連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第31回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第31回は、クレマン・コジトア監督が脚本・演出を務めた、映画『コンタクト 消滅領域』です。
ジェレミー・レニエがフランス軍の兵士を演じる、2015年製作のフランス・ベルギーの戦争アクションスリラー映画『コンタクト 消滅領域』。
アフガニスタンの人里離れた谷で、監視任務を任されたフランス軍の兵士たちは、ある日を境に1人ずつ仲間が姿を消していく恐怖に襲われてしまうというのは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
アフガニスタンを舞台に、正体不明の敵に仲間を攫われていくフランス軍の兵士たちが、どう立ち向かっていくかが描かれているフランス・ベルギーの戦争アクションスリラー映画、『コンタクト 消滅領域』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『コンタクト 消滅領域』の作品情報
【公開】
2015年(フランス・ベルギー映画)
【脚本】
トーマス・ビデガン、ナジャ・ドゥモシェル、クレマン・コジトア
【監督】
クレマン・コジトア
【キャスト】
ジェレミー・レニエ、スワン・アルロー、フィネガン・オールドフィールド、ケヴィン・アザイス、マルク・ロベール、クリストフ・テック、サム・ミルホセイニ、クレマン・ブレッソン、スティーブ・ティアンチュー、エドゥアール・コート、パトリック・リガルデ、ミカエル・ヴァンデル=メラン、クロエ・アスター、ビクター・ポンテコルヴォ
【作品概要】
クレマン・コジトア監督の、初の長編監督作品となる、フランス・ベルギーの戦争アクション・スリラー作品です。
『ホワイト・エレファント』(2012)や『最後のマイ・ウェイ』(2013)などに出演する、ジェレミー・レニエが主演を務め、フランス軍の兵士アンタレス・ボナシュー大尉を演じています。
映画『コンタクト 消滅領域』のあらすじとネタバレ
2014年、アフガニスタンのワクハン地区。フランス軍の撤退が続く中、フランス軍のアンタレス・ボナシュー大尉率いる分隊は、東西南北に監視所を作り、パキスタンとの国境にあるワクハン川の人里離れた谷での監視任務を任されました。
そんな時、谷の巡回から戻ってきた軍犬が横になった直後、アンタレス大尉たちが少し目を離した隙に、いなくなってしまいます。
突然の軍犬の失踪に戸惑うアンタレス大尉たち。しかも不自然なことに、現地の村人たちが突如、禁止と言い渡したはずの越境をしようとしたのです。
アンタレス大尉たちは、越境しようとした村人に威嚇射撃をしたのち、村に帰し、厳重注意をしました。すると今度は、アンタレス大尉たちは基地への帰り道で、姿が見えない敵からの襲撃を受けたのです。
兵士のウィリアム・デニスが緊張で手がおぼつかず、上手く銃に弾を装填できませんでしたが、全員無傷で基地へ帰還します。
その夜、兵士のステファン・テックとバジル・デルクール、ウィリアムら9人は、2人~3人1組に別れて夜間の監視業務を行いました。
深夜、1人基地に残り、監視所への伝達・司令を行っていたアンタレス大尉の元に、1本の無線が入ります。
連絡したのは北監視所にいた兵士。彼曰く、10人余りの村人が、尾根の方で何かを焼いているようだということでした。
だからといって、村人たちは監視所に近づく様子はなく、何かを燃やした後、すぐに村へ帰っていったのです。
しかし翌朝、アンタレス大尉の元へ、再び北監視所にいる兵士から連絡がありました。お互いのことも監視し合っていたはずの監視所の兵士たち。
ところが、北監視所にいる兵士が村人たちを監視して少し目を離した隙に、南監視所にいたテックとデルクールがいなくなってしまったのです。
村人たちを監視する前、北監視所にいた兵士はテックたちと無線で連絡を取り合っていましたが、その後の無線連絡で応答がなく、様子を見に行ったら監視所はもぬけの殻…。
すぐさまアンタレス大尉や副官のジャン・バプティスト・フレリング軍曹、ウィリアムとパトリック・メルシエ、ジェレミア・レルノフスキーとエティエンヌ・バクサー伍長、ベンジャミン・ジュリアードとカリル・カーンは南監視所とその周辺の捜索を開始します。
南監視所の中は誰かに荒らされたり、誰かとテックたちが争ったりした形跡はなく、彼らの荷物もそのまま置いてありました。
とりあえずアンタレス大尉たちは、尾根の方へ向かい、村人たちが焼いたものが何か確認しに行きます。
焼かれていたのは羊。昨日の昼間の村人たちとの会合で、越境しようとした羊飼いの男が、威嚇射撃にビックリして飛び出し、鉄条網に絡まって死んでしまったという羊でした。
尾根でその事を話し合っていたアンタレス大尉たちは、羊飼いの男の息子ともう1人の少年が、どこかに走り去っていく姿を発見します。
アンタレス大尉たちはすぐさま少年たちを捕まえ、村に帰すついでに、尾根にいたことやこの谷で何が起きているのか、村人たちに問いただしました。
しかし村人たちは、少年たちが出歩いた理由をはぐらかし、何かを隠し庇っている様子…。アンタレス大尉たちはとりあえず、基地へ戻り、30秒ごとに撮影される衛星写真を見て、深夜に起きた出来事を1つずつ整理していきます。
まず、深夜2時44分に村人たちは村を出て尾根へ向かい、朝6時30分に村へ帰還。その間、国境付近に不審な動きなど何もありませんでした。
そこまで確認したアンタレス大尉は、おもむろにウィリアムを離れた場所に移動させ、防寒用のアルミ製のブランケットを被せます。
次にアンタレス大尉は、メルシエやレルノフスキー、バクサー伍長に暗視ゴーグルでウィリアムが見えるかどうか聞きました。
バクサー伍長たちの答えはノー。ブランケットは熱を遮断してしまうため、暗視ゴーグルにブランケットを被った人間の熱反応が映らないのです。
そう解説したアンタレフ大尉は、皆にブランケットの着用を禁じ、暗視ゴーグルに頼ルナと注意したのち、こう告げます。
「俺は兵士や遺体、車も戦地に残さない。徹底的に探す。」「常に班長から見える場所にいろ、昼夜問わずだ」
「誰も出入りできないよう、銃撃用の窓を閉め、人感センサーのライトを設置すること」「正確な情報が手に入るまでは、失踪したことは家族に伏せ、私用電話を禁ずる」
テックたちの謎の失踪から2日目、監視所周辺の谷を捜索していたレルノフスキーやメルシエら5人は、谷の中に錆びた鉄製の杭が1本、不自然に地面に突き刺さっているのを発見。
すぐさま持っていた金属探知機で調べましたが、何の反応もなく、ただの杭だとレルノフスキたちは判断しました。
その後、アンタレス大尉たちは各監視所の銃撃用の窓を閉めるため、鉄製の板をつけ、監視所のすぐそばに人感センサーを設置しました。
その夜、アンタレス大尉たちが待機する基地へ、1人のアフガニスタン人男性が、バイクに乗って接近。
アンタレス大尉たちは男を警戒し、催涙ガスを投げたのち、男のボディーチェックをします。男が武器を持っていないことを確認した後、アンタレス大尉たちはカリルに通訳を頼み、ここに何しに来たのか尋ねました。
男はパキスタンとアフガニスタンで活動する、イスラム主義組織「タリバーン」のリーダーであるスータン大佐の遣いであり、アンタレス大尉たちに何か伝言することはないか聞きに来たのです。
アンタレス大尉たちはテックたちの顔写真を渡し、タリバーンで何か目撃情報があれば教えて欲しいと伝言を頼みました。
それともう1つ、ジャン軍曹はカリルを通じて、男に「裸の男たちを見なかったか」と尋ねます。すると男は、「裸の男たちは見ていないが、服を見つけた」とだけ言い、夜9時過ぎに基地を去っていきました。
深夜、ある監視所で突如、鉄製の板を壊す勢いで何かが衝突してきた音が鳴り響いたものの、監視所の入り口付近に動物が倒れていただけで、何もありませんでした。
3日目の早朝、南監視所にいたウィリアムは、うたた寝するベンジャミンに、「テックたちが洞窟の中で眠っている夢を見た」と話しますが、黙って仕事しろとだけ注意されました。
それから少しして、ウィリアムがトイレ休憩しに、監視所の扉を開けたまま出ていきます。そんなウィリアムが監視所に戻ってきた時には、さっきまで一緒にいたベンジャミンの姿が消えてしまっていたのです。
ウィリアムからそう報告を受けたアンタレス大尉たちは、すぐさま南監視所へ集結し、ベンジャミンの捜索を開始。
その間、アンタレス大尉たちから疑いをかけられたウィリアムは、両手を拘束され、小屋に閉じ込められてしまいます。
アンタレス大尉から、次の補給車での帰国を命じられたウィリアムは、自分を監視所に戻し、彼らと同じように眠って真相を確かめさせて欲しいと訴えましたが、却下されてしまいました。
アンタレス大尉はウィリアムを置いて、ジャン軍曹たちと一緒に、いなくなったテックたちの捜索をしていると、スータン大佐率いる「タリバーン」が接近。
彼らはカリルを通じて、アンタレス大尉に「明日の正午、境界線へ来い。そちらと交渉がしたい」とだけ言い、その場を立ち去っていきました。
3日目の正午、境界線にやってきたアンタレス大尉たちは、そこで錆びた鉄製の杭1本と、それに縄で繋がれた1匹の羊を発見します。
これを見たアンタレス大尉は、「羊が繋がれていればその領域は安全、繋がれていない領域は危険という暗号かもしれない」と推測しました。
アンタレス大尉たちが詳しく調べようとしたその瞬間、隠れ蓑を使って隠れていたタリバーンが現れます。何が目的か尋ねるスータン大佐たちに対し、アンタレス大尉はこう返しました。
「いなくなった仲間を返して欲しいだけだ、生きている証拠を出せ」スータン大佐たちは反論します。
「兵士はいない、そちらが我々の仲間を人質に取っているのだろう?返せ」お互いに仲間が突如姿を消し、その原因がどちらかにあるのではないかと疑っているアンタレス大尉たちとタリバーン。
そこでアンタレス大尉は、仲間を見つけ出すまでは停戦協定を結ぼうと持ちかけると、スータン大佐はどこかに電話をするふりをしたのち、この提案を受け入れました。
4日目、アンタレス大尉たちは、火災に見舞われた村を救います。その際、村にスータン大佐の元へ戻っていないと聞いていた、アフガニスタン人の使者が乗っていたバイクがあるのを発見。
それを谷から拾ってきた羊飼いの男の息子は、アンタレス大尉たちに、谷にバイクと荷物だけ残されており、誰もいなかったと話します。
アンタレス大尉たちは、羊飼いの男の息子に案内してもらった場所へ行きましたが、誰かがここで寝泊まりしていた痕跡はあったものの、人影は全くありませんでした。
アンタレス大尉たちは一旦村へ戻り、何かを隠し口を閉ざしている村人たちではなく、羊飼いの男の息子に話を聞いてみることにしました。
すると羊飼いの男の息子は、カリルを通じてこう言います。「山の向こうまで続くこの谷は、ア・ラーの地であり、眠ってはいけないと禁じられた区域がある」
「それはフランス軍の基地ができるより前からある掟で、そこで眠った者はア・ラーに連れ戻される」
映画『コンタクト 消滅領域』の感想と評価
見えない敵に立ち向かう兵士たち
アフガニスタンの人里離れた谷に監視所を設け、パキスタンとアフガニスタンの国境付近を監視する任務を任されたフランス軍の兵士、アンタレス大尉率いる分隊。
しかし彼らは、この任務が正体不明の見えない敵によって、謎の恐怖に震えることになるとは、考えもしません。
この映画を観る人は最初、フランス軍の兵士たちが国境付近を監視し、そこに現れる敵と戦う戦争アクション映画だと思うことでしょう。
しかしながら、この作品はアクション映画というよりも、見えない敵とどう戦うか、どうやったら仲間を守れるのかという緊張感が続く、スリラー要素が多めの映画です。
最初は軍犬1匹だけでしたが、そこから兵士が1人、2人と消えていく謎の恐怖感。
アンタレス大尉たちはそれを肌で感じつつ、仲間を絶対見捨てず、自分たち同様仲間がいなくなった「タリバーン」と協力して捜索を続けます。
何日も何日も…。手掛かりはア・ラーという神による、この谷の言い伝えと村人が語る物語のみです。
誰もが挫けてしまいたくなる展開ばかりなのに、最後まで必死に仲間を探そうとしたアンタレス大尉たちの格好良い勇姿は、涙が自然と流れてしまうほど感動します。
ハッピーエンドにならないのが悲しい
アンタレス大尉たちの勇姿は本当に格好良くて、男同士の強い絆を感じます。
一度は仲間がバラけてしまう危機さえ乗り越え、最初は信じようとしなかった言い伝えや夢の話にも、藁にも縋る思いでそれを手掛かりに探していくのです。
しかし、そんなアンタレス大尉たちの苦労が、最後まで報われることはありません。
いなくなってしまったウィリアムたち4人と、軍犬1匹、「タリバーン」の仲間を見つけ出すことが出来なかったのです。
まさかの仲間を見つけてハッピーエンドではなく、不完全燃焼で捜索を断念するしかない、バッド・エンドで終わってしまうとは思いもしないでしょう。
この谷で起きた事件は、誰にも知られずに闇に葬られてしまった、何とも言えない気持ちが襲い、悲しくなってきます。
まとめ
アフガニスタンを舞台に、見えない敵に仲間を奪われてしまうフランス軍兵士の苦悩と奮闘を描いた、フランスの戦争アクション・スリラー作品でした。
ジェレミー・レニエ演じるアンタレス大尉の、今も過去も仲間を絶対に戦地に置き去りになんてしない、その仲間想いなところが、物語が進むにつれて心にじんと響いて感動します。
最初に洞窟の中で眠る仲間の夢を見たウィリアム、彼は睡眠薬を飲んで同じように眠ったから、いなくなってしまったのでしょうか。
実際にウィリアムたちがいなくなった場面は、劇中で一切出てきません。また、ウィリアムたちを消した敵も謎のままです。
見えない敵にどう立ち向かえばいいか分からず、ただ眠らないようにするだけしかできないフランス軍の兵士たちの姿は、観ているこちらまでその緊張感が伝わってきて、終始ドキドキハラハラします。
フランス軍の兵士たちが激しい銃撃戦を繰り広げるのではなく、見えない敵と10日間も眠らずに戦うスリルと、仲間を捜索し続ける緊迫感が伝わってくる戦争アクション・スリラー映画が観たい人に、オススメしたい作品です。
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