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Entry 2020/06/18
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映画『現金に体を張れ』ネタバレ感想と結末考察。フィルムノワールで描く大金獲得のための犯罪計画|電影19XX年への旅6

  • Writer :
  • 中西翼

連載コラム「電影19XX年への旅」第6回

歴代の巨匠監督たちが映画史に残した名作・傑作の作品を紹介する連載コラム「電影19XX年への旅」。

第6回は、『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』のスタンリー・キューブリック監督が完全犯罪を企てた男たちの映画『現金に体を張れ』。

競馬場から200万ドルを強盗をするため、綿密な計画を立てた男たち。しかし、仲間の一人が妻に計画を話すと、妻は浮気相手に話を漏らし……。

時間軸をずらして、犯罪に挑む姿を描いた犯罪映画です。

【連載コラム】『電影19XX年への旅』一覧はこちら

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映画『現金に体を張れ』の作品情報


KILLING, THE (C)1956 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

【公開】
1956年6月6日(アメリカ映画)

【原題】
The Killing

【監督・脚本】
スタンリー・キューブリック

【キャスト】
スターリング・ヘイドン、コリーン・グレイ、ヴィンス・エドワーズ、ジェイ・C・フリッペン、テッド・デコルシア、マリー・ウィンザー、エリシャ・クック、ジョー・ソウヤー、ティモシー・キャリー、コーラ・クワリアーニ、

【作品概要】
『2001年宇宙の旅』(1968)や『時計じかけのオレンジ』(1971)のスタンリー・キューブリックが監督を務める犯罪映画。原作はライオネル・ホワイトの小説『見事な結末』です。

当時ハリウッドスターだった『アスファルト・ジャングル』(1950)のスターリング・ヘイドンや、日本でもヒットしたドラマ『ベン・ケーシー』(1961 – 1966)のヴィンス・エドワーズが出演しています。

映画『現金に体を張れ』のあらすじとネタバレ


KILLING, THE (C)1956 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

競馬レース会場では、高らかなファンファーレが鳴っています。マービンは競馬などの賭け事には興味がありませんでしたが、会場に足を運んでいました。

それぞれの馬に5ドルずつを賭けますが、負けることは目に見えています。しかしマービンは、大金が手に入る計画を進めている途中でした。

一週間ほど前、警官のランティーは、バーを訪ねていました。ランティーは文無しで、借りた金を返すことができません。

一方、5年の牢屋生活を終えたジョニーは、マービンが帳簿係を勤める宿に住んでいました。結婚を考えているフェイに、大金を手に入れる方法を思いついたと話します。

マービンがドアを開くと、ジョニーたちは愛想良く挨拶をします。

ジョージは、退屈で家事もしない妻シェリーに、愛されない日々を過ごしていました。金を目的に結婚されたジョージでしたが、仕事も成功せず、みすぼらしい生活を送っています。

ジョージは大金を手にするチャンスを手に入れたと妻に語ります。しかしそれも信じてもらえません。

愛する妻のため、金を集めようとしたジョージでしたが、シェリーは堂々と浮気をしようとしています。見かねたジョージは、計画についての話を漏らしてしまいます。

シェリーは浮かれた様子で、浮気相手のバンに会っていました。そこで、ジョージが話した計画の話をします。それは、競馬場で売り上げの金を盗むという計画でした。

ジョージとは別れようとしていたシェリーでしたが、金のため関係を続けます。バンは計画を知ると、分け前だけでなく、盗んだ金全てをかっさらう計画を考えます。

マービンはスポンサーとして前金を支払い、計画のためプロの雇用を提案します。

そこに、話を盗み聞きしていた、ジョージの妻シェリーが現れます。ジョージは話を漏らした疑いをかけられます。

シェリーは寝かされ、ジョージは力ずくで家に帰されました。ジョニーは、計画の成功ためには何もするなと忠告します。

ジョージはグループを抜けると口にします。しかしシェリーは計画を諦めません。成功させれば愛するという妻の誘惑に負け、計画の実行を決意しました。

3日後ジョニーは、暴れ役としてプロレスで金稼ぎをする男モーリスを2500ドルで雇います。また、銃の腕がいいニッキーに、レースの大本命の馬であるレッド・ライトニングを撃つよう依頼し、5000ドルを支払います。

マービンは、大金を手にした次第、ジョニーと二人で逃げないかと提案します。しかしジョニーはその提案には応じませんでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『現金に体を張れ』ネタバレ・結末の記載がございます。『現金に体を張れ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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KILLING, THE (C)1956 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

分単位の入念な計画のもと、ジョニー達は動き始めます。

病床に眠る妻を持つマイクは、良い病院で看てもらうため、計画に参加しました。

警官のランティーは時間通りに会場に着くため、殺し合いの喧嘩で助けを求める市民の訴えも無視し、パトカーを走らせました。

モーリスは頼まれたとおり、バーテンに喧嘩を売り、警察と一悶着を起こします。

馬殺しを頼まれたニッキーは、駐車場での発砲を狙います。戦争で負傷した足を持つと言って、無理に駐車場に通してもらったところ、駐在人に気に入られてしまいました。

親友だと語る駐在人を鬱陶しく感じ、冷たい態度を取ると、駐在人は消えました。レースが始まると、ニッキーは見事、レッド・ライトニングを射貫きました。

しかし、颯爽と現れた警官に銃を向けられ、撃ち殺されてしまいました。

ジョニーは金を脅し取ると、ランティーが待つ場所へ、窓から投げます。

ジョニーがモーテルで金を手にし、集合を待つジョージ達。そこに、シェリーから話を聞いたバル達が、金を横取りするため、銃を構えて現れます。

ジョージはバルを撃ち、銃撃戦になります。そして、仲間は皆撃ち殺されます。

ジョージは血まみれになりながら、妻のシェリーの元へ向かいました。シェリーはというと、バルの帰りを待っていました。血まみれで帰ってきた夫に驚きます。

ジョージは、金を手にしても妻から愛されることはないと悟り、シェリーを撃ち、力尽きて倒れました。

シェリーは命つきる間際、ジョージのことを夫だと思ったことも、ましてや男と思ったことなど一度もないと言い残しました。

ジョニーは緊急事態を察知し、あらかじめ決めていたとおり、現金を隠すため、国外逃亡を図ります。さっそく、金を入れるためのスーツケースを購入し、空港に向かいます。

ジョニーの荷物は、機内持ち込みの規格外でした。交渉も虚しく荷物は、空港の責任で運ばれることになりました。

荷物を運んでいる車の前に、貴婦人の猫が飛び込みます。慌ててハンドルを切ると、ジョニーのスーツケースが空いてしまいます。中に入っていた金は全て滑空路を舞います。

ジョニーとフェイは逃げようとしますが、それも警察に見つかってしまうのでした。

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映画『現金に体を張れ』の感想と評価


KILLING, THE (C)1956 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

名匠スタンリー・キューブリックが、完全犯罪を目論む男達の失敗するまでを描いた映画『現金に体を張れ』。

現金と書いて”げんなま”と呼ぶ絶妙な邦題のセンスが効いています。

時間軸をずらして物語を進めていく演出は当時斬新なもので、キューブリックの開発とされています。

それも、ただ斬新なだけではありません。この演出をキューブリックは、登場人物の視点を強調するために用いました。

それぞれの人物がそれぞれの物語を持って犯罪に挑む。そこには、借金を返すためや妻に愛してもらうためといった、個人的に金を必要とする理由があります。

物語全体を時間に忠実に追っていくのではなく、個人の視点で時間を戻すことで、それぞれの目的が強調されていました。

計画の失敗の原因は、利己的に動いていたことにあります。最も足を引っ張ったジョージにとって、金を手にすることと、計画を妻に話すことは、同等の価値がありました。

どちらもジョージにとって、妻に愛されるという目的を達成するための行動です。だからこそジョージは、妻のシェリーに計画を漏らしてしまいました。

また、時間を巻き戻すことでラストまで焦らされ、盛り上がりも加速していました。非常に素晴らしいキューブリックの演出です。

まとめ


KILLING, THE (C)1956 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

時間軸をずらして物語を進めていく演出は、タランティーノの名作『パルプ・フィクション』(1994)にも影響を与えました。

金の束が舞う場面から警察に見つかるまでの場面では、計画が水の泡と化したことを象徴する哀愁を伝えています。

スターリング・ヘイドンが演じたジョニーの放心状態を、表情と背中だけで訴える好演技も光っていました。

キューブリック監督作品『博士の異常な愛情』(1964)で、核爆弾が人類を滅亡させた場面を思い出させるような、積もり積もった努力の結晶が一瞬で崩れる様は、キューブリックのユーモアセンスが発揮されています。

犯罪映画『現金に体を張れ』の壮観なラストは、特に必見です。

次回の『電影19XX年への旅』は…


(C)1961 AB SVENSK FILMINDUSTRI

次回は、信仰と欲望をテーマに描いたイングマール・ベルイマンの神の沈黙3部作の第1作映画『鏡の中にある如く』を紹介します。どうぞ、お楽しみに。

【連載コラム】『電影19XX年への旅』一覧はこちら





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