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Entry 2020/06/17
Update

映画『盗まれたカラヴァッジョ』ネタバレあらすじと感想。ラスト結末までイタリアの魅力が満載の作品

  • Writer :
  • もりのちこ

真実か、フィクションか。
いまだ未解決の名画盗難事件の真相にせまる。

1969年、イタリアのパレルモにあるサン・ロレンツォ小礼拝堂から、カラヴァッジョの名画「キリスト降誕」が何者かによって、盗み出されました。

この実際にあった盗難事件は、いまだ未解決であり、絵画の市場価格は3000万ユーロ(およそ36憶円)とも言われています。

このイタリア美術史上最大の闇事件の真相に、『ローマに消えた男』『修道士は沈黙する』のイタリアの名匠ロベルト・アンドー監督がせまります。

事件の裏側には、イタリアンマフィアが関わっていたという大胆な推理。事件に巻き込まれながらも、物語の完成を成し遂げる心強きヒロイン。

現実と映画の世界が入り混じり、観る者は迷路に放り込まれたような錯覚を起こすことでしょう。

危険で優美なミステリー映画『盗まれたカラヴァッジョ』を紹介します。

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映画『盗まれたカラヴァッジョ』の作品情報


(C)2018 Bibi Film – Agat Film & Cie

【日本公開】
2020年(イタリア・フランス合作)

【監督】
ロベルト・アンドー

【キャスト】
ミカエラ・ラマゾッティ、アレッサンドロ・ガスマン、レナート・カルペンティエリ、ラウラ・モランテ、イエジー・スコリモフスキ、アントニオ・カタニア、ガエターノ・ブルーノ、マルコ・フォスキ、レナート・スカルパ

【作品概要】
1969年に実際に起きた、カラヴァッジョの名画「キリスト降誕」盗難事件。映画『盗まれたカラヴァッジョ』は、その事件の真相にせまります。本作は、2018年ベネチア国際映画祭にて絶賛され、イタリア映画記者協会賞では、脚本賞を始めとする3部門にノミネートされています。

また、アメリカのロッテントマトの映画批評サイトでは、驚異の満足度100を記録し、世界中で話題作となりました。これまでにもヒューマンドラマとサスペンスを鮮やかに融合させ、数々の賞を受賞してきたロベルト・アンド監督が、今作ではイタリア美術史上最大の闇に挑みます。


映画『盗まれたカラヴァッジョ』のあらすじとネタバレ


(C)2018 Bibi Film – Agat Film & Cie

売れっ子脚本家のアレッサンドロは、次の映画の脚本を頼まれていました。製作会社から急かされるアレッサンドロでしたが、プロットも出来上がっていません。

アレッサンドロが向かったのは、映画プロデューサーの秘書として働くヴァレリアの部屋でした。なにやら親密に取引をする2人。

ヴァレリアは、アレッサンドロのゴーストライターを務めていたのです。しかし、ヴァレリアも次の脚本のネタに困っていました。

その日の帰り道。ヴァレリアに近付くひとりの老人がいました。彼の名は、ラック。

ラックは、ヴァレリアがゴーストライターをしていること、そして母親のアマリアと2人暮らしをしていることも、すべて知っているようでした。

「私は君に特別な物語を提供できる。通常では知りえない物語だ」。ラックは、ヴァレリアに脚本のネタを提供すると持ち掛けます。

半信半疑で彼の元を訪ねるヴァレリア。そこで聞いた話は、ヴァレリアを夢中にさせました。

1969年に世界を震撼させた、カラヴァッジョの名画「キリスト降誕」盗難事件。今も未解決のこの事件には、イタリアンマフィアが関係しているというのです。

ラックの話をもとに、事件の裏側をプロットにまとめ「名もなき物語」と名付けたヴァレリアは、さっそくアレッサンドロに渡します。

アレッサンドロは、待ってましたと中身をたいして確認もせず、急いで映画プロデューサーに届けに行きました。

それを読んだプロデューサーは「最高傑作だ!」と大興奮。あれよあれよと脚本の完成を待たず、映画製作が始まってしまいます。

監督には、引退を表明していたはずの巨匠クンツェが就任し、中国から多額の製作費の出資も決まり、全世界の注目を集めることになります。

調子にのったアレッサンドロは、脚本書きをヴァレリアにまかせ、大勢いる愛人の中のひとり、俳優志望のイレーネとバカンスを楽しんでいました。

そこへ怪しい男たちがやってきて、アレッサンドロを拉致します。連れて来られた場所は、ヴァレリアが書いたプロットに登場する、マフィアの邸宅とそっくりでした。

脚本の中では、水が抜かれたプールの底に盗まれたカラヴァッジョの名画「キリスト降誕」が置いてあったはずです。

そのプールを通り、奥の部屋に投げ込まれたアレッサンドロの前には、マフィアの連中がいました。この話を誰から聞いたのか、そして話の結末はどうするのか、尋問を受けます。

自分で書いていないアレッサンドロは、ことの成り行きが分かりません。しかし、ヴァレリアの身を案じ、口を閉ざすのでした。

昏睡状態で病院に運ばれたアレッサンドロのもとに駆け付けたヴァレリアは、ラックの話は本物だと確信します。

彼はいったい何者なのか。これ以上誰かを巻き込みたくない。ヴァレリアは罪の意識に苛まれますが、自分を守ってくれたアレッサンドロのためにも、この事件の真相を書き上げる決意をしました。

ヴァレリアは、「ミスターX」と名乗り、アレッサンドロのアドレスから映画プロデューサーに脚本の続きを送ります。

アレッサンドロの入院で、脚本が止まり困り果てていた映画製作チームは、ミスターXの出現に飛びつきます。文面や内容はアレッサンドロと変わらない。もしかしたら彼は脚本を書き終えていたのかもしれないと喜びます。

シチリアでの撮影には、ヴァレリアも同行することになりました。一方、マフィアはミスターXの正体を暴くため、手下を撮影現場におくり込んでいました。

以下、『盗まれたカラヴァッジョ』ネタバレ・結末の記載がございます。『盗まれたカラヴァッジョ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2018 Bibi Film – Agat Film & Cie
シチリアの教会に飾られた「キリスト降誕」の絵画。カラヴァッジョ作を真似て書かれたレプリカです。その出来栄えは見事なものでした。

美術を担当した画家がヴァレリアに教えてくれます。「天使の腕の角度が違ってしまったよ」。

ヴァレリアは忙しい撮影の合間を縫って、脚本を完成させようとしていました。その夜、誰もが知らない所で事件は起きていました。

映画のセットとして描かれた「キリスト降誕」の絵画を運び出すものたち。そして、すり替えられた絵画こそ、50年前に盗まれた本物のカラヴァッジョの「キリスト降誕」だったのです。

映画の撮影もクライマックスを迎えていました。「キリスト降誕」が映し出されます。天使の腕の角度に違和感を覚えるヴァレリア。

撮影は無事終了し、セットもばらされていきます。そんな時、ヴァレリアは監督の通訳で来ていた男に誘われ、部屋を訪ねていました。情熱的なアプローチに溺れたヴァレリアは、男と一夜を共にします。

ヴァレリアが寝ている間に、パソコンを開きデータを抜き出す男。その男こそ、マフィアの雇ったスパイでした。ヴァレリアがミスターXだという証拠がバレてしまいます。

男が情報を売ろうとしていた矢先、ラックがやってきます。ためらう男に「彼女に本気で惚れたか?」と聞くラック。お金を渡し解決します。

危ない所をラックに助けられたヴァレリアは、さらなる事件に巻き込まれていきます。ラックは、元政府高官でこの「キリスト降誕」盗難事件を追っていました。事件解決のためにヴァレリアを利用していたのです。

正体を明かし、改めてヴァレリアに協力を求めるラック。そして事件の本当の解決には、ヴァレリアの母・アマリアの協力が不可欠だと言います。

血は争えないものです。アマリアは、国の文化大臣のスピーチライターをしていました。ラックがアマリアの協力を得てまで防ぎたかったこととは。

次の大臣会議で、盗まれたカラヴァッジョの「キリスト降誕」が議題にあがるだろうとラックは予想していました。それは、政府がマフィアと裏取引をしていることを知っていたからです。

一部の大臣が、善人な市民によって「キリスト降誕」が見つかり、政府に寄付する申し出があったと事を進めようとします。しかし、それは嘘の証言でした。

「それは可笑しい話ですね」。文化大臣は、イヤホンから聞こえてくるアマリアの言葉をそのまましゃべります。説得力のある訴えで、この取引は一旦中止となりました。

どうにかマフィアとの取引を回避したラックとヴァレリア。ラックはヴァレリア親子に安全な場所を提供します。ヴァレリアはラックに不思議な縁を感じていました。

テレビから今回の事件の真相を暴くニュースが報じられます。そして、ラックが事故で亡くなったことも。悲しみに打ちひしがれるヴァレリア。そうです。ラックこそ、ヴァレリアの本当の父親だったのです。

それから半年。弁護士の元で顔を合わせるヴァレリアとアレッサンドロ。しかし、似ているようで2人とも別人のようです。

「名もない物語は、君の作ではないんだね」。アレッサンドロ役の男は答えます。「そうです。彼女の作です」。ヴァレリア役の女性は微笑みを浮かべました。

場面は一気にスクリーンの中から飛び出し、映画館の客席へと変わります。鳴りやまない拍手。

客席には、この映画の主人公となったヴァレリアとアレッサンドロ、ヴァレリアの母・アマリヤ、そして映画の中では死んだはずの父・ラックの姿もありました。

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映画『盗まれたカラヴァッジョ』の感想と評価


(C)2018 Bibi Film – Agat Film & Cie

イタリアの美しい景色と、優美な絵画、そして情熱的な登場人物たち、イタリア映画の魅力が満載の作品です。

『盗まれたカラヴァッジョ』のタイトルから、絵の在りかに迫るストーリーなのでは!と思いがちですが、「謎は謎のまま……」。それすらも芸術の一部と思わせるスマートな演出に酔わされます。

絵画の行方も気になる所ですが、作家と映画業界のつながりや、マフィアと政治家の関係など、浮き彫りになるスキャンダルにも注目です。

また、映画のどのシーンをとっても、名画を見ているかのような美しさがあります。

主人公ヴァレリアの脚本をもとに製作される映画「名もなき物語」のシーン撮影で、何組かの双子が交互に映し出されるシーンがあります。

全く区別のつかない双子の顔は、映画のセットである「キリスト降誕」の絵画がすり替えられたという暗示になっているのですが、一枚一枚の人物画を見ているかのような錯覚に陥ります。

プールの底に置かれたカラヴァッジョの「キリスト降誕」、雨が降る暗闇の中、光る絵画が運び出される風景、ヴァレリアと危険な男たちとの情事。

カラヴァッジョの絵画の特徴である、明暗のコントラストを意識したような映像美の数々に魅せられます。

映像の美しさに加え、魅力的な登場人物にも注目です。主人公ヴァレリア(ミカエラ・ラマゾッティ)は、始め黒縁メガネの堅物な女性でした。

しかし、危険を顧みず脚本の完成を決意した瞬間から、メガネを取り、髪をオールバックにかきあげ、真っ赤な口紅をひき、ワンピースにブーツを履き、女っぷりを上げていきます。

それは彼女にとっての戦闘服でした。時にはその美貌で、男性を誘惑し危機を乗り越え、事件の真相に迫っていきます。ヴァレリアを取り巻く男性陣との、恋の駆け引きも見どころです。

そして、何といってもラストの大どんでん返しに驚かされます。映画のラストシーンでは映画館の明かりが点き、自分も登場人物たちと同じ観客の一人だったと気付きます。一瞬「どこまでが映画?」と、迷子になってしまいます。

この結末もまた、被写体をよりリアルに描いた写実派のカラヴァッジョのように、嘘か本当かわからないほどこの映画はリアルなのだと語っています。

「映画に関する映画を撮りたい」と語ったロベルト・アンドー監督の言葉の通り、映画界の裏側が垣間見える面白さもあります。

まとめ


(C)2018 Bibi Film – Agat Film & Cie
いまだ未解決の実在した事件、1969年に起きたカラヴァッジョの「キリスト降誕」盗難事件の謎にせまった映画『盗まれたカラヴァッジョ』を紹介しました。

この事件は当初からマフィアが絡んでいると噂があり、1970年にはスイスの古美術商が多額の金で取引したとか、絵画の価値を知らない者に破壊されたのではなどと憶測が飛んでいました。

その後、2018年になり、あるマフィアのボスが、絵画は無事でとある場所に隠されていると断言したことで、再び調査が行われているということです。

光りと闇の天才画家カラヴァッジョ。今なお闇の中に隠されている名画「キリスト降誕」が、再び光の元に戻る日は来るのでしょうか。


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