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映画『女は二度決断する』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

映画『女は二度決断する』は、4月14日(土)よりヒューマン トラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

世界三大映画祭で映画賞を受賞したファティ・アキン監督が、『イングロリアス・バスターズ』や『戦場のアリア』に出演した女優ダイアン・クルーガーがタッグを組み、突然、愛する家族を失った女性の苦難と絶望を描きます。

女優ダイアンの演技を深く堪能できる映画で、第70回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞した『女は二度決断する』を紹介します。

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映画『女は二度決断する』の作品情報


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

【公開】
2018年(ドイツ映画)

【原題】
Aus dem Nichts

【脚本・監督】
ファティ・アキン

【キャスト】
ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、サミア・シャンクラン、ヌーマン・アチャル、ヘニング・ペカー、ウルリッヒ・トゥクール、ラファエル・サンタナ、ハンナ・ヒルスドルフ、ウルリッヒ・ブラントホフ、ハルトムート・ロート、ヤニス・エコノミデス、カリン・ノイハウザー、ウーベ・ローデ、アシム・デミレル、アイセル・イシジャン

【作品概要】
『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』『ソウル・キッチン』で、世界三大映画祭(カンヌ、ヴェネチア、ベルリン)の世界三大映画祭を受賞したファティ・アキン監督の作品。

主演にダイアン・クルーガーを迎え、突然、愛する家族を奪われた女性が絶望の決断を描いたドラマで、2017年に第70回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞。

映画『女は二度決断する』のあらすじとネタバレ


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

第Ⅰ部「家族」

ドイツ、ハンブルク。生粋のドイツ人のカティヤとトルコ系移民のヌーリは、カティヤが学生の頃に出会います。

ヌーりは刑務所から出所するとカティヤと結婚。その後、ヌーリは愛息ロッコが産まれると子煩悩になり、真面目にトルコ人街で在住外国人相手にコンサルタント会社を始めます。

カティヤも会社の経理を務め、3人の家族は細やかな柄も幸せな日々を送っていました。

ある日、カティヤは親友とスパに出かけるため、ヌーりの事務所に息子ロッコを預けます。

変わらぬに日常のなか、夫と息子に別れを告げ、事務所から出たカティヤ。

すると、新品の自転車にカギも掛けず立ち去る若い女性を見かけ、親切にも「鍵をかけないと盗まれちゃうわよ」と声を掛けてあげます。

若い女性は「すぐ戻るの」と立ち去っていきます。

ゆったりとスパで寛ぐカティヤは、親友に新しく脇腹に入れた“侍”のタトゥーを見せながら、これを入れるのが最後だと言い、ヌーリがそれを嫌がっていることを説明します。

その日の夕方、スパでリフレッシュの帰り、息子ロッコの待つヌーリの事務所に向かうカティヤ。

多くの人だかりができ規制線が引かれ、複数のパトカーが止まっています。

良からぬ感がしたカティヤの鼓動が早まり、「何があったの」と野次馬たちや警察官をかけ分けると、「爆発事故です」。

思わず駆け出した先に、カティヤの目に入ったのは焼け焦げたヌーリの事務所と瓦礫の山。

2人の安否に不安を抱くカティヤですが、警察に案内されるがまま、爆破事件に巻き込まれた人たちがいる救護所に案内されます。

しかし、どこにも夫と息子の姿は見つからず、男性と子どもが死亡していることが伝えられます。

爆破事件の捜査をする刑事とともに、カティヤは自宅へと帰宅。

洗面所にあったヌーリと息子ロッコの歯ブラシをDNA鑑定用を刑事に預けます。

やがて、DNA鑑定を終えた刑事がやって来て、「悲しいお知らせです。犠牲者はご主人とご子息でした」と、発見された遺体はヌーリとロッコであることが判明。

失意のどん底となったカティヤは泣き崩れ、心配して駆けつけた家族や友人の前も嗚咽を漏らします。

突然の状況に何もかも考えられないカティヤですが、刑事は事件の真相を特定するため、何か情報になることはないかと聴取を受け、警察の捜査に協力していきます。

しかし、カティヤを前に刑事の質問は、「夫は熱心なイスラム教徒だったか」。

クルド人か?政治的な活動はしていなかったか」。

敵はいなかったか?」と、夫ヌーリがまるで事件の容疑者であるような尋問を受けます。

刑事はすでにヌーリの過去に、薬物の前科と刑務所に服役した情報を得ており、彼が闇社会と繋がっていて、何者かと抗争から狙われた事件だという捜査していたのです。

そんなことに嫌気をさすカティヤは、愛する2人の命を奪ったのは、「犯人はネオナチだ」と言い出します。

カティヤは事件の犯行時間の少し前に目撃をした、「女が自転車をすぐ前に停めてたわ。カギをかけるように言ったの。荷台にボックスが載ってた」と伝えます。

しかし、刑事はその言葉を聞き流します。

翌日、知人の弁護士ダニーロの事務所を訪ねたカティヤは、夫ヌーリは何か事件で逆恨みをされたのでなく、ネオナチによるテロ事件だと主張します。

ダニーロは少しでもカティヤの深い悲しみが癒せればと協力を約束します。

いつまでも深い悲しみのように降り頻る雨の中、自宅に戻ったカティヤ。

最愛の夫ヌーリと息子ロッコが奪われた悲しみをカティヤは薬物で癒します。

すると、突然、捜査令状を持った刑事たちがカティヤの自宅に入ってきます。

警察は死亡したヌーリについて、薬物をめぐる事件で捜査を進める証拠が目的でした。

やがて、警察は部屋で薬物を見つけます。

カティヤは物的証拠となる薬物は、ヌーリのものではなく自分のものだと自供。

心配そうにカティヤの傍で見守る母親は、ヌーリのだと言えばよかったのにと言いますが、カティヤはそれに不満を見せます。

じっとりとした冷たい雨は、いつまでも止むことはなく、カティヤの悲しみともに深く濡れていきます。

その後、最愛の家族であるヌーリとロッコを失った喪失感のカティヤは、温かいバスタブに浸かり身体を委ねます。

両手首から赤い鮮血がお湯に血煙をあげ、カティヤは自死を図ったのです。

すると、スマフォが鳴り、あの刑事からの声が聞こえ、爆破事件の容疑者を逮捕したと言います。

両手首にキツくタオルを巻いたカティヤは、意識がはっきりしないなか、自宅の電話に残された留守番メッセージでも再確認しましたが、やはり、犯人が見つかった知らせでした。

以下、『女は二度決断する』ネタバレ・結末の記載がございます。『女は二度決断する』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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第Ⅱ部「正義」


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

事件の有力な容疑者として逮捕された、エダとアンドレ・メラー夫婦はネオナチでした。

事件を起こした後も仲むつまじさを見せる2人を法廷で凝視するカティヤ。

彼女の横には弁護士ダニーロも一緒に出廷しています。

裁判は冒頭から容疑者側を弁護するハーバーベック弁護士は、指導権を握ろうと次々に戦略的な仕掛けを繰り出します。

裁判は被害者遺族のカティヤが、事件の犯行の経過とその現場での出来事を詳細に聴くもので、証人となるカティヤは事前に情報を知り、公正な審議が行われないと、彼女を裁判から退廷させようというのです。

しかし、カティヤの弁護士ダニーロが強く審議妨害だと抗議し、裁判官たちにカティヤの被害者遺族として立会いの権利を引き出します。

そんな矢先、容疑者アンドレの父親ユルゲンが証人として出廷します。

カティヤはまたも嫌な流れに裁判が進むことに、表情を曇らせます。

ユンゲルは裁判官の質疑に、爆弾の材料に使われたものと同じ肥料や釘などが自宅ガレージにあり、直感で息子アンドレの犯行だと解り、警察に通報したと証言しました。

しかし、容疑者側の弁護士ハーバーベックは、ガレージの戸締りとそのカギ在処についての問題点を突いてきます。

容疑者以外の第三者がガレージに入った可能性を指摘します。

それでも容疑者の父親ユンゲルは息子の犯行を確信しており、カティヤの方に振り返り、息子の過ちに深い謝罪の思いを被害者と残された彼女に敬意を持って表しました。

その後、今度は爆破事件を捜査する刑事が証言に立つと、ガレージから押収した肥料や釘に残されたは特定不能な指紋が、もう一つ検出された事実を知り、容疑者以外の第三者の犯行の可能性を強く指摘する弁護士ハーバーベック。

爆弾事件の裁判は、カティヤの気持ちが安らぐこともなく、幾度となく続けられます。

ある日の裁判。容疑者とされているメラー夫妻は、事件当日にギリシャのホテルに宿泊していた証言する人物が出廷しました。

そして、証言の証拠品として、メラー夫妻がサインを残した宿泊台帳が提出されました。

しかし、カティヤの弁護士ダニーロは、逆にそのホテル支配人は、ギリシャの極右政党に属するメンバーを確認できる画像を反論の証拠として提出します。

その上、容疑者メラー夫妻は、SNS上でその男が極右の旗を掲げる写真に、”いいねボタン”を送信していたことを指摘して、彼らは右翼同士で結託してアリバイ工作していることを証言しました。

完璧なまでの動かぬ証拠に、法廷内に被害者の関係者から歓喜の声と拍手が上がります。

容疑者側の弁護士ハーバーベックは、ぐうの音も出ない表情を浮かべます。


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

そして、別の日の裁判で、いよいよカティヤが証言台に立つ時がやってきました。

容疑者側の弁護士ハーバーベックはカティヤの証言潰しに圧力の手を緩めません。

かつて、ヌーリは薬物事件と関わり服役した事実を指摘した上で、彼女の目撃証言の信ぴょう性は疑わしいと指摘していきます。

それはカティヤの薬物検査を要請です。

薬物依存の彼女は証人としての判断力が極めて低下しており、また、証言として挙げられた目撃情報は、薬物常習者特有の無いものを見たという幻覚であり、後遺症の虚言が疑わしいと裁判官に猛アピールをしたのです。

カティヤの弁護士ダニーロは、容疑者弁護士ハーバーベックは問題を巧みにすり替えながら、被害者遺族をまるで容疑者のように扱う行為だと強く抗議。

そして、カティヤの薬物検査も拒否しまいます。

やがて爆弾事件の判決が下される日。カティヤの待ち望んだ、“法の裁き正義”はそこにはありませんでした。

カティヤの目撃証言は薬物検査が行われなかったことで、信ぴょう性が低いと扱われ、容疑者メラー夫婦は”疑わしきは罰せず”という法廷の規則の下、無罪判決が言い渡され、裁判は終了。

第Ⅲ部「海」


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

爆弾事件の裁判に勝訴し、釈放された容疑者メラー夫婦は、国から得た補償金で休暇中している様子をSNSにアップします。

また、画像には証言台に立ったギリシャ人のホテル支配人も一緒に、仲が良さそうに写っています。

カティヤの苦悩する気持ちを嘲笑うようなメラー夫婦。

彼らの居所の足取りを突き止めようと、カティヤは単身ギリシャへ乗り込みます。

海沿いのホテルを借りたカティヤは、さっそく証言台に立った男がいるだろうホテルを裁判の資料から見つけ、パソコンで割り符出します。

カティヤはその住所をカーナビに入れ、そのホテルを見つけ出しました。

しかし、なかなか勇気を出してホテルに踏み込むことのできないカティヤ。

時間だけが虚しく過ぎていきます。

すると、あのギリシャ人の男が車に乗ってホテルを後にしたことを目撃すると、その後、ホテル内に侵入してみます。

そこでフロントの奥にいた女性従業員から声をかけられ、見つかってしまったカティヤは、英語は話せるかと尋ね返します。

ホテルの利用客に友人のドイツ人がいないか、スマフォに残したメラー夫妻の画像を見せました。

しかし、女性従業員はギリシャ人しか利用していないと言います。

その場を後にしたカティヤですが、不審に思った女性従業員が後を追ってカティヤの車の窓から、電話番号と名前を教えて欲しいと言われます。

カティヤは戸惑いながらも嘘の名前とスマフォ番号を伝えると、すぐに女従業員はスマフォを掛けますが、呼び出し音がなるはずもありません。

その時、突然、あのギリシャ人の男が車から降り引き返して来ました。しかも、手にはバールを振り上げおり、カティヤに襲いかかってきました。

必死で車を走らせ逃げるカティヤ。


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

逃走したカティヤは、街中で路地で車を止め、何食わぬ顔で売店で恐怖心の気持ちを落ち着かせようと、「アメリカン・スピリット!」と言い煙草を買い求めました。

その背後をあの男の車が通り過ごし、カティヤは危機を出しました。

それからもカティヤは、ギリシャ人の男の車を尾行するようになり、ようやく、人目を避けキャンピングカーで寝泊まりしているメラー夫婦を発見。カティヤはメラー夫婦への復讐を誓います。

彼女は彼らが爆弾事件で作った爆弾を参考にしようと、裁判記録をパソコンの保存ファイルから見つけ出します。

そして、カティヤは同じ材料をホームセンターで購入します。

夜になり、愛する息子ロッコと遊んだラジコンカーの仕掛けを使い、材料として集めた圧力鍋に肥料や釘を入れ、遠距離から爆破させる爆弾を製造しました。

翌日、カティヤは作り終えた爆弾をリュックに入れ、メラー夫婦が宿泊しているキャンピングカーに向かいます。

2人がジョギングに出かけた隙を見計らって、キャンピングカーの下に爆弾リックを置きます。

しかし、草陰からメラー夫婦が戻ってくるのを待っていたカティヤ。

復讐の機会を待ち、ただただ時間だけが過ぎるうちに、冷静さを取り戻したカティヤは、心境に変化が起こり、復讐の計画を中止します。

仕掛けた爆弾リックを取りに戻り撤収し、借りている宿舎に戻ります。

帰路に戻る夕方の車中、これまで何度も掛かってきていた知人で弁護士のダニーロから連絡に、カティヤはやっと出ることにしました。

スマフォを耳に当てながら彼女は、爆弾事件以後、精神的に追い込まれてこともあってか、不順になって全く無かった生理が再びきたことで、道沿いの売店でナプキンを買い求めます。

ダニーロはどこにいるんだカティヤは、と仕切りに心配をしています。

そして、上告の期限が明日に迫っているので、その書類を作成しようというダニーロは再び容疑者と闘おうとカティヤに言います。

彼は明日の朝8時にカティヤと一緒に、お薦めで美味しいパンでも食べた後に、上告書類を作成しようと申し出ます。

その気持ちに、カティヤはダニーロに深く感謝をしました。

その晩、ベットに入ったカティヤは、スマフォに残された夫ヌーリと息子ロッコと一緒に、海へとバカンスに行った動画の記録を見つめます。

ヌーリとロッコは仲良く海の波間に遊びます。ロッコは「ママもおいで」と言っていました。


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

翌日、メラー夫婦がジョギングを終え、キャンピングカーに戻ってきました。

アンドレは車内に先に入り、エドはしばらく海を見つめています。

エドもキャンピングカーに入ると、それを見届けた砂浜の林の奥から人影が。

カティヤは爆弾リュックを胸に抱え込み、ラジコンカーのリモコンを片手に2人の乗ったキャンピングカーの中へ入っていきます。

自爆。

青い空に爆風と破片が吹き飛び黒い煙と火炎が舞い上がり、近くにあった松の木を焦がします。

海の波はまるで永遠のように繰り返し、絶望的に揺れています。

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映画『女は二度決断する』の感想と評価


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ダイアン・クルーガーの演技力と俳優たち

本作『女は二度決断する』の見どころは、俳優たちの演技力高さです。

女優ダイアン・クルーガーは、この作品で第70回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞しました。

2002年にダイアンはデニス・ホッパー主演の『ザ・ターゲット』で映画デビューそ果たし、2004年公開のハリウッド映画『トロイ』でアメリカに進出します。

また、同年公開された『ナショナル・トレジャー』の公文書館のアビゲイル役で広く知られるようになりました。

参考映像:『ナショナル・トレジャー』

そんなダニエルはハリウッド作品にも出演しますが、2005年公開の『戦場のアリア』など、フランスやヨーロッパ映画でも活躍しいて、英語、フランス語、ドイツ語が達者な女優です。

今回の『女は二度決断する』では、ドイツ北部の出身のカティヤという女性を演じ、初挑戦となったドイツ語を使った演技で、カンヌの女優賞に輝いたのです。

彼女の愛する家族を奪われ、心が荒んでいく様子や苦悩に満ちた血の通った表情は必見に値するものです。

また、2017年放映のドラマ「プリズン・ブレイク」シーズンVで、アブ・ラマール役を務めたヌーマン・アチャルが演じたヌーリ役は生き生きとしたクルド人男性を演じていました。

さらには、容疑者側の弁護士ハーバーベック役を演じたオーストリア出身の俳優ヨハネス・クリシュ。彼の厳つい顔と憎々しい様子も見せた演技も忘れがたいです。

他にも容疑者の父親ユルゲン役を演じた、『善き人のためのソナタ』や『白いリボン』などで知られるドイツを代表するウルリッヒ・トゥクールの取り返しのつかない深い罪悪感背負った謝罪など、見るべきところは演技に多く示されています。

それは脇役であるが、カティヤの家族たちを演じた俳優の誰もが、高い演技体験のメソッドを受けてものだと思い知らされます

ファティ・アキン監督は、このような俳優たちの全てに演じる役柄を十分に理解させ、のびのびと自由に演技に挑戦させる環境を作るのが、とても上手なのでしょう。

そのことについて、カティヤ役を演じたダイアンは、次のように語っています。

「撮影に入る前に約6ヶ月かけて30家族ほどのテロや殺人事件の犠牲者となった方々に話を聞いて、とてつもない苦しみや哀しみや重みを引き受けなければいけないと感じました。この経験は私の人生を完全に変えました。撮影中、何度も自分が演技をしているのではないような感覚になったんです。自分の目の前で起きていることに反応しているような…。今も私の中にカティヤはいます」

ただただ、女優賞を獲得したダイアンを始め、スクリーンに映し出される俳優の雄弁さと言える演技を見つめる映画です。

カティヤの流す血の数々


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

この作品で印象に残るのは水分、水気です。

カティヤが愛する夫ヌーリと息子ロッコを失う原因なのも、親友と出かけたスパです。

その後、苦悩の受圧を受けている最中は、涙や鼻水とともに長雨が降っています。

ラスト・ショットが海なのは、その悲しみの深さ(雨)が溜まりに溜まった海の揺れなのでしょうか。

もう一つがカティヤの流す血液です。

義理の母親が失った夫と息子の遺体をトルコに持ち帰りたいと言った際に、興奮して流す鼻血

バスタブの中で自死した際に、両手首から上がる血煙

裁判に強く挑みたいと思う気持ちからか、ヌーリの嫌がっていたタトゥーを再度入れる“侍の刺青に滲む血”

そして、事件以降に極度のストレスがあったことで生理不順になっていたが、生理が戻ってきた際に手のひら確認した血

生きようとする気持ちと、そして死に向かう気持ちを繰り返し場面で、印象的に血はメタファーとして描写されています。

そして、2つの気持ちが混じり合い極限の状態の感情が自爆です。

このラストをどう観客が読むかは、ファティ監督は観客に委ねているので、あえて書きません。

かつて、息子ロッコがバカンスに出かけた際に、「ママもおいで」と海に誘っていましたが、血の水分は海と全ては混ざり合ったのか。それとも水分は蒸発してしまったのか

あなたはこのラストに何を感じますか?

まとめ


(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH

本作『女は二度決断する』で、ダイアン・クルーガーはカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。

これは申し分のない演技だったと思うし、脇役の俳優まで含め、それと共鳴し合っています。

この作品を安易に衝撃のラストと言われたりしていますが、そんなことはありません。

脚本の展開はちゃんと10分先まで見せていますし、どんでん返しもありません。

むしろ、良くない方向に常に物語が進行するのがわかっているからこそ、ダイアンの演技は観客に沁みてしまうと言えるでしょう。

あくまで物語や結末は全て見えた上で、堪能するという作品でしょう。

女優ダイアンの見せる表情や様子は、喪失、絶望、悲しみ、不安、憎しみ、怒り、恐怖、孤独、嫉妬など、心を確実にビジュアル化しています。

さて、最後に日本人なので、少し反論的な点にも触れておきましょう。

カティヤという女性について述べれば、日本の「侍」のタトゥーが2回もメタファーとして登場します。

侍の持つ精神(サムライ・スピリット)の“死ぬことと見つけたり”は、ハラキリやカミカゼ、特攻や自爆ではないので、あのメタファーはいただけませんね

まあ、彼女が火を点けるのは、“アメリカン・スピリット”という煙草なので仕方ないのですが…。お後がよろしいようで。

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