映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』は2021年6月25日公開。
冷凍睡眠、タイムトラベル…時空を超え、青年は『夏への扉』を探す旅に身を投じていきます…。
SF作家ロバート.A.ハインラインの不屈の名作小説を映像化した映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』は、未来を信じ科学技術の発展に没頭する一人の青年が、運命に翻弄され時にタイムリープしながらも、自身の理想を探し求めていく姿を描いた物語です。
作品は『ソラニン』『アオハライド』など数々の作品で生々しくも清々しい青春像を描いてきた三木孝浩が手掛けました。
原作より舞台をアメリカから日本へ移し、今最も注目される若手俳優の山崎賢人が主演を務め、時に迷いながら自身の未来を懸命に描いていく人間の姿を瑞々しく演じています。
CONTENTS
映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本映画)
【監督】
三木孝浩
【脚本】
菅野友恵
【原作】
ロバート・A・ハインライン「夏への扉」
【キャスト】
山崎賢人、清原果耶、夏菜、眞島秀和、浜野謙太、田口トモロヲ、高梨臨、原田泰造、藤木直人
【作品概要】
ロバート・A・ハインラインのSF小説を原作として映像化した作品。1995年から2025年へ、運命に翻弄され時間を超えた旅を経験した科学者が、信頼していた人たちの裏切りで奪われた自分の生を取り戻そうと奔走する姿を描きます。
近年は『フォルトゥナの瞳』『思い、思われ、ふり、ふられ』『きみの瞳が問いかけている』などを手掛けた三木孝浩監督と『浅田家!』の脚本を担当した菅野友恵のタッグが実現。
主演を『キングダム』などの山崎賢人、ヒロインを『宇宙でいちばんあかるい屋根』などの清原果耶が担当。他にも藤木直人、田口トモロヲ、夏菜、眞島秀和、浜野謙太ら個性的な面々が脇を固めています。
映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』のあらすじ
1995年の東京。幼いころに父を亡くし、父の親友であった松下の家で育てられた科学者の高倉宗一郎(山崎賢人)は、ロボットの研究開発に没頭していました。
同時期には、今は亡き松下が夢見ていたプラズマ蓄電池開発の完成を間近に控えるも、彼は愛猫のピートと松下の娘・璃子(清原果耶)らとともに平穏な日常を送っていました。
ところがある日、ロボット開発に協力していた共同経営者(眞島秀和)と、高倉に色仕掛けで迫っていた婚約者(夏菜)に裏切られ、高倉は自身の会社や開発中のロボット、そして蓄電池までも失ってしまいます。
研究に没頭するがあまり、周りのことに気づかず何もかも手放してしまい、自暴自棄になった高倉は、一枚のチラシを見つけたときに一計を案じます。
そのチラシに記されていたのは、そのころ新たに発売された冷凍睡眠のサービス。この時抱いた高倉の思惑が、思わぬ方向に進んでいくとは誰も知る由もありませんでした。
映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』の感想と評価
原作のメッセージを厳守しつつ、日本作品としての果敢な挑戦
本作は原作小説の物語を日本のものとして映像化するにあたり、相当の配慮がなされた様子も見られます。
ロバート・A・ハインラインの原作小説は、訳文の中でも文章自体が「アメリカ」の風土を感じさせる空気に満たされています。
これに対し本作の冒頭に登場する主人公・高倉の研究室、そして璃子の家などは日本の住宅としてもちょっと目を引きそうな、いわゆるアメリカン・スタイルを取り入れた建造物であったり、できるだけ原作の空気感を損なわないことを考えられた様子もうかがえます。
また原作小説が描かれた1950年代と、映像化に挑む現代では時代的な差もあり、未来の描き方としては若干新たな解釈を加える必要もあり、その大きな変更には原作の空気を損なわないよう様々な配慮が加えられています。
こうした配慮により、本作ではもともとの原作も含め、ハインラインの描こうとした物語のメッセージにおける骨子は、こうであると改めて示されているようでもあります。
本作が原作小説から受け継がれた作品の大きなポイントとは「未来は純粋な技術の進歩で、明るく切り開かれる」というもの。原作小説では主人公のダンと、幼いながらダンを慕っていた姪のリッキーが紆余曲折しながら最後には結ばれるという顛末に、このポイントを絡ませて未来が大きく切り開かれる様子を描いており、本作でもその思想は変わっていません。
特徴的なのは、藤木直人が演じる、高倉が未来の世界で出会う人間型ロボットの存在です。原作小説では物語の発端となる1970年の舞台において、主人公ダンの飼い猫ピートが、いわゆるペットではなく人間的、まさしくダンの相棒的な存在として描かれていました。本作はこのロボットを登場させることで、ある意味原作との差異を、すべて吸収しているともいえます。
原作はハインラインの比較的初期の作品で、青年期の瑞々しい人物像とともに明るい未来を描いた作品で、ある意味「技術は嘘をつかない」と技術進歩の明るい未来を解いた、池井戸潤の「下町ロケット」に通ずるような、真っ直ぐに思いを貫く意志を感じさせます。
反面、その意味で物語を技術者目線という単一的な視線で描いているところもあり、それを本作ではもっと一般的に受け入れられるよう配慮した様子もあり、
まとめ
本作『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』のポイントとしては、やはり山崎賢人の起用が大きく際立っています。
先述しましたが、ある意味同じ池井戸作の小説「陸王」のドラマ化において、就職に悩みながらもあるきっかけで新技術開発に没頭した若き技術者役を演じた山崎の姿は、この物語の主人公が見せる、技術を信じる姿、そして時に運命に翻弄され惑う姿に重なるところがあります。
ハインラインの原作小説で主人公ダンは、いきなりとあるバーでやけをおこし酔っぱらっているところで物語がスタートすることから、どちらかというと山崎より少し年上で、どこかやさぐれた雰囲気を持っているようでもありますが、そこは良い意味で原作とは異なる「日本的」なコンバージョンと見ることもできます。
こういった細かい配慮で、単なる原作小説の映像化ではなく、2021年現在の、そして日本という舞台での『夏への扉』という物語を新しく作り出すことに成功した、本作はそんな作品といえます。
ちなみに、原作小説のラストには、物語の冒頭で語られる飼い猫ピートの、『夏への扉』を探してどこのドアもあけようとするその性格をダンが語るという一文が掛かれ、「そしてもちろん、僕はピートの肩を持つ」というダンの言葉による一文で締めくくられます。
この部分が映画ではどのように描かれるかも、実は本作に隠された大きなポイントであり、三木監督は今この時代に物語からどのようなメッセージを発しようとしているのかを、様々に想起させてくれるでしょう。
映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』は2021年6月25日公開!