映画『いつくしみふかき』は2020年7月24日(金)よりテアトル梅田他にて全国順次公開!
映画『いつくしみふかき』は劇団チキンハートを主宰する遠山雄の知人とその父親をめぐる実話をもとに生まれた異色のヒューマンドラマです。
2020年2月に、ロケ地となった長野県と主演の渡辺いっけいの出身地・愛知県で先行公開され、2020年6月19日(金)よりテアトル新宿での上映を経て、全国順次公開されています。
7月24日(金)には大阪のテアトル梅田にて公開が始まり、26日(日)には大山晃一郎監督、渡辺いっけい、遠山雄等、主要キャストによる舞台挨拶が行われました。
本記事ではその舞台挨拶イベントの模様をお届けします。
CONTENTS
映画『いつくしみふかき』舞台挨拶リポート
第1回目の上映が終わったあと、大山晃一郎監督と本作のメインキャストである、渡辺いっけい、遠山雄、榎本桜、林寛則が登壇しました。
前の2列をつぶし、登壇者の方々もマスクとフェイスシールドを着用するなど、コロナ感染対策に十分配慮をした上で、舞台挨拶が行われました。
大山晃一郎監督が描きたかったもの
大阪出身の大山晃一郎監督は子供のころからの夢だった映画監督として大阪の劇場に立てたことの喜びを表したあと、映画の主題について述べました。
「父親の広志は、最初は獣のような、自分さえよければよいという人物として現れます。村人に羽交い締めにされて吠えていたような男が様々な経験をして「生きたい」という台詞を吐くのですが、獣だった男がひとりの人間になるまでを描きたかったのです。
息子の進一は、自分の父親が村の人々から“悪魔だ、悪魔だ”と呼ばれている環境の中で育ってきたのですが、その“悪魔だ”と言われていた広志のことを、彼が本編で一度だけ“父”と表現するシーンがあります。真一が広志をそう呼ぶまでを描きたくてこういう映画になりました。
僕自身、父親にいろいろと複雑なものを抱えているのですが、そういう複雑なものをはっきりさせなくてもいいんじゃないか。白黒はっきりさせなくてはいけないような風潮がある世の中ですが、いろんな思いを抱えて生きていて、ちょっと疎遠になっている人をたまに思い出す瞬間があってもいいのではないか。そういう映画になっていれば良いなという願いを込めて本作を制作しました。」
渡辺いっけいが語る本作への想い
次いで、父親の広志を演じた渡辺いっけいが、大山監督やキャストのみなさんとの出会いや、作品に対する想いを述べました。
「大山くんは普段はテレビドラマの監督をしているのですが、初めて出会ったのは今から4年前のことで、彼はまだ助監督でした。非常に優秀な助監督で、その時出演していた連ドラの第一話にチンピラ役として出ていたのが遠山君と榎本君でした。遠山君のとぼけたお芝居にとても感心しまして、それがきっかけで、彼らの劇団の芝居を観に行くようになったりと親交を深めていきました。映画のお話を頂いたときはまだ脚本も出来ていなかった段階でしたが、絶対に面白いものになると確信して引き受けた仕事です。
撮ったのは3年前になります。普段テレビ中心で活動しているので、撮り終わったら放映されて終わりなのですが、3年前に撮った映画が、今こうやって公開されています。コロナ禍で、役者としてもどうしたらいいのかと考えることが多い中、この映画に支えられている自分を感じています。」
榎本桜が語る本作の「親子関係」
広志を父のように慕いながら、最後は怒りに震えるチンピラ役を演じた榎本桜は、本作の親子関係に言及しました。
「父と息子には実際モデルがいました。父と子が実の親子とは知らずに教会で出会って、一緒に不動産業をしようとする逸話などは、その親子の実際の体験からとっています。犯罪行為などは勿論フィクションですが。映画と違うのは、実際の親子は仲が良かったんです。
劇中の親子は、大山くんの親子関係や、遠山くんの親子関係なども取り込みながら出来上がっていったものです。父親が“トイレットペーパーはダブルに限る”とこだわるエピソードは、大山くんの実際の体験から来ています。このシーンは10テイクも撮って、彼のこだわりの強さを感じました(笑)。
ジャンル分けしにくい映画なのですが、しいて分けるとすれば“ノンフィクション”に近いといえるのではないでしょうか。」
林寛則と大阪
劇中、リニアの説明をする職員を演じた林寛則は、以前、大阪に5年間住んでいたことがあるそうです。「東京で役者をやって、昔住んでいた町に映画を持って帰れた気持ちはどうですか?」と榎本に尋ねられ、「最高でしたね」と即答。門真映画祭での上映で来阪した際も多くの友人や親戚が来てくれたそうです。
遠山雄が語る映画を観ずに亡くなられた方への想い
最後に真一を演じた遠山雄が、映画を撮ることになったきっかけや、伊藤茂雄さんと女優のこいけけいこさんへの想いを語りました。
「映画が好きで、俳優の道を志して、大山くんと一緒に劇団を主宰するなどして活動している中、俺、映画俳優になりたいのになんでもたもたしているんだろうという想いがあって、無茶をしてこの映画を作るに至りました。最初に企画してからもう6年以上が立ちました。
エンドロールをみていただければわかるようにものすごい数の方々に協力していただきました。特に長野県飯田市のロケ地のみなさん、クラウドファンディングで協力してくださった方々の名前が入っています。
一番最後に「伊東茂雄さんとこいけけいこさんと共に」という言葉を添えたのですが、6年もの時間がかかると大切な方がこの世からいなくなってしまうことがたくさんありまして、特にこの2人は映画の恩人なんですね。伊藤茂雄さんは、この映画に無くてはならない方だったのですが、映画が完成した日に亡くなられてしまいました。こいけけいこさんは地元の飯田市出身の女優さんです。彼女の友人が僕に会いに来て、彼女の故郷で撮る映画だと聞いたので、女優として生きた証しを残してあげたいと言われ、その想いに心打たれて、監督とも相談して、恋人役で出演してもらいました。癌を患っておられて、映画が公開される前に亡くなってしまわれました。これだけお世話になった人に観てもらえなかったことは後悔してもしきれないほどです。
本当は2ヶ月前には公開が始まる予定だったのですが、コロナ禍で延期を余儀なくされ、宣伝広告費も使い果たして、クラウドファンディングをしてもう一回宣伝し直してという状況で、こういう舞台挨拶をしてもらう機会を与えていただき、非常に感謝しています。」
その後、フォトセッションに移り、最後に登壇した皆さんに大きな拍手が送られました。2回目の上映前にも舞台挨拶が行われ、終始和やかな雰囲気の中、チームワークの良さが感じられた舞台挨拶でした。
映画『いつくしみふかき』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督】
大山晃一郎
【キャスト】
渡辺いっけい、遠山雄、平栗あつみ、榎本桜、小林英樹、こいけけいこ、のーでぃ、黒田勇樹、三浦浩一、眞島秀和、塚本高史、金田明夫
【作品概要】
劇団チキンハートを主宰する遠山雄の知人とその父親をめぐる実話をもとに生み出された作品。実際に知人が住んでいた長野県飯田市を舞台に物語が展開する。
中田秀夫、若松節郎等の助監督として数多くの映画に携わってきた大山晃一郎の長編映画監督デビュー作。
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」で、観客賞である「ゆうばりファンタ部門作品賞」を受賞し、カナダの「ファンタジア国際映画祭2019」ではファーストフューチャーコンペティションに入選を果たすなど、国内外の映画祭で高い評価を得た。
映画『いつくしみふかき』のあらすじ
広志は妻の加代子が出産中に、あろうことか妻の実家に盗みに入り、タンスなどを物色しているところを加代子の弟・義孝に発見されます。
「最初から騙すつもりだったんだろ?」と怒りに震える義孝に対して、広志は、台所にあった包丁を手に取り、義孝の右足を刺しました。
決起した村の人々は山に逃げ込んだ広志を探し出し、取り押さえます。義孝は、広志の顔に銃口を突きつけ、今にも引き金を弾く勢いです。
そこに現れたのは町の教会の牧師・源一郎でした。彼は義孝に「誰に対してもいつくしみの心を持つように」と言い聞かせ銃を下げさせます。
30年後、加代子が産んだ進一は、なんとか職につかせようとする母親の奮闘も虚しく、引きこもり生活を続けていました。
進一は、幼いころ、祭りに出かけて拾ったりんご飴を母にプレゼントしようと持ち帰ったところ、「お金もないのに誰にもらったの? 取ったんだね? この悪い血が!」と母にひどく叱られたことを今でも鮮明に覚えていました。
進一は自分には父などいないと考えるようにしていましたが、叔父の義孝は家にやって来るたびに「お前の顔を見ると古傷が痛む」と言って暗に義孝親子を非難するので、いやがおうにも父のことを意識させられるのでした。
ある日、義孝は進一を呼び出し、広志が家にやって来た時の話をして聞かせました。「広志が自殺しかけていたところを村の人が間一髪で助け、加代子の善意で、家に住まわせてもらったところ、広志は加代子を誘惑し、まんまと家に潜り込むことに成功した。それは偶然ではなく最初から企んでいたことだったのだ、お前の父親は“悪魔”だ」と。
その頃、村で空き巣事件が多発し、村人たちは「悪魔の子である進一の犯行にちがいない」と噂します。彼らは加代子も同席させた上で「警察に突き出す前に出ていけ」と言い放つのでした。
進一はしぶしぶ家を出ていくことになります。
彼が身を寄せたのは牧師の家でした。そのころ、仲間と一緒に詐欺行為を行っていた広志は、追われる身となって偶然教会にやってきます。
広志と進一は互いのことを何もしらないまま教会で同居することになりますが……。
まとめ
2020年7月26日(日)に大阪・テアトル梅田にて行われた、映画『いつくしみふかき』公開後舞台挨拶イベントの模様をお届けしました。
大山監督、遠山雄さんを始めとするキャストの方々の熱い想いが伝わってきました。
挨拶の中でも言及されていましたが、シリアスな部分とユーモラスな部分が絶妙なハーモニーを奏でている作品です。
観る度に印象が代わり、何度も映画館に通う方もいるという、非常にスケールの大きい作品に仕上がっています。映画館も感染防止のために、力を尽くしている中、ぜひ多くの方に映画館に足を運んで観ていただきたい作品です。
映画『いつくしみふかき』は2020年7月25日(金)よりテアトル梅田他、全国順次公開されます!