ヴェネチア正式出品にオダギリ「身が引き締まります」。
オダギリジョー長編初監督作品『ある船頭の話』が2019年9月13日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国公開となります。
明治と大正のはざま。文明の波がひたひたと押し寄せ、時代の移り変わりに直面した山あいの村を舞台に、「本当に人間らしい生き方とは何か」を世に問う問題作が完成しました。
公開に先駆け、完成披露試写会が8月21日にスペースFS汐留にて行われ、主演の柄本明、川島鈴遥、村上虹郎、そして長編初監督を務めたオダギリジョーが舞台挨拶に登壇しました。
本記事では、映画『ある船頭の話』の舞台挨拶の模様をお届け致します。
CONTENTS
完成披露試写会概要と舞台挨拶リポート
完成披露試写会概要
【日程】
8月21日(水)
【時間】
18:30舞台挨拶開始 ※本編上映前
【会場】
スペースFS汐留(東京都港区東新橋1-1-16 汐留FSビル3F)
【登壇者】
柄本明、川島鈴遥、村上虹郎、オダギリジョー監督
ゲスト登壇
──なにか一言、ご挨拶をお願いします。
柄本明(以下、柄本):たくさんのお客様、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
川島鈴遥(以下、川島):初めまして。撮影中は演じることに精いっぱいで、こんなかたちで素敵な先輩たちとお客様の前で舞台挨拶に立てて嬉しいです。
村上虹郎(以下、村上):(川島の挨拶に触れ)「初めまして」っていいですね。今日はよろしくお願いします。
オダギリジョー監督(以下、オダギリ):普段は俳優として舞台挨拶に立つことが多いので、監督として立つことにすごく緊張しています。今日初めて一般の観客に観て頂く機会でもあるので、どういう反応があるのか不安ですが、いい部分だけを周りの方にお伝え頂ければと思います(笑)。
衣裳はビジュアルに合わせた赤と黒
映画のポスタービジュアルにあわせて、登壇者全員が赤と黒の衣装で登場。そのことに触れて柄本は「偶然ですか?」と会場の笑いを誘いました。
船頭・トイチを演じたことについて柄本は、「撮影現場が過酷でしたね。監督の思い通りの場所だと思うのですが、朝から晩まで舟を漕いで大変でしたね。舟を漕ぐのは上手くなったのですが、川の流れが強く牽引してもらわないと進めないことがあった」と撮影を振り返ります。
オダギリ組の撮影について川島は、「撮影がほとんどテスト撮影なしで進んでいたのですが、私には初めての経験でした」と回顧。
柄本明の印象は?
柄本の印象について「柄本さんは後姿が印象的。背中から寂しさや孤独感を感じられて、やっぱりすごい方なんだなと思いました」と答え間髪入れず「ありがとうございます!」と柄本。会場の笑いを誘います。
また、柄本との共演について村上は、「現場では過酷すぎて、何かを喋った記憶があまりない」と現場の過酷さをあらためて語り、柄本は「しゃべんないよ、あっついんだもん!」とツッコミを入れました。
キャスティングとスタッフについて
今回のキャスティングについてオダギリは、「ちゃんと事務所を通したと思います」と冗談交じりに語った後、「自分の好きな方々に集まって頂きました」とこれまでの俳優としての経験からキャスティングしたことを語りました。
続けて、世界的なスタッフが集まったことについては「クリス(クリストファー・ドイル)は僕らが気付かないような日本の美しい風景をカメラに収めてくれた。先ほど川島さんが言っていたテスト撮影をしないというのは、クリスの考えなんです」と世界的撮影監督であるクリストファー・ドイルの撮影スタイルについて話しました。
衣装デザインを務めたワダエミについては「日本の宝のような方。色んな生地を持ってきて衣装を考えてくれて、この作品をすごく大切にしてくれた」と感謝の意を述べました。
ヴェニス・デイズ部門正式出品
第76回ヴェネチア国際映画祭のヴェニス・デイズ部門に正式出品が決定したことについてオダギリは「身が引き締まります。自分も俳優として何度も参加させていただいた映画祭でもありますし、イタリアの監督協会が選んでくれている部門というのがまず嬉しい。商業性やエンターテインメント性ではなく、作家性を重視する部門なので。俳優オダギリジョーというフィルターがない形で評価してもらえたことも本当に嬉しいです」と選出されたことへの喜びを伝えます。
続けて柄本は、「大変に光栄なことだと思っています。二度目の参加なのですが、この日本的な作品が海外の方にどのように伝わるのか楽しみ」と語りました。
最後に一言づつ
──最後に観客に向けてメッセージをお願いします。
村上:僕も尊敬している先輩の方々やスタッフが集まり、何より柄本先生がこんなにも長く(出ずっぱりで)出演している作品は本当に贅沢な時間だと思います。オダギリ監督が映し出した世界をお楽しみください。
川島:素晴らしいキャスト、スタッフ、そしてこの作品に携わった皆さんの想いがスクリーンを通して伝わったらいいなと思います。
柄本:今の日本映画の主流からは割と逆行した映画と思うのですが、普遍的な大きなテーマがある作品に仕上がっています。
オダギリ:画づくりには徹底してこだわり、音の配置も細かくやっているので、劇場で観ないとこの映画の良さは伝わらないと思う。挑戦的なことをたくさんやっていて、今の日本映画を観なれている人には観づらい作品かもしれない。でもそこに挑戦したかったという思いがあり、さらにそれを面白がってくれるスタッフが集まった。色んなタイプの映画があるべきだと思いますので、この作品で何かを感じ取ってくれたら嬉しいです。
映画『ある船頭の話』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本映画)
【脚本・監督】
オダギリジョー
【撮影監督】
クリストファー・ドイル
【音楽】
ティグラン・ハマシアン
【衣装デザイン】
ワダエミ
【キャスト】
柄本明、川島鈴遥、村上虹郎、伊原剛志、浅野忠信、村上淳、蒼井優、笹野高史、草笛光子、細野晴臣、永瀬正敏、橋爪功、くっきー、河本準一
【作品概要】
俳優として海外でも精力的に活動してきた俳優のオダギリジョーの長編初監督作品で、超豪華な国際派スタッフが集結。
撮影監督は『ブエノスアイレス』(1997)『恋する惑星』(1994)などで知られるクリストファー・ドイル、衣装デザインには黒澤明監督作『乱』(1985)で米アカデミー賞®を受賞したワダエミ。
そして世界を舞台に活躍するアルメニア出身のジャズ・ピアニスト、ティグラン・ハマシアンが映画音楽に初挑戦しました。
主人公の船頭トイチ役に日本を代表する名優、柄本明。主演としては2008年公開『石内尋常高等小学校 花は散れども』(新藤兼人監督)以来、11年振り。
そして人懐っこい笑顔でトイチのもとに遊びに来る村人・源三役には、映画・テレビ・舞台と出演作が目白押し、映画『銃』(2018)での演技も印象深い、若手実力派・村上虹郎です。
ヒロイン役には『望郷』(2017)の川島鈴遥を抜擢。
8月から開催される第 76 回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門での正式出品が決定しています。
映画『ある船頭の話』のあらすじ
近代産業化とともに橋の建設が進む山あいの村。
川岸の小屋に住み船頭を続けるトイチは、村人たちが橋の完成を心待ちにする中、それでも黙々と渡し舟を漕ぐ日々を送っていました。
そんな折、トイチの前に現れた一人の少女。
何も語らず身寄りもない少女と一緒に暮らし始めたことで、トイチの人生は大きく狂い始め…。
まとめ
劇場公開に先駆け、8月21日にスペースFS汐留にて行われた『ある船頭の話』完成披露試写会。
上映前の舞台挨拶には主演の柄本明、川島鈴遥、村上虹郎、そして長編初監督を務めたオダギリジョーが登壇し、和やかに制作についてや本作に込めた想いを語りました。
映画『ある船頭の話』は2019年9月13日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国公開です。