スパイに間違われた男が命がけで敵に挑む傑作サスペンス
『裏窓』(1955)『ダイヤルMを廻せ』(1954)で知られる巨匠アルフレッド・ヒッチコックによる名作サスペンス。
別の人物に間違えられたことから犯罪に巻き込まれていく主人公・ロジャーを、『泥棒成金』(1955)など数々のヒッチコック作品で主演を務めるケイリー・グラントが演じます。
共演はエヴァ・マリー・セイント、ジェームズ・メイソン。
何度も命を狙われながらも、ひるまず敵に立ち向かう勇敢なロジャーに魅了される作品です。
CONTENTS
映画『北北西に進路を取れ』の作品情報
【公開】
1959年(アメリカ映画)
【監督】
アルフレッド・ヒッチコック
【脚本】
アーネスト・レーマン
【編集】
ジョージ・トマシーニ
【キャスト】
ケイリー・グラント、エヴァ・マリー・セイント、ジェームズ・メイソン、ジェシー・ロイス・ランディス、レオ・G・キャロル、ジョセフィン・ハッチンソン、フィリップ・オーバー、マーティン・ランドー
【作品概要】
『裏窓』(1955)『ダイヤルMを廻せ』(1954)『サイコ』(1960)などで知られるサスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックの傑作。
架空のスパイに間違われた会社社長・ロジャーが、命がけで奮闘するさまをユーモアとラブストーリーを交えながら活写します。
ヒッチコックに気に入られ、『汚名』(1949)『泥棒成金』(1955)ほか4本の作品でタッグを組んでいるケイリー・グラントが、主演のロジャーを魅力的に演じています。
共演はエヴァ・マリー・セイント、ジェームズ・メイソン。恒例のヒッチコック監督のカメオ出演も見逃せません。
映画『北北西に進路を取れ』のあらすじとネタバレ
ニューヨークで広告会社を経営するロジャーは、プラザホテルの会合の席についてから、母に電報を打つためにベルボーイを呼びます。
その直前、ベルボーイがキャプランという客の名を呼んでいたため、ある二人連れの男にロジャーはキャプランと間違えられて誘拐されてしまいました。
連れ去られた先は郊外の豪邸でした。その屋敷の主人であるタウンゼントは、ロジャーをスパイのキャプランだと思い込み、ロジャーが否定しても信じようとしません。
ロジャーが自分に協力しないとわかったタウンゼントは、ロジャーに大量の酒を無理矢理飲ませて酩酊させ、車で崖から落として殺そうとします。
必死でハンドルを握り逃走したロジャーは、途中で警察に飲酒運転で逮捕されました。ロジャーは誘拐されて殺されそうになったことを警察に話しますが、信じてもらえません。
自分を疑っている母と一緒に、ロジャーはプラザホテルのキャプランの客室に忍び込みました。
部屋にはキャプランの姿はなく、ホテルのスタッフも誰もキャプランを見た者はいませんでした。追手が来たことを知ったロジャーは、タウンゼントがいる国連へと向かいます。
そこで面会したタウンゼントは、ロジャー邸宅で会った男とは別人でした。追ってきた手下が、ロジャーの目の前でタウンゼントにナイフを投げつけて殺害します。
思わずナイフを手にとってしまったロジャーは容疑者にされてしまいます。ロジャーは必死で逃げ出しますが、撮られた写真が新聞で大きく報じられます。
ロジャーがタウンゼント邸で会ったのは、ヴァンダムというスパイでした。教授と呼ばれる男を中心とした政府諜報機関は、ヴァンダム一味に自分たちの味方をスパイに送り込んでおり、キャプランという架空のスパイを作り上げることにより味方を守ろうとしていました。
彼らは味方を守るために、巻き込まれたロジャーをそのまま放置することにします。
映画『北北西に進路を取れ』の感想と評価
息もつかせぬノンストップサスペンス
さすがヒッチコック!と唸らずにはいられない、極上のノンストップサスペンスです。ケイリー・グラント演じる主人公・ロジャーが、一時も止まることなく駆け回ります。
会社社長のロジャーは、ある日密輸スパイのヴァンダムにキャプランという男と間違われ、危うく殺されそうになります。ところが、キャプランというのは諜報機関が作り上げた架空の人物でした。
ロジャーはそのことを知らないままキャプランを追い、ロジャーをキャプランだと思い込んでいるヴァンダムはロジャーの命を狙い続けます。
酩酊させて車で崖から突き落とそうとしたり、だだっ広い草原におびき出して軽飛行機で銃撃したりという、ヴァンダムの派手な手口は大きな見どころです。
これほどまでに恐ろしい目に遭っても、まったくくじけないロジャーが魅力的です。とんでもない危険にさらされながらも、とことんヴァンダムにぶつかっていきます。
常にユーモアを忘れない展開も最高です。思わずクスッと笑わされるシーンが何度も登場します。
真実を知った後も、恋に落ちた美しいエヴァを助けるために、最後までロジャーは奔走します。巨大な顔面を掘った岸壁を下るシーンは大迫力で、映画ならではの楽しさに満ちています。
物語のキーとなるスパイ・エヴァの魅力
ストーリーで大切なキーとなるのが、美女工作員・エヴァの存在です。
ロジャーが列車で出会ったエヴァは、実はヴァンダムの愛人でした。ロジャーを狙って近づいてきたのです。翌日には彼をだまして死地に追いやりますが、彼女は深い苦悩の表情を見せます。
やがて、実はエヴァが諜報機関側のスパイだったことが判明します。ロジャーから見れば、彼女は二重スパイだったわけです。ここに二人の恋心が絡み合い、物語は一気に深みを増します。
諜報機関とエヴァと三者でひと芝居を打ち、死んだふりをしたロジャーでしたが、彼女がヴァンダムから逃れられないと知って単身で助けに向かいます。思い立ったら即行動のロジャー。危険な岩山も何のその、どんな困難にも立ち向かう男気がまぶしく見えます。
ロジャーがここまで一心不乱に立ち向かう原動力は、美しく賢くしたたか、それでいて情に厚いエヴァの魅力にあったといえるでしょう。
ラストで晴れて夫婦となった二人。二度の離婚歴を持つロジャーも、今度こそ末永く幸せに生きていけるのかもしれません。
まとめ
ユーモアとスリルを合わせ持つ名作サスペンス『北北西に進路を取れ』。
受難が続くロジャーの姿にハラハラしながらも、敵ヴァンダムとの知恵比べ、度胸比べに胸躍る作品です。諜報機関も加わり、複雑に絡み合うストーリー展開も素晴らしく、最後までたっぷり楽しませてくれます。
これだからヒッチコック作品はやめられない。そう思わせてくれる傑作です。