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【ネタバレ】探偵マーロウ|あらすじ結末感想と評価考察。映画出演100本目となるリーアム・ニーソンのハードボイルドミステリー!

  • Writer :
  • からさわゆみこ

“最強の男”リーアム・ニーソンが演じる、
永遠のダンディズム“フィリップ・マーロウ”の魅力

今回ご紹介する映画『探偵マーロウ』は、レイモンド・チャンドラーの傑作「ロング・グッドバイ」の続編として、“ブッカー賞受賞作家ジョン・バンヴィルの別名義”ベンジャミン・ブラックが執筆した「黒い瞳のブロンド」が原作であり、本家からの公認もある作品です。

チャンドラーが生み出した永遠のダンディズム“探偵フィリップ・マーロウ”は、ハンフリー・ボガート、ロバート・ミッチャムといった名優たちが演じてきました。

舞台は1939年のロサンゼルス。探偵事務所を構えるフィリップ・マーロウを、美しいブロンドをした一目で裕福とわかる女性クレアが訪ねます。

彼女の依頼は「突然姿を消した、かつての愛人を探してほしい」です。依頼を引き受けたマーロウでしたが、その男はひき逃げ事故で死亡しており、殺人の疑いも浮上します。

死亡した男は映画業界の人間で、探偵マーロウが捜査を進めるにつれ、“ハリウッドの闇”が浮き彫りになり真実に迫っていきます。

映画『探偵マーロウ』の作品情報

(C)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

【公開】
2023年(アメリカ、アイルランド、フランス合作映画)

【原題】
Marlowe

【監督】
ニール・ジョーダン

【原作】
ジョン・ヴァンビル

【脚本】
ウィリアム・モナハン、ニール・ジョーダン

【キャスト】
リーアム・ニーソン、ダイアン・クルーガー、ジェシカ・ラング、アドウェール・アキノエ=アグバエ、イアン・ハート、コルム・ミーニー、ダニエラ・メルヒオール、フランソワ・アルノー、サーナ・カーズレイク、ダニー・ヒューストン

【作品概要】
主演のリーアム・ニーソンはアクション映画『96時間』(2008)の主演で成功を収めてから、アクション映画への主演イメージが定着しました。

そんなリーアムは大の“探偵フィリップ・マーロウ”ファンで「ずっと演じてみたかった」と熱望し、今年でデビュー45周年の佳節に念願が叶うとともに、本作が出演100本目となりました。

監督は『クライング・ゲーム』(1992)で、アカデミー賞脚本賞を受賞したニール・ジョーダンが務めます。リーアムとは本作が4度目のタッグとなります。

共演には『女は二度決断する』(2017)で、カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したダイアン・クルーガーがクレア役を務め、“演技の三冠”(アカデミー賞・エミー賞・トニー賞)を達成している実力派女優のジェシカ・ラングが華を添えています。

映画『探偵マーロウ』のあらすじとネタバレ


(C)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

1939年、カリフォルニア州ベイシティ……。探偵フィリップ・マーロウの事務所に、いかにもセレブリティなブロンド美女が依頼のため訪ねてきます。

依頼人の女性は“キャヴェンディッシュ”と名乗り、依頼の内容は「人を探してほしい、私の愛人だったのに突然、“消えた”の」と言います。

マーロウは“消えた”というのは、彼女の前からなのか、 この世からのことなのか質問すると、彼女は分からないから依頼に来たのだと言います。

失踪した愛人の名前はニコ・ピーターソンと言い、映画業界で働く人間です。マーロウはセレブリティなキャヴェンディッシュに対し、格差がありそうなニコとの出会いに疑問を抱きます。

依頼を引き受けたマーロウは“ミセス・キャヴェンディッシュ”と呼ぶと、彼女は“ミセス”は付けないよう指摘し、クレア・キャヴェンディッシュだと言い事務所を後にします。

そこでマーロウはかつての職場警察署に出向き、かつての同僚からニコの情報を聞き出しますが、“ニコ・ピーターソン”は交通事故で死亡しているということを知らされます。

事実を知らせるためマーロウは、クレアの邸宅を訪ねます。その邸宅はハリウッド女優ドロシー・クインキャノンの家でした。

ドロシーは石油を掘り当て一代で財を成した夫との間に、クレアを授かりますが女優としての名声を守るため、彼女を“姪”として育てます。

やがて夫は他界し多額の財産管理をジョセフ・オライリー氏に任せつつ、恋人としても関係を持っていました。ところがそのジョセフは次期英国大使の候補となり、2人の関係も微妙になっていました。

クレアはそんな母ドロシーに冷ややかで、夫のキャヴェンディッシュも財産目当てだと言います。そんなクレアにマーロウはニコが交通事故死していることを告げます。

ところがクレアは「ニコは生きている。メキシコのティファナで見かけた」と言い切りました。マーロウはニコのことを正直に話すよう促すと、2人はセレブが集まる“コルバタ・クラブ”で出会ったと語り始めます。

彼女はニコのミステリアスな面に惹かれ、愛し合うようになったと言います。撮影所の“小道具小屋”で密会するようになったが、会う約束の日にニコが現れず、自宅にも人の気配がなかったと言います。

クレアはテイファナでニコが現れるのを待ち、映画で使う小道具のような、まがい物の骨董品を車に積んで走り去って行ったと話します。

マーロウが邸宅を去る時、ドロシー・クインキャノンが彼に声をかけ「娘からどんな依頼をされたのか」と探りを入れられますが、「守秘義務がある」と何も語りません。

以下、『探偵マーロウ』ネタバレ・結末の記載がございます。『探偵マーロウ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

マーロウは手がかりを探すため、ニコの自宅へ向かいますが、人気は無く隣人の男が少し前に、2人のメキシコ人も彼の行方を探しに訪ねてきたと教えてくれます。

ニコが事故にあったのは彼も出入りしていた、ハリウッド関係者などが集まる“コルバタ・クラブ”の前の路上で、ニコは頭半分が轢き潰されていたといいます。

マーロウは手がかりを捜すため、ニコが埋葬されている墓地へ行くと、若い女性がニコの墓地を参っていました。話を聞こうと追いかけますが見失ってしまいます。

次に彼はコルバタ・クラブに向かい、事故現場を確認しました。元同僚の協力の下、中に潜入したマーロウは墓地で見かけた女性をみかけます。

支配人のフロイドはマーロウと面会し「遺体は自分とニコの妹が確認した」と、ニコで間違いないことを強調します。

コルバタ・クラブを去ろうとした時、マーロウはプールサイドで雑誌を見る女性の視線に気づき、近寄ると彼女がニコの妹リン・ピーターソンでした。

彼女はマーロウに時間を指定し、娼館に来るよう声をかけます。マーロウが娼館に出向き部屋へ行くとそこで、フロイドが手を回したと思しき、用心棒の男達に襲われます。

マーロウは用心棒たちの手を逃れますが、そのことでコルバタ・クラブには何か曰くがあると疑念を抱きます。

そして、ニコはなんらかの理由でコルバタ・クラブで殺害され、事故に見せかけるために遺体を通りに移した殺人事件であると推測しました。

さらに手がかりを得るためマーロウは、ニコがエージェントを務めた女優のアマンダに会います。彼女は女優として仕事を得るため、ニコの愛人になっていましたが、彼の彼女に対する扱いは粗暴で冷酷だったと証言します。

再びニコの自宅を訪れたマーロウが、中に侵入するとそこにはニコの妹リン・ピーターソンがいました。マーロウはリンがニコの生存を知っていると察知し追及します。

しかし、直後に彼女を追ってきた2人組の男が家に押し入り、リンは拉致されマーロウは襲撃され意識を失ってしまいます。


(C)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

意識の戻ったマーロウの眼の前には、セドリックというアフリカ系アメリカ人の運転手が立っていて、マーロウに会わせたい人物がいると連れて行きます。

その相手は実業家のルー・ヘンドリックスという男でした。彼はマーロウに「ニコを探し当てたら1000ドル払う」と持ち掛けます。

ルーはニコを探している理由を明かしませんが、マーロウを自宅に送る時にセドリックは、ルーの財源に関してニコが関わっていることを話します。

マーロウの事務所をドロシーが訪ねます。ドロシーの恋人ジョセフとクレアの関係についてです。ドロシーは「娘は私のものをなんでも欲しがる」と言い、2人の関係を調べるよう依頼しました。

その晩、マーロウはニコの事故死は偽装による殺人だと断定し、誘拐されたリンを救うため、旧知のバーニー刑事に捜査をするよう願います。バーニーも事件性を感じ捜査に乗り出します。

テラスで酒を酌み交わしていると、向かい側の道にクレアの乗った自動車が目に入ります。バーニーは誰かと聞きますが、マーロウは「ただの女だ」と答えます。

マーロウの自宅を訪ねたクレアは、母ドロシーがニコを誘惑していたと言い、「母は私の物を何でも奪う」と同情を乞うため彼を誘惑します。

母娘の間に軋轢があると感じたマーロウは「親ほども年が違う」とクレアをたしなめ、ダンスを踊ってクレアを見送りました。

しかし、その後マーロウは彼女を尾行します。クレアが向かったのはジョセフの邸宅で、ジョセフも彼女を部屋に迎え入れると、窓のカーテンを閉めます。

クレアがニコを探す理由とジョセフとの関係、他にもニコを追う者がいて事故を偽装するため殺人がおきていることに、事の重大さが深まっていきました。

そんな最中、ニコの妹リンが渓谷で無残な姿で発見されたと報告を受けます。マーロウは再びコルバタ・クラブに潜入しました。

執務室にいたフロイドは麻薬を使用していました。それを見たマーロウはコルバタ・クラブがセレブを相手に売春を斡旋し、麻薬を密売する場所ではないかと追及します。

ニコはその秘密を握ったまま逃亡しましたが、フロイドは自動車事故で死亡したことにして、秘密裏にニコを探していると推理します。

フロイドはマーロウに薬物入りの酒をすすめますが、警戒した彼は飲むふりをして捨て、薬が回ったふりをすると、人気のないバックヤードに連れて行かれます。

するとそこにはルーの運転手セドリックが拉致され、手錠で繋がれていました。マーロウは監視役を攻撃し、手錠の鍵を奪ってセドリックを助けます。

隣りの部屋ではルーが拷問され、フロイドにニコが持って逃げた“ブツ”はどこかと尋問されていました。ルーは耳を切り落とされそうになり“セイレーン”だと答えます。

ルーを助けるため襲撃するマーロウとセドリックでしたが、ルーがセドリックに差別的な暴言を吐いたため、セドリックは逆上してルーを射殺します。

ルーの言った“セイレーン”とは水槽に沈められた、「人魚」の偽調度品のことで、中に大量の麻薬が隠されていました。マーロウはコルバタ・クラブの裏を暴き、詳しい調査をバーニーに託します。

一方、ニコの行方と目的は謎のままでした。セドリックは命の恩人のマーロウの運転手になると申し出、ルーの運転手をしていたことで、様々な情報を知っていると言います。

ニコはルーと麻薬の取引をし、その麻薬をコルバタ・クラブのセレブに売るため、フロイドに流していました。しかし、ニコは麻薬を横領して隠したまま逃走したのです。

ところが突然ニコはマーロウの目の前に現れます。彼は妹のリンが死んだことも知っていましたが、「腹違いの妹」だと哀れみもない薄情な男でした。

そして、クレアが探していることを告げると、“小道具小屋”で待っていると伝えるよう言って去って行きます。

マーロウはそのことをクレアに伝える前に、母ドロシーと同席させジョセフとの関係について、決着させようと試みます。

ドロシーはクレアに次期英国大使から手を引くよう告げると、クレアは“何もわかっていない”とでも言うように怒りをあらわにし、テーブルから茶器を払い落して席を離れます。

心配したマーロウはクレアのそばに行くとニコがみつかり、小道具小屋で待っていることを伝えます。

クレアが指定された時刻に小道具小屋へ行くと、ニコはコルバタ・クラブで横行していた、麻薬密売の顧客リストをクレアに見せ歓喜します。

ニコの目的は映画関係者がコルバタ・クラブで、麻薬の売買に関わっていたことをネタにし、映画業界を脅し牛耳ることでした。コルバタ・クラブに出入りしていたドロシーやジョセフにも影響が及びます。

スキャンダラスなコルバタ・クラブの会員であることが、世間に知られれば女優としてのドロシーや次期英国大使のジョセフの立場が危うくなるからです。

ニコはクレアに一儲けできると共謀を持ちかけますが、クレアには別の思惑がありました。彼女はニコを発砲すると小道具小屋に火を放ち、顧客リストごと焼き払ったのです。

その後、映画産業が急成長し、まもなく戦争がはじまるという不穏な中、クレアは映画業界でエージェント会社の社長に就任します。なにもかもこの日のために彼女が巧妙に仕組んだ作戦でした。

クレアはマーロウに一緒に業界で働かないかと誘いますが、マーロウは断り他に紹介できる人物がいると言い、彼女の元を去ります。

マーロウはセドリックにクレアが社員を探していると話し、彼女に紹介するというとセドリックは「俺は口が堅いしな」と答えます。

『探偵マーロウ』の感想と評価


(C)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

映画『探偵マーロウ』は鑑賞者自身がマーロウとなり、依頼人の仕事をこなすように推理する楽しみがありました。

マーロウの目線でストーリーが展開するので、誰が何を考えどんな目論みを持っているのか、なかなか見えてこないところが特徴です。

“フィリップ・マーロウ”という人物は、お人好しで情に厚く節度をもった心優しい男です。原作「黒い瞳のブロンド」のマーロウと映画版とでは、若干相違があり映画では“ジェントルマン”な部分を強調したキャラクター設定でした。

フィリップ・マーロウ像とは

本作の原作「黒い瞳のブロンド」はレイモンド・チャンドラーの傑作「ロング・グッドバイ」の続編として公認されています。

「ロング・グッドバイ」ではマーロウの親友テリーが妻殺しの疑い及び、逃走の末に自殺してしまうという設定から始まり、登場人物の様々な思惑の末にテリーは生きて現れそして・・・。

ジョン・バンヴィルの「黒い瞳のブロンド」には、「ロング・グッドバイ」の登場人物が重複して登場するなど、チャンドラーファンの心を掴むものとなっているようです。

しかし、チャンドラーの描いたフィリップ・マーロウをこよなく愛するファンには、ジョン・バンヴィルのマーロウには、復活を歓迎する声と否定的な声もあったといいます。

それゆえなのか映画『探偵マーロウ』はその題名通り、原作の内容を削いだよりマーロウの人間味にスポットをあてた脚本になっています。

そうしたことで原作や「ロング・グッドバイ」の続編という情報から、小説を知らなくても1本の作品として、十分楽しめる映画に仕上がっていたと言えます。

さて、そもそもフィリップ・マーロウとはどのようなキャラクターなのでしょうか?

長身で鳶色の髪と瞳、弱い者に対して非情になれず、それゆえ悪党から弱みを握られることもあります。拳銃は所有しているものの普段は携行せず、滅多に使うこともありません。

そして、「ロング・グッドバイ」では、年齢を42歳と自称し、ローレル・キャニオン地区のユッカ街に住んでいるとされています。

本作のマーロウはそこからかなりの年月が経過したように、年齢を重ねた風貌でした。「ロング・グッドバイ」は1949年の秋が舞台で、映画の舞台は1939年なので続編色が払拭され、マーロウの晩年を描いていると感じました。

自立するのための“嘘つき”合戦


(C)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

クレアはエンターテイメント界での成功を目論み、障害となりうるラスベガスの膿を排除するため、ニコやジョセフに言い寄りマーロウをも利用しました。

なぜクレアはそのようなことを思いついたのでしょう。おそらくドロシーのジョセフが次期英国大使に決まり、2人の関係が終わるのを目の当たりにし、自分の人生を見つめ直すきっかけになったのでしょう

クレアはニコと出会い彼の企みから、母が携わる映画業界が麻薬や売春にまみれ、汚れきっていたことを知ります。

母が女優としての純潔を守ろうと、クレアを娘ではなく“姪”として扱ったことは、傷つけ憤りを抱くことになりますが、母の愛した映画業界が貶めようとしていることも、容認できなかったと察します。

また、彼女は世界情勢を鑑みて、女性も自立する必要性を感じる聡明な女性でした。クレアは男に養われている間は、真の自由はないと理解しています。

ジョセフにそのことを伝えて後ろ盾にし、スキャンダルの根幹を一掃することで、自らがエージェントになる計画を実行するのです。

女性を飾り物のように扱い、私利私欲のために女性を利用する男性を心底、嫌うクレアがニコの捜査に無名の探偵マーロウを選んだのも、金に欲目がなく実直な人物だと知った上なのでしょう。

まとめ


(C)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

『探偵マーロウ』はハードボイルド小説が生んだ、永遠のダンディズムの象徴フィリップ・マーロウの魅力を存分に描いた映画でした。

“マーロウ作品”の中でも、リーアム・ニーソンが演じたマーロウは史上最年長です。作中、旧知の仲間バーニーが「もう、いい歳になった。善き手本になってくれ」とマーロウをたしなめるシーンがあります。

本作はレイモンド・チャンドラーの生みだした、フィリップ・マーロウが晩年になったときの活躍やイメージを見ることができるでしょう。

小説や映画の中のヒーローは老いることはありませんが、本作ではあえて老いを迎えつつあるマーロウを登場させ、現役感を醸し出し現代的な発想で描かれています。

それを出演100作目となった名優リーアムが演じたことで、リアリティが増しアクション俳優としての健在さも示しました





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