Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2020/04/15
Update

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』感想とレビュー評価。ベトコン2000人との“ロングタンの戦い”に挑む108人のオーストラリア軍

  • Writer :
  • 星野しげみ

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』
ベトナム戦争の「ロングタンの戦い」を描く

オーストラリアのクリフ・ステンダース監督が、ベトナム戦争の実話を描いた映画『デンジャー・クロース 極限着弾』。オーストラリア軍と南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)とが戦った「ロングタンの戦い」を、迫力満点の映像で映し出します。

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』は2020年6月19日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー。

絶対絶命の危機に陥ったオーストラリア部隊が本部に要請した「極限着弾(デンジャー・クロース)」。それは、目前にいる敵への後方からの迫撃砲を撃つことでした。至近距離でおこる激しい銃撃戦と砲弾の威力が実感できる映画です。

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』の作品情報

(C)2019 TIMBOON PTY LTD, SCREEN QUEENSLAND AND SCREEN AUSTRALIA

【日本公開】
2020年(オーストラリア映画)

【原題】
Danger Close: The Battle of Long Tan

【脚本】
スチュアート・ビーティー

【監督】
クリフ・ステンダーズ

【キャスト】
トラビス・フィメル、ルーク・ブレイシー、アレクサンダー・イングランド、ダニエル・ウェバー、リチャード・ロクスバーグ、アンソニー・ヘイズ、アーロン・グレナン、サム・パーソンソン、ウリ・ラトゥケフ、リチャード・テ・アレ、ベン・エスラー、ニコラス・ハミルトン、サム・コットン、ジェイ・キリオナ、トビー・ブローム、ラザルス・ラトゥーエリ

【作品概要】

1966年、激しさを増すベトナム戦争にオーストラリアも参戦。ベトナムの「ロングタン」で、オーストラリア軍108人が南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)2,000人と激しい銃撃戦を繰り広げます。とても過酷な戦いだったにも関わらず、その功績は称えられることもなく、50年間封印されていました。

そんな知られざる戦闘にスポットを当てた映画『デンジャー・クロス 極限着弾』。『荒野にて』(2017)のトラビス・フィメルが主役を演じ、『ハクソー・リッジ』(2016)のルーク・ブレイシー、『エイリアン コヴェナント』(2017)のアレクサンダー・イングランドが共演。監督は「殺し屋チャーリーと6人の悪党」(2014)のクリフ・ステンダーズが務めます。

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』のあらすじ

(C)2019 TIMBOON PTY LTD, SCREEN QUEENSLAND AND SCREEN AUSTRALIA

1966年8月18日未明、南ベトナム。ヌイダット地区にあるオーストラリア軍司令部の基地が、ベトコン部隊による迫撃砲の急襲を受けます。

翌朝、どりゃぶりの雨と雷鳴の中、ハリー・スミス少佐率いるD中隊に、発射地点を突き止めるための偵察命令が出されました。

D中隊の小隊に属する兵士は徴集兵がほとんど。平均年齢21歳と若い二等兵が多く、圧倒的に実戦の経験不足が目につきます。

新たに配属された2人の二等兵にもあまり期待が出来ず、スミス少佐は特殊部隊への転属希望を胸にしたまま、偵察へ向かいました。

D中隊は、第10小隊、第11小隊、第12小隊と3つの小隊に分けて行動し、常に無線で連絡を取っていました。

ロングタンのゴム園に差し掛かったところで、第11小隊がベトコン兵と遭遇。激しい銃撃戦が勃発します。

第11小隊の兵士たちは、ゴムの木の影に隠れたり、地面に這いつくばって、必死に機関銃を連射し、弾も無くなりかけた頃にやっとベトコン兵が散り散りになって退散。

「助かった」「よかった」安心した第11小隊は、再び前進しますが、既にベトコン兵の大軍に包囲されていました。

ベトコン兵にとっては熟知たる農地です。どこからともなく敵を監視し、四方八方から銃撃を始めてきました。

逃げ道のない第11小隊は、戦闘開始から20分で、28人構成の小隊のうち半数以上が負傷というありさまに……。

味方からの応援部隊も近付けない平坦な農地の中で、第11小隊は絶体絶命のピンチを迎えます。小隊の全滅を防ぐため、スミス少佐は、ついに基地本部に要請を出しました。

「責任は取る。デンジャー・クロース(極限着弾)を要請する」。極限着弾。それは、目前にいる敵へ後方から迫撃砲を撃つこと。

勝利を呼び込むには絶大の効果が望めますが、味方に対しては超至近距離で撃つことになり、小隊が全滅してしまう恐れのある危険な作戦だったのです。

要請を受けた基地本部の将校たちは絶句。上層部がためらっているうちにも、D中隊第11小隊の全滅の危機は迫ってきていました。

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』の感想と評価

(C)2019 TIMBOON PTY LTD, SCREEN QUEENSLAND AND SCREEN AUSTRALIA

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』は、ベトナム戦争史上最も過酷といわれた「ロングタンの戦い」を描いています。

オーストラリア軍108人対2,000人のベトナム軍との戦いで、「デンジャー・クロース」が要請されました。

第11小隊の奮闘にある強い絆

ヌイダット地区にあるオーストラリア軍基地をベトナム兵に攻撃され、D中隊がその周囲を偵察に行くのですが、この中隊の兵士たちは殆どが新兵です。

銃を撃つのが恐い者、射撃は得意と嘘をつく者など、精強部隊とはとてもいえない実態に、隊長であるスミス少佐の士気も上がりません。そんな部隊がベトナム兵の猛攻撃を受けます。

何処から来るのか分からない敵に対して、あたりを見回しながら、常にライフル銃を構える緊張感。至近距離からいきなり発砲され、逃げる間もなく地面にはいつくばって機関銃を撃つ恐怖。

緊迫した状況から一気に撃ちあいが始まる戦いの中、兵士たちは自分自身とも戦っていたのです。

目の前で仲間が頭や胸を撃ち抜かれて死んでいく様子を見た兵士たちは、銃撃の恐怖も忘れて、怒りと悲しみに震えました。「死ぬのは嫌だ」などと言っていた二等兵は、負傷した仲間を庇って銃を撃ちまくります。

仲間を助けたい思いは実力以上の力を発揮し、無能とばかり思っていた部下たちが、命令に忠実に動くさまに、スミス少佐も彼らを信頼し始めます。

歩兵部隊ならではの激しい銃撃戦は、寄せ集めに近い第11小隊をいつの間にか一つにしていたのです。

切り札は極限着弾

(C)2019 TIMBOON PTY LTD, SCREEN QUEENSLAND AND SCREEN AUSTRALIA

小隊としては、兵士の気持ちが一つになればとても精強になりますが、最悪な戦況下なことに変わりはありません。全滅を避けるため、スミス少佐はついに「デンジャー・クロース」を要請します。

「デンジャー・クロース」=「極限着弾」は、味方が後方から至近距離に迫る敵に向けて迫撃砲を仕掛けるというものです。

着弾点は敵の居場所ですが、近くにいる味方の部隊も巻き添えになるのは分かり切ったこと。スミス少佐の要請に本部にいる幹部たちが首を横に振るのは当たり前です。

「デンジャー・クロース」の要請が出ても、仲間のことを思えば実行に移せないはず……。軍の勝利とスミス少佐の要請の現場状況を考えた後、大隊長の下す判断に注目です。

この作品には、鼓膜も破れそうな大音量の焼夷弾の威力、撃ち抜かれて身体ごと吹っ飛ぶ兵士の姿と、戦争映画ならではの驚愕シーンが数多くあります。

中でも、ヘルメット着用ではない軽装備で戦闘に挑む第11小隊の銃撃戦は迫力満点でした。

やられなければやられてしまう。そんな絶体絶命の境遇のもと、国のためでも名誉のためでもなく、仲間の命を助けるために、若い新兵たちは我武者羅に戦い抜くのです。

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』は、ベトナム戦争の史実と共に、困難を乗り切るには仲間との信頼が何よりも大切ということを教えてくれました。

まとめ

(C)2019 TIMBOON PTY LTD, SCREEN QUEENSLAND AND SCREEN AUSTRALIA

映画『デンジャー・クロース』の第11小隊は、ベトナム戦争史のオーストラリア軍の中では、英雄視されてもおかしくない活躍ぶりでした。けれども、この戦いは50年もの間封印されてきたといいます。

ベトナム戦争に絡む政治的要素があり、若くしてベトナム行きの軍に徴集された兵士たちのことを理解する国民は少なかったそうです。この事実を知ったクリフ・ステンダーズ監督は、今語られるべき大切な物語だと、映画化に踏み切りました。

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』は、絶体絶命の窮地に追い込まれて初めて生まれる強い絆の物語なのです。

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』は2020年6月19日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ考察】容疑者Xの献身|泣ける伏線の《ひっかけ問題》達×つまらないが愛おしい日常が導く美しい答えは《未知数で変数な愛》

人生に絶望し、全てを投げ出そうとしていた私を救ってくれたのは、あなたなのですから。 天才物理学者・湯川学が難事件を解決するテレビドラマ「ガリレオ」シリーズの劇場版第1作。作家・東野圭吾による原作小説は …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】映画シャイロックの子供たち|あらすじ感想考察と結末解説。西木は生きてる?犯人正体×ドラマ/小説と違う“清算”というオリジナル展開

舞台は大銀行(メガバンク)!裏の顔も、裏の金も全部暴け! ある一支店で起こった現金紛失事件から露わになるメガバンクの不祥事、そして“金”という契約に翻弄される人々を描いた映画『シャイロックの子供たち』 …

ヒューマンドラマ映画

映画『ナポレオン』ネタバレあらすじ結末と評価の感想解説。祖国に戦に、愛に情熱を燃やし、激動の時代を“生き抜いた男”

「余の辞書に不可能という文字はない」。 英雄ナポレオン1世の真の姿とは!? 『グラディエーター』(2000)以来23年ぶりの夢の再タッグ。リドリー・スコット監督×ホアキン・フェニックスでおくる、歴史ス …

ヒューマンドラマ映画

パッドマン5億人の女性を救った男|ネタバレ感想と内容解説。インド女性の悩みに立ち向かった男の実話!

映画『パッドマン5億人の女性を救った男』は、2018年12月7日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー! 2000年代のインドで、衛生的でかつ安価な生理用品の開発・普及に奔走した男 …

ヒューマンドラマ映画

映画『ワンダーウォール劇場版』感想とレビュー評価。大学側と対立する学生らの心情を描き反響を呼んだドラマの劇場版

『ワンダーウォール 劇場版』は、2020年4月10日(金)より、全国順次公開 京都の片隅に存在する学生寮を舞台に、学生寮の存続を巡り、大学側と対立する学生達の心情を描いた群像劇『ワンダーウォール 劇場 …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学