ドイツ人将校が愛する祖国のためにヒトラーを暗殺する戦争サスペンス・アクション!
ブライアン・シンガーが製作・監督を務めた、2008年製作のアメリカの戦争サスペンス・アクション映画『ワルキューレ』。
第二次世界大戦末期のドイツを舞台に、愛する祖国の未来のために反逆者になる決意をし、懸念を抱くヒトラー暗殺を計画するドイツ人将校の姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
国家に忠誠を誓ったドイツ人将校、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を首謀者として決行された、ヒトラー暗殺計画を描いた戦争サスペンス・アクション映画『ワルキューレ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『ワルキューレ』の作品情報
【公開】
2009年(アメリカ映画)
【脚本】
クリストファー・マッカリー、ネイサン・アレクサンダー
【監督】
ブライアン・シンガー
【キャスト】
トム・クルーズ、ケネス・ブラナー、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソン、カリス・ファン・ハウテン、トーマス・クレッチマン、テレンス・スタンプ、エディ・イザード、ジェイミー・パーカー、クリスチャン・ベルケル、ケヴィン・マクナリー、デヴィッド・バンバー、トム・ホランダー、デヴィッド・スコフィールド、ケネス・クラナム、ハリナ・ライン、ヴァルデマー・コブス、フローリアン・パンツァー、イアン・マクニース、ダニー・ウェッブ、クリス・ラーキン、ハーヴィー・フリードマン、マティアス・シュヴァイクホファー
【作品概要】
「X-MEN」シリーズや『スーパーマン リターンズ』(2006)、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)などを手掛けた、ブライアン・シンガーが製作・監督を務めたアメリカの戦争サスペンス・アクション作品です。
「ミッション:インポッシブル」シリーズや『オブリビオン』(2013)、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)などに出演するトム・クルーズが主演を務めています。
映画『ワルキューレ』のあらすじとネタバレ
「ドイツ帝国とその国民の総統であり、ドイツ国防軍総司令官であるアドルフ・ヒトラーに、私は無条件の服従を誓い、いかなる時にも勇敢なる兵士として命を捧げる。これは神の御名に懸けた、神聖なる誓いである」という言葉と共に、物語は幕を開けます。
北アフリカのチュニジア。第二次世界大戦において、1940年9月のイタリア軍によるエジプト侵攻から始まった北アフリカ戦線にて、ドイツ国防軍の将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐は、ドイツ国防軍の第10装甲師団を指揮しベルリンの防衛に努めていました。
シュタウフェンベルクは内心、ドイツ国防軍に拭うことのできぬ汚点(非戦闘員への殺害行為、戦争捕虜に加えられた虐待と飢餓の現状、ユダヤ人の大量殺戮など)を起こした、ナチス親衛隊(SS)とヒトラーに対して他のドイツ国防軍将校たち同様、嫌悪感と反感を抱いていました。
それと同時にシュタウフェンベルクは、愛する祖国の将来と共に戦う兵の命を救うため、世界の敵でありドイツの敵でもあるヒトラーを打倒し、変革を起こす必要があると考えていました。
そんなある日、連合軍の戦闘機が基地を襲撃し、北アフリカ戦線はドイツ国防軍の敗戦で幕を閉じました。重傷を負ったシュタウフェンベルクは、左目と右手、左手の薬指と小指を失ってしまいました。
1943年3月13日、ロシア・スモレンスク。ヒトラーはナチスの航空機に乗って、ドイツ国防軍がソ連軍と攻防を繰り広げている東部戦線の前線を視察しに来ました。
ドイツ国防軍の反ヒトラー派の1人、ヘニング・フォン・トレスコウ少将はその際、視察を終えたヒトラーを航空機内で暗殺するべく、酒瓶に仕込んだ時限爆弾を彼の側近に手渡します。
しかし、爆弾の不具合によって暗殺は失敗。前々からSSに睨まれていた反ヒトラー派の1人で、ヒトラー暗殺計画の中心メンバーでもあるハンス・パウス・オスター陸軍少将が、ドイツの秘密国家警察「ゲシュタポ」に逮捕されてしまいました。
ドイツ・ベルリンに帰国したトレスコウは、陸軍総司令部にある爆弾を無事回収。同志であるドイツ国防陸軍の本国部隊「国内予備軍」、国防予備局長フリードリヒ・オルブリヒトからオスターの逮捕を聞き、彼の後任の人選に急ぎます。
オスターの後任として、ヒトラー暗殺計画のメンバーに引き込まれたのは、ベルリンの国内予備軍司令部への転属が決まったシュタウフェンベルクでした。
シュタウフェンベルクは上官のオルブリヒトから勧誘され、ドイツ帝国軍の陸軍参謀長ルートヴィヒ・ベックや、反ナチ運動家のカール・ゲルデラーたち、反ヒトラー派の会合に参加。
しかしゲルデラーたちが、ヒトラーを失脚させた後のことは何も考えていないと知り、ヒトラー暗殺計画の参加を一度断ろうとします。
シュタウフェンベルクは妻子が待つ家へ帰り、久しぶりに会う家族との時間を過ごしていましたが、自宅周辺が連合軍による空襲に遭いました。
家族と地下室に避難した際、シュタウフェンベルクはリビングに置かれたレコードから流れてくる曲「ワルキューレ」を聴いて、打倒ヒトラーのためのある計画を思いつきます。
シュタウフェンベルクが思いついたヒトラー暗殺計画とは、ヒトラーが職務遂行不能に陥った非常時に、兵力数万の国内予備軍をベルリンへ動員する「ワルキューレ作戦」を利用したものでした。
シュタウフェンベルクたちがヒトラーを暗殺し、SSにクーデターを起こさせ、総司令部に「SSの反乱を鎮圧するため」と称してワルキューレ作戦を発動させます。
これにより、国内予備軍は「ヒトラー政府のため」と信じ、SSの反乱を鎮圧すべくベルリンに集結し、全ベルリンを掌握。しかし実際には、シュタウフェンベルクたち反ヒトラー派が新政府を発足するのです。
SSを排除するためには、ワルキューレ作戦の文書を改ざんする必要があります。ただその文書の改ざんは、シュタウフェンベルクたちがヒトラーへの反逆を考えていると公表しているようなものであり、文書を改ざんするにはヒトラー自身の署名が必要です。
そして何より、ワルキューレ作戦の発動する権限を持つ、国内予備軍司令官フリードリヒ・フロムと接触し、ヒトラー暗殺計画に協力して貰うよう働きかけなければなりません。
シュタウフェンベルクは、オルブリヒトと共にフロムに新任の挨拶へ行った際、フロムの出世欲を利用して仲間に引き込もうとしましたが、「総統がご存命の限りは、私は正しい彼の味方だ」と断られてしまうのです。
しかしシュタウフェンベルクは諦めず、ヒトラーの側近エーリッヒ・フェルギーベル将軍に単身接触し、ヒトラー暗殺計画への協力を強要します。
するとフロムは、やはりヒトラー失脚後の出世に目が眩んだのか、ヒトラー暗殺計画に協力することを決め、シュタウフェンベルクはワルキューレ作戦の文書を入手することが出来ました。
ワルキューレ作戦の文書の改ざんに立ち会ったトレスコウは、前線に転属することが決まってしまったため、ワルキューレ作戦に精通しているシュタウフェンベルクがヒトラー暗殺計画実行の責任者に任命されることになったのです。
さらにオルブリヒトから、シュタウフェンベルクは国内予備軍の参謀長に任命されただけでなく、改ざんしたワルキューレ作戦の承認を貰うことが出来ました。
これにより、シュタウフェンベルクはヒトラーと彼の側近の動きを把握することができ、なおかつワルキューレ作戦の改ざんした文書に、ヒトラーの署名を貰うだけとなりました。
1944年6月7日。シュタウフェンベルクは副官のヴェルナー・フォン・ヘフテン中尉を伴い、バイエルン地方ベルクホーフにあるヒトラーの山荘を訪問。
彼は先に山荘に到着していたフロムと共に、ヒトラーやSSの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルス、国家元帥ヘルマン・ゲーリング、ドイツ国防軍最高司令部(OKW)総長のヴィルヘルム・カイテル元帥が出席する会議に参加しました。
そこでシュタウフェンベルクたちは、連合軍のノルマンディー侵攻への対抗策と称して、ヒトラーにワルキューレ作戦の認可の署名を求めます。
会議に参加した全員が固唾をのんで見守る中、ヒトラーはシュタウフェンベルクを信用し、あっさり改ざん文書に署名しました。
映画『ワルキューレ』の感想と評価
ユダヤ人の大量殺戮や戦争捕虜への虐待などを行うSSと、連合軍に勝利するまで戦いを強要するヒトラーに、内心嫌悪感と反感を抱いていたシュタウフェンベルクたちドイツ人将校と、反ヒトラー派の政治家たち。
これまで数多くヒトラー暗殺計画が決行されてきましたが、全て暗殺未遂という失敗で終わってしまいました。
しかしこれまでの計画と違うのが、ヒトラーだけでなく、ヒムラー率いるSSやゲシュタポの高官たちも暗殺及び逮捕の対象になっている点です。
ヒムラーの暗殺は反ヒトラー派の政治家たちの都合によるものですが、ヒトラーによる独裁政権を破壊し、シュタウフェンベルクたちによる新政権樹立するためには、SSもゲシュタポの高官たちも打倒しなくてはなりません。
そのためシュタウフェンベルクたちは、今回の計画で確実にヒトラーたちを打倒するべく、命懸けて計画の完遂に挑みます。
シュタウフェンベルク主導で行われた今回の計画は、ヒトラー失脚後の未来をきちんと見据えた上で行われたもの。彼らの計画が順調に事が進んでいくところを見ると、観る人誰もが「完璧な計画だ」と感服することでしょう。
しかし、シュタウフェンベルクたちの努力も虚しく、戦車を爆破できるほどの威力を持つプラスティック爆薬による爆破でも、ヒトラーを暗殺することは出来ませんでした。
ただシュタウフェンベルクたちの死後、連合軍に敗北したことでナチス・ドイツが崩壊し、ヒトラーも包囲されたベルリンで自決しました。
ヒトラーも彼が築いた独裁政治もなくなり、ドイツに自由な未来が訪れたのには、シュタウフェンベルクたち、ヒトラー暗殺計画メンバーの功績も少なからず影響していることでしょう。
まとめ
シュタウフェンベルクたちドイツ人将校と、反ヒトラー派の政治家が決死の覚悟で挑む、最後のヒトラー暗殺計画を描いたアメリカの戦争サスペンス・アクション作品でした。
アクション場面は物語の序盤にある、北アフリカ戦線どの連合軍の空襲と、物語の終盤で国内予備軍にシュタウフェンベルクたちが逮捕されるまでに繰り広げられた銃撃戦だけなので、物語の大半は終始ハラハラドキドキするサスペンス要素が多いです。
実際にヒトラーを小型爆弾で暗殺しようとするシュタウフェンベルクと、国内予備軍をベルリンへ動員させる「ワルキューレ作戦」を利用した、ヒトラー暗殺計画メンバーによる全ベルリン掌握までの過程が、本作の見どころとなっています。
実在するシュタウフェンベルクを演じるトム・クルーズの、まるで本人かと見間違うほどの完璧な演技と、終始一貫として冷静沈着にヒトラー暗殺に挑む姿はとても格好良いので、トム・クルーズファンもそうでない人も見惚れてしまいます。
ドイツ人将校と反ヒトラー派の政治家、その協力者たちが愛する祖国のために、ヒトラー暗殺に挑む戦争サスペンス・アクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。