らを刑務所から釈放するよう要請します。北アイルランド解放戦線の7人とカナダやスリランカなどの解放運動に参加していた人々のことです。
現場にFBI捜査官2人がやって来ました。ロビンソンは用済みだと言われます。
ハンスがビルの外に点検しに行ったところ、マクレーンと遭遇します。ハンスは人質のふりをして、屋上から逃げようとしていたのだと話します。
会話を交わし、打ち解けた様子の2人。マクレーンは裸足だが、パンツがないよりましだと冗談を言い、ハンスと笑い合います。
マクレーンは彼を人質になった社員だと信じ込み、ピストルを渡します。そして、マクレーンが背を向けた瞬間、ハンスは彼に銃を向け無線で仲間に来るように知らせます。
しかし、マクレーンは銃の弾を抜いてありました。そこへハンスの部下たちが到着します。銃撃戦になり、ビル内を逃げ回りながらハンスの部下を1人撃ち殺したマクレーン。
ハンスはマクレーンが裸足なことを知っていたのでガラスを撃ち、マクレーンを追い詰めます。どうにか逃げ出したマクレーン。
パウエルと無線で話すマクレーン。13歳の少年を誤って撃ってしまったことを悔やみ、巡回勤務になったのだと話します。
そして指揮権がFBIに渡ったことを伝えます。ビルの監視カメラからFBIと電気職員がビルの外にいることを知ります。
ビルがでその電源を切ってしまうと、タイムロックが外れることになり、金庫にアクセスできるということが、はじめからハンスたちの狙いだったのです。
外では、FBIと市の職員らがもめています。その電源を切ることで、周辺10区画が停電してしまう大変な事態になってしまいますが、FBIの説得で仕方なく電源を切りました。
ビルの金庫に入り、大金を手に入れたハンスたち。そんなことも知らずにFBIはヘリで乗り込もうとしています。ヘリが屋上に着いたら爆破して、その間に逃げるつもりです。
映画『ダイ・ハード』の感想と評価
クリスマスを舞台にしたアクション映画の定番といえばこの映画!
ド派手なアクションシーンはもちろんのこと、巧みな演出と設定があるからこそ最後まで楽しめる作品ともいえます。
高層ビルの構造を生かした巧みな演出
本作の大きな特徴となっているのは、高層ビルという構造を生かしたアクションシーンです。
ナカトミビルで繰り広げられる犯罪グループ対マクレーンの戦いは、爆発あり!大落下あり!のド派手なものとなっていますが、高層ビルならではの演出が満載となっています。
まず序盤に登場するのは、上層階にいたマクレーンが、見回りに来たパウエル巡査に気付いてもらうため、ビルの上からパトカーめがけて犯罪グループの1人の死体を落とした場面です。
パトカーに乗っているパウエル巡査に気付かせるためにはしょうがないことでしたが、死体を投げ落とすという刑事らしからぬ行動には、手段を選ばないマクレーンらしさをも感じます。
中盤には、ビルに侵入しようとしたロス市警がハンスらに返り討ちに遭っているのを救うために、マクレーンが下の階に爆弾を落として注意を引くシーンがあります。
これは、1階にいる人質と上層階にいるマクレーン、マクレーンを探し回るハンスらの高層ビルだからこその空間を利用した演出といえます。
そして、本作の中で見せ場となっているのが、マクレーンがエレーベーターシャフトにぶら下がるシーンです。
底が見えないエレベーターシャフトの迫力と、ライフル銃に付いたベルトだけでぶら下がるマクレーンの姿は、手に汗握る緊張感満点のシーンとなっています。
さらに最後には、マクレーンは消火用ホースを体に括りつけて、爆発と同時に屋上から飛び降りるという荒業までやってのけます。
どのシーンもビルの高低差や構造ならではの演出。そこでマクレーンが無茶をするからこそ、私たちは手に汗握り、緊張感を味わうことができるのです。
別居中の夫婦
マクレーンと妻のホリーが別居中という設定も、本作にとって欠かせない仕掛けとなっています。
ホリーは営業部長として出世し、彼女のオフィスの扉には「ホリー・ジェネロ」と旧姓が明記されていました。このことでマクレーンとホリーは大喧嘩しますが、これがかえって後々功をそうします。
ハンスがマクレーンのフルネームを知ってからも、ホリーとの関係がバレずに済んだからです。
また、ホリーを怪しんだハンスが「ミセス」と呼んだのに対して、ホリーは未婚女性の敬称「ミス」と訂正するセリフもこの設定が活かされたところです。
さらに、夫婦関係がぎくしゃくしていたことから、ホリーはデスクの家族写真が入った写真立てを伏せていました。
このことで、後にホリーのデスクに陣取ったハンスの目に写真を見られずに済みました。
ホリーがマクレーンの妻だとハンスにバレてしまえば、マクレーンは窮地に立たされるのでこれらの設定は実はとても重要な意味を持っていたのだといえます。
主人公と敵の魅力
今作がシリーズ化されて多くの人に愛される理由はこの第1作目の秀逸さあってのこと。
その魅力は主人公のジョン・マクレーンと敵のハンス・グルーバーに他なりません。
マクレーンは、妻と子どもたちとは別居中。クリスマスイブに家族で過ごせるかもしれないという期待を抱いてやってきたロサンゼルスで、事件に巻き込まれてしまいます。
地元警察に協力を求めてもパウエル巡査以外は余計なことしかせず、身元を隠していたマクレーンは犯罪グループの一味ではないかと責められるばかり。
首元が伸びた白いタンクトップがだんだん真っ黒になり、終いには上半身裸に裸足という状態で、ボロボロになっていくマクレーンの姿はなんだか可哀想。
ぶつくさと文句を言いながら、潔い殺しっぷりで次々に敵を倒しまくる姿は爽快で、どんな災難にも打ち勝ってくれるのではないかと期待してしまいます。
その結果様々な事件に巻き込まれるシリーズが続くのですが……。
そして、アラン・リックマン演じるハンス・グルーバーの魅力は今作の面白さを語るにあたって欠かすことはできません。
パリッとしたスーツで冷静沈着なハンスは、いかにもエリート階級の人物に見えます。そして、感情的な殺しは決してしない知的なキャラクターです。
頭脳派のテロリストではなく、金銭目的のどろぼうというのも意外性があってシンプルに面白いところです。
後述する、人質のふりをしたシーンのアラン・リックマンの変貌ぶりは言うまでもなく見事で、一役でまるで違う二面性を見せてくれる彼の演技力に、魅力を感じる人も多いのではないでしょうか。
2つの初対面
本作には、2つの重要な初対面を描いたシークエンスが登場します。
1つ目は、マクレーンとハンスが初めて会う場面です。互いに声しか知らなかったので、ハンスはとっさに人質のふりをしてマクレーンを騙します。
この場面では、瞬時の判断で芝居を打ったハンスの賢さと器用さが見られます。
冷静沈着なハンスが、一変して気弱なサラリーマンのように見えてしまうのは、アラン・リックマンの俳優としての素晴らしさを感じられるところです。
2つ目は、無事にビルから脱出したマクレーンがパウエル巡査と初めて顔を合わせる場面です。
パウエル巡査は、マクレーンが1人でビル内で奮闘していた時、ロス市警もFBIも当てにならない中で唯一まっとうな意見を言ってマクレーンをサポートしていた優秀な警官です。
ビルから無事に出てくることができたマクレーンとパウエルがようやく顔を合わせることができたシーンは、ラブロマンスと思うほどのロマンティックなムードがありました。
今作はこの2つの初対面のシーンを迎えるまで、主要キャラクターたちはずっと無線を使って会話しているので、直接顔を合わせません。
そのことで成立するスリリングさと感動が、本作の大きな魅力となっています。
まとめ
多くの人がご存じの通り、今作ののち、『ダイ・ハード2』(1990)、『ダイ・ハード3』(1995)、『ダイ・ハード4.0』(2007)そして『ダイ・ハード ラスト・デイ』(2013)と続くシリーズ映画となりました。
本作のヒットを受けて製作された『ダイ・ハード2』は、ナカトミビルの騒動から1年後のワシントン・ダレス空港を舞台に、またもやクリスマスの夜に犯罪に巻き込まれるマクレーン刑事の活躍を描いています。
1作目で飛行機嫌いをしたり、ナカトミビルで散々な目に遭い「仕事でも高いところはもうごめんだ」とぼやいていたマクレーンが、舞台を空港に変えヘリから飛行機へ飛び移るなどの激しい戦いを強いられてしまうのです。
クリスマスの夜に最も不幸な男、マクレーンはぼやきながらも戦います。
1作目、2作目と続けて観ることで、マクレーンの雄姿と哀愁をより楽しめるのではないでしょうか。