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Entry 2020/05/19
Update

映画『おろかもの』評価解説と考察。笠松七海演じる女子高校生の“おバカな兄”への愛を描く

  • Writer :
  • 星野しげみ

映画『おろかもの』が、テアトル新宿では2020年11月20日〜12月10日、シネ・リーブル梅田では12月18日~24日に開催される「田辺・弁慶映画祭セレクション2020」にて上映

映画『おろかもの』は、いくつもの作品をともに制作してきた芳賀俊監督と鈴木祥監督が満を持して挑んだ、2人にとって初の長編監督作品。

若手監督の登竜門として知られる田辺・弁慶映画祭の2019年(第13回)のコンペティション部門でグランプリを受賞しました。

またこの映画祭では、結婚を目前に控えた兄の浮気現場を目撃する女子高生役・笠松七海と、兄の浮気相手の女性役の村田唯が俳優賞を受賞。

さらに観客賞など5冠に輝き、第16回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コンペティション部門でも観客賞を受賞しています。

映画『おろかもの』の作品情報

(C)2019「おろかもの」制作チーム/(C)2019 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
芳賀俊、鈴木祥

【脚本】
沼田真隆

【キャスト】
笠松七海、村田唯、イワゴウサトシ、猫目はち、葉媚、広木健太、南久松真奈

【作品概要】

『おろかもの』は、芳賀俊監督と鈴木祥監督が満を持して挑んだ、2人にとって初の長編監督作品。映画『おろかもの』公式HPはこちらから→

『2019SKIPシティ映画祭』ではグランプリのほか、主演の笠松七海と村田唯の俳優賞や観客賞など5冠に輝き、第16回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コンペティション部門でも観客賞を受賞するなど、多数の映画祭で高い評価を得ています。

結婚を控えている兄の浮気相手と対峙した妹が、やがてその浮気相手や兄の婚約者と接してゆくうちに、他者や自身にとっての“つながり”について見つめ直してゆく物語です。

映画『おろかもの』のあらすじ

(C)2019「おろかもの」制作チーム/(C)2019 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

高校生の洋子(笠松七海)は、結婚を目前に控えた兄の健治(イワゴウサトシ)が美沙(村田唯)という女性と浮気をしている現場を目撃します。

洋子と健治は両親を早くに亡くし、2人で支え合って生きてきた兄妹です。兄の行動とそれを隠して何食わぬ顔で生活している様子に、潔癖な洋子は苛立ちを募らせます。

一方、兄の婚約相手である榊果歩(猫目はち)に対しても、兄と2人だけの関係の中に突然入ってきた存在として、言い様のない違和感と不満を抱いていました。

洋子は、親友の小梅(葉媚)に兄の浮気現場を見た悩みを打ち明けていました。ある日、洋子は衝動と好奇心に突き動かされ、美沙の後をつけて、レストランで対峙します。

健治の妹と名乗り、「兄と別れてください」という洋子に対して、美沙は「お兄さんのことを愛しているから別れない」と言います。

呆れてた洋子ですが、美沙の独特の柔らかさと強さ、脆さに惹かれ、ときどき2人で会うようになりました。

そして、洋子が何気なく言葉にした“ある提案”に乗ってしまったことで、美沙は彼女と行動をともにするようになります。2人の間には、次第に奇妙な関係が結ばれ行くのです。

映画『おろかもの』感想と評価

(C)2019「おろかもの」制作チーム/(C)2019 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.
  
若手監督の登竜門として知られる田辺・弁慶映画祭の2019年(第13回)のコンペティション部門でグランプリを受賞した映画『おろかもの』。

沼田真隆の脚本で、芳賀俊、鈴木祥の両監督がタッグを組み、重いテーマの内容を軽妙な物語に仕上げました。

結婚を間近に控えた兄の浮気現場を目撃した高校生の洋子。その将来の夢は「真人間」になることでした。

普通に生きたいと願う真面目な洋子にとって、兄の浮気は普通でないこと。まさしく「バカなヤツ」なのです。

また、婚約者がいると知りながら兄を愛していると言う浮気相手の美沙も、洋子の正常値からは外れていました。

洋子は、兄の浮気相手として美沙に文句を言います。が、洋子に近づきながらも、堂々と浮気を続ける美沙。洋子は、わけのわからない行動をとる美沙に対して、不思議なことに親しみを感じるようになります。

一方健治の「浮気行為」は、婚約者と浮気相手とを同時に傷付けることですから、不甲斐ない兄に対する洋子の怒りは収まりません。

こんな愚かな健治を愛しているという美沙もおバカさん。美沙に協力をしたい気持ちになる自分も同類と認めてしまう洋子。健治の浮気をめぐって、バカだなと思われる人々ばかり……。

身近にありそうな重いテーマなのに、登場人物全てがどこかしら滑稽で愚かしい人間に思え、クスリと笑いが洩れました。

主人公・洋子は、『空の味』(2016)『サイモン&タダタカシ』(2017)の笠松七海が好演。女子高生特有のアンビバレントな感情を完璧に捉えた快演を見せています。

参考映像:村田唯監督『デゾレ』(2017)

兄の浮気相手・美沙を魅惑的に演じたのは、『密かな吐息』(2014)『デゾレ』(2017)などで自身も監督として活動している村田唯。

柔らかな笑顔と立ち振る舞いの中にもつぶされそうな脆さを表現していました。

また兄の婚約者・果歩役の猫目はちも、『つま先だけが恋をした』(2018)で監督デビューを果たしています。

淡々とした演技で、地味だけれども芯の強い婚約者・果歩になり切っているのはお見事です。

複数の女性からも愛され、浮気を断ち切れない優しすぎる兄・健治を演じるのは、『カメラを止めるな!』(2018)や『進撃の巨人』(2015)などにも出演しているイワゴウサトシ。

母性をくすぐるキャラを発揮し、女優陣の頑張りに負けない熱演を披露しています。

洋子の親友小梅役には葉媚。「兄の浮気」というショッキングな現実に落ち込む洋子をささえます。

小梅は、関係者たちの事情を全て把握している第三者。最後の方でつぶやく「糞素敵」は名言です。インパクトのある言葉と爽やかな笑顔が印象的でした。

洋子と健治は喧嘩もしますが、とても仲の良い兄妹です。劇中の「誰も傷ついて欲しくない」「お兄ちゃんを嫌いになりたくない」という洋子の言葉には、隠し通せない兄妹愛が溢れていてほろりとします。

ふたりっきりという兄妹愛が根底にあるから、温かな映画『おろかもの』ができたのでしょう。

まとめ


(C)2019「おろかもの」制作チーム

映画『おろかもの』は、芳賀俊と鈴木祥という若手2人の監督が手掛けました。婚約者のいる兄の浮気を発見したことで悩み、やがては自分の周りの人達との絆に気が付く女子高生のお話です。

主人公・洋子の周りには、モテる浮気性の兄、気の合う兄の浮気相手、何事にも動じない兄の婚約者、悩みに乗ってくれるポジティブな親友と、たくさんの微笑ましい人々がいて、どこにでもあるような日常が繰り広げられていました。

『おろかもの』には、どこかしら愚かだけれども、真面目に生きようとする人々の姿が、ありのまま映し出されているのです。

洋子目線で見る大人の世界は、かつての青春時代の自分も見えていたかもしれません。洋子のナイーブな感性がとても懐かしく思えました。

『おろかもの』は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019での上映がワールド・プレミアとなりました。そして国内コンペティション長編部門で見事観客賞を獲得しています。

映画『おろかもの』が、テアトル新宿では2020年11月20日〜12月10日、シネ・リーブル梅田では12月18日~24日に開催される「田辺・弁慶映画祭セレクション2020」にて上映






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