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Entry 2019/05/14
Update

樋口真嗣×大庭功睦『キュクロプス』トークショーinテアトル新宿。映画監督としての信念とは

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

大庭功睦監督の和製ノワール作品『キュクロプス』。


大庭功睦監督(左)樋口真嗣監督(右)©︎Cinemarche

現在、テアトル新宿においてレイトショー上映されている大庭功睦監督作品『キュクロプス』

2019年5月11日(土)、上映後にゲスト登壇した樋口真嗣監督との対談の一部をご紹介します。

樋口真嗣監督は、日本を代表する映画監督。「進撃の巨人」シリーズや、『シン・ゴジラ』の監督を務めたことでも有名。大庭監督は、樋口監督の助監督として『シン・ゴジラ』に携わっていました

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映画『キュクロプス』の役者陣について


(C)2018 Norichika OBA

大庭功睦監督(以下、大庭):今回、見ていただいていかがでしたか?

樋口真嗣監督(以下、樋口):2回目見ると爽やかな映画だな、という印象をうけた。良いキャストを集めている。池内万作さん、佐藤貢三さん、顔面にインパクトのある役者さんたち。中でも、やっぱり杉山ひこひこさんはいいね。

大庭:ひこひこさんと樋口さんは『シン・ゴジラ』以前にご一緒したことがあったんですか?

樋口:以前、冨永昌敬監督の『ローリング』の初日に観に行った後、ひこひこさんに、「ある映画で広く人を集めているから来てくれないか」と誘った。それで『シン・ゴジラ』に出てもらうことになったんだけど。ここにもう一人、(ひこひこさんを)、好物だと思ったやつがいたんだなぁ。この映画でひこひこの姿を観た時は、すごい嬉しかった。彼は感じの悪い役をやらせたら天下一品。『シン・ゴジラ』を経て、ようやく彼が輝く場にきた。

作品を破壊する行為について


©︎Cinemarche

樋口:このルドンの《キュクロプス》の絵画をそのまま出したのもすごかった。絵が切り刻まれるのを観ると、倒錯した気持ちになる。

高倉健さん主演の映画『冬の華』で、引退した暴力団の組長(藤田進)が絵画を収集していて、「シャガールはええよ」って語ってるんだけど、ある日敵対する暴力団が乗り込んで来て「シャガールっていうのはどれや」といって、絵をズタズタに切り刻まれる。命よりも大切なものが切り刻まれる、中学生の時にそれを見て、ものすごく衝撃をうけた。

大庭:やっぱり絵画を切り刻まれるということに、その絵画が現存するというリアリティ含めて我々は感じやすい何かがあるのではないか。切り刻むシーンのショットは、画にナイフを刺し込む一発目から使いたかったんですけど、ナイフを抜く時に額まで持ち上がってしまって(笑)。

かっこ悪かったし、絵が一枚しか無かったので、仕方なく二発目の刺し込みから使ってます。

樋口:なんか、破壊される、汚される、ナイフで切り裂かれるというものに、強い衝撃を受ける感じがあるんだなぁ。

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意志を貫く心の強さ


©︎Cinemarche

樋口:作りたい映画をつくるというのが、すごい。

大庭:それが自主映画を作る意味だと思うので…。監督は、商業(映画)作品の世界
で映画を作っているから、そう感じるのでしょうか。

樋口:僕は、作りたい映画をつくる代わりに、魂を売っているから(笑)

ある時ふと衝動的に、「これを作りたい」という気持ちが湧いてくる。でもやっていく途中で、「作りたい」という気持ちと、「何をつくるべきなのか」というのとで途中でブレるもの。それがブレずに行けたというのが、すごい。

振り返ってみると自分も、一本目の作品で「作りたい」と思って作らなかったら、映画監督にはならなかった。きっと生意気な特撮監督で終わってしまった。最初の作品は5年かけてやっとできた。

でもその間に、関係者が増えると、要望も増える。これはカットしてくれだの、話を変えてくれだの…。今回、この映画ではどうしても「犬」はカットしたくないという思いがあったとか。

大庭:そうですね。「犬」は時間もスケジュールも手間もかかるからと、アドバイスをいただいたのですが、そこを譲ってしまうとそれこそ、魂を売るじゃないですけど…。

樋口:まさにそれ。今日もう一度観て、改めて犬がいなきゃ終わらない。犬を切り取るとこの作品が成立しない。『マッドマックス2』みたいに、オルゴールじゃだめなんだよ(笑)


©︎Cinemarche

樋口:これがやりたいということと、これならできる割合はどれくらい?

大庭:基本は自分が見たい映画をつくりたい。それを実現するためにどうすればいいのか。お金がないので、登場人物や柱を削りに削って、どう成立させるか。

樋口:でもそれなら銃撃戦は切るよね(笑)

大庭:もしこれが最後の映画になったら、「いつか銃撃戦をやりたい」という夢が叶えられなくなってしまうので…。

樋口:それにしても弾の数が多かったな。こんなに撃つんだ!これがやりたいのか!と。

大庭:一応、リアリティとして弾倉の数はこだわったつもりですが、欲望に負けたんです(笑)

樋口:実は前々から、大庭くんが自分の映画で大変なことをやらかしているという噂を聞いていた。だって、車の窓ガラスは割ってるよね。アウディじゃなかった?

大庭:あれはレンタカーを借りて、窓を下げた状態で、キッカケでガラスの破片を降らせてるだけでして…そういう撮り方をしていることは、監督なら想像ついていたんじゃないですか?あと、発砲弾着については、これまで監督からご指導ご鞭撻を受け
た、合成をうまく使って…(笑)

樋口:騙された!

大庭:監督、良いお客さんですね(笑)。監督が商業の現場でやっている作り方、欲望をコントロールして無駄なショットを撮らず、自分の本当に撮りたいショットを撮り、そのショットをダイナミックな連鎖で見せていくという豪腕さ、見習いたいと思っています。

樋口:まあ、ね。こうやって、一緒に修羅場をくぐり抜けて来た仲間が監督として、面白い映画を作っていくことが嬉しいな、と思う。

まとめ


©︎Cinemarche

ざっくばらんな二人の対話に、親密さはもちろん、様々な苦難を乗り越えその中で築き上げられた信頼関係を伺い知ることができました。

途中で繰り広げられた樋口監督作品『ローレライ』をはじめとするアクション映画や、商業映画における樋口監督の視点がユーモアたっぷりに語られ、終始笑いの絶えない対談になりました。

映画『キュクロプス』は、テアトル新宿公開を皮切りに全国順次公開予定。是非お見逃しなく!

樋口真嗣(ひぐちしんじ)のプロフィール

1965年生まれ、東京都出身。平成ガメラシリーズでは特技監督を務め、日本アカデミー賞特別賞を受賞。

2005年に『ローレライ』の監督と特撮監督を兼任したほか、2006年の『日本沈没』、2012年の『のぼうの城』など、日本映画の娯楽作品で注目を集めます。

そのほかの監督作品には、実写版「進撃の巨人」シリーズや、2016年に大ヒットを飛ばした『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務めています。

大庭功睦(おおばのりちか)のプロフィール

1978年生まれ、福岡県岡垣町出身。2001年に熊本大学文学部を卒業後、日本映画学校(現・日本映画大学)の16期生として映像科に入学。2004年に卒業。

映画学校を卒業してからは、西谷弘監督の作品を中心に助監督を務め、入江悠監督の『太陽』、庵野秀明総監督・樋口真嗣監督の『シン・ゴジラ』など、数多くの映画・テレビドラマの現場に携わった。

2010年に自主製作した中編映画『ノラ』は数々の映画祭で上映され、第5回田辺・弁慶映画祭にて市民審査員賞を受賞している。

取材協力/ テアトル新宿
取材・写真/ 久保田なほこ・出町光識

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映画『キュクロプス』の作品情報

【公開】
2019年(日本映画)

【脚本・監督】
大庭功睦

【キャスト】
池内万作、斉藤悠、佐藤貢三、あこ、杉山ひこひこ、島津健太郎、山中良弘、中野剛、新庄耕

【作品概要】
妻とその愛人を殺害した罪で14年の服役を終えた男が、狂気と苦痛にもがきながらも真犯人への復讐を果たそうとする様を描いたノワール・サスペンス。

監督・脚本を務めた大庭功睦は、フランスの著名な画家であるオディロン・ルドンの絵画『キュクロプス』から物語の着想を得ました。そして、飽和する情報社会で生きることに対して自身が抱いた不安感・焦燥感・不信感をテーマとして流し込み、狂気と苦痛、そして混迷に満ちた復讐の物語を完成させました。

キャストには、大庭監督が「若き日のクリストファー・ウォーケン」と評してその出演を猛打診し、本作でもその独特の存在感を発揮した池内万作をはじめ、監督がフリー助監督として様々な現場を渡り歩いた際に目をつけていた「強力」な俳優陣が揃いました。また紅一点であり、本作では一人二役を務めた女優のあこなど、魅力的なキャストにあふれています。

本作は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018にてシネガーアワードと北海道知事賞のW受賞するという快挙を達成。また、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018の国内長編部門、ドイツで開催された日本映画祭「Nippon Connection 2018」にて正式上映されるなど、国内外問わず各地の映画祭で高い評価を得ました。

映画『キュクロプス』のあらすじ


(C)2018 Norichika OBA

妻・亜希子(あこ)とその愛人を殺した濡れ衣を着せられて投獄され、14年もの服役を終えた男・篠原洋介(池内万作)。

彼は妻を殺し自身を罠に嵌めた真犯人に復讐を果たすために、かつて殺人事件が起きた町へと戻ってきました。

当時事件の捜査を担当した刑事の一人である松尾(佐藤貢三)、彼の情報屋である西(斉藤悠)から、亜希子を殺した真犯人、現在は稲葉組で若頭を務めている財前(杉山ひこひこ)の存在を知らされる洋介。

やがて、彼は偶然立ち寄ったバー「ガラティア」で、壁に掛けられた一枚のルドンの絵画と、そこで働く亜希子と瓜二つの女性・ハル(あこ)と出会います。生き写しといえるほどのその姿に、洋介は思わず驚き、怯えるように店を去りました。

財前暗殺に向け、西の指導下で銃撃の訓練を始める一方、時が経つほどに事件の記憶が蘇り、悪夢に苛まれる洋介。ふとした瞬間に現れる亜希子の亡霊だけが、彼にとって唯一の救いとなりつつありました。

やがて、バー「ガラティア」に再び訪れた洋介が、とある理由から稲葉組の構成員を殴り倒してしまったことで、復讐の物語はさらに加速してゆきます。




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