第85回アカデミー賞で作品賞ほか5部門ノミネート、音響編集賞受賞作品!
キャスリン・ビグローが製作・監督を務めた、2012年製作のアメリカのPG12指定の政治サスペンス映画『ゼロ・ダーク・サーティ』。
国際テロ組織アルカイダの指導者、オサマ・ビンラディンの捕縛・暗殺作戦に挑む、アメリカ海軍の対テロ特殊部隊「DEVGRU」と若き女性CIA分析官の姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
2011年5月12日に実行された、ビンラディンの殺害に至る経緯を実話をもとに映画化した、政治サスペンス映画『ゼロ・ダーク・サーティ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『ゼロ・ダーク・サーティ』の作品情報
【公開】
2013年(アメリカ映画)
【脚本】
マーク・ボール
【監督】
キャスリン・ビグロー
【キャスト】
ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、ジェニファー・イーリー、マーク・ストロング、カイル・チャンドラー、エドガー・ラミレス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、クリス・プラット、フランク・グリロ、ハロルド・ペリノー、レダ・カテブ、ジェレミー・ストロング、スコット・アドキンス、マーク・デュプラス、ファレス・ファレス、テイラー・キニー、ヘンリー・ギャレット、ホマユン・エルシャディ、ジュリアン・ルイス・ジョーンズ、ジェシカ・コリンズ、フレドリック・レーン、ジョン・バロウマン、アリ・マルヤル、マイク・コルター、スティーヴン・ディレイン、シモン・アブカリアン、クリストファー・スタンリー、タシャール・メヘラ、ヨアヴ・レヴィ、カラン・マルヴェイ、リッキー・セコン
【作品概要】
『ハート・ロッカー』(2008)や『デトロイト』(2017)などを手掛けた、キャスリン・ビグローが製作・監督を務めたアメリカの政治サスペンス作品です。
本作は2011年5月12日に起きた、ビンラディンの殺害に至る経緯を実話をもとに映画化した作品となっています。
2013年、第85回アカデミー賞で作品賞や主演女優賞など5部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞。同年の第70回ゴールデングローブ賞では、最優秀作品賞(ドラマ)ほか2部門ノミネートされました。
主演を務めるのは、『ツリー・オブ・ライフ』(2011)や『インターステラー』(2014)、『AVAエヴァ』(2020)などに出演するジェシカ・チャステインです。
ジェシカ・チャステインは本作に出演し、2013年の第70回ゴールデングローブ賞で最優秀主演女優賞(ドラマ)を受賞しました。
映画『ゼロ・ダーク・サーティ』のあらすじとネタバレ
これは、当事者の証言に基づく物語です。
2001年9月11日火曜日の朝。イスラム過激派テロ組織「アルカイダ」によるアメリカへの4度のテロ攻撃のうち、ワールドトレードセンター(WTC)とアメリカ国防総省本庁舎が同時に攻撃を受け、3,000人のアメリカ市民の命が犠牲になってしまいました。
2003年。情報収集と分析に秀でた若き女性CIA分析官マヤは、CIAパキスタン支局に配属されました。
マヤは同僚であるCIA諜報専門家ダニエルと一緒に、アメリカ国外にある秘密軍事組織「ブラック・サイト」で、アメリカ同時多発テロ事件(以後、9.11テロ事件と表記)の資金調達者アマールを拷問・尋問します。
アマールは、9.11テロ事件を立案・実行したとされるアルカイダの幹部、ハリド・シェイク・モハメドの甥でもあったからです。
実際にアマール名義で、旅客機をハイジャックした犯人へ多額の金を送金された記録や、アマールの自宅から150キロもの爆発物が押収されたなど、彼がアルカイダに協力した証拠があります。
ところが、アマールは頑なにアルカイダについて話さないどころか、当時一緒にいた仲間の名前すら喋ろうとしません。
マヤたちはしばらくの間、アマールが根をあげるまで放置することにしました。
ダニエルはマヤを連れてパキスタン・イスラマバードにあるアメリカ大使館へ行き、パキスタン支局長ジョゼフ・ブラッドレイと、パキスタン支部で働く同僚たちを紹介することにしました。
パキスタン支部ではアルカイダの指導者であり、9.11テロ事件の首謀者とされるオサマ・ビンラディンを捜索するチームが組織されていました。
メンバーはダニエルの他に、CIA分析官のジェシカ、CIA諜報分析官のジャック。CIAのトーマスとJ.J.、CIA局員のジョン。マヤは今後、ビンラディン捜索チームの一員として、彼らと共に情報収集に取り組んでいきます。
2004年5月29日。サウジアラビア東部のアル・コバールで、アルカイダによる非イスラム系の外国人とアメリカ人を襲ったテロ事件が発生。
ダニエルたちは、このテロを事前に知っていたアマールとハリドの一味から、情報を聞き出せなかったことを悔やみました。
次のテロこそ未然に防ぐべく、ダニエルとマヤは96時間不眠で一部記憶喪失になったアマールに、今回のテロ事件の結果を偽って話し、今度こそ情報を吐かせようとします。
過酷な拷問とは打って変わり、豊富な料理と飲み物を与えられたアマールは、今まで頑なに閉ざしていた口を開き、2人にこう言いました。
「仲間のコンピューター技師アブ・アフメドが、導師の言葉を書いた手紙をアルカイダのメンバーに渡していた」
「9.11事件後、俺はペシャワールに戻ったが、アブ・アフメドは北部のクナルに向かった。アブ・アフメドの姓は知らない」
アマールの話を聞いたマヤたちは早速、アブ・アフメドとはビンラディンとどういう関係なのか、アルカイダでの役割は何だったのか知るため、捕虜にしたアルカイダメンバーを尋問・拷問していきました。
その結果、アブ・アフメドはアルカイダのNo.3アブ・ファラジと行動を共にしており、ファラジとビンラディンの連絡員だったことが判明しました。
マヤはダニエルとジェシカと一緒に、ブラッドレイにその事を報告しました。しかしブラッドレイは、確固たる証拠もない情報の信憑性を疑い、聞く耳を持ってくれませんでした。
2005年7月7日、イギリス・ロンドン。ユーストン駅付近を走行中だったバスが突如爆発し、地下鉄のトンネル内でも車両が爆発し、数十名が瀕死の重傷を負った事件が発生。
これにより、ロンドン有数の繁華街の日常は停止し、負傷者の救助が事件後も続いていました。
ダニエルはパキスタン警察と協力し、捕虜1人を使ってファラジを誘き寄せて逮捕。マヤはファラジを尋問しますが、これまで尋問してきた捕虜以上の情報を引き出すことができません。
精神的に参ってしまったマヤは、ダニエルに助けを求めましたが、彼は100人以上の捕虜を拷問・尋問して精神的に参ってしまい、近くまっとうな仕事に就くためにアメリカに帰国する予定でした。
2008年9月20日、パキスタン・イスラマバード。マヤは同僚のジェシカと、マリオット・ホテルで食事をしていました。
ジェシカは捜査に明け暮れ、精神的に追い詰められているマヤを心配し、アブ・アフメドについて追うのを諦めるよう言いますが、マヤは諦める気は全くありません。
そんなマヤが気になっているのは、ファラジが嘘をついていることです。ファラジはビンラディンの居所以外のアルカイダの情報は話したのに、アブ・アフメドのことも話そうとしません。
つまりファラジにとって、アブ・アフメドはビンラディンと同じくらい重要な存在であり、彼の居所は絶対に知られたくない情報なのです。
マヤたちと一緒に食事するはずのジャックが、ジェシカに連絡を取り渋滞で遅刻する旨を話していた瞬間、突然ホテル内が大爆発します。
これにより、ホテルの従業員やホテルにいた客に死傷者が多数出ましたが、マヤたちは何とか非常口から外へ脱出し、命に別状はありませんでした。
犯人は爆弾を積んだトラックを運転していた運転手で、ホテルの敷地内に入ろうとしましたが警備員に断られ、900キロの爆薬に点火し、ホテルを爆破したのです。
2009年12月30日。ヨルダン当局が買収したアルカイダの医師バラウィと面談するため、ジェシカやジョンほかCIA局員5人が、アフガニスタンのホースト州にあるチャップマン基地へ向かいました。
しかし、遅れて基地にやってきたバラウィは体に爆弾を巻きつけており、到着と同時に自爆。これによりジェシカたち7人が死亡、基地にいた6人が負傷しました。
同僚の死に悲しみに暮れるマヤに、追い打ちをかけるかのように、「既にアブ・アフメドは、2001年に死んでいたと尋問した捕虜が言っていた」との報告が届きます。
映画『ゼロ・ダーク・サーティ』の感想と評価
ビンラディンとイブラヒムを追い詰めていくマヤ
ビンラディンとアルカイダについての調査期間中、マヤは精神的に参っていく自分を心配するダニエルたちや、不確かな情報に懐疑的なブラッドレイたち上層部から、何度もビンラディンの連絡員の調査をやめるよう言われます。
それでもマヤは諦めず、あらゆる手段を使ってビンラディンの連絡員イブラヒムがどんな人物なのか、どこに潜伏しているのかを突き止めていきました。
捕虜や捕まえたアブ・ファラジへの尋問、情報提供された膨大な数の資料の分析、イブラヒムの携帯電話や自宅の電話を傍聴し、発信場所を特定。連日ハイウェイの出入り口を監視するなど。
自爆テロによって信頼する同僚たちを失ってもなお、いや彼女たちを失ったからこそ、危険を冒してでも調査を続けたマヤの執念は計り知れません。
絶対に見つけ出すという狂気を孕んだ執念を燃やすマヤが、ついにビンラディンの居所を突き止めた瞬間、ここまで頑張ってきた彼女の努力を称賛したくなるぐらい嬉しくなります。
ビンラディンたちの殺害を実行する対テロ特殊部隊
マヤたちCIAの長年にわたる情報収集と解析をした結果、ついにイブラヒムだけでなく、ハリドやビンラディンの居場所まで突き止めることが出来ました。
ビンラディンたち3人は、彼らの親族と共にアボッターバードにある屋敷に住んでいたのです。ただその屋敷は、無人偵察機で上空から中の様子が伺えないほど、鉄壁の要塞と化していました。
そこでCIAが協力を依頼したのが、アメリカ海軍の対テロ特殊部隊「DEVGRU」。DEVGRUはアメリカ海軍の特殊部隊「ネイビーシールズ」から独立した部隊です。
DEVGRUは物語の終盤、屋敷への奇襲作戦を掛ける時に登場します。もう少しDEVGRUの活躍を見ていたくなるほど、彼らの奇襲は迅速かつ慎重で、格好の良いものでした。
まとめ
情報収集と分析に秀でたCIA分析官と、アメリカ海軍の対テロ特殊部隊「DEVGRU」がタッグを組み、ビンラディンがいる屋敷を奇襲する姿を描いた、アメリカの政治サスペンス作品でした。
本作の見どころは、マヤたちCIAのビンラディン捜索チームの活躍と、マヤの狂気を孕んだ執念。ステルス型ブラックホークに乗って闇夜の山岳をぬって襲撃に向かったDEVGRUの緊張感ある奇襲作戦です。
捕虜への厳しい拷問や尋問、膨大な数と量の資料の分析・解析や電話の傍聴。そして狂気を孕んだマヤの執念が、懐疑的だった上層部とホワイトハウスを動かし、DEVGRUを動員することが出来たのです。
マヤたちCIAの活躍と努力は素晴らしく、彼らが危険を冒してビンラディンを捜査したおかげで、アルカイダに狙われた多くのアメリカ国民の命が救われたことでしょう。
その反面、テロリストやアルカイダの関係者による自爆テロによって、ジェシカたちCIA7人の命が失われてしまったことがとても悲しいです。
何としてでもビンラディンを見つけ出すというCIA分析官の狂気を孕んだ執念と、隠れ家に奇襲を仕掛ける対テロ特殊部隊の銃が火を噴く、緊張感たっぷりの政治サスペンス映画が観たい人に、とてもオススメな作品となっています。