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Entry 2020/07/17
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映画『はりぼて』感想考察と評価レビュー。タイトルの意味と地方政治の不正を追った“正義の正体”とは|映画という星空を知るひとよ8

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第8回

2020年8月16日(日)より、渋谷ユーロスペースほかでロードショー公開される映画『はりぼて』。富山県の小さなテレビ局が地方政治の不正に挑み、報道によって人間の狡猾さと滑稽さを浮き彫りにする様子を描いたドキュメンタリーです。

2016年、富山県のチューリップテレビのスクープ報道により、「富山市議会のドン」といわれる自民党重鎮の不正が発覚します。これを皮切りに市議たちの不正が次々と判明し、半年間で14人もの市議が辞職する事態に……。

腐敗政治を行った市議たちのその時とその後から、政治の縮図が見えてきます。

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映画『はりぼて』の作品情報


(C)チューリップテレビ

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
五百旗頭幸男、砂沢智史

【撮影・編集】
西田豊和

【テーマ音楽】
『はりぼてのテーマ~愛すべき人間の性~』作曲・田渕夏海

【語り】
山根基世

【声の出演】
佐久田脩

【作品概要】
2016年、富山県のチューリップテレビのスクープ報道により、「富山市議会のドン」といわれる自民党重鎮の不正が発覚しました。これを皮切りに市議たちの不正が次々と判明し、半年間で14人もの市議が辞職する事態に。富山市議会はその反省をもとに厳しい条例を制定しますが、3年半が経過した2020年には、市議たちは不正が発覚しても辞職せず居座るようになっていました。

映画『はりぼて』のあらすじ


(C)チューリップテレビ

“有権者に占める自民党員の割合が10年連続日本一”である保守王国、富山県。

取材のマイクやカメラを邪険に払い、取材に応じない男性が映し出され、それを追う記者の後ろ姿で、ストーリーは幕を開けます。

2016年8月、平成に開局した若いローカル局「チューリップテレビ」のニュース番組が「自民党会派の富山市議 政務活動費事実と異なる報告」とスクープ報道をしました。

問題となる政務活動費は、使った金額の領収書と会議などで部屋を借りた場合の使用許可書などを提出する仕組になっています。

テレビ局の記者たちが使用許可書に記載されている公民館へ出向いて事実確認をしますが、そんな会議の申請はなかったと判明し、ウソがばれたのです。

スクープされたこの市議は“富山市議会のドン”といわれていた自民党の重鎮で、その後は自らの不正を認め議員辞職をします。

これを皮切りに、架空請求、カラ出張、領収書偽造、スキャンダル、秘密漏洩など、市議たちの政務活動費活用の不正が次々と発覚し、半年の間に14人の議員が辞職していきました。

その反省をもとに、富山市議会は政務活動費の使い方について「全国一厳しい」といわれる条例も制定されました。

それから3年半が経過した2020年。不正が発覚しても市議たちは辞職せずに、市議職に居座るようになっています。

テレビ局の記者や報道陣たちは、市議たちを取材して政治家の非常識な生活態度や嘘がバレたときの滑稽さなどを目のあたりにしてきました。

それは、見掛けは立派でも実質が伴わない「はりぼて」みたいなものでした。しかし、「はりぼて」は記者たちのそばにもあったのです……。

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映画『はりぼて』の感想と評価

(C)チューリップテレビ

映画『はりぼて』は、「自民党会派の富山市議 政務活動費事実と異なる報告」というテレビ番組放送後のその後を追った政治ドキュメンタリーです。

日本海側に位置する富山県。風光明媚で静かな地方都市という印象ですが、その政治の腐敗ぶりが見事に暴露されていました。

2016年の自民党会派の重鎮議員の政務活動費着服事件。政務活動費とは、日本における地方議会の議員に政策調査研究等の活動のために支給される費用のことですが、そんな活動費は本当に必要なものでしょうか。

富山県は、2015年度の政務活動費を、全国で唯一全額使い切った県だったそうです。

政務活動費を全部使って、県民の暮らしぶりがどれだけ良くなったのでしょう。それは県民の皆さんに聞けばすぐわかること。

県民の血と汗ともいえる税金が、湯水のように扱われている現実にあっけに取られました。

また、手当が60万円じゃ安いから70万円に引き上げたという事実も驚きでした。ひと月60万円じゃ足らないそうです。

一般庶民の暮らしぶりを知らない“おエラ方”の生活レベルって、本当に凄いのでしょう。

しかもこのような着服をする市議が1人や2人ではなく、最終的に発覚したのは14人といいます。周りがやっているから大丈夫だろうという、愚かな連帯意識が存在するのでしょうか。

着服という手段に出たのも「遊ぶ金が欲しかった」からだそうで、これでは立派な市議さんも子供と同じです。

罪の意識をまるで持っていない輩が県の政治を牛耳っているというのは、本当に解せない話です。

(C)チューリップテレビ

本作では腹立たしい言い訳シーンが次々と出ますが、嘘がバレたときの市議たちの姿は滑稽です。

ゴマシオ頭や薄くなった頭頂を見せながら、深々と頭を下げる謝罪場面。秀でた額に光る大粒の汗。しどろもどろに口にするとりとめのない言い訳。

絶妙のタイミングで流されるのは、田渕夏海作曲のテーマ音楽『はりぼてのテーマ~愛すべき人間の性~』。

思わず笑いが出ますが、威張っていたのに急に慌てふためく市議たちの変化に“人間の弱さ”も見えました。

昨今は、こんな卑劣な罪を犯し恥ずべき陳謝をしたにもかかわらず、辞職をせずに市議職に居座り続けている市議が多数いるといいます。そのふてぶてしい根性もまた驚きです。

市議になる前は、一生懸命に選挙運動に走り回り、県民の皆様にお願いし続ける低姿勢を取っていたのに、選挙に当選すると、手のひらを返したように傲慢な態度に変貌するのもよく聞く話です。

こんな市議に誰がするのでしょう。本当に県民一人ひとりの親身になって、政治に尽力を尽くしてくれるような市議はいないのでしょうか。

映画『はりぼて』で富山県の市議を追い詰めるのは、テレビ局の記者たちを始めとする報道陣です。報道の使命は真実を広く伝え、平和な社会の実現に貢献すること。

記者たちは罪を犯した者を捕まえることは出来ませんが、真実を追求する記者魂が黙っていられず、動き出していました。

しかし、英雄ともいえるこのテレビ局の記者たちもまた、上層部からの命令には逆らえない……。

どうやら、この世界にはとてつもなく大きな「はりぼて」が存在するようです。

まとめ


(C)チューリップテレビ

映画『はりぼて』は、テレビ番組放送後の議会のさらなる腐敗と市議たちの開き直りともいえるその後を追った、政治ドキュメンタリーです。

あっけなく辞職する市議たちの滑稽な振る舞いは、軽快でコミカルなバックミュージックと共に、観る者の笑いを誘わずにはいられません。

そして、笑いながらも、この問題は富山県だけのものじゃないということが分かってきます。

腐敗政治の元となった市議にスポットを当てて不正を暴いた本作ですが、不正だけではなく“人間の持つ弱さ”も浮き彫りになっているのです。

“弱さ”は誰でも持っているものでしょうから、自分自身に対して鳴らされた警鐘ともとれます。

本作は地方政治のドキュメンタリーですが、この国のあり方と人間性を鋭く問いかけているのです。

映画『はりぼて』は、2020年8月16日(日)より、ユーロスペースほかでロードショー!

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

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