国会議員の孫娘誘拐事件が暴く“真実”の行方は!?
人気作家・真保裕一の小説『おまえの罪を自白しろ』を、『アイ・アム まきもと』(2022)『謝罪の王様』(2013)の水田伸生監督が映画化しました。
ある騒動の疑惑の主である国会議員。その孫娘が誘した犯人の要求は、身代金ではなく、記者会見を開き「罪」を自白させることでした。守るのは家族か、政治家生命と国家か……記者会見を開くタイムリミットが刻々と迫ります。
主人公であり、国会議員である父の秘書を務める宇田家の次男・晄司を中島健人、孫娘を誘拐された国会議員・宇田清治郎を堤真一が演じています。
一筋縄ではいかない、人間の黒いつながりがズルズルと引きずり出され、政界の奥深い闇に唖然させられる映画『おまえの罪を自白しろ』をネタバレあらすじ有りでご紹介します。
CONTENTS
映画『おまえの罪を自白しろ』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【監督】
水田伸生
【脚本】
久松真一
【主題歌】
B’z『Dark Rainbow』
【キャスト】
中島健人、堤真一、池田エライザ、山崎育三郎、中島歩、美波、浅利陽介、三浦誠己、矢柴俊博、柏原収史、中村歌昇(4代目)、佐藤恋和、アキラ100%、山崎一、尾美としのり、池田成志、橋本じゅん、春海四方、小林勝也、菅原大吉、升毅、平泉成、尾野真千子、金田明夫、角野卓造
【作品概要】
国会議員の孫娘誘拐事件をきっかけに、政界の裏のつながりを暴き出す社会派サスペンス。作家・真保裕一の同名小説を原作に、水田伸生監督が映画化しました。
主人公の議員秘書・宇田晄司を『ラーゲリから愛を込めて』(2022)などでの存在感が光る中島健人、父・宇田清治郎をこれまでに様々な役をこなしてきた堤真一が演じ、池田エライザ、山崎育三郎、中島歩、美波、尾野真千子、角野卓造らが共演しました。
主題歌はB’zが担当。『Dark Rainbow』という内容にマッチしたタイトルで、本作を盛り上げます。
映画『おまえの罪を自白しろ』のあらすじとネタバレ
政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司は、かつて建築会社を設立したものの倒産し、現在は国会議員の父・宇田清治郎の秘書を務めています。
政治家一家・宇田家には晄司の他に、長男で埼玉県議員の揚一朗、長女で市議・緒形恒之の妻である緒形麻由美、麻由美の娘・柚葉がいました。
その頃、清治郎は「上荒川大橋建設にあたって総理の友人に便宜を図るため、国交省や県に圧力をかけた」という疑惑がかけられ、連日メディアに追われていました。
ある日、幼稚園の帰りに柚葉が何者かに誘拐されます。まもなく犯人から要求がきますが、それは身代金ではなく「明日午後5時までに記者会見を開き、お前の罪を自白しろ」という政治家・宇田清治郎への脅迫ともとれる内容でした。
過去にも様々なスキャンダルに関わっていた清治郎。それは清治郎が、現総理大臣・夏川泰平を擁護する役目をしていたからです。これまでの擁護を「罪」とするなら、それは決して明かすことが許されない、自らの議員生命と“国家”を揺るがす「罪」でした。
清治郎は権力に固執し口を閉ざそうとしますが、罪を問われない特例・指揮権発動と、夏川総理からの「自身の後継を宇田家の者にする」という確約を得るために奔走します。
ですが、清治郎にだけ罪を負わせようとする党との駆け引きの末、指揮権発動がないまま記者会見が開始。結局、清治郎は過去の2つの罪を自白しますが、現在論争が続いている上荒川大橋の件には最後まで触れませんでした。
会見後、犯人から「国民を馬鹿にしているのか。午後10時までに再度会見を開き、全ての罪を自白しなければ孫娘の命はない」とメッセージが届きます。
公にしていない残る罪が犯人の要求なら、総理が関与している上荒川大橋の件しかありません。ですが、なぜ内密にしているはずのことが世間に漏れていたのでしょうか。
政府内部に敵がいるかも知れないと思った晄司は各所を奔走し、清治郎のもとに夏川総理と敵対する派閥である党幹事長・木美塚派と内通している者がいたことを突き止めます。晄司は起死回生を狙い、木美塚派へと寝返ることにしました。
一方、清治郎は犯人の要求通りに、午後10時に2度目の会見を開きます。
そこで上荒川大橋の設置に際して、ある議員から「君の力で予定地を変更できれば、次の内閣改造が楽しみになる」と言われ、夏川総理の友人に便宜を図り、工事プランを変更したことを告白し、それが自身の罪だと認めました。
その会見後、犯人から「日の出町緑地を探せ」というメッセージが入ります。
映画『おまえの罪を自白しろ』の感想と評価
ダークな政界で“生き残る術”を知る主人公
真保裕一の原作小説を映画化した『おまえの罪を自白しろ』。「疑惑の国会議員・宇田清治郎の孫娘が誘拐される」という大きな事件が起こりますが、犯人は身代金を要求せず「おまえの罪を自白しろ」と脅迫してきました。
清治郎は、現総理・夏川の友人に便宜を図ったのではないかという疑惑がかけられています。もしこの罪を認めて自白すれば、総理失脚にもつながりかねません。
清治郎はこの件に関してだけは黙秘を続け、小さな罪と思われる事例を自白しますが、犯人は容赦なく「まだ自白していない罪がある」と要求してきました。
上荒川大橋の裏事情は決して表に出せないはずなのに、なぜ犯人はこのことを知っているのでしょうか。晄司は、政界の裏に潜むスパイ役を捜し出し、その結果として「父が推す夏川総理のライバル・木美塚を秘かに援護する」という判断をしたのです。
誘拐事件の犯人であった寺中姉弟は、総理を失脚させるつもりは毛頭ありませんでした。清治郎が工事現場の予定地を変更したことで起こった、一家の悲劇を隠そうとしただけです。
誘拐事件は寺中姉弟の思惑とは別のところで、清治郎の決して表に出してはいけない“総理との密約”という大きな闇を掘り出す結果となったのです。
宇田一家の危機を察した晄司の行いは、父や現総理に対する“裏切り”ともとれるものでした。昨日味方だと思っていた議員が、今日はライバル勢力に寝返っていたりするのですから驚きます。
ですが、これが政界で生き残る者の戦術なのでしょう。晄司は政界でのし上がっていく術を、すでに身に付けていたと思われます。政界の裏取引を暴き、それを逆に自らの立身に利用できた晄司は、秘書ではなく立派な議員だったのです。
芸達者な共演者に映える主題歌
主人公の宇田晄司は、これまで爽やかな好青年役が多かった中島健人が演じています。
晄司も好青年である一方で、誘拐犯や派閥間のスパイを捜し出すなど、常に巨大な悪に立ち向かっています。持ち前の目力で真実を見つめようとする迫力満点の演技にご注目ください。
宇田清治郎には堤真一。『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(2021)でのニヒルなワル役や、『望み』(2020)の優しい父親役など、様々な役をこなすベテラン技が光ります。他にも池田エライザ、山崎育三郎、中島歩、美波、尾野真千子など、芸達者な俳優が脇を固めました。
中でも木美塚を演じた角野卓造の演技は印象深いものです。メイクさんに「まるで『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドみたい」と言われたという角野卓造。ラスボス的な不敵な笑いを浮かべる姿はまさにゴッドファーザーでした。
裏社会のドンやゴッドファーザーも実在しそうな政界の裏事情にメスを入れた本作。その余韻を引き摺るようにエンディングでB’zが歌う主題歌『Dark Rainbow』が流れます。
「Rainbow(虹)」は、明るい未来や希望、多様性を想像できる言葉ですが、それに“暗い”や“闇”を意味する「Dark」が付くとは……まるで、主人公・晄司の政治家としてのこれからの姿が想像できるような主題歌です。
B’zらしい迫力があるノリの良い曲が映画の魅力を一層引き立ていますので、エンドクレジットでも楽しむことができます。
まとめ
水田伸生監督が映画化した『おまえの罪を自白しろ』をネタバレ有りでご紹介しました。
現総理との密約があるため、総理の仕事の汚れ役を引き受けてきた宇田清治郎。冷たく傲慢な議員のようですが、実は「地元の人のためになりたい」がゆえに政治家を目指していた過去があり、晄司の政治家としての適性も見抜いていました。
血も涙もない政治家ばかりではありません。なのに政界にいるといつの間にか、我が身の繁栄しか考えられないせせこましい人間になってしまうようです。
正義と野望と自信に満ちたぎらぎらした輝きを放つ目で、木美塚新総理を見つめる新人議員・宇田晄司。彼の将来は清い政治家であってほしいと願わずにはいられません。