映画『決算!忠臣蔵』は2019年11月22日(金)より全国ロードショー公開!
時代劇の定番『忠臣蔵』を“お金”という視点で捉え直し、新しい一面を描く新感覚時代劇。
監督を務めたのは中村義洋。多くのヒット作・話題作を手がけてきたのはもちろんのこと、『殿、利息でござる!』(2016)でも「“お金”の時代劇」を描いたことで知られています。
W主演を務めたのは、人気俳優・堤真一とお笑いコンビ「ナインティナイン」にして俳優としても活躍する岡村隆史。同い年でありながら現実でも劇中でも立場が違う二人が、一味違う『忠臣蔵』を魅せてくれます。
映画『決算!忠臣蔵』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【原作】
山本博文『「忠臣蔵」の決算書』
【脚本・監督】
中村義洋
【キャスト】
堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、妻夫木聡、荒川良々、西村まさ彦、竹内結子、石原さとみ、阿部サダヲ
【作品概要】
「赤穂事件」の中心人物・大石内蔵助が実際に遺した決算書から『忠臣蔵』の実像に迫った山本博文のノンフィクション作品を基に、中村義洋監督と『殿、利息でござる!』のスタッフ陣が集結して映画化。
大石内蔵助を堤真一、赤穂藩の勘定方・矢頭長助を岡村隆史が演じます。
映画『決算!忠臣蔵』のあらすじとネタバレ
江戸時代・元禄年間。理想家肌の藩主・浅野内匠頭に振り回されながらも、赤穂藩の筆頭家老・大石内蔵助は藩を切り盛りしていました。
ところが、江戸城内「松の廊下」で浅野内匠頭が高家筆頭・吉良上野介に切りかかるという刃傷沙汰を起こし、御家断絶がとりなされます。そして喧嘩両成敗となると思われましたが、吉良上野介は咎を問われずじまいでした。
この御上の沙汰を受け、間もなく城の明け渡しとなる中で「番方」と呼ばれる藩内の武闘派たちは「籠城の後に城を枕に討ち死にする」と言い出します。一方で「役方」と呼ばれる事務方や勘定方の藩士たちは割賦金(=退職金)の工面に余念がありません。
徹底抗戦という意見もある中で、浅野家の親戚筋から内匠頭の弟・大学を立てて御家再興の可能性があるという話を聞いた内蔵助は番方たちを一時なだめます。
内蔵助と同い年の勘定方・矢頭長助はお金のことを考えずに好き勝手なことをいう番方たちの姿に呆れ果てます。御家再興にせよ、仇討にせよ「これは戦だ」と言ってはばからない番方に対して、「この場にいる者は誰も本物の戦など知らないだろう」と突っ込んでみせます。
城を明け渡し、浪人となった元藩士たちの世話を何かと焼いて回る内蔵助ですが、先立つものが不安になってきます。
そこで勘定方の長助を訪ねると、意外にも数千両の資金があることが分かります。この金の出どころは内匠頭の正室・瑤泉院が嫁入りの時に持ってきた金銭を商人に貸し出し、赤穂の塩田事業を進めたことによる利益でした。
豊富な資金があることに気持ちを大きくする内蔵助ですが、江戸と赤穂を往復する旅費や裏工作に費やしていく中であっという間に資金が目減りしていきます。
一方、世間では「赤穂藩士たちがいつ仇討に動くか」ということに注目が集まっていきます。
幕府や浅野の親戚筋からの監視がついていることを知った内蔵助はいつにもまして遊郭通いをしてカモフラージュをしますが、演技と知らず正面から批判してきた長男の主税に「討ち入りはする」ということを漏らしてしまいます。
これが監視役の耳に入り、内蔵助への刺客が放たれます。遊郭から飛び出してきた篭に刺客が襲い掛かり、中に向けて複数の刃が突き刺されます。
内蔵助を追いかけていた者たちが慌てて刺客を追い払いますが、籠には外から見てもわかる程の血飛沫が散っていました。
映画『決算!忠臣蔵』の感想と評価
『忠臣蔵』といえば、浅野内匠頭の江戸城・松の廊下での刃傷沙汰から吉良邸討ち入りまでの物語であり、今まで300を超える形で映像化されてきたと言われています。
ストレートに描いたものから、一人の赤穂浪士に焦点を当てるもの、後日談や東海道四谷怪談と絡めたもの、更にはハリウッドで翻案されたモノ(『47RONIN』『ラスト・ナイツ』)などまであります。
その中でコメディテイストの作品が多い中村監督による『決算!忠臣蔵』は、徹頭徹尾「お金」のお話。『忠臣蔵』の物語をある程度知っていることが前提の作品でありますが、それゆえに端折れるところは思い切り端折っています。
「松の廊下」の場面も浅野内匠頭が切腹する場面もあっさりしたもので、討ち入りシーンは「いざ、これから」というところで終わります。吉良上野介にいたっては顔出しすらありません。普通の『忠臣蔵』ものだと思ったら、見事に裏切られます。
内蔵助も妾を抱えていたり、女好きであったり、お金の面で無頓着な部分があったりと今までも語られてはいましたが、キャラクターの色付けとしてはメインではなかった部分が濃い目に語られます。お笑い芸人の岡村隆史のキャラクター・長助の方が冷静で地味で淡々と突っ込む立ち位置に回っている程です。
新鮮な部分でいえば、赤穂藩の人々が分かり易い関西弁を使っているところもあります。赤穂藩は現在の兵庫県・赤穂市一帯が領地でしたので言葉も西寄りになるのは当然と言えば当然ですが、それゆえに突っ込みもより現代的なお笑いの突っ込みになっています。このことに気を配った『忠臣蔵』は今までの作品の中では意外になかったのではないでしょうか?
そして何よりも、弔い合戦を唱える武闘派に対しての「そもそも戦などしたことはないだろう」という冷静な突込みが、『忠臣蔵』の時代のみならず現代にも突き刺さるのです。
まとめ
「武士は食わねど高楊枝」とは言いますが、本当に食わなかったら死んでしまいます。
江戸時代・中期は日本史全体の中でも特に「天下泰平」と言える世であり、それまで戦うことに存在意義のあった武士たちの生き方も変わっていきます。いわば「お金が有るか無いか」の時代になっていくのです。
これまでにも『超高速!参勤交代』や『殿、利息でござる!』『引っ越し大名!』などコメディタッチに描くものから、『一命』のように徹頭徹尾シリアスに描くものまで様々な映画が製作されてきました。
そしてこの視点が、とうとう時代劇の本丸『忠臣蔵』にまで持ち込まれました。
ご存知の『忠臣蔵』におけるお取りつぶしを「経営破綻」と捉え、退職金(早期退職)やリストラを手配し、仇討(または御家再興)を「経営再建」として描いていきます。そうやってあくまでも数字のやり取りで描きながら、その上で最後には「情」の物語を持ち込むことで、時代劇としての魅力を描きながら終わってみせます。
脚本からノベライズまで手掛けた中村義洋監督の手腕を堪能できる映画です。