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Entry 2021/06/23
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映画『オキナワ サントス』内容/公開日/上映館/予告動画。日系移民強制退去事件を松林要樹が追ったドキュメンタリー

  • Writer :
  • 石井夏子

『花と兵隊』『祭の馬』松林要樹監督最新作。
第21回東京フィルメックス・コンペティション部門正式出品。

2020年の「東京フィルメックス」コンペティション部門で上映されたドキュメンタリー映画『オキナワ サントス』。

(C)玄要社

2021年7月31日(土)より沖縄・桜坂劇場での先行上映、8月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかでの劇場公開が決定しました。

本作は『花と兵隊』『祭の馬』で知られる松林要樹監督の待望の最新作。第二次世界大戦中にブラジルのサントスで起きた「日系移民強制退去事件」をめぐるドキュメンタリーです。

公開日決定にあわせ、予告編とポスタービジュアルも解禁されました。

映画『オキナワ サントス』について

(C)玄要社

サントス「日系移民強制退去事件」の真実を、戦後70年以上を経て明してゆく本作『オキナワ サントス』

日本とブラジル、大和と沖縄の間に埋もれ、戦後70年以上も語られることのなかった移民史の暗部(タブー)に迫ります。

この歴史の深い闇に挑むのは、『花と兵隊』で戦後もタイ・ビルマに留まった「未帰還兵」たちの今に迫ったドキュメンタリー映画監督の松林要樹

(C)玄要社

発見された「名簿」から、強制退去させられた日系585世帯の6割が沖縄からの移民だった事実に注目した松林は、ブラジル沖縄県人会の協力を得て、生存者たちを訪ね、日本とブラジル、大和と沖縄の間に埋もれた史実を明らかにしていきます。

異国で知られざる「戦争」と「戦後」を生き抜き、晩年を迎えた人々の証言。彼らが自らの人生を語る言葉は、ヘイトクライムや難民問題など、今まさに共に生きることの難しさに直面している私たちに道しるべのように響きます。

映画『オキナワ サントス』のポスターヴィジュアル

(C)玄要社

ポスターヴィジュアルのデザインは『人生フルーツ』や大島渚監督『戦場のメリークリスマス 4K 修復版』『愛のコリーダ 修復版』などの宣伝美術も手がけるグラフィックデザイナーの成瀬慧が担当しました。

映画『オキナワ サントス』の予告編

予告編のディレクションは『沖縄スパイ戦史』『群衆 セルゲイ・ロズニツァ〈群衆〉ドキュメンタリー3選』などの遠山慎二

予告編では「日系移民強制退去事件」を経験し、晩年を迎えた人々の証言が綴られます。

当時まだ幼い子どもだったかれらは、日本にルーツをもつというだけで「スパイ野郎」と呼ばれたといいます。

また、ある男性は「あの強制退去事件について他人に話したことはありません…」と重い口を開いきました。

なぜ人々は口を閉ざし続けてきたのか? いったい何が起きていたのか?ーーその答えを映画でぜひ知ってください。

松林要樹監督のメッセージ


©琉球新報 撮影:ジャン松元

東京オリンピックが開催されようとしているが、今も世界各地で移民や難民の排除が起きている。具体例を挙げるまでもなく、日本政府はもちろん、一般のいわゆる日本人が難民や移民に対して決して寛容だとは思えない。この映画の撮影を開始した2016年には、今のようなパンデミックな世の中になっていることは予想すらできなかったが、不寛容な社会になっていることは想像できた。戦時中、地球の裏側のブラジルで起きたことは、日本がアジアでとった軍事行動の裏返しだったと考えるようになった。時として戦争の加害者と被害者とが表裏一体になることがあると思う。だから戦時中に日系ブラジル人が経験したことは、遠い国の昔の話ではなくて、現代にも通じる普遍的な教訓になる出来事だと信じている。

松林要樹監督のプロフィール

(C)玄要社

松林要樹(まつばやし・ようじゅ)は、本作で監督・撮影・編集を兼任したドキュメンタリー映画監督。

1979年福岡県生まれ。日本映画学校(現・日本映画大学)で原一男、安岡卓治が担任するゼミに参加。

戦後もタイ・ビルマ国境付近に留まった未帰還兵を追った『花と兵隊』(2009)で、第1回田原総一朗ノンフィクション賞〈奨励賞〉、第26回山路ふみ子映画賞〈福祉賞〉を受賞。森達也、綿井健陽、安岡卓治と共同監督した『311』(2011)が、山形国際ドキュメンタリー映画祭 2011、第 16回釜山国際映画祭で上映される。

地震と津波と放射能汚染の被害を受けた福島県南相馬市を取材した『相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶』(2011)が、山形国際ドキュメンタリー映画祭2011、第36回香港国際映画祭で上映される。

津波から奇跡的に生還したある馬の数奇な運命を描いた『祭の馬』(2013)は、2013年ドバイ国際映画祭〈ドキュメンタリー・コンペティション部門 最優秀作品賞〉を受賞、第14回東京フィルメックス・コンペティション部門、2013年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭など多くの国際映画祭で上映される。

世界17カ都市を旅しながら反射する世界を撮った『Reflection』(2015)が、第34回バンクーバー国際映画祭で上映される。

2016年に文化庁新進芸術家研修制度でブラジル・サンパウロに滞在。著書に「ぼくと『未帰還兵』との2年8カ月」(同時代社)、「馬喰」(河出書房新社)など。現在は沖縄在住。

映画『オキナワ サントス』の作品情報

(C)玄要社

【日本公開】
2021年(日本映画)

【英題】
OKINAWA/SANTOS

【監督・撮影・編集】
松林要樹

【カラーコレクション】
中谷駿吾 (ムーリンプロダクション)

【取材協力】
ブラジル沖縄県人会、サントス日本人会

映画『オキナワ サントス』のあらすじ

(C)玄要社

第二次世界大戦前夜から戦中のブラジル。高まるナショナリズムを背景にヴァルガス独裁政権は、約20万人の日系移民に対し、日本語新聞の廃刊、日本語学校の閉鎖、公の場での日本語の使用禁止などを命じました。

そして1943年7月8日、事件は起きます。南東部の港町サントスで暮らす日系とドイツ系の移民に、24時間以内の退去命令が下されたんです。

家財や土地を残したまま、ある者は収容所へ送られ、ある者は家族と生き別れ、コミュニティは離散。

しかし戦後70年以上にわたり、「日系移民強制退去事件」は長らくタブーとされ、この悲惨な出来事がブラジルの日系人社会で公に語られることはありませんでした。

なぜ人々は口を閉ざし続けてきたのか? いったい何が起きていたのか?

まとめ

(C)玄要社

異国で知られざる「戦争」と「戦後」を生き抜いた人々の物語は、ヘイトクライムや難民問題など、共に生きることの難しさに、今まさに直面している私たちの道標になるはずです。

映画『オキナワ サントス』は2021年7月31日(土)より沖縄・桜坂劇場で先行上映、8月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかで劇場公開

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