ロバート・ラドラム作の「ジェイソン・ボーン」シリーズ第2章
ポール・グリーングラスが監督を務めた、2004年製作のアメリカのサスペンスアクション映画『ボーン・スプレマシー』。
記憶喪失の元CIA工作員ジェイソン・ボーンは、恋人マリーと幸せに暮らしていましたが、突如現れた謎の襲撃者に彼女を殺されてしまいます。
ボーンの失った記憶を求めて全ての真実を知るために新たな戦いに挑んでいく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
前作「ボーン・アイデンティティー」(2002)から2年後の世界を舞台に描かれた、「ジェイソン・ボーン」シリーズ第2章『ボーン・スプレマシー』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『ボーン・スプレマシー』の作品情報
【公開】
2005年(アメリカ映画)
【原作】
ロバート・ラドラムのベストセラースパイ小説『殺戮のオデッセイ』
【監督】
ポール・グリーングラス
【キャスト】
マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、ジョーン・アレン、ブライアン・コックス、ジュリア・スタイルズ、カール・アーバン、ガブリエル・マン、マートン・ソーカス、トム・ギャロップ、ジョン・ベッドフォード・ロイド、カレル・ローデン、ミシェル・モナハン、イーサン・サンドラー、ショーン・スミス、クリス・クーパー
【作品概要】
『ブラディ・サンデー』(2002)や『ボーン・アルティメイタム』(2007)、『ジェイソン・ボーン』(2016)などを手掛ける、ポール・グリーングラスが監督を務めたアメリカのサスペンス作品。
前作「ボーン・アイデンティティー」(2002)から2年後の世界を描いた続編です。ロバート・ラドラムのベストセラースパイ小説『殺戮のオデッセイ』が原作となっています。
主演を務めるのは前作に引き続き、「ジェイソン・ボーン」シリーズや「オーシャンズ」シリーズ、『フォードvsフェラーリ』(2019)などに出演するマット・デイモンです。
映画『ボーン・スプレマシー』のあらすじとネタバレ
前作「ボーン・アイデンティティー」から2年後。記憶喪失の元CIA工作員ジェイソン・ボーンは、恋人マリー・H・クルーツと一緒に、インド・ゴアでひっそりと暮らしていました。酷い頭痛によって蘇る記憶の断片を、2年間ノートに書き記しながら………。
2人の幸せな日々は、ある日突然終わりを迎えます。ゴアの街にシルバーの車に乗る謎の襲撃者に現れ、その男を二度見かけて不審に思ったボーンは、マリーを連れてその場から逃走。
しかしその道中、席を交換して運転席にいたマリーは、ボーンが運転席にいると思った男に背後から撃たれて殺されてしまいました。
車ごと橋から落ちたボーンは、マリーの死後、家にあるマリーの写真やパスポートを焼却。ただ、2人で撮った思い出の写真だけは、ボーンは捨てられませんでした。
マリーの仇をとると誓ったボーンは、失った記憶の謎を解き明かすべく、旅に出ました。
時を同じくして、ドイツ・ベルリンにいるCIAの諜報員パメラ・ランディ率いる調査チームは、不正送金事件の調査を行っていました。
しかし、突如現れた謎の襲撃者の襲撃を受け、ベルリンでの取引を行っていたCIA諜報員と情報屋が殺されてしまいました。
さらに300万ドルの大金を盗まれ、調査チームが得るはずだったファイルも盗まれてしまいました。
現場には2つの爆発物がケーブルにつけられており、不発に終わった1つの爆発物から指紋が検出されました。
パメラたちがその指紋をCIAのデータベースで照合した結果、該当する者が見つかったものの、トレッドストーン計画という最高機密へのアクセスとなるため、アクセス権限がない彼女たちはこれ以上調べられません。
そこでパメラは、一度アメリカ・ヴァージニア州にあるCIA本部に戻ることに。CIAのマーティン・マーシャル次官に、CIA諜報員と情報屋を殺し、300万ドルの金とファイルを盗んだ犯人の手掛かりを掴んだと話し、それが知りたければ最高機密へのアクセス権限をくれないかと要求します。
襲撃者の手掛かりとなる指紋を手に入れたと話すパメラに、マーシャルは「全てを報告すること」を条件に、最高機密へのアクセスを許可しました。
この間、ボーンを狙った男は雇い主であるロシアの大富豪、石油会社「ぺコス石油」のCEOグレツコフに、「ボーンを始末した」と報告していました。
最高機密へのアクセス権限を得たパメラが、指紋の該当者を調べた結果、現場に残された指紋はボーンのものであることが判明。
さらにトレッドストーン計画と書かれた資料には、CIAのアレクサンダー・コンクリンは、作戦中に死亡したと記されていました。
そこでパメラは、CIA長官ワード・アボットを問い詰めることにしました。「トレッドストーン作戦とは?」
「暗殺集団、闇の部隊のことだ。2年前に終わったことだ」
「トレッドストーン計画と記されたファイルで、記録を調べたら、コンクリンが作戦中に死んだことになっているけど、どういうこと?」
「コンクリンはジェイソン・ボーンたちに厳しすぎた」「No.1の実力を誇るボーンは任務に出て、そのまま消えた」
「コンクリンは事態を収拾できず混乱した」「だから始末したのね?」
「…私はCIAに30年、4大陸で苦労をしてきて、来年引退だ。こんなことで私を責めるなら、次官と共に地獄に送ってやる」
アボットの尋問後、ボーンがCIA諜報員と情報屋を殺した犯人だと睨んだパメラは、英国にあるCIAのロンドン支部と連携し、ボーンの行方を追いました。
さらにパメラは、マーシャルやアボットたちCIAの上層部にこう言いました。「7年前、モスクワ経由の送金途中に、CIAの2,000万ドルが消失」
「ロシアの政治家ネスキーから電話があり、盗んだ犯人はCIA内部のスパイだと言っていた」
「事実かどうか確かめるべく、ネスキーに直接会おうとしたが、会う前に彼は妻に殺された」
「ひと月前に情報屋が現れ、“殺しに関するファイルをベルリンで渡す”と言われた」「だがその情報屋と会う日、ジェイソン・ボーンの襲撃に遭い、諜報員と情報屋を殺されてしまった」
「コンクリンの個人のPCには、彼のトレッドストーンに関するファイルには、他部の情報がぎっしり入っており、スイスの銀行口座も見つかりました」
「コンクリンが殺された時、彼の個人口座には76万ドル送金されていました」「彼はボーンと前に組んでいて、情報を恐れたボーンが殺しに現れた」
そう話したパメラの元に、イタリア・ナポリでボーンを発見し、捕まえたとの報告が入ります。
米国領事館の調査官ジョン・ネビンスがボーンを尋問しましたが、黙秘を続ける彼に手を焼いていました。そこへ、CIA本部のトム・クローニンから1本の電話が。
「勾留したボーンは重要容疑者だ、どんな手段を使ってもそのまま勾留しておけ」
ネビンスがその電話を切った直後、ボーンは瞬時に警備員とネビンスを昏倒させ、彼の携帯電話に盗聴器を仕込み、ネビンスの車を盗んで逃走します。
車を運転しながら、ネビンスの携帯にかかってきたパメラとの会話を盗聴したボーンは、自分がCIA諜報員と情報屋を殺した犯人にされていることを知りました。
ネビンスにイタリアの地域を封鎖するよう頼んだパメラは、マーシャルからの指示でアボットと一緒に、ボーンを始末しに行きます。
映画『ボーン・スプレマシー』の感想と評価
愛する人を失くした元CIA工作員の新たな戦い
物語の序盤、前作で結ばれたボーンとマリーが仲睦まじく生活している姿が描かれており、前作で2人を観ていたファンとしては微笑ましい光景でした。
ただ次の場面では、ボーンを殺そうとした暗殺者が「運転席にいるのはボーンに違いない」と思い込んだせいで、直前に席を変えていたマリーが撃たれてしまう羽目に。
物語が始まって早々のヒロインの退場に、誰もが予想できず衝撃を受けたことでしょう。また、いきなりマリーを失ってしまったボーンの悲しみを考えると、涙が止まりません。
もうCIAとは決着がついたはずと思っていたのに、まだ自分の命を狙う者がいるということは、トレッドストーンや失われた記憶になんか関係があるのではないかと考えたボーン。
彼の推測は的中し、アボットはトレッドストーンのことを闇に葬るべく、今度こそ始末しようと画策しており、ボーンが以前任務で殺したネスキーに関係がある男グレツコフが暗躍していました。
記憶の断片を繋ぎ合わせ、失われた記憶を取り戻そうとするボーンが、国境を越えてCIAと暗殺者と戦っていくサスペンスアクション場面は、手に汗握るスリルが味わえます。
暴かれたアボットの悪事
ボーンが失くした記憶を取り戻していくにあたって、全ての黒幕であったアボットがどんな悪事を仕出かしたのかが明かされていきます。
まずアボットは、グレツコフに盗んだCIAの2,000万ドルを渡し、彼に石油権を手に入れさせ、その分け前を貰うという不正送金事件の犯人でした。
次にアボットはその事実を隠すためでしょう。不正送金事件を起こしたCIA内部スパイの罪をコンクリンに、ファイルを渡す情報屋と受け取ろうとしていたCIA諜報員を殺害した罪をボーンにそれぞれ被せたのです。
最後にアボットは、ボーンが犯人ではないことに気づいたコンクリンの部下ダニーを殺害。「愛国心故に邪魔者を排除しただけ」と言うアボットは、ボーンがなかなか死なないことに次第に焦燥感に駆られていきます。
そのせいで、7年間ありとあらゆる罪を他人に被せ排除したことで、隠していたことをアボットはボーンに素直に白状してしまうのです。
アボットの自白を聞く限り、コンクリンやボーンたちトレッドストーン関係者とトレッドストーン自体、彼にとっては私腹を肥やすために利用した隠れ蓑ではないかと考察できます。
まとめ
失くした記憶の謎を解き明かすため、再び暗殺者とCIAと戦うことになった元CIA工作員の姿を描いた、アメリカのサスペンスアクション作品でした。
本作の見どころは、再び暗殺者に命を狙われたボーンの戦い、人間兵器として育て上げられた元CIA工作員同士の死闘、モスクワの街で繰り広げられるカーチェイスです。
前作より記憶を取り戻したボーンは、前作以上の身体能力の高さを活かしたアクション、事件の黒幕・真相に辿り着けたほどの頭脳明晰なところを魅せており、観た人はますます彼に魅了されることでしょう。
物語の途中までボーンが犯人だと思っていたパメラたちCIAが、ボーンより先にアボットに疑いの目を向けたからこそ、ボーンが送ったアボットの自白テープをすんなり信じることが出来たのだと考察します。
再びCIAと暗殺者を退け、姿を消したジェイソン・ボーンを演じるマット・デイモンが、次回作の「ボーン・アルティメイタム」(2007)ではどんな活躍を見せてくれるのか楽しみですね。
記憶喪失の元CIA工作員が国境を越え、失くした記憶の謎を解き明かしつつ、再び戦いに身を投じていくサスペンスアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品となっています。