連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第43回
平和な日常が突如終わりを告げ、不安とパニックの渦中へと引きずり込まれる絶望感を描いた映画の数々。
私たちの身にもいつ起きるか分からない突然の崩壊を描いた物語は、映画だからこそエンターテイメントとして楽しむことの出来るジャンルです。
今回はNetflixで鑑賞することの出来る独占配信のパニックスリラー映画『AWAKE/アウェイク』(2021)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『AWAKE/アウェイク』の作品情報
【原題】
Awake
【配信日】
2021年6月9日(アメリカ映画)
【監督】
マーク・ラソ
【キャスト】
ジーナ・ロドリゲス、アリアナ・グリーンブラット、フランシス・フィッシャー、ジェニファー・ジェイソン・リー、バリー・ペッパー、シャミア・アンダーソン、フィン・ジョーンズ
【作品概要】
『さようなら、コダクローム』(2018)のマーク・ラソが監督を務めたNetflix独占配信映画。
主演を『バーニング・オーシャン』(2017)に出演したジーナ・ロドリゲスが務め、『ヘイトフルエイト』(2016)の演技で高い評価を受けたジェニファー・ジェイソン・リーが共演として出演しました。
映画『AWAKE/アウェイク』のあらすじとネタバレ
研究所で警備の仕事を担う傍ら、陰で廃棄となった薬物を売りさばくジル。
ある日、別居する息子のノアと娘のマチルダを連れ車の運転をしていると、突然車が操作不能となり玉突き事故に巻き込まれ、車ごと湖に落ちてしまいます。
ノアとジルは無事に水から出ることが出来ましたが、マチルダは溺れてしまい駆けつけた警察官の救命行動によって息を吹き返します。
念のため病院へと急ぐジルたちでしたが、街全体が停電に見舞われ全ての電子機器が停止する現象によって病院はパニック状態に陥っていました。
病院の中では停電以外にもあらゆる治療でも目が覚めなかった意識不明の患者が次々と覚醒する異常な現象が発生。
実家に戻ったジルは翌日の仕事に備え早く寝ようとしますがなかなか寝付くことが出来ず、気が付くと母もノアも起きており、眠っているのはマチルダだけでした。
日も明けない時刻に実家を出たジルは街中の人々が興奮状態でパーティをしており、薬の売人から睡眠剤を高値で買い取ると提案されます。
誰もいない研究所内で再び廃棄薬剤を盗もうとするジルは急いで資料を探す精神科医のマーフィに目撃されますが、見咎められることはありませんでした。
マーフィはジルを今起きている現象の究明のために設立された「拠点」へと誘います。
停電は精神科医では何も出来ないとジルは拒否しますが、世界で起きているのは停電だけでなく全人類の不眠と言う異常現象でした。
人は睡眠を取らないと人体のあらゆる部分に影響が起き、数週間で死に至ります。
ジルは娘のマチルダは寝ていたと反論すると、研究者の1人が政府は1人の眠ることの出来る女性のために拠点を作ったほどに貴重な能力であることを話します。
街では睡眠薬の奪い合いによって一部の住民が暴徒化し、警察官を含めた多くの死者が出ていました。
ジルは眠ることの出来るマチルダがトラブルに巻き込まれることを恐れ実家へと戻りますが、マチルダは親権を取得しているジルの元夫ドリスが牧師を務める教会へと行っていました。
ドリスはマチルダの眠ることの出来る能力が神からのギフトであると考えると、彼女を使い興奮する住民を落ち着かせようと試みます。
しかし、警察官のジムを始め、眠ることの出来ず弱り始めた息子を持つ父親などの一部の住民がマチルダを生贄に捧げることで解放されると言う危険な思想を持ち始めます。
その場にジルとノア、そしてマチルダの特異性を知った研究員が現れますが、ジムがマチルダを拠点に連れていこうと考える研究員を射殺してしまい教会内はパニックに陥ります。
パニックに紛れて逃走したマチルダをジムたちは捜索し始めますが、ジルが最初にマチルダを見つけ、ノアと共に教会を脱出。
ノアは研究員の死体から拠点の場所を見つけ出しており、ジルにマチルダを拠点に連れて行くべきだと主張します。
ジルはマチルダが実験台に使われることに怯えていましたが、ノアの自分たちが不眠で死んでしまったら幼いマチルダも生きることはできないと言う言葉に納得し拠点を目指すことにします。
バッテリーを使わない車なら動くことを知ったジルは車を入手。
拠点を目指す最中、ジルはマーフィが睡眠を阻害する拷問を研究していたことをノアに話し、彼女は研究のためなら何でもすると不安を吐露します。
図書館で拠点への道を調べていると刑務所から脱獄した囚人たちと遭遇。
囚人にノアを置いていけと脅迫されるジルたちでしたが、囚人の1人であるダッジが車を運転し彼女たちを助けます。
ダッジはマチルダが寝ることの出来る少女であることを知ると治療法を探すジルたちの旅に同行。
道中、暴徒化した人間に襲われる4人でしたがダッジの協力もあり無事に拠点へと辿りつきました。
映画『AWAKE/アウェイク』の感想と評価
眠ることの大切さを知ることの出来る恐怖映画
『ドント・スリープ』(2016)のように眠ることが死を誘発するため眠らないように努力する構図を描いた映画は過去にも存在しました。
しかし、2021年に配信された『AWAKE/アウェイク』で描かれたのは全く新しい「睡眠」そのものが出来ないことに対する恐怖でした。
水分補給や食事と同様に睡眠は人体を維持するのに重要な要素の1つですが、有事の際には真っ先に切り詰められるものでもあります。
軽度でも集中力の低下を引き起こす危険性を含む睡眠不足は長期間その状態が続くことで意識の錯乱や脳障害を引き起こすとされています。
本作では物語の経過と共に登場人物の判断能力が欠如していき、最終盤では睡眠不足がきっかけとなり想像を絶するほどの崩壊を迎えることになります。
日々の暮らしの中で、忙しい人や趣味の多い人ほどおろそかにしてしまいがちな「睡眠」がいかに人間にとって大事なのかを改めて感じさせてくれる作品でした。
未知の恐怖と家族の逃避行
未知の恐怖が日常を襲い、救いを求めて安全地帯を目指す逃避行映画。
『バードボックス』(2018)で描かれたように法や秩序が失われ始めた時に見える人の本性はおぞましくもあり、同時に美しくもあります。
2人の子供を持つ主人公のジルは警備員の仕事をする傍ら、職場で廃棄となった医療薬剤を違法に売りさばく善良とは言えない人物として登場します。
しかし、家族の逃避行が始まると彼女の利己的とも言える行動は全て家族を想っての行動であることが分かり始め、過去の事柄によってバラバラだった絆が未知の恐怖と言う要素によって強く結びついていきます。
「日常の崩壊」と「家族の再生」、対角線に位置するような真逆の構造がぴったりとハマっている作品でした。
まとめ
奇抜な発想の光るワンシチュエーションスリラーや全く新しい要素を追加したパニックスリラーなど、Netflixによる独占配信映画は観たことのない楽しみを持つ映画を次々と体験させてくれます。
配信映画のラインナップの多さから、睡眠時間を削ってでも観たい映画は増えていく昨今ですが、最新恐怖映画『AWAKE/アウェイク』はそんな趣味人に対しても睡眠の大切さを改めて気づかせてくれる1作。
「何だか最近睡眠時間が少ない」と身に覚えのある方は心して鑑賞してみて欲しい映画です。
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