日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』は2022年1月7日(金)劇場上映開始、1月8日(土)オンライン上映開始
操り人形とは思えない細やかな動きと表情が印象的なスーパーマリオネーションという手法を使った「サンダーバード」。
1965年にイギリスでテレビ放映されて人気を博し、1966年にはNHKで放送され、その後、民放でも何度も再放送がされてきました。
その伝説的作品の新作である日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』が上映されます。
音声ドラマだけで映像化されていなかった3つのエピソードを当時の手法を完全に再現して撮影し、日本オリジナルで編集がされました。
「小さい頃に見た!」という方はもちろん、「サンダーバードって聞いたことがない」という方にもぜひご覧いただきたい作品です。
CONTENTS
日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』の作品情報
【公開】
2022年(イギリス映画)
【監督】
ジャスティン・T・リー(「サンダーバード登場」)
スティーブン・ラリビエー(「雪男の恐怖」)
デヴィッド・エリオット(「大豪邸、襲撃」)
【脚本】
アラン・フェネル(「サンダーバード登場」、「大豪邸、襲撃」)
デヴィッド・グラハム、デスモンド・サンダース(「雪男の恐怖」)
【声の出演】
満島ひかり(ペネロープ)、井上和彦(パーカー)、大塚芳忠(ジェフ・トレーシー)、森川智之(スコット・トレーシー) 、日野聡(バージル・トレーシー)、櫻井孝宏(ジョン・トレーシー)、江口拓也(ゴードン・トレーシー)、堀内賢雄(ブレインズ)、立木文彦(フッド)
【作品概要】
日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』は放送当時に発売された音声ドラマレコードで、映像化されていない3話のエピソードを当時と同じスーパーマリオネーションの手法を再現して制作されたものをベースにしています。
本国イギリスの熱狂的なサンダーバードファンのクラウドファンディングによって制作され、日本公開用にファンを公言する樋口真嗣監督が構成を担当して独自に再編集した特別版。
今回の中心人物、国際救助隊員ペネロープは、モデルもこなす貴族の娘で元スパイ。初代ペネロープの声は黒柳徹子が務めていましたが、「トットてれび」で黒柳役を演じた満島ひかりが黒柳徹子からバトンタッチされました。
ペネロープの相棒とも言える執事パーカー役は井上和彦。かつてトレーシー家の長男スコットを演じた大塚芳忠が、半世紀の時を経て、父親で国際救助隊の創設者で総司令官のジェフ・トレーシーを演じています。
日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』のあらすじ
この作品は3つの短編によって構成されています。
「サンダーバード登場」
レディ・ペネロープはジェフ・トレーシーに招かれて、執事のパーカーとともに太平洋上の秘密の場所にある美しい島<トレーシー・アイランド>を訪れます。
そこで島に隠された驚くべき技術とサンダーバード1号から5号までを目撃。エージェントとして大きな秘密を共有したペネロープが加わり、国際救助隊は本格稼働をスタートしました。
「雪男の恐怖」
ウラン工場が爆破されて炎上する事件が発生したのと同じ頃、エベレストで雪男に襲撃され、救助を請う通信を国際救助隊がキャッチ。ジェフ・トレーシーに調査を依頼されたペネロープはスキーコプターに乗り込んで、パーカーとともに現場に向かいました。
ところが国際救助隊の宿敵フッドによって罠が仕組まれており、パーカーはフッドによって監禁されてしまい、ペネロープは雪深い場所に取り残されてしまいました。
「大豪邸、襲撃」
イギリスの大邸宅に忍び込み、貴重品を奪って屋敷を爆破する連続強盗事件が発生。次に自分の屋敷がターゲットになることを予見したペネロープはわざと屋敷を留守にして、犯人たちを呼びよせる作戦を決行しました。
そして、犯人たちの次なる襲撃先を知り、ペネロープはパーカーとともに現場に向かいましたが、犯人に見つかって気を失ってしまいます。仕掛けられた爆発の時間が迫る中、国際救助隊はペネロープを救い出すことができるのでしょうか。
日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』の感想と評価
「サンダーバード」の舞台は2065年の近未来。世界各地で発生した事故や災害で危険にさらされた人々を「国際救助隊」と名乗る秘密組織がスーパーメカを駆使して救助する活躍を描いた物語です。
国際救助隊はアメリカ空軍に入隊し、宇宙局事業団に参加して月面ステーションの建設に携わった後、事業家に転身し、天才的頭脳で成功して大富豪になったジェフ・トレーシーが災害で危機的な状況に陥った人々を救うために私費で設立しました。
彼にはスコット、ジョン、バージル、ゴードン、アランという5人の息子がおり、彼らが父親の指令の下、さまざまなメカを駆使して奮闘します。
今回の新作はトレーシー家とペネロープの出会いから国際救助隊の本格始動までを描いた「サンダーバード登場」、雪男に襲われた人々を救助するためエベレストへ向かったペネロープたちが宿敵フッドの罠により絶体絶命の危機に陥る「雪男の恐怖」、連続強盗犯に狙われたペネロープを救うべく奔走する国際救助隊の戦いを描く「大豪邸、襲撃」の3話を基に構成されています。
国際救助隊の専属諜報員・ペネロープの魅力
見どころは何と言ってもペネロープの美しさ。大きな青い瞳は義眼と同技術で作られており、透明感があって人形とは思えないリアルな表情を生み出しています。
手や足のアップのときには本物の人間の手や足を映しているのですが、今作ではペネロープが足をくじいてしまうシーンがあり、華奢な足首が腫れた感じは痛々しさがより伝わってきました。
また貴族の生まれということもあり、圧倒的な気品に満ちあふれています。
さすが貴族のお嬢さまという感じで衣裳は華やかでドレッシーなドレスから快活な感じのボーダーTシャツまでTPOに合わせてふんだんに用意されました。
それを持参してトレーシー家を訪れていましたが、運ばされる執事のパーカーは大変です。
そのパーカーですが、ペネロープに対して忠義心に持ち、執事の仕事に誇りを持っており、ペネロープがちょっと高飛車な物言いをしても、さらりと交わしつつ指示された仕事はきちんとやり遂げます。
この2人のやり取りは見ていて楽しいので、注目ポイントです。
最先端の科学技術で開発されたスーパーメカを一挙紹介
1つめのエピソードでトレーシー家を訪れたペネロープがジェフから息子5人と彼らが搭乗するサンダーバードのメカを紹介されます。
かつて見ていた人には懐かしく、初めてサンダーバードを見る人にはいい導入となるでしょう。
サンダーバード1号
マッハ約20で地球上のどこでも1時間以内に急行できる超音速有人ロケットで、長男のスコット・トレーシーが操縦。
サンダーバード2号
国際救助隊の全ての救急メカを事故災害現場に運ぶ、圧倒的な輸送力と丈夫な機体の超大型輸送機で、三男のバージル・トレーシーが操縦。
サンダーバード3号
オレンジ色の巨大宇宙ロケットで、宇宙空間での救助作業全般とサンダーバード5号の補給などの連絡機として活躍し、五男のアラン・トレーシーが操縦。
サンダーバード4号
唯一の水陸両用機で、マジックハンド、水中ミサイル、強力ライトなど様々な救助装置を備えています。通常はサンダーバード2号の4番コンテナに収納され、運搬されており、四男のゴードン・トレーシーが操縦。
サンダーバード5号
国際救助隊の宇宙ステーションで、極秘に地球の軌道をまわり、地上のあらゆる言語の救難信号をキャッチすると救助要請を本部に急報。次男のジョン・トレイシーがメインオペレーターとして滞在しています。
国際救助隊のトレーシー兄弟たちが駆使するサンダーバードはそれぞれの役割を果たしている何一つ欠かせないスーパーメカであり、この個性こそが作品の魅力へと繋がっています。
他にも構成担当した樋口真嗣の推しメカ“ジェットモグラ”を始め、ペネロープが乗るピンクのロールスロイス、ペネロープ号(FAB1)や磁力牽引車、ジェットブルドーザー、高速エレベーターカーなど魅力的なメカたちが多数登場します。
日本語劇場版は『シン・ウルトラマン』樋口真嗣が構成した世界唯一の作品
本作は「サンダーバード」生誕50周年に合わせて、イギリス本国で制作された3本の“「サンダーバード」50周年記念エピソード”を『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督が構成を担い、1本の劇場版作品として完成させました。
3つのエピソードをただ繋ぐだけだと単調で派手なシーンが少ないため、アクションやメカシーンを含め、サンダーバードならではの映像を追加して、1本の映画として飽きさせない構成としてあります。
3話めの「大豪邸、襲撃」で大豪邸が爆発されるシーンのメイキングなどが挿入されていますが、スタジオの中でミニチュアの豪邸を本当に爆発させているのが映し出されます。
今ならVFXを駆使して安全に映像化するところでしょう。メイキングを見ることで本編がより迫力満点に見えてきます。
また、スタッフのインタビュー映像や人形を操って実際に撮影しているシーンも出てきますが、スタッフの誰もがとても楽しそう。一緒に作りたくなってしまいます。
まとめ
「サンダーバード」は英国テレビ界の名匠ジェリー・アンダーソンの代表作で、1965年にイギリスで放送が開始。
全32話までテレビシリーズは続き、その後も2本の劇場映画『劇場版・サンダーバード』(1966)と『サンダーバード6号』(1968)が制作されました。『2001年宇宙の旅』『スター・ウォーズ』『007』など錚々たる作品に多大なる影響を与えた伝説的作品として知られています。
日本でも1966年4月からNHKで放送をスタート。同時期に『ウルトラマン』を制作していた特撮の父・円谷英二は大きな衝撃を受けたと言われています。
その後、円谷によって制作された『ウルトラセブン』(1967)のメカニック描写にも影響を与え、以降の日本特撮、ロボット、SFアニメ作品がその影響を受けています。
例えば、超音速有人ロケットのサンダーバード1号はサンダーバード基地のカモフラージュされたプールの下から飛び立つのですが、プールが割れてマジンガーZが出てくる有名なシーンを思い出します。
『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督や『シン・仮面ライダー』監督の庵野秀明監督はファンであることを公言していますから、きっとお二人の作品にもサンダーバードと同じような構図のシーンがあることでしょう。
「サンダーバード」を知らなかった方もこの作品を観ることで、「あのシーンはもしかしたら…」という発見がありかもしれません。