紺野彩夏、久保田紗友W主演。人とうまくつながれない少女たちが和太鼓を通してつながる映画『藍に響け』
すたひろ原作の漫画『和太鼓†ガールズ』を実写映画化。
誰にも言えない思いを抱えた環と、言葉を発することができないマリア。
人とうまくつながれない少女たちが和太鼓の“音”でつながり、心を通わせていく青春映画!
環役にはSeventeen専属モデルを卒業、現在はnon-no専属モデルとして活躍し、ドラマ『仮面ライダージオウ』(2019)にも出演した紺野彩夏。マリア役にはNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』(2016年)、ドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(2021)の久保田紗友。
映画『ちはやふる』(2016・2018)や『スウィング・ガールズ』(2004)などに続く新たな文化系青春映画が誕生!
映画『藍に響け』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
すたひろ『和太鼓†ガールズ』(双葉社刊)
【監督】
奥秋泰男
【脚本】
加藤綾子
【キャスト】
紺野彩夏、久保田紗友、永瀬莉子、板垣瑞生、小西桜子、山之内すず、茅島みずき、吉田凜音、川津明日香、山本亜依、カトウシンスケ、濱田マリ、須藤理彩、筒井真理子、吹越満
【作品概要】
監督を務めるのは映画『かぐらめ』(2015)で長編映画デビューを果たした奥秋泰男。
環役には本作が映画初主演となる紺野彩夏。2016年から2020年までSeventeen専属モデルを務め、2021年よりnon-no専属モデルとして活躍しているほか、『仮面ライダージオウ』(2019)、『ミスミソウ』(2017)などに出演。マリア役には『ハローグッバイ』(2017)で初主演を務め、映画『サヨナラまでの30分』(2020)、ドラマ『M 愛すべき人がいて』(2020)の久保田紗友が務めました。
共演者には、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(2019)、『初恋ロスタイム』(2019)の板垣瑞生、配信ドラマ『17.3 about a sex』(2020)の永瀬莉子、更に演技に初挑戦した山之内すずなど期待の若手が顔を揃えています。
また高校生らを見守る大人達をに濱田マリ、筒井真理子、須藤理彩、吹越満らが演じ、脇を固めます。
映画『藍に響け』のあらすじとネタバレ
ミッション系のお嬢様学校に通う松沢環(紺野彩夏)は幼馴染の佐伯美鈴(小西桜子)や友人と学校生活を送っていました。
しかし、父親の会社が倒産し、引っ越すことになり、習っていたバレエを辞めることになります。行き場のない思いを抱えながらも、誰にも言えず、母親に内緒で隠れるようにスーパーでバイトをし始めますが、気づかれてしまいます。
バレエも辞めることになり、母親に気を使ってアルバイトを始めた環に申し訳ない気持ちを感じている母親でしたが、環は自分の気持ちをうまく伝えられず、「大丈夫だから」と言葉を飲み込んでしまいます。
ある日学校から帰ろうとしていた環は、太鼓の鼓動を感じその音に吸い寄せられるように扉を開けると、そこで太鼓を叩いていたのは新島マリア(久保田紗友)でした。声帯損傷で声が出せないマリアでしたが、明るい表情で環に太鼓のバチを差し出して叩くよう促します。
そこへ部長の江森寿(永瀬莉子)をはじめ太鼓部の部員達が入ってきました。環は動揺したままその場をあとにしました。
翌日環の元にマリアは錦戸亜莉栖(山之内すず)、道長神乃(茅島みずき)と共にやってきて、寿の兄・江森司(板垣瑞生)も所属するプロの太鼓集団、雷鼓音のチケットを差し出します。よかったら一緒に行こうというマリアに対し、「太鼓なんてありえない」と環は言います。その言葉を近くにいた寿が耳にします。
断ったもののマリアの勢いに押された環は演奏を聴きにいき、圧巻のパフォーマンスに魅了されます。そして太鼓部に入ることを決意します。
しかし、部長の寿は反対し、自分と勝負して勝ったら入部を認めると言いました。その勝負とは30分間8分音符で太鼓を叩き続けることでした。初心者の環が寿に勝つことは誰が見ても不可能でした。
負けん気の強い環は勝負を受け入れ、太鼓を叩き始めます、最初は力強く腕を振り上げていたものの、次第に腕が上がらなくなっていきます。
それどころか立っているのもやっとで、今にも倒れそうになりながら太鼓を叩き続けます。不安そうに2人を見つめる部員達。とうとう環はもう数分で30分というところで倒れてしまいます。
慌てて駆け寄るマリア。環が持っていたバチは血が滲んでいました。負けたのだから入部は認めないという寿に対し、他の部員が人数足りていないのだから認めようとなだめます。
次の日から部活に参加することになった環ですが、皆と同じように太鼓が叩けるわけではなく、バチも持たせてもらえず、ひたすら素振りと声出しをするのみ。一人だけハブられていると感じた環は反抗的な態度を取ります。
「やる気あるの?」ときつく言う寿に環も言い返します。「こんな嫌がらせして楽しい?」そう叫んで練習を飛び出してしまった環をマリアが追いかけます。
素振りと声出しは基本で、初心者は基本練習をひたすら行なってやっと演奏することができるとマリアは環に伝えます。
自分と環は似ていると感じたマリアは自分が今、声を出す練習をしていること、声を出すことが夢だと秘密を打ち明けます。
マリアの話を聞いた環は積極的に基礎練習をするようになりました。その甲斐もあってとうとうバチで叩けるようになりました。
部員とも打ち解けつつある中、コンクールの課題曲が発表されました。コンペに向け練習している中、部室でとある写真を見つけます。
そこに映っていたのは国語教師のシスターニッチェ(筒井真理子)でした。ニッチェはかつて寿の父である雷太(吹越満)と雷鼓音を始めた和太鼓の名手で、スパルタコーチとして知られていたのです。
次第に「勝ちたい」という思いが強くなった環は、ニッチェに顧問をお願いするのはどうかと提案します。
断るニッチェでしたが、環は諦めずお願いを続けます。そしてニッチェの元に雷太がやってきて娘に太鼓を教えてほしいと頼みます。とうとう折れたニッチェのスパルタ指導が始まります。
映画『藍に響け』の感想と評価
誰にも言えない思いを抱える環と言葉を発することができないマリア。和太鼓の“音”で鼓動し、つながる少女たち。更にコンクールに向け、ぶつかりながらも一つになっていこうとする新たな文化系青春映画『藍に響け』。
本作は心情を多く語らないことで、太鼓を通して心を通わせていく様子を印象的に見せています。
父親が倒産し、バレエを辞めることになった心情を劇中で環が語ることはありません。冒頭浜辺でバレエシューズを燃やす場面があったり、何かもやもやを抱えている様子が環から感じられることはあっても言葉にすることはありません。
またマリアについても言葉を発することができない上に手話や筆記においても心情を吐露する場面はほとんどありません。
そんな2人が感情を爆発させるのは浜辺で取っ組み合いをした場面と、その後2人で感情をぶつけ合って太鼓を叩き合う場面の2つです。喧嘩も葛藤もぶつけるのは太鼓であり、太鼓の“音”なのです。
リズムがずれてしまい、演奏が失敗してしまった環に寿の兄・司が「俺なら太鼓の借りは太鼓で返す」と言います。
自分の感情も太鼓の“音”に表れ、対話をするのも太鼓の“音”なのです。まさに太鼓が一つのコミュニケーションのような役割を果たしているともいえます。
また、本作はキャストの皆が撮影の前から太鼓の練習をし、吹替なしで演奏に臨んでいます。実際に皆で練習し、演奏に挑んだからこそ生まれた一体感なのです。
主演の紺野彩夏、久保田紗友の2人の時にぶつかりながらも心を通わせていく関係性が印象的ですが、本作において重要な役割を果たしているのは部長の江森寿(永瀬莉子)でしょう。
彼女は部長として責任感もあり、誰よりも太鼓が好きで、勝ちたい気持ちも、上手くなりたい気持ちも人一倍ある人物だと言えます。
しかし、彼女には昔から自分よりも太鼓が上手い兄・司の存在がずっとありました。兄に対する複雑な気持ちに関しても劇中ではっきりと語られることはありません。
辞めたいと言った部員に対し、環は努力が足りないように見えると言います。環に対し、寿は誰もが環みたいなモチベーションでやれるわけではない、努力しても上手くなれない人もいると言います。
環が言っていることは間違っていない、自分自身が甘いことは分かりつつも、努力しても兄に敵わないと思わされてきた寿の苦しみがこの言葉に表れています。
そして寿は環に実力で負け、センターのポジションを取れませんでした。悔しさに涙を流す寿。家に帰っても心の中の葛藤が表れてしまっている寿に、兄・司は太鼓以外でもやるべきことがあるのではないか。太鼓では負けないけど、部長という立場に関しては寿の方が兄より勝ると思っていると伝えます。
センターを務められなくても、自分にできることを精一杯やろうと決意した寿は部員たちをまとめようと必死になり、演奏が失敗して険悪になってしまった次の日、何も言えない環に代わり部員の皆に謝ったのは寿でした。
自分自身の葛藤もありながら部長として成長した寿の姿は、この映画においても重要な存在になっています。
青春映画において主人公やライバルの存在が輝いて見えるのは、寿のような影で支える存在があってこそなのです。
まとめ
誰にも言えない思いを抱えた環が出会った太鼓。自分の思いをぶつけ、自分一人ではなく、皆で一つの音を目指す大切さに出会っていく環。言葉を発することができないが太鼓を通して自分を表現していくマリア。
うまく人とつながれない少女たちのみずみずしくも静かな情熱を感じさせる文化系青春映画『藍に響け』。
多くを語らないからこそ、ふとした言葉や表情が印象的に映り、感情を込めた太鼓の“音”として表れてきます。
ぶつかり合いながらも一つの目標に向かっていき迎えたコンクールの演奏は、吹き替えを使わずに実際に演奏しているからこそ説得力を持って観客に訴えかけます。
ぜひ劇場でその“音”を聞いてみてください。