Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

新作映画ニュース

Entry 2020/06/11
Update

映画『はりぼて』劇場公開決定と上映館。腐敗した地方政治を富山のテレビ局がドキュメンタリーで暴く

  • Writer :
  • 石井夏子

虚飾を剥がせ!この映画こそ日本の縮図だ!!

富山県の小さなテレビ局が地方政治の不正に挑み、報道によって人の狡猾さと滑稽さを丸裸にした4年間を描いたドキュメンタリー映画『はりぼて』。

この度、映画『はりぼて』が2020年8月16日(日)よりユーロスペースほか全国順次ロードショーと決定しました。

2016年に市議14人をドミノ辞職に追い込んだ「政務活動費を巡る調査報道」により日本記者クラブ賞特別賞、ギャラクシー賞報道活動部門大賞、菊池寛賞を総ざらいした富山の若いテレビ局が、その後3年間の取材を重ねパワーアップ。

日本の政治を地方政治から抉る問題作を作り上げたふたりの監督、五百旗頭幸男(いおきべ ゆきお)、砂沢智史のコメントも到着、ポスター画像も解禁となりました。

映画『はりぼて』について

(C)チューリップテレビ

“有権者に占める自民党員の割合が10年連続日本一”である保守王国、富山県。

2016年8月、平成に開局した若いローカル局「チューリップテレビ」のニュース番組が「自民党会派の富山市議 政務活動費事実と異なる報告」とスクープ報道をしました。

この市議は“富山市議会のドン”といわれていた自民党の重鎮で、その後、自らの不正を認め議員辞職

これを皮切りに議員たちの不正が次々と発覚し、半年の間に14人の議員が辞職していきました。

(C)チューリップテレビ

その反省をもとに、富山市議会は政務活動費の使い方について「全国一厳しい」といわれる条例を制定しましたが、3年半が経過した2020年、不正が発覚しても議員たちは辞職せず居座るようになっていったんです。

記者たちは議員たちを取材するにつれ、政治家の非常識な姿や人間味のある滑稽さ、『はりぼて』を目のあたりにしていきます。

しかし、『はりぼて』は記者たちのそばにもありました。

本作は、テレビ番組放送後の議会のさらなる腐敗と議員たちの開き直りともいえるその後を追った政治ドキュメンタリーです。

映画『はりぼて』のポスター画像

(C)チューリップテレビ

解禁されたポスター画像には、富山市庁舎でカラスの群れが建物を覆い、その市議会の“ドン”と思われる男の背中に、どこか不穏な雰囲気を感じ取ることができます。

すべてはりぼての世界の中に現実として私たちの暮らしはある」という、作り手のメッセージを感じるビジュアルとなっています。

監督のコメント

(C)チューリップテレビ

五百旗頭幸男監督のコメント

かつて、議会をチェックし不正を暴き続けた私たちメディアは、期せずしてその姿を見失いました。不正が発覚しても、毅然として責任を取らなくなった市議たち。彼らにぶつけた厳しい言葉の数々が宙をさまよい、無力感となって戻ってきました。「はりぼて」があぶり出すのは、議会と当局の姿だけではありません。それらを許し、受け入れてきたメディアと市民を含む、4年間の実相です。

私が退職を告げたシーンをめぐっては、制作陣で数日間の議論になりました。口を挟まず結論を委ねました。

「自分たちのかっこいい姿だけを描いても信頼は得られない。それこそ、はりぼてだ」
「弱さを隠さずに見せることは強さを示すことでもあり、再生につながる」

信頼を寄せる人たちを傷つけ、彼らの覚悟と信念に背中を押され、この映画は生まれました。胸に広がった鈍い痛みは消えそうにありません。「はりぼて」の矛先は、実は自分自身にも向けられていたのです。

砂沢智史監督のコメント

富山市議会の不正問題は発覚から4年が過ぎました。
辞職した市議は裁判をへて、新たな人生をスタートしています。
そんな中、今これを映画として世に出し、彼らの過去を掘り返すことは許されるのか?
その悩みは今も抱えています。

富山県は全国一の自民党王国。県内の市町村議会や県議会においては自民党単独での議案の可決が可能で、その勢力は圧倒的です。それは、「1強他弱」と呼ばれる国政を表す縮図と言えます。

「はりぼて」で描いたのは「人間の弱さ」です。絶大な権力を振るった市議会の「ドン」は、辞職後に自らの不正を告白します。「遊ぶ金が欲しかった」その告白は生々しいものでした。

高い志を持って政治家になっても、組織の論理に押し流されてしまう現実もある。市民から見られている緊張感がなければ心は緩み、甘えや驕りを生む。

地方議会への関心を高め、市民生活の向上につなげたい。
この映画がそのきっかけになればと願っています。

映画『はりぼて』の作品情報

(C)チューリップテレビ

【日本公開】
2020年(日本映画)

【監督】
五百旗頭幸男、砂沢智史

【撮影・編集】
西田豊和

【語り】
山根基世

【声の出演】
佐久田脩

【テーマ音楽】
「はりぼてのテーマ~愛すべき人間の性~」作曲・田渕夏海

まとめ

(C)チューリップテレビ

あっけなく辞職する議員たちの滑稽な振る舞いは、観る者の笑いを誘わずにいられません

追及する記者を含め、腐敗した議会や議員たちを笑うことしかできなのでしょうか。

果たして「はりぼて」は誰なのか?地方からこの国のあり方を問うドキュメンタリー映画『はりぼて』は2020年8月16日(日)よりユーロスペースほか全国順次ロードショーです。

関連記事

新作映画ニュース

映画『異物』あらすじ。キャスト田中俊介×小出薫を宇賀那健一がエロティック不条理コメディで撮る!

『黒い暴動♥︎』『サラバ静寂』『転がるビー玉』の宇賀那健一監督の新作短編映画。 映画『黒い暴動♥︎』『サラバ静寂』『転がるビー玉』の宇賀那健一監督が手掛けた新作短編映画『異 …

新作映画ニュース

映画『ホロコーストの罪人』あらすじ/キャスト/公開日/上映館。実話を基にノルウェー最大の罪を描く

家族を引き裂いたノルウェー最大の罪とは。 ホロコーストに加担したノルウェー最大の罪を描いた衝撃の実話『Betrayed』。 (C)2020 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGH …

新作映画ニュース

映画『五億円のじんせい』キャスト明日香役の山田杏奈のプロフィール。演技力の高さに注目!

ちょっとだけボクの話を聞いてくれませんか! 映画『五億円のじんせい』は、2019年7月20日(土)よりユーロスペースほかにてロードショー。 オリジナル企画、出演者、ミュージシャンをオーディションで選出 …

新作映画ニュース

稲垣吾郎映画『窓辺にて』DVD&Blu-ray発売は2023年10月1日開始!今泉力哉監督の未公開シーンやメイキングも収録

2023年10月1日(日)正午12時からCHIZUSHOPにて受注予約受付スタート! 稲垣吾郎主演の映画『窓辺にて』のBlu-rayとDVDの発売が決定しました。 (C)2022「窓辺にて」製作委員会 …

新作映画ニュース

『宵闇真珠』映画監督クリストファー・ドイルをオダギリジョーらキャスト語る。世界的巨匠の映画制作の舞台裏は⁈

『ブエノスアイレス』『恋する惑星』など、映画史に燦然と輝く傑作を多数撮ってきた世界的撮影監督クリストファー・ドイル。 彼が監督を務めた映画『宵闇真珠』(よいやみしんじゅ)が12月15日(土)にシアター …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学