映画『ステージ・マザー』は2021年2月26日よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次ロードショー。
映画『ステージ・マザー』は、突然この世を去ったドラァグクイーンの息子の代わりにゲイバーの経営をすることになった母親の奮闘をコミカルかつ感動的に描いたヒューマンドラマです。
『世界にひとつのプレイブック』(2012)でオスカー候補になったジャッキー・ウィーバーが主演を務め、「チャーリーズエンジェル」シリーズ(2000/2003)でおなじみのルーシー・リューが共演しました。
2021年2月26日より、TOHOシネマズシャンテほか全国順次ロードショーとなる本作『ステージ・マザー』の感想と見どころをご紹介します。
映画『ステージ・マザー』の作品情報
【日本公開】
2021年(カナダ映画)
【監督】
トム・フィッツジェラルド
【キャスト】
ジャッキー・ウィーバー、ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー、マイア・テイラー、アリスター・マクドナルド、オスカー・モレノ、ジャッキー・ビート、エルドン・ティーレ
【作品概要】
本作は、Netflixで配信されたアーロン・ソーキン監督の『シカゴ7裁判』や『キッズ・オールライト』の製作を務めたJ・トッド・ハリスによるプロデュース作品です。
監督のトム・フィッツジェラルドは映画やテレビ、演劇の脚本家兼プロデューサーで監督業も行っている人物。過去にサンダンス映画祭で3度プレミア上映され、トロント国際映画祭、ベルリン映画祭ほか世界中の50以上の映画祭で賞を受賞しています。
また、ハリウッドリポーターから「次世代のトップ10のひとり」と称され、スクリーンインターナショナルからは「世界のトップ100の映画製作者のひとり」に選ばれている実力者です。過去作は『The Hanging Garden』『Beefcake』など。
映画『ステージ・マザー』のあらすじ
サンフランシスコのゲイバー「パンドラ・ボックス」でドラァグクイーンとしてステージに上がっていたリッキーは、薬物の過剰摂取により息を引き取ってしまいました。
長年縁を切っていた母親のメイベリンは、息子の訃報を聞きつけてテキサスからやってきます。
息子を亡くした悲しみに暮れるのも束の間、母親のメイベリンは遺されたゲイバーの立て直しに奮闘し…。
映画『ステージ・マザー』の感想と評価
本作は、全体を通して笑いを忘れない明るい気持ちにさせてくれる映画です。
テンポの良い前半に引き込まれ、しだいにドラァグクイーンたちが抱える問題や、彼女たちの母親世代であるメイベリンの人生における葛藤へと物語は広がりを見せます。
母親のもつ説得力と包容力
母親のメイベリンが、とてもパワフルかつ前向きに行動し続けることが本作の大きな軸となっています。
亡き息子の親友や恋人、友人らに対してメイベリンが向けた優しさは、本当は息子にしてあげたかったことだったのでしょう。
息子と同じリッキーという名の赤ん坊をあやしたり、かつての息子のように堕落してしまいそうな若者に対して誠心誠意よりそうことで彼女自身の長年の後悔が晴れていくようでした。
また、彼女が「夢」を語りその強さを発揮するシーンがあるのですが、全女性のヒーローともいえる振舞いに思わずスカッとするはずです。
母親ならではの包容力と、年の功からくる言葉の重みや思いやりは周りの人々を優しく巻き込んでいく勢いがあります。そのパワーに元気を貰える作品といえるでしょう。
ドラァグクイーンたちとステージの魅力
メイベリンと共にゲイバーを盛り上げようとするドラァグクイーンたちのキャラクターは、本作に欠かせない魅力のひとつです。
メインのキャラクターである、チェリー、テキーラ、ジョアンの3人のユーモアと歌唱力には注目です。
チェリー役のマイア・テイラーはデビュー作『タンジェリン』(2015)でサンフランシスコ映画批評家賞助演女優賞を受賞するなど、トランスジェンダーの女優として公式で初めて受賞を果たした人物です。今回は控えめなキャラクターを好演していました。
テキーラ役を演じたオスカー・モレノは本作が初の長編映画での演技でしたが、ドレスとメイクがとても映えて印象的です。
そして最も注目すべきなのが、ジョアン役のアリスター・マクドナルド。
本作の演技が評価され、2020年にカナダの映画賞であるACTRAアワードにて主演男優賞を受賞しています。メインボーカルの立ち位置で、美声と体を張ったパフォーマンスを披露し、ドラァグクイーンの苦悩を見事に演じ切っていました。
彼のノーメイクのときの笑顔の可愛らしさと、メイクと衣装をばっちりきめてパフォーマンスをするときの美しい迫力はどちらも輝いており、観る人の心を鷲づかみにするはずです。
まとめ
本作は、母親世代のキャラクターが人生で新しいことをはじめることで、価値観やそれまでの人生を覆していくという、挑戦する勇気をもらえる映画となっています。
また、きらびやかなステージ衣装やメイクが楽しめるのはもちろんのこと、歌声の迫力も見どころのひとつです。ぜひ劇場での鑑賞をお勧めします。
『ステージ・マザー』は2021年2月26日TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。