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映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • ちょり

常に弱い立場の人に寄り添い、数々の名作を生み出してきたイギリスの名匠ケン・ローチ監督が、引退宣言を覆し、撮ったのがこの作品です。

彼が見過ごすわけにいかなかった問題とはどのようなものなのでしょうか。

以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『わたしは、ダニエル・ブレイク』映画作品情報をどうぞ!

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映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』作品情報

【公開】
2017年(イギリス)

【原題】

I, Daniel Blake

【監督】
ケン・ローチ

【キャスト】
デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズディラン、フィリップ・マキアナン、ブリアナ・シャン、ケイト・ラッター

【作品概要】
イギリス北東部ニューカッスルを舞台にしたケン・ローチ監督の最新作。イギリスの複雑な社会システムに振り回されながらも助け合って生きる人々の姿を描くと同時に、弱者を切り捨て、人間の尊厳をも踏みにじる現代社会の在り方を強く非難しています。

映画『わたしはダニエル・ブレイク』あらすじとネタバレ

ダニエル・ブレイクは、イギリス・ニューカッスルで暮らすベテランの大工です。妻に先立たれ、一人暮らしをしています。子どもはありません。

ある日、心臓発作を起こして足場から落ち、仕事ができなくなりました。日常生活には不便がないくらいに回復しましたが、医師からはまだ働いてはいけないと診断されます。

国の雇用支援手当を受け、生活しているのですが、今日は労働年金省から電話があり、その継続審査が行われました。

質問は非常に機械的で、的はずれなものばかりで、いらいらしたダニエルが「心臓が悪いんだ。心臓のことを聞いてくれ」と訴えても、態度が悪いと結果に影響が出ますよ、と脅される始末です。

彼の住むフラットの隣には若い黒人男性チャイナとその友達が住んでいますが、彼らはしょっちゅう生ゴミを家の前に放置するので、いつもダニエルに注意されています。

彼らは友好な関係を築いており、チャイナはしぶしぶゴミを捨てにいきますが、留守中に荷物が届くかもしれないので預かっておいてくれと言って出かけていきました。

数日後、「就労可能、支援手当は中止」と告げた手紙が届きました。ダニエルは役所に電話を入れますが、いくら待っても繋がりません。

繋がるまでに1時間48分もかかり、サッカーの試合より長いとダニエルは憤ります。

不服申し立てをするためには、もう一度同じ審査を受けなければならず、そこで同じ結果が出て初めて不服申し立ての手続きが出来るというシステムだと説明されます。

では、審査を受けさせてくれと頼むと、まず認定人からの電話を受けてくれとの返答。いつかかってくるのかと問うてもわからないという解答です。

そもそも、手紙での通知の前に認定人からの電話が来るはずなのにきていないという状態です。文句を言っても、認定人の電話が先です、の一点張りでらちが明きません。

たまりかねて職業安定所を訪ねたダニエル。求職者手当の申請をするよう言われますが、用紙を要求するとオンラインのみの申し込みだと言われます。

パソコンなど触ったことがありません。途方にくれていると、小さな子どもを二人連れた若い女性が職員と言い争っている様子が目にはいってきました。

彼女は、ロンドンからニューカッスルに出てきたばかりで、バスを間違え道に迷い、約束の時間に間に合わなかったのです。そのため給付金を受け取れなくなってしまったのです。

彼女は職員に食い下がりますが、他の職員もやってきて、追い出されようとしていました。

みるにみかねたダニエルは、私たちは待つからその人の言い分を聞いてあげなさいと声をかけます。しかし秩序を乱したと、彼まで一緒に追い出されてしまいました。

明日から子どもたちを学校に行かせるのに、どうやって暮していけばいいのか、若い母親は途方にくれていました。

買い物に付き合い、彼女の家まで荷物を運んだダニエルは、彼女たちがロンドンからニューカッスルにやってきた事情を知ります。

女性の名はケイティ。雨漏りがして、子どもが病気になったことで大家に文句を言ったら追い出されてしまったのだそうです。

どこにも行くところがなく、ホームレスの宿泊所に二年間滞在。狭い一部屋に三人の暮しは子どもにとって大きなストレスだったといいます。

ようやく見つかったと役所が知らせてきたのがニューカッスルのこの家だったのです。初めての土地で不安ですが「なんとかここに住むつもり」とケイティは言い、仕事がみつかったら、学校に復帰するつもりだと語ります。

ダニエルは道具を持ってきて家の中を直してやろうと約束し、自分の電話番号を渡すのでした。

次の日の朝、ダニエルのうちに荷物が届きました。どうやらチャイナが言っていた荷物らしいのですが、ダニエルの住所宛に来ています。彼はチャイナのところに荷物を持っていくと
怪しい荷物でないか点検しました。

中からはナイキのスニーカーが出てきました。中国で精密に作られた品物で、広州の知り合いが送ってきたものだといいます。

チャイナたちは、これらを通常より安い値段で売って、一儲けしようと計画していました。真面目に仕事しても恐ろしく低い賃金しかもらえない日々。いつかこの状態から抜け出したいと思っているのです。

ダニエルは図書館に行き、パソコンの前に座りますが、まったく使い方がわかりません。係の人や、周りの人に、聞きながら、なんとか最後までいけたと思ったらフリーズしてしまいます。時間がかかりすぎタイムオーバーになったのです。

ダニエルは職業安定所に行き、以前親切にしてくれた職員を見つけて、オンライン申請を手伝ってほしいと頼みました。しかし別の職員が彼女を注意しました。前例を作ってもらったら困る、というのです。結局自分ですることになったダニエルはもたもたしているうちにまたもや時間切れになってしまいました。

ダニエルはケイティたちの家を訪ねると、プチプチを窓ガラスにはりつける防寒方法を教え、鉢とローソクで出来る簡易ストーブを作ってやりました。彼女たちには、暖房費にかけるお金がないからです。

夜中、ケイティは風呂のタイルを一生懸命こすっていました。少しでもきれいにしようと思ったからなのですが、タイルが一つ崩れて浴槽の中に落ちてしまい、粉々にくだけてしまいます。ケイティの目に涙が溢れました。

仕事も思うようになく、ケイティは自分で「掃除します」と書いたチラシを作ると、一軒、一軒、ポストに投函するのでした。

結局、ダニエルの申請はチャイナが自分のパソコンでやってくれました。感謝するダニエル。彼らは、スカイプで、中国、広州の友人と会話を楽しみました。ダニエルにとって、驚くことばかりです。

求職者手当の申請をするためには、実際に求職活動をし、その状況を役所に提出しなくてはいけません。履歴書の書き方講座にも出なくてはなりません。そんなものはいい、と断ったダニエルですが、規則に従わないと制裁処置をとると説明されます。

ダニエルは、ケイティに付き添って「フードバンク」にやってきました。寄付で集められた食料品や日常品を受け取ることが出来るその場所には長い列が出来ていました。

ようやく順番が廻ってきて、紙袋に様々な品を入れてもらっている時、ケイティは思わず缶詰を開け、食べ物を口に運んでしまいます。ずっと食事をしておらず、あまりの空腹に耐えきれなかったのです。

自分をひどくみじめに感じ、ケイティは涙を流します。「君は悪くない」とダニエルは一生懸命励ますのでした。

ダニエルのもとに認定人から電話がかかってきました。不服申し立ては却下。就労可能、支援手当は中止と男は機械的に告げ、なんの反論も受け入れようとしません。

求職者手当を受けるには、求職活動をしなくてはならず、彼の履歴書を観て、雇うといってくれた人にも実は働けないのだと断るしかありません。

相手は、求職手当欲しさに俺の貴重な時間を奪ったのかと激怒して電話を切ってしまいます。ダニエルにとってそれは屈辱以外のなにものでもありません。

一方、スーパーで買い物をしていたケイティは、店を出ようとして、警備員に捕まります。生理用品をカバンにこっそり入れたところを見つけられたのです。

泣いて詫びるケイティに、店長は同情し、開放してくれますが、その際、警備員の男が困ったらいつでも電話してきてくれと電話番号を書いた紙切れを渡してきました。

ダニエルはケイティと子どもたちを家に招待しました。妻のモリーの写真を目ざとく見つける子どもたち。彼は亡きモリーの思い出を話し始めます。

「優しく心が広い女性だったが、気持ちがころころ変わった。頭の中は海だった。彼女は心を病んだ。長い間、世話するうちに介護が人生になった」。そして、「君にはまだ未来がある」と言ってケイティを励ますのでした。

ある夜、眠っているケイティのところに娘のデイジーがやってきて、学校でいじめられていると告白します。靴が壊れているとバカにされ、フードバンクに行っていると陰口を叩かれているらしいのです。

ケイティは男がくれた番号に電話します。まともな商売でないことはわかっていますが、娘を守りたい一心でした。

そのことに気付いたダニエルは現場に向かい、彼女にやめるように言いますが、「あなたとはこれっきりよ。優しくしないで」と激しく拒絶されてしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『わたしは、ダニエル・ブレイク』ネタバレ・結末の記載がございます。『わたしは、ダニエル・ブレイク』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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職業安定所にやってきたダニエルは、求職活動が不十分であると指摘されました。さらに、彼の履歴書が規定に即していないため違反審査を受けてもらうと言われてしまいます。

ダニエルが、申請をやめようとすると、あの親切な職員が「求職者手当は続けてください。給付のための面談も続けてください。拠り所がなく、正直な人がホームレスになったのを私はいっぱい見てきました」と説得しようとします。

しかし、ダニエルは「尊厳を失ったら終わりだ」と言い、「あとでまた会おう」と出て行くのでした。

外に出ると、スプレーで建物の壁に「わたしはダニエル・ブレイクだ。飢える前に申し立て日を決めろ。」と、システムを批判する文章を書き付けました。道行く人々が足をとめ、それを読んで歓声を上げています。

皆、このシステムに疑問と怒りを感じているのです。「その通り、よく言ってくれた!」と叫んだ男性もいましたが、職員が警察を呼んでダニエルは器物破損罪で連行されてしまうのでした。

初犯ということもあり、口頭注意だけで釈放されたダニエルでしたが、彼はほとんどの家具を売ってしまい、部屋に閉じこもるようになりました。

ある日、デイジーが訪ねてきました。いくらノックしても出てこないダニエルに向かって、彼女は一生懸命、声をかけます。

「クスクスを作ってきたわ。お母さんが寂しがっているの」と呼びかけるデイジー。「帰ってくれ、お願いだ」というダニエルにデイジーは「私たちを助けてくれた?」と問い、そして言います。「今度は助けさせて」。

ドアを開いたダニエルの胸にデイジーは飛び込み、二人は堅く抱き合うのでした。

ダニエルとケイティは腕を組んで歩いていました。雇用支援手当の回復の手続きを支援してくれる団体の力を借りるのです。

「システムに不満を持っている市民は多い。あなたは法的にも十分資格がある」と弁護士らしい男が述べています。「言いたいことがある。彼らは聞くだろうか?」とダニエルはいい、トイレに席をたちました。

しばらくして男性が駆け込んできて「トイレで男性が倒れています。誰か来て!」と叫びました。

ケイティや、皆があわてて駆けつけると既にダニエルは亡くなっていました。心臓発作が起こったのです。

朝早く、教会でダニエルの葬儀が行われました。ケイティは前に出て、ダニエルが、雇用支援手当回復の交渉の場で、読み上げるつもりで書いていた文章を読み上げます。

「私は依頼人でも、顧客でも、ユーザーでも、怠け者でも、詐欺師でもない。きちんと税金を収めるまっとうな市民だ。身分の高いものには媚びないが、弱い者には手を貸す。私はダニエル・ブレイク。人間だ。犬ではない」。

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映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』の感想と評価

ダニエルが、手当を申請するのに、用紙を要求するとオンラインのみだと職員に告げられるシーンを観て、昨年、ロンドンを訪れた私の友人が、役所に紙がまったくなくて驚いたと言っていたのを思い出しました。

日本でも、様々な分野でオンライン化が進んでいますが、まだまだ紙の書類が中心です。しかし、イギリスでは、役所だけでなく、学校や、会社でも、紙は消えつつあるらしいのです。

映画に出てくるシステムの複雑さ、システムに従わなかったりミスした時の制裁、懲罰など、まるで近未来を舞台にしたSF映画のような非現実世界が展開しているように見えます。が、これはイギリス社会で行われている現実なのです。

医者から仕事をするなと言われているのに、簡単な電話調査で、「就労可能」と判断され、それを抗議するにも途方もなく時間がかかるこのようなシステムはなぜ生まれたのでしょうか。

役所仕事を効率化し、人減らしで税金を節約し、不正受給を食い止める、便利で快適な夢のようなシステムの出来上がりと謳っていたのではないでしょうか? それが実際は、弱者に金を回さず、厳しく管理し、違反者には制裁を加える、人間の尊厳をも奪うものになってしまっているのです。

ケン・ローチ監督の『SWEET SIXTEEN』(02)を観たときは、貧困層のあまりにも悲惨な実態に驚いたものです。先進国なのに、その日の生活すらままならぬ人々がいるのに衝撃を受けました。

新自由主義政策がもたらした結果ですが、今や日本でも同じことが起こっています。そのことを考えると、『わたしは、ダニエル・ブレイク』で描かれている出来事は、決して他人事ではなく、5年後、10年後の日本の姿と考えてもよいかもしれません。

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まとめ

ダニエル・ブレイクを演じるのは、コメディアンとして活躍しているデイヴ・ジョーンズです。彼の穏やかな出で立ち、茶目っ気のある表情が、作品に温かみを与えています。

ケイティには、ヘイリー・スクワイアーズが選ばれ、厳しい現実に直面しながら、懸命に生きるシングルマザーを好演しています。

彼らは、真面目にきちんと生きたいと思っているのに、屈辱を感じるような出来事にたびたびぶち当たります。ケイティが涙を流す時、それはいつも、哀しみではなく、自分自身をみじめに感じる魂の尊厳の危機によるものです。

まともに仕事があって、ちゃんとした生活ができていれば、決してしないようなことを貧困であるがゆえにやってしまっている自分に対して涙が溢れるのです。

ケン・ローチ監督はイギリスを代表する社会派監督として知られています。『ケス』、『大地と自由』、『麦の穂をゆらす風』など、多数の傑作を生み出してきました。

現在、80歳を超え、一度は引退を表明しましたが、現在のイギリスが直面している問題を見逃すことができず、本作を撮ったそうです。

社会問題を激しく告発するスタイルではなく、社会的弱者に寄り添い、懸命に生きようとしているのにシステムにはじかれてしまう人々に温かい視点を送りながら、社会の矛盾を暴いていきます。

助けてくれたから、今度は自分たちが助けると、小さな女の子がダニエルに話しかけるシーンのなんと素晴らしいことか。

だからこそ、観終わって、哀しみよりも怒りを覚えました。

決して遠い海の向こうのお話ではなく、誰にでも起こりうる話ですので、多くの方に観ていただきたいです。

本作は第69回(2016年)カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞しています。

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